JP2719239B2 - 電界放出素子 - Google Patents

電界放出素子

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JP2719239B2 JP3037794A JP3779491A JP2719239B2 JP 2719239 B2 JP2719239 B2 JP 2719239B2 JP 3037794 A JP3037794 A JP 3037794A JP 3779491 A JP3779491 A JP 3779491A JP 2719239 B2 JP2719239 B2 JP 2719239B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種表示素子・光源・
増幅素子・高速スイッチング素子・センサ等における電
子源として有用な電界放出素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】前記電界放出素子(以下、FECと略称
する。)としてSpindt型(縦型)のものをとりあげ、図
4を参照してその製法及び構造を説明する。図4(a)
に示すように、絶縁基板100上に、カソード電極10
1と、絶縁層102と、ゲート電極層103を積層被着
する。その上にレジストを被着し、例えば1μm 径程
度のゲートパターンの露光を光露光又は電子ビーム露光
により順次行う。その後、露光部のレジストを除去し、
さらにゲート電極層103と絶縁層102をエッチング
し、図4(b)に示すようにゲート104及びホール10
5を形成する。レジスト除去後、絶縁基板100を同
一平面内で回転させながら斜め上方から同基板の表面に
Al106を蒸着し、図4(c) に示すようにゲート10
4の開口部を狭くするとともに、剥離層を形成する。
図4(d) に示すように、基板に対して垂直上方からエミ
ッタ材料107を蒸着させ、ホール105内にコーン形
状のエミッタ108を形成する。図4(e) に示すよう
に、斜め蒸着させたAl106と不要なエミッタ材料1
07を除去する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来のFEC
では、エミッタ及びゲートの材料として、仕事関数が小
さい高融点金属、例えばMo等が用いられていた。しか
しながら従来は、Mo等の材料が、酸素原子や酸素を含
む化合物分子と、低真空中での動作時にどのような反応
をするか、又エミッタ及びゲートの材料としてどのよう
な組み合わせが最適であるかについては考察されていな
かった。本発明者らの知見によれば、前記Moは酸素と
の反応が比較的強く、表面には酸化絶縁層が容易に形成
されるため、前記FECを低真空中(10-4〜10-6To
rr)で動作させると、エミッタのMoが残留ガスや管内
の放出ガスと反応して化合物を形成してしまう。このた
め、エミッタの一部の仕事関数が大きくなって電界放出
不可能となり、エミッション電流が低下したり、動作が
不安定となりノイズが増大するといった不都合が生じて
しまう。
【0004】
【課題を解決するための手段】第1の発明の電界放出素
子は、エミッタと該エミッタの先端近傍に配置されるゲ
ートとアノードを備えた電界放出素子において、前記ゲ
ートの表面が酸素との結合力が強いTi,Crのいずれ
かで形成され、前記エミッタの先端表面を形成している
材料が前記ゲートの表面を形成している材料よりも酸素
との結合力がい材料であることを特徴とする。また、
第2の発明の電界放出素子は、前記エミッタの先端表面
が、W,Mn,Ta,Nb,TiN,TiC,Moから
選ばれた材料で形成されている。
【0005】第3の発明の電界放出素子は、エミッタと
ゲートを有する電界放出素子において、前記エミッタ
が、酸素との結合力が強い材料で形成されたエミッタベ
ースと、該エミッタベースよりも酸素との結合力が弱い
材料で前記エミッタベースの先端に形成された先端部と
から構成されている。第4の発明の電界放出素子は、エ
ミッタとゲートを有する電界放出素子において、少なく
とも前記エミッタの先端表面がW,Mn,Ta,Nb,
TiN,TiC,Moのいずれかで形成されており、該
エミッタの他の部分がTi,Crのいずれかで形成され
ている。
【0006】
【作用】エミッタとゲートとアノードを備えた電界放出
素子において、エミッタ及びアノードの表面よりも、酸
素との結合力が強い材料でゲートの表面を形成している
ので、ゲートに入射した酸素原子は堅固に捕捉され、エ
ミッタにおける酸化層の形成が抑成される。特に、エミ
ッタの先端表面よりも、前記結合力の強い材料によって
エミッタの他部分を形成すれば、エミッタの先端表面に
は酸化層がより生じにくくなる。
【0007】
【実施例】本発明者らは、ゲート及びエミッタの材料の
最適な組み合わせを考察した結果、酸素との結合力が相
対的に強い材料でゲートを形成し、前記結合力が相対的
に弱い材料でエミッタ及びアノードを形成すれば、酸素
はゲートに吸着保持されてエミッタやアノードに酸化層
が形成されるのを抑止できるのではないかと考えた。そ
して、ギブスの自由エネルギー値を参考に、各種材料の
安定度又は結合エネルギーの大小を評価し、上記考察に
適合した各電極の構成材料を実験により選定した。即
ち、ゲートを構成するのに適した酸素との結合力が強い
材料としてはTi,Crを選び、これに対してエミッタ
及びアノードを構成するのに適した前記結合力が相対的
に弱い材料としてW,Mn,Ta,Nb,TiN,Ti
Cを選定し、これらの組み合わせがゲート及びエミッタ
の材料の最適な組み合わせであることを見いだした。
尚、これらの材料から成る上記電極の作製には、真空蒸
着法やスパッタリング法等公知既存の方法を用いる事が
可能である。また、特に第2の発明の場合には、エミッ
タ先端表面材料にTiN及びTiCを用いることが有利
となる。その理由は、始めにTi材料でエミッタ形状を
形成したのち、窒素や酸素のイオン注入法や熱窒化ある
いは炭化法等により、その表面層のみをTiNまたはT
iCに変換できるからである。これにより、Tiをエミ
ッタベースとして、その上にTiN又はTiC層を形成
した二層構造のエミッタが比較的容易に形成できる。
【0008】次に、前記材料を用いた本発明の第1実施
例であるFEC1を図1により説明する。図1において
2はガラス,シリコン等からなる基板である。基板2の
上には、フォトリソグラフィ法により、0.2μm の厚さ
でITOからなるカソード電極3がストライプパターン
で形成されている。このカソード電極3の上には、CV
D法により、SiO2 からなる絶縁層4が1.0μm の厚
さで形成され、さらにその上には、Ti又はCrから成
る0.4μm 厚のゲート5が蒸着法によって形成されてい
る。このゲート5に10μm ピッチで設けられた直径1
μm の孔6と、各孔6に対応して絶縁層4に設けられた
ホール7は、エッチングで形成されたものである。そし
て、各ホール7内には、W,Mn,Ta,Nb,Ti
N,TiC,Moから選んだ任意の材料から成る円錐形
のエミッタ8が形成されている。図中9はアノードであ
り、金属又は金属薄膜、表示素子の場合には蛍光体・I
TO・ガラス基板等で形成されている。そして、これら
の各電極は、図示しない真空容器内に収納されている。
また、エミッタ8に対し、ゲート5及びアノード9には
所定の正電位が付与されるようになっている。なお、こ
のFEC1の製法のうち、特に説明しない部分は従来と
同じである。
【0009】低真空中でこのFEC1を動作させると、
エミッタ8から放射された電子は、ゲート5の孔6を経
てアノード9に到達する。この時、ゲート5はいわばゲ
ッターポンプとして働き、ゲート5に入射して物理的、
化学的に吸着した酸素原子等を堅固に捕捉する。このた
め、FEC素子内の酸素等の分圧が減少し、結果として
電子が放射されるエミッタ8の先端表面に酸化絶縁層が
形成されるのを抑止する。
【0010】また、単に、ゲート5に自然に入射した酸
素等を捕捉するだけでなく、ゲート5とアノード9の間
に適当な電圧を印加することにより、電離確率が比較的
高いと予想されるゲート5とアノード9の間の真空領域
内で酸素等の原子・分子をイオン化し、これを強制的に
ゲート5に高いエネルギで入射させて捕捉するようにし
てもよい。
【0011】次に、前記材料を用いた本発明の第2実施
例を図2により説明する。本実施例では、第1実施例の
構成を基本とするが、エミッタ18は二層構造になって
いる。即ち、Ti又はCrによってコーン形状のエミッ
タベース19が形成され、その上にはW,Mn,Ta,
Nb,TiN,TiC,Moから選んだ任意の材料を約
0.1μm の厚さに蒸着した被覆層が形成されている。
【0012】このように原子・分子との結合力が強い材
料を下地に用い、前記結合力の弱い材料を表面に用いた
構造にすれば、エミッタ18の表面に入射した前記原子
・分子はエミッタ18の表面に酸化層をつくることなく
下地層であるエミッタベース19に吸収される。言い換
えれば、エミッタ18の表面の被覆層20は常に還元さ
れた状態にある。
【0013】次に、前記材料を用いた本発明の第3実施
例を図3により説明する。本実施例では、第1実施例の
構成を基本とするが、エミッタ28は上下の二段構造に
なっている。即ち、Ti又はCrによって円錐台形状の
エミッタベース29が形成され、その上には、W,M
n,Ta,Nb,TiN,TiC,Moから選んだ任意
の材料で円錐形の先端部30が形成されている。
【0014】このように、原子に対する結合力の強い前
述した材料でエミッタ28の大部分であるエミッタベー
ス29を形成し、これに比べて結合力の弱い前述した材
料でエミッタ28の先端部30だけを形成すれば、該先
端部30に入射した前記原子・分子は酸化層を作ること
なくエミッタベース29の材料に吸着される。又は、エ
ミッタベース29に入射した前記原子・分子が先端部3
0に拡散し、そこで酸化層が形成されるのを抑制する。
【0015】以上説明した各実施例はSpindt型のFEC
に関するものであったが、本発明は横型(平面型)のF
ECにも適用できる。また、第2,第3実施例は、第1
実施例を基本構造としていたが、第2,第3実施例にお
けるエミッタ18,28の構造はそれ単独でも本文記載
の効果を十分有している。
【0016】
【発明の効果】本発明の電界放出素子によれば、エミッ
タの先端表面に入射した酸素原子や酸素を含む分子等は
原子等との結合力がより強い材料で形成されたゲート及
びエミッタベースに吸引吸着される。従って電子が放出
されるエミッタの先端表面は清浄な状態に常に保たれ、
酸化絶縁層の形成が抑止される。これによって電界放出
素子のエミッション特性は、短時間で低下することがな
く安定したものとなり、またノイズも減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す構成図である。
【図2】同第2実施例の要部拡大断面図である。
【図3】同第3実施例の要部拡大断面図である。
【図4】従来の電界放出素子の製造工程の一例を示す図
である。
【符号の説明】
1…電界放出素子(FEC)、5…ゲート、8,18,
28…エミッタ、9…アノード、19,29…エミッタ
ベース、20…被覆層、30…先端部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 茂生 千葉県茂原市大芝629 双葉電子工業株 式会社内 (72)発明者 渡辺 照男 千葉県茂原市大芝629 双葉電子工業株 式会社内 (72)発明者 宮森 誠 千葉県茂原市大芝629 双葉電子工業株 式会社内 (72)発明者 西村 則雄 千葉県茂原市大芝629 双葉電子工業株 式会社内 審査官 田村 爾 (56)参考文献 特開 昭51−72278(JP,A) 特開 昭51−25063(JP,A) 特開 平4−6728(JP,A) 特開 昭63−221528(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エミッタと該エミッタの先端近傍に配置
    されるゲートとアノードを備えた電界放出素子におい
    て、 前記ゲートの表面が酸素との結合力が強いTi,Crの
    いずれかで形成され、 前記エミッタの先端表面を形成している材料が前記ゲー
    トの表面を形成している材料よりも酸素との結合力が
    い材料であることを特徴とする電界放出素子。
  2. 【請求項2】 前記エミッタの先端表面が、W,Mn,
    Ta,Nb,TiN,TiC,Moから選ばれた材料で
    形成されている請求項1記載の電界放出素子。
  3. 【請求項3】 エミッタとゲートを有する電界放出素子
    において、 前記エミッタが、酸素との結合力が強い材料で形成され
    たエミッタベースと、該エミッタベースよりも酸素との
    結合力が弱い材料で前記エミッタベースの先端に形成さ
    れた先端部とから構成されている電界放出素子。
  4. 【請求項4】 エミッタとゲートを有する電界放出素子
    において、 少なくとも前記エミッタの先端表面がW,Mn,Ta,
    Nb,TiN,TiC,Moのいずれかで形成されてお
    り、 該エミッタの他の部分がTi,Crのいずれかで形成さ
    れている電界放出素子。
JP3037794A 1991-02-08 1991-02-08 電界放出素子 Expired - Lifetime JP2719239B2 (ja)

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