JP2717009B2 - 磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法

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【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> この発明は磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造
方法に係わり、特に磁束密度が高く、鉄損の低い無方向
性電磁鋼性の製造方法に関するものである。
<従来の技術> 無方向性電磁鋼板は各種のモーターなどの回転機や変
圧器,安定器などの静止器の鉄心材料に用いられ、これ
らの電気機器の小型化,高効率化には、使用される電磁
鋼板の磁束密度の向上および鉄損の低減が必要である。
ところで、無方向性電磁鋼板の磁性を向上させるため
には、冷間圧延前の素材の結晶粒径を大きくすればよい
ことが知られている。
例えば、本発明者らは先に特開昭58−204126号公報
で、熱間圧延において、圧延終了温度を600〜700℃の低
温にし、かつ捲取を500℃以上の温度範囲で実施し、つ
いで前記熱延鋼帯をA3変態点温度以下の温度で30秒以上
15分間以下の時間焼鈍することにより、冷間圧延前の素
材の結晶粒を粗大化して磁気特性の向上を図る方法を開
示した。この方法は、熱間圧延終了温度とつづく捲取温
度をある適正な範囲に制御することにより、微細な結晶
組織を有する熱延鋼帯を得、ついで、この熱延鋼帯をA3
変態点温度以下で焼鈍することにより、結晶粒径を粗大
化し、その結果、磁気特性の向上を図るものである。た
だしこの方法における熱延鋼帯焼鈍の冷却速度は特に制
御せず大気放冷(10℃/秒)であった。
<発明が解決しようとする課題> 本発明の目的は先の特開昭58−204126号公報の発明の
特徴を有利に活用し、素材のC量と熱延鋼帯焼鈍におけ
る冷却速度を検討することにより、単に冷間圧延前の結
晶粒を粗大化させた場合よりも、さらに優れた磁束密度
を有するフルプロセスおよびセミプロセス無方向性電磁
鋼板の製造方法を提案することである。
<課題を解決するための手段> すなわち、本発明は、低炭素鋼スラブを熱間圧延し、
ついで、この熱延鋼帯に焼鈍を施し、1回または中間焼
鈍を挟む2回の冷間圧延により製品厚としたのち焼鈍を
施す無方向性電磁鋼帯の製造方法において、該スラブの
組成を重量%で、C:0.005〜0.020%,SiもしくはSi+Al:
1.5%以下,Mn:1.0%以下,P:0.20%以下,SbおよびSnの何
れか1種または2種の合計が0.10%以下を含み、残部実
質的にFeよりなるものとし、該熱間圧延工程における圧
延終了温度を600〜700℃、捲取温度を500℃以上とし、
ついで、該熱延鋼帯をA3変態点温度以下で30秒〜15分保
持し、ついでAr3変態点温度からAr1変態点温度までを2
〜10℃/秒の速度で冷却するか、もしくはAr1変態点温
度以上でそれより50℃の範囲内に5〜30秒保持するかし
て、ついでAr1変態点温度から100℃までを10℃/秒以上
の速度で冷却することを特徴とする磁気特性の優れた無
方向性電磁鋼板の製造方法である。
<作用> 次に本発明を実験結果に基づいて説明する。
重量%で、C:0.018%,Si:0.33%,Mn:0.25%,P:0.08
%,S:0.004%,Al:0.0007%,Sb:0.01%を含み残部実質的
にFeよりなる溶鋼から造られたスラブを1200℃に加熱
し、熱間圧延終了温度を670℃の低温にし、かつ捲取温
度を580℃にして捲取り2.3mm厚さの熱延鋼帯とした。そ
の後、熱延鋼帯焼鈍を施すに際し、A3変態点温度950℃
より40℃低い910℃で60秒間保持し、その後の冷却過程
において、Ar3変態点温度からAr1変態点温度までを冷却
速度2〜40℃/秒で、またAr3変態点温度からAr1変態点
温度までの範囲での保持温度を(Ar1変態点温度+10
℃)から(Ar1変態点温度+75℃)まで変えた後、Ar1
態点温度から100℃までの冷却速度を2℃/秒から水冷
まで変更した熱延鋼帯焼鈍を施した。なお、Ar3変態点
温度は872℃、Ar1変態点温度は807℃であった。
次に、これらの熱延鋼帯を酸洗したのち、1回の冷間
圧延で0.50mm厚さに仕上げ、引続き湿潤雰囲気で800℃7
5秒の脱炭と再結晶を兼ねた連続焼鈍を施してフルプロ
セス製品を造った。
これらの製品の磁束密度と熱延鋼帯焼鈍での冷却速度
条件の関係を第1図に示す。この図から分かるように熱
延鋼帯の冷却過程において、Ar3変態点温度からAr1変態
点温度までを2〜10℃/秒の冷却速度で冷却するか、も
しくはAr1変態点温度から(Ar1変態点温度+50℃)の範
囲で保持するかして、ついでAr1変態点温度から100℃ま
でを10℃/秒以上の冷却速度で冷却し製品の磁束密度B
50がその他の冷却条件で処理した製品のものより高いこ
とが明らかである。
以上のように熱延鋼帯焼鈍の冷却過程において、Ar3
変態点温度からAr1変態点温度までを徐冷するかまたはA
r1変態点温度以上で50℃の範囲内で保持するかして、つ
いでAr1変態点温度から100℃までを急冷した場合に磁束
密度B50が著しく向上するのは、熱間圧延での圧延終了
温度を低温にし、かつその捲取温度を500℃以上にした
熱延鋼帯に焼鈍を施すことによる結晶粒の粗大化に加え
て、その熱延鋼帯焼鈍の冷却過程において、固溶Cが増
量したことによる集合組織の改善が図られたためと推定
される。
つぎに、本発明において素材の化学成分を限定した理
由について説明する。本発明は冷間圧延前の結晶粒の粗
大化に加えて固溶Cの有効活用をはかるものであり、C
量が0.005wt%(以下単に%で示す)未満だとその効果
が少なくなり、またC量が0.020%を超えても固溶Cは
増えないことをおよび最終焼鈍時に脱炭不良となり、非
時効化に対して不利となるからCは0.005〜0.020%とし
た。
SiもしくはSi+Alが1.5%を超えると本発明による熱
間圧延条件では微細な結晶粒の熱延鋼帯が得られず、つ
ぎの熱延鋼帯焼鈍で結晶粒が粗大化しないので、Siもし
くはSi+Alが1.5%以下に限定した。
Mnは脱酸剤として、またはSによる熱間脆性を制御す
るために添加されるが、1.0%を超えるとコストの上昇
を招くのでMnは1.0%以下とする。
Pは電磁鋼板の硬度を高め、打抜性を向上させるため
に添加されることがあるが、0.20%より多いと板が脆く
なるので0.20%以下にする必要がある。
SbおよびSnは集合組織改善により磁束密度を向上させ
るが、SbおよびSnの1種または2種の合計が0.10%を超
えるとかえって磁気特性が劣化させるので、いずれか単
独または併用する場合でも含有量は0.10%以下に限定し
た。
本発明における熱間圧延条件は熱間圧縮延終了温度60
0℃〜700℃、捲取温度を500℃以上に限定したが、熱間
圧縮延終了温度700℃を超えると、たとえば捲取温度を5
00℃以上にしても、微細な結晶粒が得られず、つぎの熱
延鋼帯焼鈍による結晶粒の粗大化が図れない。また熱間
圧縮延終了温度を600℃未満にすると、圧延機の負荷が
大きくなり圧延が困難になるばかりでなく、必然的に捲
取温度も低くなり捲取後の自己焼鈍による再結晶が起こ
らず微細な再結晶粒を得ることができない。また、熱間
圧延終了温度を600℃未満とし、その結果、捲取温度も
低くなり自己焼鈍による再結晶が起こらなくても該熱延
鋼帯に別途焼鈍を施して微細な再結晶粒組織にした後、
A3変態点温度以下の温度で熱延鋼帯焼鈍を実施すれば、
結晶粒の粗大化は可能であるが、この方法は生産価格面
で不利となる。したがって、熱間圧延終了温度は600℃
〜700℃の温度範囲に限定した。また熱間圧延後の捲取
温度は500℃未満になると熱エネルギー不足により再結
晶は起こらないことから捲取温度の下限は500℃とし
た。
熱延鋼帯焼鈍の下限温度は特に限定しなかったが、比
較的短時間なのでA3変態点直下付近の温度が好適であ
る。保持時間は30秒未満では結晶粒成長が不足であり、
15分超では結晶粒成長は十分であるが経済的に不利なの
で30秒〜15分の間に限定した。なお、熱間圧延終了温度
と捲取温度の制御により、熱延鋼帯の結晶粒を微細化し
た後つぎの熱延鋼帯焼鈍により結晶粒が粗大化するのは
微細粒中のやや大きい結晶粒が核となり、他の微細なマ
トリックス粒を喰って2次再結晶的な異常粒成長が起こ
ることによるものと推定される。
次に熱延鋼帯焼鈍での冷却過程でAr3変態点温度からA
r1変態点温度までの冷却速度を2〜10℃/秒に限定する
理由は、冷却速度は遅いほど固溶C量が増すので、2℃
/秒より遅くても構わないが2℃/秒より遅いと生産性
が悪くなる。また10℃/秒を超えると固溶C量が少なく
なり、集合組織改善による磁性向上がなくなるからであ
る。またAr1変態点温度異常でそれより50℃の範囲内に
5〜30秒保持する理由は、固溶Cを増すためであるがAr
1変態点未満だと固溶C量が減り、また同じくAr1変態点
温度+50℃を超えても固溶C量が減り、固溶Cの効果が
少なくなるためである。またその保持時間を5秒未満に
すると固溶C量が不足し、30秒を超えると生産性が悪く
なったり、設備が長大となり不経済になるためである。
つぎにAr1変態点温度から100℃までを10℃/秒以上の速
度で冷却する理由は、10℃/秒未満だとCの過飽和度が
下がり、固溶Cの効果が少なくなるためである。なお、
熱延鋼帯焼鈍における冷却過程でAr1変態点温度からの
急冷の下限温度を100℃としたのは、100度未満の温度域
まで急冷しても固溶Cの利用による磁束密度の向上が認
められなかったため急冷の下限温度を100℃とした。
<実施例> 実施例1 転炉で溶製し、真空脱ガス処理した溶鋼を連続鋳造
し、A〜Hまでのスラブを造った。それらの化学成分は
C:0.017%,Si:0.17%,Mn:0.26%,P:0.08%,Al:0.0007
%,Sb:0.025%,Sn:0.02%を含み残部実質的にFeであっ
た。この素材のA3変態点温度は956℃で、Ar3変態点温度
は877℃、Ar1変態点温度は802℃であった。
上記各スラブを1250℃に加熱し、第1表に示した如く
熱間圧延終了温度と捲取温度を変えて2.3mm厚さの熱延
鋼帯とし、つぎに同じく第1表に併記した熱延鋼帯焼鈍
条件を変更して処理した。しかるのち、1回の冷間圧延
で0.50mm厚さに仕上げ、引続いて、790℃80秒の脱炭兼
再結晶焼鈍を施して製品にした。これらの製品および75
0℃2Hrの歪取焼鈍後の磁性をエプスタイン試片で測定し
た結果を第1表に併記した。これらから本発明の適合例
のように、熱間圧延終了温度,捲取温度および熱延鋼帯
焼鈍における冷却過程を制御することにより、冷間圧延
前の粗粒化と固溶Cの有効活用が図れ、とくに磁束密度
B50が向上することが明らかである。
実施例2 実施例1と同じ方法でC:0.013%,Si:1.1%,Mn:0.50
%,P:0.07%,Al:0.0008%,Sb:0.03%を含み残部実質的F
eよりなるスラブI〜Mを造った。これらのAr3変態点温
度は980℃で、またAr3変態点温度は904℃、Ar1変態点温
度は843℃であった。これらのスラブを第2表に示した
熱延条件で2.0mm厚さの熱延鋼帯とし、その後熱延鋼帯
焼鈍を同じく第2表に示した条件で施し、しかるのち、
1回の冷間圧延で0.50mm厚さに仕上げ、引続いて湿潤雰
囲気で880℃90秒の脱炭兼再結晶焼鈍を施して製品にし
た。これらの製品の磁気特性を第2表に併記した。これ
らから本発明の適合例は比較例に比し磁束密度が優れて
いることが明らかである。
実施例3 実施例1と同様にC:0.020%,Si:0.25%,Mn:0.25%,P:
0.08%,Al:0.0007%,Sn:0.01%を含み残部実質的にFeよ
りなるスラブN〜Rを造った。これらのAr3変態点温度
は960℃で、またAr3変態点温度は880℃、Ar1変態点温度
は796℃であった。これらのスラブを第3表に示す熱間
圧延条件で2.3mm厚さの熱延鋼帯とした。つづいて同じ
く第3表に示すような熱延鋼帯焼鈍を施し、引続き1回
目の冷間圧延により0.543mm厚さに圧延したのち、湿潤
雰囲気で750℃80秒の焼鈍を施し、その後2回目の冷間
圧延により0.50mm厚さに仕上げてセミプロセス製品とし
た。これらの製品の750℃2Hrの歪取焼鈍後の磁気特性を
第3表に示した。これらから、本発明の適合例は比較例
より優れた磁束密度B50が得られることが明白である。
<発明の効果> 以上の如く、熱間圧延での圧延終了温度を600℃〜700
℃、その捲取温度を500℃以上にし、この熱延鋼帯焼鈍
をA3変態点温度以下で30秒〜15分保持し、ついでAr3
態点温度からAr1変態点温度までを2〜10℃/秒の速度
で冷却するか、もしくはAr1変態点温度以上でそれより5
0℃の範囲内に5〜30秒保持するかして、ついでAr1変態
点温度から100℃までを10℃/秒以上の冷却速度で冷却
することにより、冷間圧延前の結晶粒の粗大化と固溶C
の有効利用による集合組織の改善により優れた磁束密度
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は熱延鋼帯焼鈍の冷却過程における冷却速度の磁
束密度に及ぼす影響を示すグラフである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低炭素鋼スラブを熱間圧延し、ついで、こ
    の熱延鋼帯に焼鈍を施し、1回または中間焼鈍を挟む2
    回の冷間圧延により製品厚としたのち焼鈍を施す無方向
    性電磁鋼帯の製造方法において、該スラブの組成を重量
    %で、C:0.005〜0.020%,SiもしくはSi+Al:1.5%以下,
    Mn:1.0%以下,P:0.20%以下,SbおよびSnの何れか1種ま
    たは2種の合計が0.10%以下を含み、残部実質的にFeよ
    りなるものとし、該熱間圧延工程における圧延終了温度
    を600〜700℃、捲取温度を500℃以上とし、ついで、該
    熱延鋼帯をA3変態点温度以下で30秒〜15分保持し、つい
    でAr3変態点温度からAr1変態点温度までを2〜10℃/秒
    の速度で冷却するか、もしくはAr1変態点温度以上でそ
    れより50℃の範囲内に5〜30秒保持するかして、ついで
    Ar1変態点温度から100℃までを10℃/秒以上の速度で冷
    却することを特徴とする磁気特性の優れた無方向性電磁
    鋼板の製造方法。
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