JP2716840B2 - 高光沢ステンレス鋼板の冷間圧延方法 - Google Patents

高光沢ステンレス鋼板の冷間圧延方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ワークロール表面の改質により、表面光沢
性に優れたステンレス鋼板を能率よく冷間圧延する方法
に関するものである。
[従来の技術] 鋼板の冷間圧延に用いられるワークロールは耐摩耗性
に優れていることが要求される。そのためワークロール
の材質には、一般に、硬度の高い材質が選定される。近
年では、硬度の高い材質として、セラミックもしくは金
属とセラミックを複合したサーメット材質が選定され、
圧延ロールにも使用されるようになりつつある。セラミ
ックもしくはサーメットを金属母材に接合し、複合化し
て材料の機能を高める表面改質技術、例えば、爆発溶射
法、イオンプレーティング法(「プレーティングとコー
ティング」、Vol.6,No1,(1986),2−10)、複合メッキ
(例えば、特公昭56−18080号公報)などの開発が行わ
れており、耐摩耗性や潤滑性などの機能を高めた表面を
構成する技術が研究されている。
また、高光沢ステンレス鋼板を製造する場合、圧延材
料に転写されるワークロールの粗度を小さくして冷間圧
延する方法や、できるだけ粘度の小さいものを用いるこ
とによって、ワークロールと圧延材料の摩擦面に導入さ
れる潤滑油量を減らして冷間圧延する方法がある。ま
た、表面品質の管理基準が厳しいステンレス鋼板におい
ても、生産性を高めるためにタンデム圧延機を用いて冷
間圧延する方法もある。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記の技術を用いて高光沢ステンレス
鋼板を冷間圧延によって製造する場合、ロール粗度を小
さくしすぎると摩擦係数が低下し、スリップ等の問題か
ら圧延が出来なくなることがある。また、粘度の低い潤
滑油を用いて圧延を行うと、タンデム圧延機で高速圧延
を行った際に油膜切れが発生しやすく、焼付きが発生し
製品の表面品質を悪化させる。そのため、低速で圧延し
なければならず生産性が著しく低下する。一般に、ステ
ンレス鋼板の表面光沢と圧延潤滑特性(圧延安定性)と
は相反する性質であり、現状の潤滑油で表面光沢性と潤
滑特性の両方の特性に優れたものは開発されていない。
そこで、本発明では、これらの問題点を解決するため
に、潤滑油の性能に関わらず、ワークロールの表面改質
により、ステンレス鋼板の表面光沢を向上し、かつ、安
定した圧延を可能にするステンレス鋼板の冷間圧延方法
を提供しようとするものである。
[課題を解決するための手段] 本発明は、ワークロールの表面に、Ni、Ni−P、Cu、
硬質Cr、Fe、CoもしくはNi−Coをマトリックスとして、
その中にマトリックスよりもビッカース硬度で500以上
の固体微粒子を1種類もしくは2種類以上分散させ、か
つ、固体微粒子の総分散量が複合メッキ皮膜全体に対し
て10vol%以上60vol%以下であるような複合メッキを施
し、そのワークロールをタンデム圧延機の最終スタン
ド、もしくは最終スタンドと最終スタンドの前スタンド
に用いて、水、もしくは水に鉱物油、天然油脂、合成エ
ステルまたはこれらの2種類以上の混合物を分散させた
エマルジョンを吹き付けながら冷間圧延することを特徴
とする。
一般に冷間圧延したステンレス鋼板の表面光沢は、表
面に分布しているオイルピットと呼ばれるくぼみが多く
分布しているほど低下する傾向にある。一般に冷間圧延
でよく用いられる鍛鋼ロールをワークロールとして、ス
テンレス鋼板を冷間圧延したときに形成されるオイルピ
ットは、圧延するときに用いる潤滑油がロールバイト
(圧延ロールと鋼板の摩擦面)内に引き込まれることに
よって鋼板表面上に形成され、使用するワークロールの
粗度が粗いほど、また潤滑油の濃度が高いほど、鋼板の
表面上に多く形成される。
ところが本発明における複合メッキを施したワークロ
ールを用いて圧延したステンレス鋼板は、鍛鋼ロールを
用いて同じ条件で圧延したステンレス鋼板よりも、表面
に形成されるオイルピットの分布量が少なく、表面光沢
性に優れている。第1図に同じ圧延条件で同じ材料を、
鍛鋼ロールおよび本発明第1項記載の複合メッキを施し
たワークロールで冷間圧延したときの、ステンレス鋼板
表面に形成される単位面積当りオイルピットが占める面
積割合の違いを比較して示す。複合メッキロールを用い
て圧延する方が、鍛鋼ロールを用いて圧延するよりもオ
イルピットの占める割合が小さい。この効果は、ロール
の表面にマトリックスメッキよりもビッカース硬度で50
0以上硬い固体微粒子が分布しているため引き起こされ
る。マトリックスメッキ皮膜の硬度と分散させた固体微
粒子の硬度の差と、その複合メッキを施したワークロー
ルで圧延した鋼板の表面に形成される単位面積当りに占
めるオイルピットの面積割合との関係を第2図に示す。
マトリックスメッキ皮膜の硬度と分散させた固体微粒子
の硬度との差が、ビッカース硬度で500以上ある複合メ
ッキを施したワークロールを用いないと、鍛鋼ロールよ
りもオイルピットの面積割合は小さくならず、表面光沢
の向上は期待できない。
また、本発明の方法を用いると、従来の潤滑油よりも
粘度の高いものを用いて冷間圧延しても、現状のステン
レス鋼板の表面光沢の管理基準を満足することができ
る。従って、従来の圧延速度よりも高速で圧延しても、
焼付きが発生せず安定した圧延を行うことができる。タ
ンデム圧延機でステンレス鋼板を圧延する場合、鋼板の
表面光沢に大きく影響するスタンドは、最終スタンドお
よび最終スタンドの前スタンドである。従って、本発明
の冷間圧延方法をタンデム圧延機に適用する場合、前ス
タンドに適用する必要はなく、最終スタンドもしくは最
終スタンドとその前スタンドに適用するだけでよい。
一方、ワークロールに施した複合メッキ皮膜中の固体
微粒子の分散量によっても、そのワークロールを用いて
圧延したステンレス鋼板の表面光沢は異なる。分散量が
複合メッキ皮膜全体に対して10vol%未満であると、鍛
鋼ロールで圧延した鋼板とほとんど同じ表面光沢の鋼板
しか得られない。また、分散量が複合メッキ皮膜全体に
対して60vol%を超えると、分散させた固体微粒子をマ
トリックスメッキで支えることができず、ロールとして
使用するのに必要な耐摩耗性を確保できない。
[実施例] (実施例1) 試験用2Hi冷間圧延機(ワークロールの直径:φ400m
m、バレル長100mm)のワークロールにNi−P+SiC複合
メッキを施し、鉱油系の潤滑油を3%エマルジョンにし
て用い、ステンレス鋼板(SUS430、板厚3.1mm)を圧下
率20%、圧延速度500m/minで1パス圧延を行った。複合
メッキを形成させるためのメッキ浴には、スルファミン
酸ニッケル60%液830g/l、塩化ニッケル15g/l、ホウ酸4
5g/l、サッカリンソーダ3g/l、SiC(平均粒径2μm)1
50g/lの混合液を用い、不活性ガスによる気体攪拌によ
って固体微粒子の凝集を防ぎながら複合メッキを行う。
メッキ浴の温度は57℃、pHは4.0、電流密度は20A/dm3
した。こうして圧延したSUS430の表面光沢度を測定した
ところ、第3図に示すように、従来の鍛鋼ロールで圧延
したSUS430よりも表面光沢が向上し、かつ、第4図に示
すように圧延負荷は従来の鍛鋼ロールとほとんど同じで
ある。
(実施例2) 実施例1に記載したものと同じ複合メッキを施したワ
ークロールで、4パスの連続圧延を行った。各パスの圧
下率は20%、圧延速度はロール周速度で500m/min、圧延
材料はSUS430(初期板厚3.2mm)を用いた。1パスおよ
び2パス目には鍛鋼ロールを用いた冷間圧延方法で、3
パスおよび4パス目には本発明の冷間圧延方法で圧延を
行った。その結果、1パスから4パス目まですべて鍛鋼
ロールを用いた冷間圧延方法で製造したSUS430の表面光
沢よりも、3パス及び4パス目に本発明を用いて製造し
たSUS430の表面光沢の方が、約1.5倍から2倍優れてい
る。
[発明の効果] 本発明により、同じスケジュールで圧延する場合、従
来の鍛鋼ロールで圧延するよりも光沢性に優れたステン
レス鋼板が得られるため、パス回数の低減による生産性
の向上や、表面に分散させたマトリックスよりも硬い固
体微粒子のため、鍛鋼ロールよりも耐摩耗性に優れてお
り、コストの低減にも効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
第1図は同じ圧延条件で同じ材料を同じ潤滑条件で、鍛
鋼ロールと本発明第1項記載の複合メッキロールとで冷
間圧延したときの、ステンレス鋼板表面に形成される単
位面積当りオイルピットが占める面積割合の違いを示す
グラフ。第2図はマトリックスメッキ皮膜の硬度と分散
させた固体微粒子の硬度の差と、そのような複合メッキ
を施したワークロールで圧延した鋼板の表面に形成され
る単位面積当りに占めるオイルピットの面積割合の関係
を示すグラフ。第3図は本発明の冷間圧延を行うことに
よって得られたSUS430の表面光沢度と鍛鋼ロールで圧延
して得られたSUS430の表面光沢度を比較したものであ
る。第4図は本発明の冷間圧延を行ったときの圧延荷重
と鍛鋼ロールで圧延したときの圧延荷重を比較したもの
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−33108(JP,A) 特開 平2−34203(JP,A) 特開 平2−92405(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ワークロールの表面に、Ni−Pをマトリッ
    クスとして、その中にマトリックスよりもビッカース硬
    度で500以上の固体微粒子を1種類もしくは2種類以上
    分散させ、かつ、固体微粒子の総分散量が複合メッキ皮
    膜全体に対して10vol%以上60vol%以下であるような複
    合メッキを施し、そのワークロールをタンデム圧延機の
    最終スタンド、もしくは最終スタンドと最終スタンドの
    前スタンドに用いて、水、もしくは水に鉱物油、天然油
    脂、合成エステルまたはこれらの2種類以上の混合物を
    分散させたエマルジョンを吹き付けながら冷間圧延する
    ことを特徴とする高光沢ステンレス鋼板の冷間圧延方
    法。
  2. 【請求項2】ワークロールの表面に、形成させる複合メ
    ッキ皮膜のマトリックスメッキを硬質Crとすることを特
    徴とする請求項1記載の高光沢ステンレス鋼板の冷間圧
    延方法。
  3. 【請求項3】ワークロールの表面に、形成させる複合メ
    ッキ皮膜のマトリックスメッキをCu、Ni、CoもしくはNi
    −Coとすることを特徴とする請求項1記載の高光沢ステ
    ンレス鋼板の冷間圧延方法。
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