JP2996148B2 - 冷間圧延用ワークロールとその製造方法 - Google Patents

冷間圧延用ワークロールとその製造方法

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JP2996148B2
JP2996148B2 JP7226775A JP22677595A JP2996148B2 JP 2996148 B2 JP2996148 B2 JP 2996148B2 JP 7226775 A JP7226775 A JP 7226775A JP 22677595 A JP22677595 A JP 22677595A JP 2996148 B2 JP2996148 B2 JP 2996148B2
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安広 神保
明 小豆島
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関東特殊製鋼株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間圧延用ワーク
ロール、特に普通鋼、ステンレス鋼などの鋼板の冷間圧
延用ワークロールおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の冷間圧延用ワークロールとして
は、その要求性能から言えば耐摩耗性が最も重要視され
ているが、その使用面からは研削性も必要な性能であ
る。しかし、一般に耐摩耗性と研削性とは相反する特性
であって両者を共に満足させることは困難と言われてい
る。
【0003】一方、具体的材質の面からは、C :0.8
%、Cr:5%組成の5%Cr鋼が多用されている。近年、
耐摩耗性指向からセミハイス鋼 (例えば、C:1%、C
r:6%、Mo:3%、V:1%) 、高クロム鋼 (例え
ば、C:1%、Cr:10%、Mo:1%) が使用されつつあ
る。
【0004】また、ロールの製造方法について言えば、
溶製法によりロールインゴットを製造する方法が一般的
であり、このロールインゴットにその後、熱間鍛造、機
械加工、熱処理などを施工して、ワークロール製品とし
ている。その他の製造方法としては、粉末を原料として
使用し焼結あるいは溶射などでロールインゴットを得る
方法もある。
【0005】ところで、今日では生産性向上を目的に圧
延速度の増大が1つの大きな目標となっている。しかし
ながら、このような今日的要請に対し従来技術には次の
ような問題点が見られるのである。
【0006】すなわち、タンデムミルおよび多段ミルに
おける冷間圧延では下記条件で冷間圧延を行う場合、焼
付き、フリクション・ピックアップ、ヒートストリーク
などと呼ばれる圧延材表面欠陥 (以下、焼付きという)
が発生することがあり、かかる焼付きは高圧下・高速圧
延条件ほど発生しやすいため、生産性向上のネックとな
っている。
【0007】(1) 普通鋼薄板では圧延速度1500〜2000 m
/min以上で焼付きが発生する。 (2) ステンレス鋼板 (特にSUS430材) をタンデム圧延機
で冷間圧延すると圧延速度300m/min付近が焼付きが生じ
ない限界であり、多段ミルでは1000 m/minが限界であ
る。
【0008】従来技術にあっても、かかる問題に対して
は、次のような対応策が考えられ、また実際に行われて
きたが、十分とは言えなかった。まず、当然のことなが
ら、圧下率、圧延速度などの圧延条件を緩和することが
考えられるが、その場合には生産性が犠牲となることは
避けられなかった。
【0009】一方、圧延油の潤滑性を改善すべく、例え
ば、ベース油として合成エステル、または各種添加剤を
使用することが提案されているが、そのような対策の効
果は不十分であり、場合により設備投資が必要なことも
あり、有効な解決手段とは言えない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】かくして、本発明の目
的は、普通鋼薄板、ステンレス鋼板などをタンデムミル
あるいは多段ミルを用いて高速で冷間圧延する場合に発
生する焼付きを防止し、生産性向上を図ることのできる
冷間圧延技術を開発することである。
【0011】さらに具体的には、普通鋼薄板で2500m/mi
n 以上、タンデムミルによるステンレス鋼板で500m/min
以上の圧延速度を確保でき、また新たな設備投資を要す
ることなく、従来技術の冷間圧延で問題であった焼付き
を防止でき、さらに耐摩耗性、研削性を併せて備えた冷
間圧延用ロールとその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を解決すべく種々検討を重ねところ、従来技術にあっ
ては焼付き防止に関してロール側からの対応はほとんど
皆無であって、ロールの耐焼付き性などの潤滑性能に関
する研究例自体非常に少ないことを知り、ロールからの
解決策の研究、開発を行った。
【0013】その結果、鍛造・プレス加工用工具では、
CVD, PVD, TRD などの各表面処理プロセスによりチタン
またはバナジウムに代表される金属の炭化物あるいは窒
化物を形成した表面改質材や超硬合金、セラミックスな
ど良好な潤滑性をも兼備した工具材が開発されている
が、圧延用ロールへの応用を想定した場合、製造の難度
および高コストなどの問題から実用化は極めて困難であ
るばかりか、研削性の観点からも実用的でないことが判
明した。
【0014】そこで、本発明者らは、従来の手法とは異
なったアプローチによって、その解決を図るべく、さら
に検討を重ね、従来の表面改質材に代えてロール材質の
本来含有する炭化物を利用することに着目し、それらの
炭化物の分散形態を制御することで、十分な研削性およ
び耐摩耗性を確保したままで、ロールの耐焼付き性が大
幅に改善されることを知り、本発明を完成した。
【0015】ここに、本発明は、ロール表面における炭
化物の面積をSc としたとき相当粒径√Scが1μm以上
の炭化物の粒間間隔が平均値で50μm以下であり、か
つ、炭化物の最大相当粒径が20μm以下である炭化物分
散特性を備えた鉄基合金から少なくとも外層を構成した
ことを特徴とする耐焼付き性にすぐれた冷間圧延用ワー
クロールである。
【0016】別の面からは、本発明は、重量%で、C:
1.0 〜3.5 %、Cr含有量がC比 (Cr/C) で4〜20の鉄
基合金組成を有し、かつ、上記炭化物分散特性を備え、
より詳述すればM7C3炭化物を有する鉄基合金から少なく
とも外層を構成した耐焼付き性にすぐれた冷間圧延用ワ
ークロールである。
【0017】さらに別の面からは、本発明は、重量%
で、C:0.7 〜2.5 %、Cr:3.0 〜7.0 %、Mo:1.0 〜
10%、V:0.5 〜7.0 %、Co:15%以下、W:20%以
下、残部Feおよび不可避不純物から成り、上記炭化物分
散特性を備え、より詳述すればMC炭化物とM6C 炭化物を
有する鉄基合金から少なくとも外層を構成した耐焼付き
性にすぐれた冷間圧延用ワークロールである。
【0018】さらに別の面からは、本発明は上述のいず
れかの合金組成を有するように配合された原料粉末から
粉末冶金法でロールのインゴットを製造した後、700 ℃
以上、固相温度以下に10時間以上保持し、より詳述すれ
ばM7C3炭化物もしくはMC炭化物とM6C 炭化物を生成、凝
集させることを特徴とした上記炭化物分散特性を備えた
鉄基合金から少なくとも外層を構成した耐焼付き性にす
ぐれた冷間圧延用ワークロールの製造方法である。
【0019】
【発明の実施の形態】このように、本発明によれば、耐
焼付き性は、焼付き停止作用のある粒径 (面積Scから求
めた相当粒径√Sc) 1μm以上の炭化物を有し、それら
の炭化物の粒間間隔を平均値で50μm以下とすることで
改善し、一方、研削性は、炭化物の相当粒径を20μm以
下とすることで確保するのである。そしてこのような炭
化物分散特性から十分な耐摩耗性が確保されるのであ
る。
【0020】ここに、炭化物の面積Scは、ロール表面を
検査面として画像解析装置を用いて求めることができ
る。平均粒径ではなく相当粒径によって炭化物分散特性
を規定するのは、耐焼付き性は表面性状、特に表面潤滑
作用によって規定されるからであり、研削性の良否は炭
化物粒の大きさに左右されるからである。
【0021】本発明において上述のような炭化物分散形
態が実現される限り、炭化物の量は特に規定されない
が、一般にロール用材質は、炭素含有量が0.4 〜4%で
あり、それに相当する量の炭化物を有しており、本発明
にあってはそのように通常含まれる量の炭化物の分散形
態を制御することで従来相反する特性と考えられていた
耐摩耗性と研削性を共に満足させながら耐焼付き性を改
善しようとするのである。
【0022】この点、従来の冷間圧延用ロールにあって
は、例えば、前記のセミハイス、高クロム鋼の溶製ロー
ルでは、粒間間隔が平均で80μm以上であり、耐焼付き
性が不十分であるばかりか、炭化物の最大相当粒径も20
μmを越え、研削性にも問題がある。このような粗大炭
化物が粗に分散している炭化物分散特性は溶製法を採用
する限り不可避と考えられる。一方、これらの配合組成
の粉末を原料として粉末冶金法で製造したとすれば、炭
化物の最大相当粒径を20μm以下とするロールを製造す
ることができるが、逆に相当粒径が1μm未満の炭化物
が主となってしまい、『相当粒径1μm以上の炭化物の
粒間間隔50μm以下』という炭化物分散特性を満足でき
ず、焼付き抑制効果が小さい。
【0023】ここで、本発明において炭化物の相当粒径
を上述の範囲に限定した理由についてまとめて述べれば
次の通りである。圧延用ロールに含まれる炭化物の一般
的役割は、基地組織よりも硬さが高い故に耐摩耗性を高
めることにある。しかし、本発明ではこの性質とは全く
異なった観点、すなわち、耐焼付き性の面から、ロール
の炭化物に注目した。
【0024】冷間圧延の際、圧延材とロールとは局部的
に直接接触する状態にあり、圧延材のロール表面への移
着、いわゆる焼付きがしばしば発生する。ここで焼付き
発生のメカニズムをロールのミクロ組織から説明する
と、圧延材との親和力が強い基地組織から焼付きが開始
し、炭化物は、その成長を停止させる働きがある。この
作用を発揮させるには1μm以上の炭化物の相当粒径が
必要である。またその上限は20μmであり、これを超え
ると研削性を害する。好ましくは、この炭化物相当粒径
は、3〜15μmである。
【0025】一方、個々の炭化物での焼付き停止作用に
基づいて、ロールの耐焼付き性を向上するためには炭化
物の粒間間隔をできるだけ小さくすることが有効であ
る。従来ロールと比較して、すぐれた耐焼付き性を実現
させるためには粒間間隔の平均値を50μm以下とするの
である。好ましくは、40μm以下である。
【0026】なお、溶製法による従来のロールの粒間間
隔は平均80μm以上である。溶製ロールで粒間間隔を小
さくさせるために炭化物を増量すると、個々の炭化物粒
径が、今度は20μmを越えるサイズに粗大化し研削性を
害する。また、粉末冶金法で製造したロールでは1μm
未満の相当粒径の炭化物がほとんどであり、焼付き停止
作用が不十分である。
【0027】本発明にあってはロール材質を構成する鋼
組成は上述の炭化物分散特性を有する限り特定のものに
限定されないが、さらに耐摩耗性を改善する観点からそ
の好適組成は次の通りである。なお、本明細書において
は「%」は特にことわりがないかぎり、「重量%」であ
る。
【0028】(1) C:1.0 〜3.5 %、Cr含有量がC比
(Cr/C) で4〜20の鉄基合金( 第1合金組成という)
。より詳述すれば、M7C3炭化物を含有する。 (2) C:0.7 〜2.5 %、Cr:3.0 〜7.0 %、Mo:1.0 〜
10%、V:0.5 〜7.0 %、Co:15%以下、W:20%以下
の鉄基合金( 第2合金組成という) 。より詳述すれば、
MC炭化物およびM6C 炭化物を含有する。 次に、これらの合金の組成限定理由を詳述する。まず、
第1合金組成の限定理由は次の通りである。
【0029】C:1.0 〜3.5 % Cは炭化物の形成および基地硬さの確保に必要な元素で
ある。本発明では前述の炭化物粒間平均間隔を確保し、
さらに、後述のCr量との関係を維持しつつ、好ましくは
炭化物の種別として耐摩耗性に富むM7C3炭化物を得るた
めに、その量を上述のように限定する。1.0 %を下回る
と粒間間隔の平均値50μm以下を満足するだけの必要な
炭化物量例えば、3体積 (または面積) %程度以上が確
保できず、耐焼付き性の向上が望めない。
【0030】また、3.5 %を越える添加は鍛造性の悪
化、熱処理における割れ発生など製造を困難にさせ、か
つ、炭化物量が過剰となる (約25体積 (または面積) %
以上)ため研削性を著しく害することになる。好ましく
は、C含有量は1〜2%である。
【0031】Cr/C:4〜20 Crは炭化物形成元素であり、本発明でも前述の炭化物の
粒間間隔の平均値50μm以下を確保するために添加する
が、生成する炭化物の種別を規定すべく、Cとの比率
(Cr/C) を限定する。Cr/Cの比が4〜20で生成する
炭化物は主としてHv 1800 程度の硬質のM7C3型の炭化物
であり、耐摩耗性の向上に有効である。Cr/C比がこの
範囲外ではM3C 型あるいはM23C6 型の比較的軟質の炭化
物 (共にHv1000程度) となってしまい、冷間圧延用ワー
クロールの必須の性能である耐摩耗性が不十分となる。
【0032】なお、他の元素は焼入性、靱性の確保など
を目的に適宜の種類、量だけ添加する。それらの1組成
例を挙げれば次の通りである。Si:0.1 〜1.5 %、Mn:
0.1 〜1.5 %、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Mo:
0〜1.5 %、V:0〜1.0 %、残部Feおよび不可避不純
物。ここで、前述の第2合金組成を限定した理由を詳述
する。
【0033】C:0.7 〜2.5 % 第1合金組成の場合と同様であるが、後述の炭化物形成
元素の量との関係において、M7C3炭化物よりもさらに硬
質のMC型炭化物(Hv2500 程度) とM6C 型炭化物とを得る
ために、その量を限定する。0.7 %未満では粒間間隔の
平均値50μm以下を満足するだけの炭化物量が確保でき
ず、2.5 %を越えると研削性を著しく害し、かつ製造を
困難にさせる。好ましくは 0.7〜2%である。
【0034】Cr:3.0 〜7.0 % 炭化物の形成元素であるとともに、基地中に固溶し、焼
入性を高め、基地硬さを高める。3.0 %未満では、その
作用が不十分であり、7.0 %を越えると逆に硬さが低下
する。好ましくは3〜6%である。
【0035】Mo:1.0 〜10% M6C 炭化物形成元素であるとともに、焼入性を向上しか
つ2次硬化作用により高硬さ、高耐摩耗性を発揮する。
1.0 %未満ではそのような作用が小さく10%を越えると
脆化し、製造を不安定にさせる。好ましくは1〜8%で
ある。
【0036】V:0.5 〜7.0 % 強力な炭化物形成元素であり、硬質のMC炭化物を形成す
る。0.5 %未満ではその作用がなく、7.0 %を越えると
炭化物量が過剰になり、研削性および製造安定性を害
す。好ましくは1〜5%である。
【0037】Co:15%以下 基地に固溶し、強化するため適宜添加する。15%までで
十分な効果が得られる。好ましくは10%以下である。
【0038】W:20%以下 炭化物形成元素であり、耐摩耗性を高めるため適宜添加
する。20%までで十分な効果が得られる。好ましくは15
%以下である。
【0039】その他の添加元素としては特に制限されな
いが、1例を挙げれば、Si:0.1 〜1.5 %、Mn:0.1 〜
1.5 %、P:0.03%以下、S:0.03%以下である。Siは
脱酸剤として0.1 %以上添加する。一方、1.5 %を越え
ると脆化が助長される。好ましくは上限は1.0 %であ
る。
【0040】Mnは脱酸剤として配合され、特に焼入性向
上のため0.1 %以上が必要とされる。しかし、1.5 %を
越えると脆化が助長されるため、上限は1.5 %、好まし
くは1.0 %である。PおよびSは不純物としてそれぞれ
0.03%以下に制限される。
【0041】このような合金組成を備えた冷間ワークロ
ールは、少なくとも外層がそれらで構成されればよく、
ここに「外層」はロール表面性状を左右する深さの領域
をいい、一般には表面より10〜50mm程度の深さの領域で
ある。本発明の場合、一般にはロール全体を同一材質で
構成するが、場合によってはロール表面より100 mm以下
の厚さに、例えば熱間等方圧処理 (ホット・アイソスタ
テック・プレス) によってそのような合金層を設けても
よい。いずれにしても本発明によれば、ロール外層は粉
末冶金法で製造されるが、その製造方法の限定理由は次
の通りである。
【0042】原料粉末 用意する原料粉末は予め合金化してから粉砕した粉末で
も、各単体粉末を目的とする合金組成になるように配合
したものであってもよい。一部を合金化した粉末として
もよい。これらの場合を総称して本発明では「合金組成
を有するように配合された原料粉末」という。なお、粉
末冶金法によるロール材の製造それ自体はすでに公知で
あって、この点についてはこれ以上の説明は略す。
【0043】ところで、一般的な溶製法では耐焼付き性
向上と研削性維持を両立することは困難である。すなわ
ち、粒間間隔の平均値50μm以下を満たすには、相当粒
径1μm以上の炭化物量が概ね3%以上必要となるが、
この含有量を確保できる組成では炭化物が粗大化し、相
当粒径が20μmを越えて研削性を悪化し、実用が難し
い。一方、本発明において採用する粉末冶金法による製
造方法によれば相当粒径が1μm未満の微細な炭化物が
得られるため、十分な研削性を確保できるが、今度は耐
焼付き性が不十分となる。
【0044】後工程での熱処理条件 粉末冶金法による製法では (研削性の) 反面、相当粒径
1μm未満の炭化物が主であるため、十分な耐焼付き性
が得られない。そこで700 ℃以上、好ましくは850 ℃以
上、固相温度以下の温度で10時間以上保持すると、炭化
物の凝集作用により耐焼付き性向上に有効な粒径1μm
以上の炭化物が確保できる。700 ℃未満ではその効果が
少なく、固相温度を超えると部分的に溶融してしまう。
【0045】
【実施例】
(実施例1)表1に示す合金組成を有する15種類の直径76
mmのロールを用いて圧延実験を行い、耐焼付き性に及ぼ
す炭化物の粒間間隔の平均値の影響について調査した。
【0046】表1のNo.1〜3は実際の製造ラインに用い
られているそれぞれ5%Cr鋼、セミハイス鋼の溶製ロー
ル材およびハイス鋼の粉末冶金法で製造したロール材で
あり、従来例として比較のために用いた。なお、セミハ
イス鋼、ハイス鋼はいずれもMC型とM6C 型の炭化物を含
有していた。
【0047】同No.4〜9は粒間間隔がそれぞれ異なるテ
スト材であり、すべて溶製材であった。このうちNo.4〜
7はその炭化物がM7C3型炭化物、No.8、9はMC型+M6C
型炭化物から主として成るものであった。
【0048】また、同No.10 〜15は本発明に従って製造
したロール材であって、固相温度直下に約20h保持し
て、粒間間隔を50μm以下の18〜46μmに調整した粉末
ロール材であった。相当粒径も微細炭化物の析出、凝集
によって20μm以下の11〜19μmを示した。
【0049】圧延材には0.4 mm厚、15mm幅のアルミキル
ド鋼の焼なまし調質材を用い、圧延油には牛脂5%のエ
マルションを50℃に保温して循環使用した。評価ロール
である上ロールの速度は143m/minとし、焼付きが生じや
すい条件とするために圧延材の送り速度はロール速度の
1/10とした。
【0050】圧下率で整理した各ロールの耐焼付き性能
を図1にグラフにまとめて示す。図中の丸内の数字は表
1のロールNo. を示す。破線の曲線が限界圧下率を示
す。従来ロール材のNo.1〜3の焼付き限界圧下率が12%
以下であるのに対し、粒間間隔を平均値で50μm以下と
したNo.6、7、9、10〜15のロール材では14%以上であ
り、明らかな向上が認められた。
【0051】なお、耐摩耗性については、従来のロール
よりも炭化物が均一に分散しており、また粒間間隔が小
さくなっているため、同一組成の従来のロールよりも良
好であった。
【0052】(実施例2)さらに、表1のロールを用いて
下記の条件で研削性の評価試験を行ったところ、図2の
結果を得た。図中の丸内の数も同じく表1のロールNo.
を表わす。研削電流値が小さいほど研削性が良好である
ことを示す。
【0053】 砥石種類:GC、切込み量:20μm、砥石幅:30mm 従来ロール、例えば炭化物の最大相当粒径が30μmのN
o.2のロール材では一部のタンデム圧延では研削性が悪
く、使用が難しいことが指摘されている。したがって、
最大相当粒径の上限としては20μm以下とすることが研
削性改善の観点からは必要である。
【0054】
【表1】
【0055】(実施例3)炭化物の粒間間隔の平均値 (→
耐焼付き性) と、最大相当粒径 (→研削性) の両条件を
ともに満足するロール材を得る方法として、粉末冶金法
で製造したロール材をベースにして、高温に長時間保持
することによって微細な析出炭化物を凝集させ、炭化物
粒を成長させることを試みた。
【0056】表1のNo.3の粉末冶金法で製造したハイス
鋼を用いて保持温度および時間を変えて粒間間隔の変化
を調査した結果を図3に示す。700 ℃で30h以上、固相
温度1140℃で10h以上保持した場合、粒間間隔は50μm
以下となる。なお、前述のNo.10 材は1140℃で20h保持
した材料であり、耐焼付き性、研削性にすぐれることは
前述の図1、2の通りであった。
【0057】
【発明の効果】このように、本発明によれば、合金組成
内に本来含まれる炭化物の分散形態を制御することで耐
焼付き性にすぐれ、また従来相反する特性としていずれ
か一方を実用上から犠牲にしてきた耐摩耗性、研削性を
実用上ともに満足する特性を備えたロール材を開発する
ことができ、従来の問題を一挙に解決できるのであっ
て、その実際上の利益は特に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化物の粒間平均間隔と圧下率の関係を示すグ
ラフである。
【図2】炭化物の最大相当粒径と研削電流値の関係を示
すグラフである。
【図3】保持時間と炭化物の粒間平均間隔の関係を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−165544(JP,A) 特開 平8−52502(JP,A) 特開 平7−268569(JP,A) 特開 平7−68304(JP,A) 特開 平6−346188(JP,A) 特開 平6−271903(JP,A) 特開 平5−339673(JP,A) 特開 平5−271875(JP,A) 特開 平3−404(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 27/00 B22F 5/00 C22C 38/00 302 C22C 38/30

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロール表面における炭化物の面積をScと
    したとき相当粒径√Scが1μm以上の炭化物の粒間間隔
    が平均値で50μm以下であり、かつ、炭化物の最大相当
    粒径が20μm以下である炭化物分散特性を備えた鉄基合
    金から少なくとも外層を構成したことを特徴とする耐焼
    付き性にすぐれた冷間圧延用ワークロール。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:1.0 〜3.5 %、Cr含有量
    がC比 (Cr/C) で4〜20の鉄基合金組成を有し、か
    つ、請求項1記載の炭化物分散特性を備えた鉄基合金か
    ら少なくとも外層を構成した耐焼付き性にすぐれた冷間
    圧延用ワークロール。
  3. 【請求項3】 重量%で、C:0.7 〜2.5 %、Cr:3.0
    〜7.0 %、Mo:1.0〜10%、V:0.5 〜7.0 %、Co:15
    %以下、W:20%以下、残部Feおよび不可避不純物から
    なり、かつ、請求項1記載の炭化物分散特性を備えた鉄
    基合金から少なくとも外層を構成した耐焼付き性にすぐ
    れた冷間圧延用ワークロール。
  4. 【請求項4】 請求項2また3記載の合金組成を有する
    ように配合された原料粉末から粉末冶金法でロールのイ
    ンゴットを製造した後、700 ℃以上、固相温度以下に10
    時間以上保持することを特徴とした請求項1記載の炭化
    物分散特性を備えた鉄基合金から少なくとも外層を構成
    した耐焼付き性にすぐれた冷間圧延用ワークロールの製
    造方法。
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