JP2725333B2

JP2725333B2 - 粉末高速度工具鋼

Info

Publication number: JP2725333B2
Application number: JP63330077A
Authority: JP
Inventors: 美朝常陸; 公造尾崎; 幸紀松田; 範嘉柴田
Original assignee: Daido Steel Co Ltd
Current assignee: Daido Steel Co Ltd
Priority date: 1988-12-27
Filing date: 1988-12-27
Publication date: 1998-03-11
Anticipated expiration: 2013-03-11
Also published as: ATE103993T1; EP0377307B1; JPH02175846A; EP0377307A1; DE68914429D1; DE68914429T2

Description

【発明の詳細な説明】【産業上の利用分野】

本発明は、粉末高速度工具鋼の改良に関し、すぐれた
耐摩耗性と靭性をあわせ有する高速度工具鋼を提供す
る。

【従来の技術】

粉末高速度工具鋼は、溶製材にくらべて、炭化物が偏
析せず微細かつ均一に析出しているため、靭性にすぐれ
ていて高合金化による耐摩耗性の向上が可能であるとい
う利点をもっている。ところが、実際に粉末高速度工具鋼を使用してみる
と、合金の度合が低い溶製材に対して優越する成績を得
られることはむしろ少なく、粉末治金法のもつ原理的な
利益はあまり得られていないのが現状である。発明者らは、Crに加えてＷまたはＷ＋Moを含有する粉
末高速度工具鋼において、加工性と切削性能とがともに
高いものを得ることを希望して研究し、多量のＶおよび
Coをも含有する特定の合金組成においてこの希望が実現
することを見出して、すぐに提案した（特願昭62−276,
918号）。上記系統の粉末高速度工具鋼に関してさらに研究の結
果、発明者らは、工具の特性に対して、合金組成だけで
なく炭化物のサイズと量が大きく影響するということを
見出した。

【発明が解決しようとする課題】

本発明の目的は、この新しい知見にもとづいて、炭化
物のサイズと量をコントロールすることによって、すぐ
れた靭性と耐摩耗性とをあわせそなえた粉末高速度工具
鋼を提供することある。

【課題を解決するための手段】

本発明の耐摩耗性と靭性にすぐれた粉末高速度工具鋼
は、C:1.2〜4.5％、Si:3.0％以下、Mn:3.0％以下、Cr:
3.0〜6.0％、W:15.0〜60.0％、V:1.0〜15.0％およびCo:
20.0％以下を含有し、残余が実質的にFeである合金組成
を有する鋼の粉末からなり、鋼中に存在する炭化物のう
ち円相当直径が１μｍ以上のものが10.0〜30.2容積％を
占めることを特徴とする。ここで、「円相当直径」Ｄとは、その語から理解され
るように、炭化物の断面（走査電子顕微鏡など高性能の
手段によってしらべることが好ましい。）の面積Ａを測
定し、によって算出した値である。上記の合金組成において、Ｗに加えて、またはＷの一
部を置き換える形で、Mo:30.0％以下を加えてもよい。
ただし、Moを添加する場合は、Ｗ＋2Mo＝Weqとすると
き、Weq:15.0〜60.0％の範囲にすべきである。また、こ
の態様においては、ＷとMoの割合を2Mo/Weq:0.45以下と
なるようにえらぶことが好ましい。

【作用】

粉末高速度工具鋼は、溶湯をガスまたは水で噴霧して
急冷凝固させて得た粉末をHIPなどの手段で焼結して得
たものであるから、一般に炭化物は微細かつ均一に析出
している。従来は、炭化物はある程度の大きさをもって
いる方が工具の耐摩耗性が高く、一方、靭性は微細な方
が高いと考えられてきた。しかし、発明者らが切削金型、ロール等の各種工具に
ついて炭化物のサイズおよび量と耐用寿命との関係をし
らべたところ、従来の通念に反して、比較的大きい炭化
物が若干存在する方が、耐摩耗性だけでなく靭性にとっ
ても有利であることがわかった。すなわち、前記した、
炭化物のうち円相当直径が１μｍ以上の比較的大型のも
のが10.0〜30.2容積％を占めるべきことである。炭化物のサイズは、よく知られているように、粉末高
速度工具鋼を高温にある時間加熱するソーキング処理に
よって大きくすることができる。比較的大型の炭化物は
10容積％以上、多くても20〜30容積％あれば足り、それ
を超えても効果は飽和する。過度なソーキングは巨大な
炭化物の生成をひきおこして靭性の低下を招くから、避
けなければならない。適切な条件は、1150〜1250℃×２
〜10時間の範囲から決定できるであろう。本発明の高速度工具鋼の合成組成は、前記したところ
からもわかるように、さきに提案した発明の際に得た知
見を参考にして決定したものであるが、簡単に説明を加
える。 C :1.2〜4.5％多量の炭化物を生成させて高い耐摩耗性を実現する目
的で、1.2％以上のＣを含有させる。靭性を高くできる
のでＣの上限も高くとれるが、4.5％を超えることはで
きない。 Si:3.0％以下、Mn:3.0％以下ともに脱酸剤として使用し、上限は靭性に悪影響を与
えないという観点から定めた。 Cr:3.0〜6.0％、W:15.0〜60.0％、V:1.0〜15.0、Co:20.
0％以下いずれも炭化物を形成し、耐摩耗性を与える。Crおよ
びＷの下限は、そのための炭化物量を確保するうえで必
要な量である。一方、あまり多量に添加しても効果が伴
わないし、靭性の低下が耐え難くなるから、それぞれに
上限を設けた。このほか、Ｖは結晶微細化の効果により、靭性にも寄
与する。この効果を得るために、下限1.0％を置いた。
さらにCoは、工具の耐熱性を高める。 Mo:30.0％以下、 Weq:15.0〜60.0％、 2Mo/Weq:0.45以下、 MoはＷとほぼ同じ作用をするが、耐摩耗性や靭性に対
する影響がＷのおおよそ半分であるから、Ｗ＋2Mo＝Weq
とした。Moに対してＷを相対的に多量使用するのは、十
分な焼入れ焼戻し硬さを得る（H_RCで66〜67以上）とと
もに、抗折力を高く（260Kgf/mm²以上）保つためであ
る。

【実施例】

第１表に示す組成の鋼を溶製し、ガス噴霧法により粉
末化した。粉末をHIPにより焼結して密度が100％近くな
るように、鍛造したのち、870℃×１時間−徐冷の焼き
なましをした。各組成の鋼について、一部の材料は、本
発明に従ってHIP後または鍛造中にソーキングを行なっ
て炭化物のサイズを調整したが、一部なそのまま使用
し、比較例とした。焼なまし状態で鍛造材の中の炭化物のサイズをしらべ
た。ついで材料を焼入れ焼なましし、HT硬さと抗折力を
測定するとともに、耐摩耗性をしらべた。耐摩耗性は大
越式迅速摩耗試験に従い、つぎの条件で実施した。評価
は、比較例を100としたときの相対的な指数であらわし
た。相手材 :SCM415（焼なまし）巡り距離:200m 巡り速度:2.93m/sec 荷重 :6.3Kgf ソーキングの条件、比較的大型の炭化物のパーセンテ
ージ、焼入れ焼もどしの条件,HT硬さ、抗折力および耐
摩耗性のデータを、まとめて第２表に示す。

【発明の効果】

本発明の粉末高速度工具鋼は、特定の合金組成をえら
んだ上に炭化物のサイズと量をコントロールすることに
よって、すぐれた耐摩耗性と靭性とをあわせそなえた工
具を与えることができる。従来、高速度工具鋼を粉末治
金法によって製造した場合、高合金組成と粉末治金の組
み合わせとの利益が十分に得られず、溶製材とあまり差
のない製品しか得られないことが多かったが、本発明に
よって、この問題は打破された。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献特開平１−152242（ＪＰ，Ａ) 特開昭64−47836（ＪＰ，Ａ)

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】C:1.2〜4.5％、Si:3.0％以下、Mn:3.0％以
下、Cr:3.0〜6.0％、W:15.0〜60.0％、V:1.0〜15.0％お
よびCo:20.0％以下を含有し、残余が実質的にFeである
合金組成を有する鋼の粉末からなり、鋼中に存在する炭
化物のうち円相当直径が１μｍ以上のものが10.0〜30.2
容積％を占めることを特徴とする、耐摩耗性と靭性にす
ぐれた粉末高速度工具鋼。
【請求項２】C:1.2〜4.5％、Si:3.0％以下、Mn:3.0％以
下、Cr:3.0〜6.0％、W:60.0％以下、Mo:30.0％以下、V:
1.0〜15.0％およびCo:20.0％以下を含有し、ただしＷと
Moとは、Ｗ＋2Mo＝Weqとするとき、Weq:15.0〜60.0％の
範囲にあり、残余が実質上Feからなる合金組成を有する
鋼の粉末からなり、鋼中に存在する炭化物のうち円相当
直径が１μｍ以上のものが10.0〜30.2容積％を占めるこ
とを特徴とする、耐摩耗性と靭性にすぐれた粉末高速度
工具鋼。
【請求項３】MoとＷの割合が2Mo/Weq:0.45以下である請
求項２の粉末高速度工具鋼。