JP2712561B2 - スパッタリング用アルミニウムターゲット - Google Patents

スパッタリング用アルミニウムターゲット

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ICやLSI等の配線材として用いられるマグ
ネトロンスパッタリング用アルミニウムターゲットに関
するものである。
〔従来の技術〕
電子産業の発展に伴い、ICやLSI等の需要が著しく増
加している。これらの素子の内部に用いられる配線は、
高純度アルミニウムまたはその合金をターゲットとして
スパッタリングにより薄膜化して用いられるのが主であ
る。
溶融金属の蒸発による蒸着法とは異なり、スパッタ法
ではターゲットの表面および内部の結晶構造がターゲッ
トからの原子の放出特性に大きな影響を与えることが知
られている。
たとえば、銀、銅の単結晶を用いたウェナー(Wehne
r)の実験(フィジカルレビュー(Phys.Rev)102,699
(1956))によれば、結晶構造の最密方向である〈11
0〉方向にターゲットからの原子の放出密度が高く、ウ
ェハー上にスポット状の分布が得られることが記載され
ている。
したがって、高純度アルミニウムまたはその合金のタ
ーゲットは、結晶方位の影響を避け、ウェハー上に均一
な薄膜を得るためになるべく微細な結晶でしかも結晶方
位がランダムになるように製造されてきた。(軽金属学
会第25回シンポジウム予稿集33(1984)) 〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながら、均一な薄膜が得られるように結晶が調
節されたこのようなターゲットを用いても、スパッタリ
ングによりターゲットが消耗するにつれて、マグネット
の磁力線に沿ってリング状の溝が表面に形成されると共
に原子の放出方向が変化し、膜厚分布が悪くなるのは避
け難い状況にある。
このため、ウェハーの直径に対して著しく大きい直径
のターゲットを用いたり、ウェハーとターゲットとの間
の距離を生産性を落としても広くするなどの工夫や、膜
質をおとしてスパッタ−ガス圧を高くしたり、マグネッ
トを2重にするなどの工夫をこらしても充分な解決には
至っておらず、また、生産性向上のためにウェハーの直
径を大きくする傾向に対し、膜厚分布を均一にすること
は困難な問題の一つともなっている。
〔課題を解決するための手段〕
かかる事情に鑑み、本発明者等は高純度アルミニウム
およびその合金の結晶方位のスパッタリングによる原子
放出への影響について鋭意検討を重ねた結果、ターゲッ
ト表面に平行な面における{100}面と{110}面のX線
回折法による強度比がターゲット表面から内部に入るに
つれて小さくなるようにターゲットの結晶方位を調整す
ることにより、ターゲットの消耗にもかかわらずウェハ
ー上の膜厚の均一性が得られることを見出し、本発明を
完成させるに至った。
すなわち、本発明は高純度アルミニウムまたはその合
金からなる平板状のスパッタリング用ターゲットにおい
て、ターゲット表面に平行な面のX線による結晶方位強
度比〔{100}/{110}の比〕がターゲット表面から内
部に入るにつれて小さくなっていくことを特徴とするス
パッタリング用アルミニウムターゲット、および結晶方
位の異なる板を重ね合せ、圧延または鍛造によりターゲ
ット用アルミニウムクラッド板を製造することを特徴と
する製造方法であり、均一な膜厚が得られるスパッタリ
ング用アルミニウムターゲットを提供するものである。
以下本発明を詳細に説明する。
ターゲット素材として用いる高純度アルミニウムとは
JIS H 2111に定める99.955%以上のもので、その合金と
はスパッタリング用ターゲットに通常添加されるSi,Cu,
Ti,Cr,W,Mo,Mg等の金属元素を高純度アルミニウムに一
種または二種以上を10重量%以下含有するものである。
本発明において、ターゲット表面のX線による結晶方
位強度比〔{100}/{110}の比〕が大きく裏面の結晶
強度比が小さいターゲットは、それぞれの結晶方位を多
く持つ平板を圧延法や鍛造法により複数枚を圧着(クラ
ッド)させることにより容易に得ることができる。
また、{100}の結晶方位を有する板は再結晶優先方
位を利用すればよいし、結晶方位{110}のものは熱間
圧延や冷間圧延の集合組織を利用すれば得ることができ
る。単結晶を用いればさらに簡単であり、または、ター
ゲットの表面と裏面の加工量を変えることも可能である
し、熱処理と組合せることによりさらに容易に得ること
ができる。
通常の平板状ターゲットを用いるマグネトロンスパッ
ター装置では、磁力によりターゲットの最も消耗する部
分の周辺の直上あたりにシリコンウェハーの外周部がく
るように設計するのが普通である。
前述のウェナーの実験でも明らかにされている如く、
スパッターリングによる原子の放出方向は〈110〉方向
が最も分布密度が高い。したがって、ターゲットの表面
部分に結晶方位{110}が多くなるとウェハーとターゲ
ットの位置関係からウェハー外周部の膜厚が厚くなりす
ぎるので、結晶方位強度比〔{100}/{110}の比〕は
大きいほうが放出原子が分散し膜厚は均一となる。しか
しながら、磁石部分のターゲットが消耗するにつれてタ
ーゲットにリング状の溝が形成されると、結晶方位によ
る原子の放出分布だけではなく形状による分散がおこな
われるようになり、ウェハー外周部の膜厚がだんだん薄
くなりウェハー上での膜厚分布が不均一となる。
しかるに、本発明によるターゲットでは、消耗につれ
て直上への原子放出特性の良好な結晶方位{110}面が
多く現れることになり、ウェハー外周部での膜厚の減少
が防止され、膜厚分布が改善されて常に均一で良好なも
のとなる。
また、このような効果をより発現させるためには、結
晶方位強度比〔{100}/{110}の比〕が1.0以上の部
分がターゲット全肉厚の1/5〜3/4の範囲が好ましく、よ
り好ましくは全肉厚の1/4〜1/2の範囲である。
〔実施例〕 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこ
れ等によって限定されるものではない。
なお、測定は次の方法でおこなった。
X線としてはCu−Kα線を用い、X線強度は以下に述
べる方法により測定する。すなわち、測定すべき面を旋
盤等により切削し、その表層部にある切削加工による極
く薄い変形領域を化学的溶解により取り除く。次にX線
回折装置により各結晶方位に対応する回折線の強度を測
定し、得られた回折線の強度をASTM 4−0787に記載され
ている各結晶方位の相対強度比にもとづく補正をおこな
って補正強度値を得る。
また、膜厚分布バラツキはウェハー上の9点の膜厚を
測定し、その最大値(Xmax)と最小値(Xmin)から次式
より計算で求めた。
{(Xmax−Xmin)/(Xmax+Xmin)}×100% 実施例1 純度99.999%の高純度アルミニウムを用いて凝固法
(ブリッジマン法)により結晶方位{100}面に面方位
を揃えた単結晶板と結晶方位{110}に面方位を揃えた
単結晶板を作成した。
それぞれの板の接合面をワイヤーブラシで粗面化した
後、350℃の温度で圧下率25%で圧延してターゲット用
クラッド板を得た。
該クラッド板から厚さ5mm、直径5インチのターゲッ
トを得た。なお、接合位置は表面から全肉厚の1/4の位
置になるように調整した。
該ターゲットを用い直流マグネトロンスパッタリング
装置により、直径3インチのウェハー上に1μm程度の
薄膜を形成させ、その膜厚分布を測定した。また、膜厚
分布の測定には四端子法による電気抵抗の測定から換算
した。
スパッタリング時の出力は500Wとし、アルゴンガスの
圧力は8×10-3Torr、ターゲットとウェハー間の距離は
80mmとした。
膜厚分布の測定は、30分のプレスパッターで表面を除
去してから3分間ウェハー上にスパッタリングして膜厚
を測定し、更に20時間空打ち後2分間ウェハー上にスパ
ッタリングして膜厚の測定をおこなった。
比較例1 純度99.999%の高純度アルミニウムを用いて凝固法
(ブリッジマン法)により結晶方位{100}に面に面方
位を揃えた単結晶板から厚さ5mm、直径5インチのター
ゲットを得た。
該ターゲットを用い実施例1と同様にして膜厚分布の
測定をおこなった。
比較例2 純度99.999%の高純度アルミニウムを用いて凝固法
(ブリッジマン法)により結晶方位{110}面に面方位
を揃えた単結晶板から厚さ5mm、直径5インチのターゲ
ットを得た。
該ターゲットを用い実施例1と同様にして膜厚分布の
測定をおこなった。
得られた膜厚分布の結果を下表に示す。
30分 20時間 実施例1 9% 8% 比較例1 10% 17% 比較例2 7% 15% 〔発明の効果〕 本発明において、ターゲット表面から内部に入るにつ
れて結晶方位{110}を多くすることにより、ウェハー
上のICチップ等の膜厚不足による品質不良を低減させる
だけでなく、大型のウェハーにおいても均一な膜厚が得
られるなど、工業的価値は頗る大である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高純度アルミニウムまたはその合金からな
    る平板状のスパッタリング用ターゲットにおいて、ター
    ゲット表面に平行な面のX線による結晶方位強度比
    〔{100}/{110}の比〕がターゲット表面から内部に
    入るにつれて小さくなっていくことを特徴とするスパッ
    タリング用アルミニウムターゲット。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載のスパッタリン
    グ用アルミニウムターゲットにおいて、ターゲット表面
    のX線による結晶方位強度比〔{100}/{110}の比〕
    が1.0以上であり、反対側表面(ターゲット裏面)の結
    晶方位強度比〔{100}/{110}の比〕が1.0未満であ
    ることを特徴とするスパッタリング用アルミニウムター
    ゲット。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項記載のスパッタリン
    グ用アルミニウムターゲットにおいて、X線による結晶
    方位強度比〔{100}/{110}の比〕が1.0以上である
    範囲がターゲット表面からの肉厚の1/5を超え、かつ3/4
    を超えない範囲であることを特徴とするスパッタリング
    用アルミニウムターゲット。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項記載のスパッタリン
    グ用アルミニウムターゲットにおいて、結晶方位の異な
    る板を重ね合せ、圧延または鍛造によりターゲット用ア
    ルミニウムクラッド板を製造することを特徴とする製造
    方法。
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