JP2710914B2 - X線発生管 - Google Patents

X線発生管

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    • H01J35/00X-ray tubes
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  • X-Ray Techniques (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固定陽極X線発生管、
特に透過型X線発生管のX線放射窓、ターゲット及びそ
れを用いたX線発生管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】物質分析のための比較的微弱な特定波長
のX線を発生するX線発生管として、透過型のX線発生
管が知られている。この透過型X線発生管は、熱電子を
放出するカソード、その熱電子を制御するグリッド、そ
の熱電子を受け反対側の面からX線を放射する透過型の
ターゲット、及びそのX線を外部に放出するためのX線
透過用窓を基本要素として備えており、これらが一端に
開口部を有する円筒状の気密外囲器に収められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来からの透過型X線発生管では、カソードから放出され
る熱電子の一部はグリッドによっても制御しきれず、タ
ーゲット膜に到達しない場合があったので、熱電子の利
用効率が非常に悪かった。また、ターゲットがX線発生
管を構成する外囲器の開口部にしか設けられていないた
め、X線は外囲器に軸方向にのみ狭い範囲でしか放射さ
せることができなかった。このため、X線発生管を用い
る用途が限定されていた。
【0004】そこで、本発明は、熱電子の利用効率が高
く、X線を広範囲に放射することができるX線発生管を
提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、本発明に係るX線発生管は、X線透過性の材料に
より形成された円筒形状の基体と、熱電子を受けてX線
を放射する材料であって、基体の内周面に形成されたタ
ーゲット膜と、基体の両端に設けられ、ステムピンを含
んだ外囲器と、基体の中心軸上に設けられ、ステムピン
に両端を支持され、熱電子を発生させるカソードを備え
ることを特徴とする。
【0006】また、上記問題を解決するために、本発明
に係る他のX線発生管は、X線透過性の材料であり、断
面円形で一部を欠くことにより一対の端部が形成された
リング状の円筒管状の基体と、熱電子を受けてX線を放
射する材料であって、基体の内周面に形成されたターゲ
ット膜と、基体の両端部に設けられ、ステムピンを含ん
だ外囲器と、基体の断面の中心軸上に設けられ、ステム
ピンに両端を支持され、熱電子を発生させるカソードを
備えることを特徴とする。
【0007】なお、基体は、ベリリウム、グラファイ
ト、ポリイミド、窒化ボロン又はアルミニウムのいずれ
かであることが望ましい。
【0008】さらに、カソードは螺旋状に形成されてい
ること、カソードを構成する物質としては、タングステ
ン又はバリウムの含浸させたタングステンを用いるか、
または、カソードは冷陰極材料であることが望ましい。
【0009】また、カソードは、金属又はセラミックか
らなる中空状の筒であり、前記筒の外周面には酸化物陰
極材が塗布されているとともに、筒の内部にはヒータが
設けられているものであってもよく、この場合、カソー
ドの周囲には、カソードを中心軸とした螺旋状にグリッ
ド電極が設けられていることが望ましい。
【0010】
【作用】上記の構成によれば、本発明に係るX線発生管
は、X線透過性の材料により形成された円筒形状の基体
の内周面に、X線を放射するターゲット膜を設け、基体
の中心軸上に熱電子を発生させるカソードを設けている
ので、カソードで発生した大部分の熱電子を均一にター
ゲット膜へ衝突させることができるとともに、基体の外
周面に沿った広い範囲でX線を放射させることができ
る。
【0011】さらに、上記の別の構成によれば、本発明
に係るX線発生管は、断面円形で一部を欠くことにより
一対の端部が形成されたリング状のX線透過性の円筒管
状の基体の内周面にターゲット膜を設け、基体の断面の
中心軸上に熱電子を発生させるカソードを設けているの
で、カソードで発生した大部分の熱電子を均一にターゲ
ット膜へ衝突させることができるとともに、基体の外周
面に沿った広い範囲でX線を放射させることができる。
【0012】また、カソードを螺旋状に構成すれば、熱
電子を放出する面積を増やせるので、X線の発生量を増
加させることができる。カソードに冷陰極材料を用いれ
ば、他のカソード材料に比べてカソードの寿命を延ばす
ことができる。カソードとして、金属又はセラミックか
らなる中空状の筒の内部にヒータを設けていれば、カソ
ードを加熱することができるので、熱電子が発生しやす
くなる。さらに、カソードの周囲に、カソードを中心軸
とした螺旋状にグリッド電極を設けていれば、その電位
を制御することにより管電流及びX線量をコントロール
することができる。
【0013】
【実施例】以下、添付図面に基づいて本発明に係るX線
発生管のいくつかの実施例について説明する。図1に基
づいて、本発明の第1実施例に係るX線発生管について
説明する。図1に示すように、第1実施例に係るX線発
生管1は、基本的には、両端が開口した円筒形状の管で
ある基体110と、この基体110の内周面に形成され
たターゲット膜と、管の両端の開口部に設けられた外囲
器120a及び120bと、基体110の中心軸上に設
けられたカソード130とから構成されている。なお、
基体110は、ターゲットとしての役割を有するととも
にX線透過用窓の役割をも有している。なお、X線発生
管1の内部は略真空の状態に保たれている。
【0014】基体110は、X線透過性及び熱伝導性に
優れた材料、例えば、ベリリウム、ガラス状カーボン
(グラファイト)、ポリイミド、アルミニウム、窒化ボ
ロン等で形成されており、その厚さは、例えば、ベリリ
ウムの場合は、200μm〜1mm、カーボンやアルミ
ニウムの場合には、200μm〜500μmが有効であ
る。このため、基体110は、適当な機械的強度を有し
ている。また、基体110を構成する管の直径は25m
m〜40mm、長さは30mm〜150mmが実用的で
ある。
【0015】熱電子を受けてX線を放射するターゲット
膜140は、図2に示すように、基体110の内周面
に、真空蒸着法又はメッキ等により形成され、その厚み
は、ターゲット膜140を形成する材料によって異なる
が、X線を発生するに必要最小限の厚さとされることが
好ましい。このようにすることによって、ターゲット膜
140内でのX線の吸収を最少限に抑えることができる
からである。なお、このようにターゲット膜140の厚
さを必要最小限の厚さとしても、ターゲット膜140は
適当な機械的強度を有する基体110に担持されている
ので、撓みを生じ難く、発生するX線のユニフォーミテ
ィ(均等性)が向上する。また、基体110に熱伝導性
に優れた材料を用いたことにより、ターゲット膜140
の放熱性が向上している。
【0016】ターゲット膜140の材料としてタングス
テンを用いる。この場合には、その厚さは500オング
ストローム〜3000オングストロームである。なお、
タングステン以外に用いる材料として、例えば、チタ
ン、銅、鉄、クロム、ロジウム等がある。
【0017】図面右側の開口部に設けられる外囲器12
0aは、金属からなり中央が円形にくりぬかれ、電極を
兼ねた外枠121aと、外枠のくりぬかれた部分に嵌め
込まれたステム122とからなる。ステム122の中心
には、ステムピン124が挿嵌されている。図面左側の
開口部に設けられる外囲器120bは、金属からなり中
央が円形にくりぬかれた外枠121bと、外枠のくりぬ
かれた部分に嵌め込まれ、中心部に中空の凸部127を
有するステム123とからなる。ステム123の凸部1
27の周囲には、L字型のステムピン126が挿嵌され
ている。なお、凸部127は、X線発生管1の内部を略
真空にする際に形成されたものである。
【0018】カソード130は、ステムピン124と、
ステムピン126に支持され、基体110の中心軸上を
通るように設けられている。従って、垂直断面上におい
て見た場合、ターゲット膜140上の任意の点と、カソ
ード130との距離は略等しくなっている。カソード1
30にはタングステンを用いている。本実施例において
カソード130は直線状のタングステン線であるが、図
3に示すカソード131のように、タングステン線を螺
旋状に形成したものであってもよい。なお、カソード1
30には、タングステンにバリウムを含浸させたものを
材料として用いてもよく、また、MgO等の冷陰極材料
を中空状の筒の外周面に塗布したものを用いてもよい。
なお、カソード材料にMgO等の冷陰極材料を用いた場
合には、カソードの寿命を長くすることができる。
【0019】さらに、これらのほかにカソードとして
は、図4に示すように、ニッケル等の金属又はセラミッ
クからなる中空状の筒160の外周面に酸化物陰極材
(BaO−CaO−SrO−MgO)161が塗布され
ているとともに、筒160の内部にヒータ162を設け
たものを用いてもよい。なお、この場合は、ヒータ15
2に電力を供給するためのステムピン164を外囲器に
設ける必要がある。
【0020】なお、図5に示すように、筒160の周囲
に、さらに、筒160を中心軸とした螺旋状にグリッド
電極163を設けてもよい。このようにグリッド電極1
63を設ければ、その電位を制御することにより管電流
及びX線量をコントロールすることができる。なお、こ
の場合にはグリッド電極に電力を供給するためのステム
ピン165を外囲器120a及び120bに設ける必要
がある。
【0021】外枠121bには直流電源151から3k
V〜20kVの直流電流が供給され、ステムピン124
及び126には直流電源152から通常数Vの直流電流
が供給される。なお、本実施例においてはこのように直
流電源を用いているが、外枠121b、ステムピン12
4及び126に電圧を印加する電源として交流電源を用
いてもよい。
【0022】また、図1において外枠121bに接続さ
れる側を接地しているが、ステムピン124及び126
側を接地してもよい。
【0023】次に、第1実施例に係るX線発生管の動作
について説明する。直流電源152からカソード130
に電力が供給され、カソード130が通電により熱せら
れると、熱電子が放出される。一方、ターゲット膜14
0は熱電子の加速器の役割をも兼ねており、直流電源1
51からターゲット膜140に電力が供給されると、タ
ーゲット膜140とカソード130との間に電位差が生
じ、この熱電子は加速され、矢印Aで示すようにターゲ
ット膜140に高速で衝突する。ターゲット膜140
は、この熱電子ビームを受けてその材料固有の特性X線
を放射する。基体110は、X線透過性のベリリウムで
できた円筒形状の管なので、X線は矢印Bで示すように
基体110の外周面の全面から外部に放射される。従っ
て、基体110の外周面に沿った広い範囲でX線を放射
させることができる。
【0024】また、垂直断面上において見た場合、ター
ゲット膜140上の任意の点と、カソード130との距
離は略等しくなっているので、カソードで発生した大部
分の熱電子を均一にターゲット膜へ衝突させることがで
き、熱電子の利用効率が高くなる。
【0025】次に図6に基づいて本発明の第2実施例に
ついて説明する。第2実施例と第1実施例とで大きく異
なる点は、第1実施例ではX線発生管としては基体11
0を直線状に構成したのに対し、第2実施例では図6
(a)に示すように、基体210を構成している管をリ
ング状に構成した点にある。その他の点は基本的に同一
であり、特に、図6(b)に示すように、垂直断面上に
おいて見た場合、ターゲット膜上の任意の点と、カソー
ド130との距離は略等しくなっている点も共通する。
また、基体210の材質にベリリウム、グラファイト、
ポリイミド、窒化ボロン又はアルミニウム等を用いる点
も第1実施例と共通する。但し、図3に示すように、基
体210の両端部の外囲器220a及び220bの形
状、ステム222の形状及びステムピン224の形状は
異なるがその動作については変わらない。また、第2実
施例ではセラミックカバー260が外囲器220a及び
220bの周囲に設けられているが、これは、ステムピ
ン224をソケット等に接続する際の便宜を考えて設け
られたものである。なお、第2実施例に係るX線発生器
の基体210を構成する管の直径は25mm〜40m
m、管が構成するリングの中心径は50mm〜150m
mとするのが実用的である。従って、第2実施例におい
ても、その動作は第1実施例と同様であり、基体210
の外周面に沿った広い範囲でX線を放射させることがで
きる。
【0026】なお、第2実施例においても、上記第1実
施例で示したように、カソードとして、タングステン線
を螺旋状に形成したものや、カソードの材料としてタン
グステンにバリウムを含浸させたものを用いてもよく、
また、MgO等の冷陰極材料を中空状の円筒の外周面に
塗布したものを用いてもよい。さらに、カソードとし
て、ニッケル等の金属又はセラミックからなる中空状の
円筒の外周面に酸化物陰極材(BaO−CaO−SrO
−MgO)161が塗布されているとともに、筒160
の内部にヒータ162を設けたものを用いてもよい。
【0027】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、カソードで発生した大部分の熱電子を均一にタ
ーゲット膜へ衝突させることができるので、熱電子の利
用効率が高くなる。また、基体の外周面に沿った広い範
囲でX線を放射させることができるので、X線を、蛍光
灯から照射される可視光のように利用することができ
る。この結果、周囲の空気やガスの電離などにX線を用
いた場合にも、効率よく空気やガスの電離を行うことが
できる。
【0028】さらに、効率を向上させることができるこ
とから、X線発生管を用いる装置の小型化及び小電力化
も容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るX線発生管の斜視断
面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係るX線発生管の本体の
部分拡大図である。
【図3】第1実施例のX線発生管に係るカソードの他の
実施例を示す断面図である。
【図4】第1実施例のX線発生管に係るカソードの他の
実施例を示す断面図である。
【図5】第1実施例のX線発生管に係るカソードの他の
実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係るX線発生管の断面図
である。
【符号の説明】
110、210…基体、120a、120b、220
a、220b…外囲器、130、131、160…カソ
ード、163…グリッド電極

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線透過性の材料により形成された円筒
    形状の基体と、 熱電子を受けてX線を放射する材料であって、前記基体
    の内周面に形成されたターゲット膜と、 前記基体の両端に設けられ、ステムピンを含んだ外囲器
    と、 前記基体の中心軸上に設けられ、前記ステムピンに両端
    を支持され、熱電子を発生させるカソードを備えること
    を特徴とするX線発生管。
  2. 【請求項2】 X線透過性の材料であり、断面円形で一
    部を欠くことにより一対の端部が形成されたリング状の
    円筒管状の基体と、 熱電子を受けてX線を放射する材料であって、前記基体
    の内周面に形成されたターゲット膜と、 前記基体の両端部に設けられ、ステムピンを含んだ外囲
    器と、 前記基体の断面の中心軸上に設けられ、前記ステムピン
    に両端を支持され、熱電子を発生させるカソードを備え
    ることを特徴とするX線発生管。
  3. 【請求項3】 前記基体は、ベリリウム、グラファイ
    ト、ポリイミド、窒化ボロン又はアルミニウムのいずれ
    かであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載
    のX線発生管。
  4. 【請求項4】 前記カソードは螺旋状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線発
    生管。
  5. 【請求項5】 前記カソードを構成する物質としては、
    タングステン又はバリウムの含浸させたタングステンを
    用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
    X線発生管。
  6. 【請求項6】 前記カソードは冷陰極材料であることを
    特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線発生管。
  7. 【請求項7】 前記カソードは、金属又はセラミックか
    らなる中空状の筒であり、前記筒の外周面には酸化物陰
    極材が塗布されているとともに、筒の内部にはヒータが
    設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2
    に記載のX線発生管。
  8. 【請求項8】 前記カソードの周囲には、前記カソード
    を中心軸とした螺旋状にグリッド電極が設けられている
    ことを特徴とする請求項7に記載のX線発生管。
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