JP2703643B2 - 微小プローブ電極を用いた記録・再生装置 - Google Patents

微小プローブ電極を用いた記録・再生装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はプローブ電極を用いて、記録媒体に対する電
気的な記録・再生を行なう記録・再生装置に関する。
〔従来の技術〕
近年、メモリ素子の用途は、コンピュータおよびその
関連機器,ビデオディスク,ディジタルオーディオディ
スク等のエレクトロニクス産業の中核をなすものであ
り、その開発も極めて活発に進んでいる。
メモリ素子に要求される性能は用途により異なるが、
一般的には 高密度で記録容量が大きい 記録再生の応答速度が速い 消費電力が少ない 生産性が高く価格が安い 等が挙げられる。
従来までは磁性体や半導体を素材とした半導体メモリ
や磁気メモリが主であったが、近年レーザー技術の進展
にともない有機色素,フォトポリマーなどの有機薄膜を
用いた光メモリによる安価で高密度な記録媒体が登場し
てきた。
一方、最近、導体の表面原子の電子構造を直接観察で
きる走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunnel Microsco
pe:以後、STMと略す。)が開発され〔G.Binnig et al.,
Helvetica Physica Acta,55,726(1982)〕、単結晶、
非晶質を問わず実空間像の高い分解能の測定ができるよ
うになり、しかも記録媒体に、電流による損傷を与えず
に低電力で観測できる利点をも有し、さらに大気中でも
動作し種々の材料に対して用いることができるため広範
囲な応用が期待されている。
STMは金属の探針(プローブ電極)と導電性物質の間
に電圧を加えて1nm程度の距離まで近づけるとトンネル
電流が流れることを利用している。この電流は両者の距
離変化に非常に敏感であり、トンネル電流を一定に保つ
ようにプローブ電極を走査することにより実空間の表面
構造を描くことができると同時に表面原子の全電子雲に
関する種々の情報をも読み取ることができる。この際の
記録・再生方法としては、粒子線(電子線,イオン線)
或いはX線等の高エネルギー電磁波及び可視・紫外光等
のエネルギー線を用いて適当な記録媒体の記録層の表面
状態を変化させて記録を行ない、STMで再生する方法
や、記録層として電圧電流のスイッチング特性に対して
メモリ効果をもつ材料、例えばπ電子系有機化合物やカ
ルコゲン化物類の薄膜層を用いて、記録・再生を、STM
を用いて行なう方法等が提案されている(特開昭63−16
1552号公報、同63−161553号公報、同63−204531号公報
等)。
このような記録・再生の方法で用いられるプローブ電
極の一例を第8図に示す。
第8図はプローブ電極81が、表面に凹凸部を有する記
録媒体82に接近した状態を示しており、このようなプロ
ーブ電極81においては、先端部の曲率半径が小さいほど
プローブ電極としての分解能が高いとされている。
従来、このような目的で用いられる曲率半径が小さい
先端部をもつプローブ電極は、切削および電解研摩法を
用いて製造されている。切削法では、時計旋盤を用いて
繊維状結晶の線材を切削し、曲率半径5〜10μmの微小
先端部をもつプローブ電極の製造が可能であり、またダ
イスによる線引加工によれば、曲率半径10μm以下のも
のも可能である。また、電解研摩法は、プローブ電極と
なる直径1mm以下の線材を真直に矯正し、垂直にたてて
電解液へ1〜2mm程度浸漬させ、プローブ電極に電圧を
印加して電解液を適宜かくはんしながら、0.5〜2.0秒間
隔で通電を断続させ、プローブ電極を研摩するものであ
る。この方法によれば先端の曲率半径は0.05μm程度の
小さいものも製造可能となっている。
また、最近では結晶のファセットに囲まれた尖頭部を
用いたり(特開平2−176405号公報)、field evaporat
ionの手法(H.W.Fink,IBM Journal of Research and De
velopment 30,460(1986))を用いて、プローブ電極の
先端の原子数が1個ないし数個程度の、理論的にも最小
の曲率半径を持つプローブ電極が用いられている(R.Al
lenspach and A.Bischof, Applied Physics Letters 5
4,587(1989))。
このような曲率半径が小さいプローブ電極を用いれば
原子オーダー(数Å)での高密度な記録・再生を行なう
ことができる。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述のような従来用いられた方法で製造されたプロー
ブ電極のうち、先端の曲率半径が極めて微小なプローブ
電極を用いれば、完全に平滑な表面を持つ記録媒体に対
しては極めて高密度に情報を正確に記録することができ
る。しかし、実際には平滑な記録媒体は得難く、記録媒
体表面に大きな凹凸があることが多い。そのような場
合、従来のプローブ電極を用いると、第8図の矢印で示
すように、プローブ電極81と記録媒体82の表面はプロー
ブ電極81の先端以外の部分でも接触あるいは著しく接近
し、該プローブ電極81が記録媒体82の誤った位置に情報
を記録してしまう。このため、上述のようなプローブ電
極で情報を記録した場合、記録した情報が再生できなく
なったり、プローブ電極の先端の曲率半径にみあう記録
密度が得られないという問題点がある。従って、今まで
は記録媒体表面のごく限られた平滑領域のみが利用でき
るに留まっていたため、非常に歩留まりが悪かった。ま
た、第4図のようにトラッキングとして凹凸の溝をつけ
た記録媒体を用いた場合、トラッキングの幅を狭めて記
録密度を上げようとすると、摩擦などによって破壊され
にくい凹部に記録ビットを正確に作成することが、前記
の理由により難しくなり、逆に、摩擦などによって破壊
されやすい凸部に、情報を書き込まざるを得ないという
問題点がある。
本発明は、上記従来の技術の有する問題点に鑑みてな
されたもので、表面に凹凸のある記録媒体に対しても、
正確な情報の記録および再生を可能とする、微小プロー
ブ電極を用いた記録・再生装置を提供することを目的と
する。
[課題を解決するための手段] 本発明の、微少プローブ電極を用いた記録・再生装置
は、 微少プローブ電極と、該微少プローブ電極を介して、
電気メモリ効果を有する記録層に凹凸の筋状構造がある
記録媒体に電圧を印加する書き込み電圧印加手段と、前
記記録媒体に流れる電流量の変化を読み取る読み取り手
段とを備え、前記微少プローブ電極を、該微少プローブ
電極の先端部と前記記録媒体とを所定の距離に保ちなが
ら、該記録媒体上で走査して該記録層の凹部に対する情
報の記録および再生を行なう、微少プローブ電極を用い
た記録・再生装置において、 前記微少プローブ電極が断面の直径あるいは差し渡し
の最大値が5nm〜20nmであるプローブ軸部を有し、該プ
ローブ軸部の端部の端部に前記先端部が形成され、前記
先端部の曲率半径は前記断面の半径または差し渡しの最
大値の半分の長さを越えない、そして、前記凹部の幅が
20nm〜100nmであり、前記凹部の幅が前記凹部の深さよ
り大きいことを特徴とするものである。
また、上記微少プローブ電極は、単結晶体で形成され
たものであり、さらに支持体上に結晶成長されたもので
ある。
さらに、上記微少プローブ電極は、支持体に温度勾配
を設けることにより結晶成長されたものであり、さら
に、一部開口してレジスト層で被覆された支持体の、前
記開口した部分に結晶成長されたものである。
[作用] 本発明は、微少プローブ電極の先端と記録媒体との距
離を一定に保つことで、該微少プローブ電極として記録
媒体との間に生じるトンネル電流を一定にして、該記録
媒体に対する記録・再生を行なうものである。
この微少プローブ電極が、凹凸のある記録媒体に対し
ても、先端以外で記録媒体と接触あるいは著しく接近す
ることがないようにするためには、第2図に示すよう
に、記録あるいは再生を行なう際、該記録媒体の凹凸部
の高さ内に位置する微少プローブ電極の先端付近の断面
の形状をすべて等しくすることで実現される。ただし、
微少プローブ電極の全ての断面が完全に等しい状態にな
くても等しい状態に近ければ、微少プローブ電極と記録
媒体が微少プローブ電極先端以外で接触あるいは著しく
接近する可能性は小さくなる。このような形状とは、す
なわち円柱、角柱あるいはそれらに近い形状である。ま
た、微少プローブ電極の先端部の曲率半径は、該微少プ
ローブ電極先端の断面の半径または最長の差し渡しの半
分の長さを越えることはないので、微少プローブ電極の
断面の面積を小さくすれば、先端部の曲率半径も自動的
に小さくなり、十分な分解能を得ることができる。した
がって、微少プローブ電極の先端と、記録あるいは再生
を行なう際、記録媒体表面の凹凸部の高さ内に位置する
微少プローブ電極の先端部分の断面の直径または差し渡
しの最大値は、使用する記録媒体表面の凹凸の程度にも
よるが、望ましくは1nm〜1μmであり、さらに望まし
くは1nm〜10nmである。
上述のような形状の微少プローブ電極を実現する場
合、該微少プローブ電極を、支持体上に、結晶成長によ
って形成したものがある。この場合、支持体表面に無制
限に成長させるよりは、支持体表面の目的とする場所だ
けにごく少数の結晶を成長させた方が後の作業が容易で
ある。本発明では、結晶成長の領域を限定するため、主
として次の2つの方法により形成した微少プローブ電極
を用いるともできる。
微少プローブ電極の支持体に温度勾配を設けて、所定
の領域のみが結晶成長条件となるようにする。
結晶成長の領域を残して他の表面を適当なレジスト層
で被覆する。
[実施例] 次に、本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。
[実施例1] 第1図は本発明の、微少プローブ電極を用いた記録・
再生装置の一実施例を示すブロック図である。
この記録・再生装置は、初期状態で高抵抗状態(オフ
状態)となっている、記録媒体2の記録層7の両端に書
込み電圧を印加して、選択的に低抵抗部分(オン状態)
をつくってデータを記録し、再生時には、スイッチング
閾値電圧より小さい電圧を印加して後述するプローブ1
からトンネル電流を検出することにより、データの再生
を行なうものである。
この記録・再生装置において、記録媒体2は、基板
5、基板電極6、記録層7とからなり、台座部8上に載
置、固定されている。粗動機構9は、記録媒体2と、プ
ローブ1の支持体4に固定された微少プローブ電極3と
の距離を所定の値に保つために、記録媒体2の垂直方向
の位置を粗動制御するためのもので、粗動駆動回路10に
より駆動される。粗動機構9の下には、さらにXYステー
ジ11が設けられており、記録媒体2の位置をXY方向に移
動可能である。パルス電源12は、微少プローブ電極3と
基板電極6との間に記録/消去用のパルス電圧を印加す
るためのものである。プローブ電流増幅器13は、微少プ
ローブ電極3のプローブ電流を増幅してサーボ回路14に
送出し、サーボ回路14は、プローブ電流増幅器13からの
電流が所望の値になるように微動制御機構15の垂直方向
における移動を制御する。微動制御機構15はXY走査駆動
回路16によりXY方向の移動が制御される。上述の各回路
はマイクロコンピューター17により統括制御され、マイ
クロコンピューター17の処理情報は表示装置18に表示さ
れる。
ここで、本実施例の記録・再生装置に用いたプローブ
1について説明する。
プローブ1は、第2図に示すように、支持体4に針状
の単結晶体であるウィスカを生成して微少プローブ電極
3としたものであり、その製造方法について第3図を参
照して説明する。
まず、1mmφのタングステン線を電解研磨して、突起
部4aを有する支持体4を準備し、該支持体4を、該突起
部4aを突出させてコイル状のヒーター20内に挿入する。
さらに、支持体4の突起部4aの上方に設置した、タング
ステンフィラメント21内に、該タングステンフィラメン
ト21に接するように装入されたウィスカ形成材料22であ
るCuを配置する。
そして、上述の支持体4およびウィスカ形成材料22を
高真空中(10-9mmHg程度)に置き、支持体4をヒーター
20で加熱する。
このとき、ヒーター20付近の支持体4の温度は約800
℃、支持体4の先端である突起部4a付近は約600℃にな
っており、支持体4内に温度差が生じている。
次に、支持体4の上部に配置したタングステンフィラ
メント21を約1000℃に熱し、該タングステンフィラメン
ト21に接して配置したウィスカ形成材料22であるCuを約
10分間蒸発させたところ、他の部分より温度の低い支持
体4の突起部4aの先端付近にウィスカ3が成長した。同
条件で数個の支持体にウィスカを成長させ、第3図の微
少プローブ電極3のように上方に向かって1本だけウィ
スカが成長している支持体4をプローブ1として選ん
だ。このウィスカは太さ約5nm、長さ10μmだった。ま
た、その形状は円柱状あるいは角柱状のものであった。
本実施例では、凹凸のある記録媒体の凹部にも情報を
書き込むことを可能とするため、上述のように、微少プ
ローブ電極3を針状の単結晶体であるウィスカ(Whiske
r)で形成したものであり、このウィスカは下記のよう
な特徴を有するものである。
・ウィスカは極めて細くかつ太さが一様な針状結晶であ
る。
・結晶条件を整えれば、直径は5〜20nm以内にすること
ができるため、微少プローブ電極先端部の曲率半径も該
範囲の半分に収まる。
・Au、Pt、W等電極に良く用いられる金属を始めとし
て、多くの金属、絶縁物がウィスカになりうる。
・ウィスカは一般の単結晶より格子欠陥が著しく小さい
単結晶であるため、細長い形状をしているにも関わら
ず、極めて優れた機械的強度を持っている。
・研磨等のプローブ電極の表面が汚染されやすい手段は
特に必要としない。
以上に説明した記録・再生装置の性能を調べるため、
記録媒体2には第4図に示すように記録層7に凹凸の筋
状構造があらり、凹凸の大きさが以下のように異なる4
種類を用いた。
(1)凹部の幅=10nm、凹部の深さ=10nm、凸部の幅=
10nm (2)凹部の幅=20nm、凹部の深さ=10nm、凸部の幅=
10nm (3)凹部の幅=50nm、凹部の深さ=20nm、凸部の幅=
20nm (4)凹部の幅=100nm、凹部の深さ=30nm、凸部の幅
=50nm 以上の4種類の記録媒体2について、XYステージ11及
び微動制御機構15を制御してプローブ1の微少プローブ
電極3を凹部に沿って動かし、同時に微動制御機構15で
微少プローブ電極3の先端と記録層7の距離を一定(nm
オーダー)に保ちつつ、記録層7に記録パルス電圧を印
加して記録を行ない、その後、正確に再生できるかどう
かを調べた。
その結果、上述のような微少プローブ電極3を用いた
記録・再生装置は、上述の4種全ての記録媒体2につい
て、凹部に正確に記録することができ、かつ凹部に記録
した情報を正確に再生できることがわかった。
なお、実施例1で用いた微少プローブ電極3は、使用
中に操作を誤って試料面にぶつけ、ウィスカの先端を欠
いてしまったが、前記のウィスカ成長の操作をプローブ
1の支持体4に施したところ、ウィスカの残っている部
分からウィスカが再生し、再び微少プローブ電極として
利用することができた。
ところで、成長したウィスカの直径が希望する大きさ
にならないことがある。しかし、該ウィスカの直径が希
望する値より大きい場合には、ウィスカが単結晶である
という利点を生かし、該ウィスカを、ウィスカの先端部
の結晶面より側面の結晶面の方が早く溶融解あるいは蒸
発する条件におけば、希望の大きさの直径に縮めること
が可能である。
また、ウィスカの先端部の形状は必ずしもなめらかで
はないが、そのような場合には先端部のみをごく短時間
電解液につけるかあるいは高温にする等のなめらかな形
状にする手段をとれば良い。
本実施例のように、微少プローブ電極を、針状の単結
晶体であるウィスカで形成することにより、該微少プロ
ーブ電極が極めて細く、かつ、太さが一様なものとなる
ので、表面に凹凸のある記録媒体に対しても、記録およ
び再生を正確に行なうことができ、記録・再生装置の信
頼性が向上する。また、ウィスカは機械的強度が高いの
で、微少プローブ電極としての寿命が長くなるととも
に、誤って先端部を欠いた場合であっても再生長が可能
であるので、経済的に有利である。また、ウィスカを支
持体の所定の領域のみに成長させることができるので、
微少プローブ電極の製造が容易なものとなる。
[実施例2] 次に、本発明の記録・再生装置に用いるプローブの第
2実施例について、第5図を参照して説明する。
本実施例のプローブ51は、支持体54がAgの単結晶で、
その上部の面52は結晶面(111)が2面、(100)が2面
の4面からなっている。
このプローブ51の支持体54に対して、前述の実施例1
の場合と同様なウィスカ成長の操作を施した。ただし、
本実施例の場合、蒸発させたウィスカ形成材料22がAgで
あり、タングステンフィラメント21の加熱温度を約800
℃にした点が異なっている。この操作の結果、各2面ず
つの(111)面(100)面に囲まれた支持体54の尖頭部に
<110>の成長方位を持つAgのウィスカがエピタキシャ
ル成長した。成長したウィスカの太さは約10nm、長さは
15μmであった。
上述のようにウィスカが成長したプローブ51を実施例
1と同様に、第1図の記録・再生装置のプローブ1とし
て組み込んだ。このようにして作成した装置を用いて実
施例1と同様に凹凸部の形状が(1)〜(4)の4種の
記録媒体について記録を行ない、その後、正確に再生で
きるかどうかを調べた。
その結果、本実施例のプローブ51を用いた場合、記録
媒体(2)、(3)、(4)については、該記録媒体の
凹部に正確に記録することができ、かつ凹部に記録した
情報を正確に再生できた。しかし、記録媒体(1)につ
いては、該記録媒体の凹部に正確に記録することができ
ず、また、実施例1で説明したプローブ1を用いて記録
媒体(1)の凹部に正確に記録した情報を、再生するこ
ともできなかった。
また、本実施例で作成したプローブ51に関して実施例
1と同様にウィスカの再生を試みたところ、これは成功
した。
[実施例3] 次に、本発明の記録・再生装置に用いるプローブの第
3実施例について説明する。
第6図に本実施例のプローブ61を示す。
本実施例のプローブ61は、第6図に示すように、Si基
板64上に、先端にAu−Si合金部65を有するウィスカから
成る微少プローブ電極63を備えたもので、Si基板64およ
び微少プローブ電極63の表面はAu−Pd層62でコーティン
グされて導電性を有するものとなっている。
本実施例では、上述の微少プローブ電極63としてのウ
ィスカを形成するために、VLS法(R.S.WAGNER and W.C.
ELLIS;APPLIED PHYSICS LETTERS 4(1986)、89)と呼
ばれるウィスカ作成法を利用した。
このVLS法の原理は、Si基板上に融解したAu−Si合金
の液滴を作り、SiCl4の雰囲気下におくと気体中のSiがA
u−Si液滴に溶けて過飽和状態になり、SiがAu−Si液滴
の下で析出するので、Au−Si液滴を持ち上げるようにSi
からなるウィスカが成長するというものである。
以下にVLS法を応用したプローブ作成法を、第7図を
参照して説明する。
まず、支持体としてはSi単結晶のSi基板64を用意し、
その(111)面上にレジストを塗布してレジスト層66を
形成する。次に、電子線を用いてレジスト層66に約1μ
mの穴67を5mm間隔に開け、の上部からAuをごく少量蒸
着し、レジスト層66をSi基板64から剥離した。Auの蒸着
量は水晶振動子の膜厚計によると0.2nmだったが、蒸着
されたAuはその膜厚の薄膜になったわかではなく、実際
には平均の直径が20nmのAu粒子68になっていて、レジス
ト層66の各穴67に該粒子が1〜数個蒸着されていた。
次に、このSi基板64を5mm角に切り、高分解能走査型
電子顕微鏡(Scaninng Electron Microscope:SEM)で見
て、直径10nm程度のAu粒子68が1個だけ蒸着されている
Si基板64を選んだ。そのSi基板64を炉に入れ、1000℃の
高温にしてAu粒子68を融解した後、約400℃にしてSiCl4
とH2の混合気体を送り込んだところ、3日後に、前述の
Au−Si合金部65を先端に持つ、平均の太さが約10nmのウ
ィスカが成長した。最後に、ウィスカが生成したSi基板
64の表面にスパッタリングによってAu−Pdを厚さ5nmコ
ーティングしてAu−Pd層62を形成し、導電性を持たせ、
プローブ61とした。
本実施例では非導電性の材料からなるウィスカに導電
性を持たせるため、Au−Pdをスパッタリングによって、
該ウィスカにコーティングしたが、他にAuやPt等を用い
ることができ、また、コーティング手段もスパッタリン
グに限らず、メッキ、蒸着等がある。
上述のようにして作成したプローブ61を実施例1と同
様に、第1図に示した記録・再生装置のプローブとして
組み込み、実施例1と同様に、凹凸部の形状が(1)〜
(4)の4類の記録媒体について記録を行ない、その
後、正確に再生できるかどうかを調べた。
その結果、本実施例のプローブ61を用いた記録・再生
装置は、記録媒体(2)、(3)、(4)については、
該記録媒体の凹部に正確に記録することができ、かつ凹
部に記録した情報を正確に再生できた。しかし、記録媒
体(1)については記録媒体の凹部に正確に記録するこ
とができず、また、実施例1で説明したプローブ1を用
いて記録媒体(1)の凹部に正確に記録した情報を再生
することもできなかった。
[比較例] つづいて、前述した各実施例1、2、3と比較するた
め、1mmφのタングステンを、従来のように電解研磨
し、第8図に示すような形状にしたものを、第1図に示
した記録・再生装置のプローブ1として組み込み、実施
例1と同様に(1)〜(4)の記録媒体について記録を
行ない、その後、正確に再生できるかどうかを調べた。
その結果、比較例で作成したプローブ電極を用いた記
録・再生装置では、記録媒体(4)については該記録媒
体の凹部に正確に記録することができ、かつ凹部に記録
した情報を正確に再生できた。しかし、記録媒体
(1)、(2)、(3)については、該記憶媒体の凹部
に正確に記録することができず、また実施例1の装置を
用いて記録媒体(1)、(2)、(3)凹部に正確に記
録した情報を再生することもできなかった。
ここで、前述の実施例1、2、3および比較例による
記録および再生動作の調査結果を表1に示す。
〔発明の効果〕 以上説明したような本発明のプローブ電極と記録媒体
を用いれば、正確に情報の記録および再生を行なうこと
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の記録・再生装置の一実施例を示すブロ
ック図、第2図は本発明の記録・再生装値に組込まれる
プローブの断面図、第3図は第2図に示すプローブの作
成方法を説明するための図、第4図は記録媒体の形状の
一例を示す斜視図、第5図は本発明の記録・再生装置に
組込まれるプローブの第2実施例を示す斜視図、第6図
は本発明の記録・再生装置に組込まれるプローブの第3
実施例を示す断面図、第7図は第6図に示すプローブの
作成方法を説明するための図、第8図は従来のプローブ
を示す断面図である。なお、第2図および第8図中の矢
印は、プローブから記録媒体へ電流が流れる、プローブ
上の位置を示している。 1,51,61……プローブ、 2……記録媒体、 3、53、63……微少プローブ電極、 4、54……支持体、 5……基板、6……基板電極、 7……記録層、8……台座部、 9……粗動機構、10……粗動機構駆動回路、 11……XYステージ、12……パルス電源、 13……プローブ電流増幅器、 14……サーボ回路、15……微動制御機構、 16……XY走査駆動回路、 17……マイクロコンピューター、 18……表示装置、20……ヒーター、 21……タングステンフィラメント、 22……ウィスカ形成材料、 52……結晶面、62…Au−Pd層、 64……Si基板、 65……Au−Si合金部、 66……レジスト層、 67……穴、68……Au粒子。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江口 健 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−222348(JP,A) 特開 昭63−222347(JP,A) 特開 平1−116940(JP,A) 特開 平1−151035(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微少プローブ電極と、該微少プローブ電極
    を介して、電気メモリ効果を有する記録層に凹凸の筋状
    構造がある記録媒体に電圧を印加する書き込み電圧印加
    手段と、前記記録媒体に流れる電流量の変化を読み取る
    読み取り手段とを備え、前記微少プローブ電極を、該微
    少プローブ電極の先端部と前記記録媒体とを所定の距離
    に保ちながら、該記録媒体上で走査して該記録層の凹部
    に対する情報の記録および再生を行なう、微少プローブ
    電極を用いた記録・再生装置において、 前記微少プローブ電極が断面の直径あるいは差し渡しの
    最大値が5nm〜20nmであるプローブ軸部を有し、該プロ
    ーブ軸部の端部に前記先端部が形成され、前記先端部の
    曲率半径は前記断面の半径または差し渡しの最大値の半
    分の長さを越えない、 そして、前記凹部の幅が20nm〜100nmであり、前記凹部
    の幅が前記凹部の深さより大きいこと を特徴とする微少プローブ電極を用いた記録・再生装
    置。
  2. 【請求項2】微少プローブ電極が、単結晶体で形成され
    たことを特徴とする請求項1に記載の微少プローブ電極
    を用いた記録・再生装置。
  3. 【請求項3】微少プローブ電極が、支持体上に結晶成長
    されたものであることを特徴とする請求項1に記載の微
    少プローブ電極を用いた記録・再生装置。
  4. 【請求項4】微少プローブ電極が、支持体に温度勾配を
    設けることにより結晶成長されたものであることを特徴
    とする請求項3に記載の微少プローブ電極を用いた記録
    ・再生装置。
  5. 【請求項5】微少プローブ電極が、一部開口してレジス
    ト層で被覆された支持体の、前記開口した部分に結晶成
    長されたものであることを特徴とする請求項3に記載の
    微少プローブ電極を用いた記録・再生装置。
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