JPH0783942A - 走査型探針顕微鏡用探針、その製造方法、当該探針を用いた記録再生装置及び微細加工装置 - Google Patents

走査型探針顕微鏡用探針、その製造方法、当該探針を用いた記録再生装置及び微細加工装置

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JPH0783942A
JPH0783942A JP23140193A JP23140193A JPH0783942A JP H0783942 A JPH0783942 A JP H0783942A JP 23140193 A JP23140193 A JP 23140193A JP 23140193 A JP23140193 A JP 23140193A JP H0783942 A JPH0783942 A JP H0783942A
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probe
cantilever
point metal
melting point
low melting
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JP23140193A
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Takao Toda
隆夫 任田
Shinichi Yamamoto
伸一 山本
Hiroyuki Kado
博行 加道
Osamu Kusumoto
修 楠本
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 機械的及び電気的にきわめて安定な走査型探
針顕微鏡用探針およびその製造方法を提供する。また、
この探針を具備した長期間に渡り安定に動作する記録再
生装置や微細加工装置を提供する。 【構成】 導電性薄膜又は導電性物質で被覆された誘電
体薄膜からなるカンチレバー160の自由端160aの
近傍に導電性針状結晶5を低融点金属4により接着す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走査型探針顕微鏡用探
針(プローブ)とその製造方法、および当該探針を用い
た、電気的・機械的安定性が高く、長期間にわたり安定
に動作し得る記録再生装置及び微細加工装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、固体表面を原子スケールで観察で
きる装置として原子間力顕微鏡や走査トンネル顕微鏡が
開発されている。これらの顕微鏡は走査型探針顕微鏡と
総称され、先端の鋭く尖った探針で試料表面を走査する
ことにより、局所的な各種の物理量、たとえば原子間力
や電気伝導度を検出し、画像化するものである。したが
って、走査型探針顕微鏡の分解能は探針の先端曲率半径
や先端角に依存し、これらをより小さくするための研究
が活発に行われている。高分解能原子間力顕微鏡では、
図4の(a)に示すような探針が用いられている。図4
の(a)において、従来の原子間力顕微鏡の探針は、1
00μmから200μm程度の長さを有するカンチレバ
ー16と、カンチレバー16の自由端16a側には固定
された針状結晶5等で構成され、基板1等に固定されて
いる。カンチレバー16の一方の面にはレーザー光の反
射のための金属薄膜41が設けられている。針状結晶5
としては酸化亜鉛などが用いられ、エポキシ樹脂42に
よりカンチレバー16を構成する酸化珪素薄膜や窒化珪
素薄膜2に接着されている。一方、走査型探針顕微鏡を
記録再生装置や微細加工装置として用いる場合、図4の
(b)に示すような探針が用いられる。記録再生装置や
微細加工装置用の探針は、100μmから200μm程
度の長さを有するカンチレバー16’が用いられ、カン
チレバー16’の表面は金属41’で被覆されている。
このカンチレバー16’は、シリコン結晶表面の1部を
異方性エッチングすることにより作成したエッチピット
を鋳型とし、その上に酸化珪素や窒化珪素の薄膜43を
作成し、フォトリソ技術により所望の形状に加工する。
その後、カンチレバーの針先部16bが作成された面
に、数十〜数百nmの厚さの金属41’を蒸着すること
により、探針16bに導電性を付与する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の、原子間力顕微
鏡の探針では、薄膜カンチレバー16の自由端16aに
エポキシ樹脂42などを用いて針状結晶5を固定してい
るので、接着強度が弱く、特に水中や有機溶剤中での観
察や、湿度が高い雰囲気中での観察に用いた場合、針状
結晶5がカンチレバー16から外れやすいという問題点
を有していた。また、針状結晶5に電圧を印加するため
に探針全体を金属薄膜で被覆した場合、針状結晶5の針
先の曲率半径が大きくなったり、針状結晶5とカンチレ
バー16との間の電気的接続が不安定になるという問題
点を有していた。一方、酸化珪素や窒化珪素の薄膜で作
成された探針付カンチレバー16’の表面を金属薄膜で
被覆した探針においては、針先部16bの曲率半径が大
きくなるという問題点を有していた。また、使用中に針
先部16bの金属被覆が摩耗し、電気的接続が不安定に
なるという問題点を有していた。従って、このような探
針を用いて微細加工を行った場合、所望する加工形状が
得られないという問題点を生じる。また、このような探
針を用いて情報の記録再生を行った場合、信号のS/N
比が低下するという問題点を生じる。本発明は、以上の
ような問題点を解決するためになされたものであり、機
械的及び電気的にきわめて安定な探針およびその製造方
法を提供することを目的とする。さらに、S/N比が高
く長期間に渡り安定に動作可能な記録再生装置や所望す
る形状が得られる微細加工装置を提供することを目的と
する。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の走査型探針顕微鏡用探針は、導電性薄膜又
は導電性物質で被覆された誘電体薄膜からなるカンチレ
バーと、前記カンチレバーの先端に低融点金属により接
着された導電性針状結晶とを具備するように構成されて
いる。上記構成において、被覆用導電性物質は、金、白
金及びニッケルから選ばれる少なくとも1つを主成分と
することが好ましい。また、導電性針状結晶は、酸化亜
鉛、セレン化亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪
素、酸化錫、酸化インジウム、遷移金属及びIII−V属
化合物半導体から選ばれる少なくとも1つからなること
が好ましい。また、低融点金属は、亜鉛、錫、インジウ
ム、ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成
分とすることが好ましい。
【0005】一方、本発明の走査型探針顕微鏡用探針の
製造方法は、導電性薄膜又は導電性物質で被覆された誘
電体薄膜からなるカンチレバーの先端に低融点金属を加
熱融着させる第1の工程と、前記カンチレバーの先端に
融着させた前記低融点金属を加熱溶融させ、導電性針状
結晶の一方の端を前記低融点金属により前記カンチレバ
ーに接着する第2の工程とを具備するように構成されて
いる。上記構成において、被覆用導電性物質は、金、白
金及びニッケルから選ばれる少なくとも1つを主成分と
することが好ましい。また、導電性針状結晶は、酸化亜
鉛、セレン化亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪
素、酸化錫、酸化インジウム、遷移金属及びIII−V属
化合物半導体から選ばれる少なくとも1つからなること
が好ましい。また、低融点金属は、亜鉛、錫、インジウ
ム、ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成
分とすることが好ましい。また、第1の工程は、加熱溶
融した低融点金属中にカンチレバー先端を浸漬させるこ
とを含むことが好ましい。または、第1の工程は、加熱
したカンチレバー先端に低融点金属の微小片を載置し、
前記カンチレバー先端に低融点金属を融着させることを
含むことが好ましい。または、第2の工程は、カンチレ
バーの先端に融着した低融点金属を加熱溶融し、溶融し
た低融点金属の上に導電性針状結晶の一部を埋設した
後、冷却固化する操作を含むことが好ましい。または、
第2の工程は、カンチレバーの先端に融着した低融点金
属の上に導電性針状結晶を付着させた後、前記低融点金
属を加熱溶融し、前記針状結晶の一部が前記低融点金属
に埋設された状態で冷却固化する操作を含むことが好ま
しい。
【0006】また、本発明の記録再生装置は、導電性薄
膜又は導電性物質で被覆された誘電体薄膜からなるカン
チレバーと、前記カンチレバーの先端に低融点金属によ
り接着された導電性針状結晶とを具備する探針を用いる
ように構成されている。上記構成において、被覆用導電
性物質は、金、白金及びニッケルから選ばれる少なくと
も1つを主成分とすることが好ましい。また、導電性針
状結晶は、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコン、ゲルマ
ニウム、炭化珪素、酸化錫、酸化インジウム、遷移金属
及びIII−V属化合物半導体から選ばれる少なくとも1
つからなることが好ましい。また、低融点金属は、亜
鉛、錫、インジウム、ガリウム及び鉛から選ばれる少な
くとも1つを主成分とすることが好ましい。
【0007】さらに、本発明の微細加工装置は、導電性
薄膜又は導電性物質で被覆された誘電体薄膜からなるカ
ンチレバーと、前記カンチレバーの先端に低融点金属に
より接着された導電性針状結晶とを具備する探針を用い
るように構成されている。上記構成において、被覆用導
電性物質は、金、白金及びニッケルから選ばれる少なく
とも1つを主成分とすることが好ましい。また、導電性
針状結晶は、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコン、ゲル
マニウム、炭化珪素、酸化錫、酸化インジウム、遷移金
属及びIII−V属化合物半導体から選ばれる少なくとも
1つからなることが好ましい。また、低融点金属は、亜
鉛、錫、インジウム、ガリウム及び鉛から選ばれる少な
くとも1つを主成分とすることが好ましい。
【0008】
【作用】導電性薄膜又は導電性物質で被覆された誘電体
薄膜からなるカンチレバーの先端に、導電性針状結晶を
低融点金属により接着するように構成したので、接着剤
である低融点金属の導電性により、探針全体を金属薄膜
で被覆する必要がなくなり、その結果、針先部の曲率が
大きくなることもない。また、接着剤としての低融点金
属を介して針状結晶とカンチレバーとが電気的に接続さ
れるため、電気的接続が安定する。さらに、接着剤とし
ての低融点金属の機械的強度により、針状結晶がカンチ
レバーから外れることもない。また、このように構成さ
れた探針を記録再生装置及び微細加工装置に用いること
により、長期間にわたり使用しても安定して動作する。
【0009】
【実施例】
<実施例1>本発明の走査型探針顕微鏡用探針及びその
製造方法の一実施例を図1を用いて説明する。図1にお
いて、(a)は探針1の構成を示す側面図であり、
(b)はその平面図である。図1において、カンチレバ
ー160は窒化珪素薄膜2と、導電性薄膜3とで構成さ
れている。カンチレバー160の自由端160a側にお
いて、低融点金属4により針状結晶5がカンチレバー1
60の導電性薄膜3に固定されている。また、カンチレ
バー16の固定端160b側はガラス基板100に固定
されている。窒化珪素薄膜2は厚さ1μm程度であり、
カンチレバー160の主体を構成する。導電性薄膜3は
厚さ50nmのCr薄膜と、厚さ100nmのPt薄膜
の積層薄膜とで構成され、カンチレバー160の変位を
光てこ方式で検出する際のレーザー光の反射膜として、
および針状結晶5へ電圧を印加するためのリード線とし
ての機能を有する。したがって、導電性薄膜3の構成材
料として、Au、Ag、Cu、Niなど前記の機能を有
するものであればよい。低融点金属4はInからなる
が、他に、Zn、Sn、Ga、またはPbを主成分とす
る金属など、融点が数百度以下のものであれば使用する
ことができた。針状結晶5は酸化亜鉛からなる。しか
し、針状結晶5として、酸化亜鉛の針状結晶以外に、セ
レン化亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、酸化
錫、酸化インジウム、遷移金属、あるいはIII−V属化
合物半導体からなる針状結晶も使用できた。ただし、酸
化亜鉛の針状結晶は大きさが10〜100μmのテトラ
ポッド形状のため作業性にきわめて優れていた。また、
カンチレバー160自体を、金属、窒化チタン、酸化
錫、酸化インジウムなどの導電性物質で構成することも
可能である。この場合、導電性薄膜3を設ける必要はな
い。ただし、カンチレバー160を酸化錫、酸化インジ
ウムなどの透明な材料で構成した場合、カンチレバーの
変位を光てこ方式で検出するために、光を反射させるた
めの薄膜を形成する必要がある。
【0010】上記構成を有する探針1の製造方法を以下
に説明する。まず、Si基板表面にCVD法により厚さ
1μmの窒化珪素薄膜を作成し、フォトリソグラフィー
技術により、図1における(b)に示す形状に加工し
た。次に、カンチレバー160の固定端160bとなる
部分の窒化珪素薄膜にガラス基板100を陽極接合法に
より接着し、Si基板をエッチングにより除去した。さ
らに、窒化珪素薄膜2とガラス基板100との接着面と
は反対の面に、厚さ50nmのCr薄膜と、厚さ100
nmのPt薄膜を順次スパッタリング法により作成し導
電性薄膜3を形成した。次に、Inを石英シャーレに入
れ、約170℃に加熱溶融し、カンチレバー160の先
端約30μmをIn中に浸漬した。約2秒後、In中か
ら取り出すことによりカンチレバー先端にInからなる
低融点金属4を融着させた。次に、カンチレバー160
の先端に融着した低融点金属4の上に、光学顕微鏡下で
タングステン探針を用いて、大きさが30μmのテトラ
ポッド形状の酸化亜鉛からなる導電性針状結晶5を付着
させた。その後、カンチレバー160の先端を加熱して
低融点金属4を溶融し、針状結晶5の一部を溶融した低
融点金属4に埋設させる。この状態で低融点金属4を冷
却固化することにより、針状結晶5がカンチレバー16
0に固定され、探針1が完成した。
【0011】<実施例2>カンチレバー160の自由端
160aに低融点金属4を融着させる他の方法として、
カンチレバー160の自由端160aの近傍をホットプ
レート上で約180℃に加熱し、タングステン探針を用
いて20μm程度の大きさのInなどの低融点金属の微
小片を載置し、カンチレバー先端に低融点金属4を融着
させる方法も可能であった。また、カンチレバー160
の自由端160aの近傍に融着した低融点金属4の上に
導電性針状結晶5を付着させる他の方法として、ホット
プレート上でカンチレバー160を加熱し、自由端16
0a近傍に融着させた低融点金属4を溶融する。そし
て、タングステン探針の先端に大きさが30μmのテト
ラポッド形状の酸化亜鉛針状結晶5が付着させ、タング
ステン探針を操作して針状結晶5の一部を溶融した低融
点金属4に埋設させる。その状態で低融点金属4を冷却
固化することにより、針状結晶5がカンチレバー160
に固定され、探針1が完成した。
【0012】<実施例3>以上のように構成された本発
明に係る探針を用いた走査トンネル顕微鏡/原子間力顕
微鏡複合機の一実施例を、図2を用いて説明する。図2
において、導電性試料台7は絶縁性試料台8に固定され
ており、絶縁性試料台8はチューブ型圧電体からなる3
次元試料駆動装置9の上に固着されている。また、試料
6は導電性試料台7に載置されている。探針1は試料6
に対向するように固定されており、試料6が3次元試料
駆動装置9により移動されることにより、探針1が相対
的に試料6の表面を走査する。探針1の上部にはレーザ
ー光源10が設けられており、レーザー光源10から照
射されたレーザー光はカンチレバー160の背面で反射
され、2分割フォトダイオード11に入射する。針状結
晶5に流れる電流は金属薄膜3を介して外部に取り出さ
れる。試料6は導電性試料台7に電気的に接続され、電
圧発生装置12からの電圧印加により探針5と試料6と
の間に流れるトンネル電流は電流測定装置13により検
出される。カンチレバー160のたわみは、レーザー光
源10と2分割フォトダイオード11とで構成された光
てこ方式の微小変位計測機構により検出される。電流測
定装置13の出力またはカンチレバー16のたわみ量に
応じたフォトダイオード11の出力は位置制御装置14
に入力される。位置制御装置14は、電流測定装置13
の情報またはカンチレバー160のたわみ量に応じたフ
ォトダイオード11の出力により3次元試料駆動装置9
を駆動し、試料6の位置を例えば垂直方向(Z軸方向)
にフィードバック制御するとともに、コンピューター1
5からの情報により3次元試料駆動装置9を駆動し、試
料6の位置を例えば水平方向(Z軸方向に垂直なX軸方
向及びY軸方向)にラスター走査する。コンピュータ1
5は、試料6の表面上の多数の測定点におけるカンチレ
バー160のたわみ量や試料6のZ軸方向の制御量(変
移量)などを取り込み、それらのデーターを濃淡表示や
グラフ表示する。この顕微鏡は大気中においても動作さ
せることができるが、清浄試料表面のより詳細な情報を
得る場合は超高真空中でも動作させることができる。こ
の走査トンネル顕微鏡/原子間力顕微鏡複合機でグラフ
ァイトのへき開面を観察したところ、走査トンネル顕微
鏡モードにおいても、原子間力顕微鏡モードにおいても
きわめてノイズの少ない鮮明な原子像が得られることが
確認された。
【0013】<実施例4>次に、本発明の探針を用いた
微細加工装置の一実施例について説明する。図2に示す
走査トンネル顕微鏡/原子間力顕微鏡複合機において、
電圧発生装置12としてパルス発生装置を用いた。試料
6と探針1との間に常に約1×10ー9Nの斥力が生じる
ように、試料6であるグラファイトの表面を探針1に接
近させ、フォトダイオード11の出力を位置制御装置1
4に取り込み、3次元試料駆動装置9により試料6と探
針1との間のZ軸方向の距離をフィードバック制御し
た。この条件で、コンピュータ15によりX軸及びY軸
方向に試料6を走査するとともに、試料6の表面上の所
望の位置において電圧発生装置12により、探針1に電
圧−4V、時間5msのパルス電圧を印加した。その
後、通常の原子間力顕微鏡モードにより表面を観察した
ところ、その位置に直径10nm、深さ2nmの穴が加
工されていることが確認された。本発明の探針1は、そ
れ自体が導電性を有し、かつ機械的及び電気的に安定で
あるため、例えば図4における(b)に示した従来の誘
電体探針の表面を導電性薄膜で被覆した探針を用いた場
合と比較して、長時間使用しても探針の針先部の摩耗に
よる加工穴の増大や、加工確率の低下は見られず、安定
性、加工精度の高い微細加工装置を実現できることがわ
かった。
【0014】<実施例5>次に、本発明の探針を用いた
記録再生装置の一実施例の構成及び動作をを図3を用い
て説明する。図3において、記録媒体23はシリコン基
板22の上に形成されている。シリコン基板22は回転
駆動可能な金属製の円盤21上に配置され、この円盤2
1を介して外部に電気的に接続されている。記録媒体2
3として、厚さ0.1μmのフッ化ビニリデン(VD
F)とトリフルオロエチレン(TrFE)との7:3の
共重合体薄膜を用いた。この記録媒体23は、比抵抗が
0.01Ω・cmのシリコン基板22の上に、溶媒とし
てヂメチルホルムアミドを用いスピンコート法によって
作成した。
【0015】探針1は薄膜カンチレバー32及び針状結
晶の針先部24等で構成されている。薄膜カンチレバー
32は、厚さ0.5μm、長さ200μm、幅40μm
の矩形状窒化珪素薄膜26と、Cr(30nm)/Cu
(200nm)/Au(80nm)の積層薄膜構造の導
電性薄膜25とで構成されている。針先部24は、長さ
10μmの酸化亜鉛の針状結晶である。針先部24はI
n−Sn合金により薄膜カンチレバー32の自由端近傍
に固定されている。なお、針先部24として用いた酸化
亜鉛の針状結晶の比抵抗は数Ω・cmである。この構成
により、後述する赤色発光半導体レーザー28から照射
されるレーザー光を反射することができると共に、探針
1(又は針先部24)に電圧を印加し、記録媒体23に
誘起される電圧を測定することができる。
【0016】探針1は圧電体微動装置27に取り付けら
れている。圧電体微動装置27は、赤色発光半導体レー
ザー28、2分割フォトダイオード29及び赤外光半導
体レーザー30等とともにトラッキングサーボ機構31
に取り付けられている。トラッキングサーボ機構31
は、探針1及び圧電体微動装置27等をY軸方向に大き
く移動させるためのものである。また、赤色発光半導体
レーザー28及び2分割フォトダイオード29はカンチ
レバー32の背面にレーザー光を照射し、その反射光を
検出するためのものであり、光テコを構成している。そ
して、この光テコによりカンチレバー32の変位(たわ
み量)を測定し、カンチレバー32のバネ定数から換算
される力を検出することにより、探針1の針先部24と
記録媒体23との間に働く力を検出する。また、赤外光
半導体レーザー30は記録媒体23の表面上の探針1の
針先部24と接触する部分に赤外光を照射し、記録媒体
23に電圧を誘起させるためのものである。また、圧電
体微動装置27は、記録媒体23の表面に垂直な方向
(Z軸方向)と、記録媒体23の移動方向(X軸方向)
とZ方向の双方に直交する方向(Y軸方向)に探針1の
位置を制御するためのものである。
【0017】以上のように構成された記録再生装置を用
いた情報の書き込み操作について説明する。まず、探針
1の下での記録媒体23の移動速度が1cm/secと
なるように円盤21を回転させる。次に、赤色発光半導
体レーザー28からカンチレバー32の背面にレーザー
光を照射し、その反射光を2分割フォトダイオード29
で検出し、探針1の針先部24と記録媒体23の表面と
の間に作用する力を検出する。この力が一定(約1×1
-9N)となるように、圧電体微動装置27を用いて探
針1の高さ(Z軸方向における位置)をフィードバック
制御する。この状態で、探針1の針先部24に電圧30
V、時間5μsecのパルス電圧を10μsecごとに
数回印加する。このように、記録媒体23の微小領域に
電界を印加し、記録媒体23の誘電分極方向を制御する
ことにより、情報の書き込みを行う。なお、このように
小さな斥力が働く領域で動作させることにより、探針1
の針先部24と記録媒体23との間に作用する摩擦力を
小さくすることができる。その結果、記録再生速度を高
めることができる。
【0018】次に、記録媒体23に書込まれた情報の読
み出し操作について説明する。赤外光半導体レーザー3
0を用いて、チョッピング周波数1MHzの赤外レーザ
ー光パルスを、探針1の針先部24が接触している部分
の記録媒体23に照射する。赤外レーザー光パルスの照
射により記録媒体23に誘起される電圧(焦電効果)
を、針先部24を介して導電性薄膜25の電圧として測
定する。赤外レーザー光パルスの照射面積は、1つの信
号が記録されている面積より十分大きくても問題はない
ため、直径約500μmとした。導電性薄膜25の電圧
をロックインアンプによって検出したところ、情報が記
録されていない部分では数μV以下であったが、情報を
記録した部分では数十μVであった。また、書き込み時
の電界の方向によって、誘起電圧の極性が反転して検出
された。なお、導電性薄膜25からの出力を高感度電流
電圧変換器に導入すれば、電流値の変化によっても情報
の読み出しを行うことができる。また、情報が記録され
ている部分は直径約80nmの領域であることが分かっ
た。このことは、直径80nmの微小な領域に1つの情
報を書き込み、かつ、読み出すことができ、超高密度の
記録再生を行うことができることを意味している。赤外
光は可視光よりも吸収され易いため、情報の読み出しに
赤外光を用いた場合、可視光を用いた場合よりも高感度
が得られた。
【0019】この実施例においては、記録媒体に誘電体
薄膜を用い、誘電特性の局所的な変化を利用して記録再
生を行う場合を説明した。しかし、本発明に係る探針
は、針先部24として機能する針状結晶を低融点金属を
用いてカンチレバーの自由端部近傍に接着するように構
成されているため、機械的及び電気的特性に優れ、かつ
安定している。また、記録媒体として磁気光学材料、結
晶相変化材料、グラファイトなどの層状結晶などを用い
た場合でも、当該探針を用いた本発明の記録再生装置は
S/N比が高く、長期間に渡り安定に動作させることが
できる。
【0020】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、導電性
薄膜又は導電性物質で被覆された誘電体薄膜からなるカ
ンチレバーの先端に、導電性針状結晶を低融点金属によ
り接着するように構成したので、接着剤である低融点金
属の導電性により、探針全体を金属薄膜で被覆する必要
がなくなり、その結果、針先部の曲率が大きくなること
はない。また、接着剤としての低融点金属を介して針状
結晶とカンチレバーとが電気的に接続されるため、電気
的接続が安定するという効果を有する。さらに、接着剤
としての低融点金属の機械的強度により、針状結晶がカ
ンチレバーから外れることもないという効果を有する。
また、このように構成された探針を記録再生装置や微細
加工装置に用いることにより、長期間にわたり安定して
情報の記録再生時のS/N比を高く維持することができ
ると共に、所望する形状に材料を微細加工することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の操作型探針顕微鏡用探針の一
実施例の構成を示す側面図、(b)はその平面図
【図2】本発明の探針を用いた走査型探針顕微鏡の一実
施例の構成を示す図
【図3】本発明の探針を用いた記録再生装置の一実施例
の構成を示す図
【図4】(a)は従来の原子間顕微鏡用の探針を示す側
面図、(b)は従来の記録再生装置又は微細加工装置用
の探針を示す側面図
【符号の説明】
1 : ガラス基板 2 : 誘電体薄膜 3 : 導電性薄膜 4 : 低融点合金 5 : 針状結晶 6 : 試料 7 : 導電性試料台 8 : 絶縁性試料台 9 : 3次元試料駆動装置 10 : レーザー光源10 11 : 2分割フォトダイオード 12 : 電圧発生装置 13 : 電流測定装置 14 : 位置制御装置 15 : コンピュータ 160: カンチレバー 160a:自由端 160b:固定端 21 : 円盤 22 : シリコン基板 23 : 記録媒体 24 : 針先部 25 : 導電性薄膜 26 : 誘電体薄膜 27 : 圧電体微動装置 28 : 赤色半導体レーザ 29 : 2分割フォトダイオード 30 : 赤外光半導体レーザー 31 : トラッキングサーボ機構
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 楠本 修 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性薄膜又は導電性物質で被覆された
    誘電体薄膜からなるカンチレバーと、前記カンチレバー
    の先端に低融点金属により接着された導電性針状結晶と
    を具備する走査型探針顕微鏡用探針。
  2. 【請求項2】 被覆用導電性物質は、金、白金及びニッ
    ケルから選ばれる少なくとも1つを主成分とすることを
    特徴とする請求項1記載の走査型探針顕微鏡用探針。
  3. 【請求項3】 導電性針状結晶は、酸化亜鉛、セレン化
    亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、酸化錫、酸
    化インジウム、遷移金属及びIII−V属化合物半導体か
    ら選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする請
    求項1又は2記載の走査型探針顕微鏡用探針。
  4. 【請求項4】 低融点金属は、亜鉛、錫、インジウム、
    ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成分と
    することを特徴とする請求項1、2又は3記載の走査型
    探針顕微鏡用探針。
  5. 【請求項5】 導電性薄膜又は導電性物質で被覆された
    誘電体薄膜からなるカンチレバーの先端に低融点金属を
    加熱融着させる第1の工程と、前記カンチレバーの先端
    に融着させた前記低融点金属を加熱溶融させ、導電性針
    状結晶の一方の端を前記低融点金属により前記カンチレ
    バーに接着する第2の工程とを具備する走査型探針顕微
    鏡用探針の製造方法。
  6. 【請求項6】 被覆用導電性物質は、金、白金及びニッ
    ケルから選ばれる少なくとも1つを主成分とすることを
    特徴とする請求項5記載の走査型探針顕微鏡用探針の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 導電性針状結晶は、酸化亜鉛、セレン化
    亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、酸化錫、酸
    化インジウム、遷移金属及びIII−V属化合物半導体か
    ら選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする請
    求項5又は6記載の走査型探針顕微鏡用探針の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 低融点金属は、亜鉛、錫、インジウム、
    ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成分と
    することを特徴とする請求項5、6又は7記載の走査型
    探針顕微鏡用探針の製造方法。
  9. 【請求項9】 第1の工程は、加熱溶融した低融点金属
    中にカンチレバー先端を浸漬させることを含むことを特
    徴とする請求項5記載の走査型探針顕微鏡用探針の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 第1の工程は、加熱したカンチレバー
    先端に低融点金属の微小片を載置し、前記カンチレバー
    先端に低融点金属を融着させることを含むことを特徴と
    する請求項5記載の走査型探針顕微鏡用探針の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 第2の工程は、カンチレバーの先端に
    融着した低融点金属を加熱溶融し、溶融した低融点金属
    の上に導電性針状結晶の一部を埋設した後、冷却固化す
    る操作を含むことを特徴とする請求項5から8のいずれ
    かに記載の走査型探針顕微鏡用探針の製造方法。
  12. 【請求項12】 第2の工程は、カンチレバーの先端に
    融着した低融点金属の上に導電性針状結晶を付着させた
    後、前記低融点金属を加熱溶融し、前記針状結晶の一部
    が前記低融点金属に埋設された状態で冷却固化する操作
    を含むことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記
    載の走査型探針顕微鏡用探針の製造方法。
  13. 【請求項13】 導電性薄膜又は導電性物質で被覆され
    た誘電体薄膜からなるカンチレバーと、前記カンチレバ
    ーの先端に低融点金属により接着された導電性針状結晶
    とを具備する探針を用いた記録再生装置。
  14. 【請求項14】 被覆用導電性物質は、金、白金及びニ
    ッケルから選ばれる少なくとも1つを主成分とすること
    を特徴とする請求項13記載の記録再生装置。
  15. 【請求項15】 導電性針状結晶は、酸化亜鉛、セレン
    化亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、酸化錫、
    酸化インジウム、遷移金属及びIII−V属化合物半導体
    から選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする
    請求項13又は14記載の記録再生装置。
  16. 【請求項16】 低融点金属は、亜鉛、錫、インジウ
    ム、ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成
    分とすることを特徴とする請求項13、14又は15記
    載の記録再生装置。
  17. 【請求項17】 導電性薄膜又は導電性物質で被覆され
    た誘電体薄膜からなるカンチレバーと、前記カンチレバ
    ーの先端に低融点金属により接着された導電性針状結晶
    とを具備する探針を用いた微細加工装置。
  18. 【請求項18】 被覆用導電性物質は、金、白金及びニ
    ッケルから選ばれる少なくとも1つを主成分とすること
    を特徴とする請求項17記載の微細加工装置。
  19. 【請求項19】 導電性針状結晶は、酸化亜鉛、セレン
    化亜鉛、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、酸化錫、
    酸化インジウム、遷移金属及びIII−V属化合物半導体
    から選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする
    請求項17又は18記載の微細加工装置。
  20. 【請求項20】 低融点金属は、亜鉛、錫、インジウ
    ム、ガリウム及び鉛から選ばれる少なくとも1つを主成
    分とすることを特徴とする請求項17、18又は19記
    載の微細加工装置。
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