JP2702401B2 - 樹脂封止型半導体装置とその製法 - Google Patents
樹脂封止型半導体装置とその製法Info
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- JP2702401B2 JP2702401B2 JP6094720A JP9472094A JP2702401B2 JP 2702401 B2 JP2702401 B2 JP 2702401B2 JP 6094720 A JP6094720 A JP 6094720A JP 9472094 A JP9472094 A JP 9472094A JP 2702401 B2 JP2702401 B2 JP 2702401B2
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、球状の溶融石英粉を配
合したエポキシ樹脂組成物で封止した樹脂封止型半導体
装置とその製法に関する。 【0002】 【従来の技術】トラジスタ、IC、LSI等の半導体装
置の外装には、金属、ガラス、セラミックス等を用いる
ハーメチック封止型と、エポキシ樹脂を主として用いる
樹脂封止型の二種類がある。前者は気密性に優れている
が非常に高価である。後者は大量生産ができるために安
価に製造することが可能である。そのため、現在では半
導体製品の80%以上が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹
脂を用いてトランスファ成形された樹脂封止型になって
いる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】半導体素子は集積度が
年々向上し、それに伴ってチップサイズの大型化、配線
の微細化、多層化等が進んでいる。一方、実装の高密度
化とパッケージサイズの小型薄型化により、パッケージ
形状も従来のDILP(Dual in Line Plastic Pack
age)からFPP(Flat Plastic Package)、SOP
(Small Outline Package)、PLCC(Plastic
Leaded Chip Carrier)等、ピン挿入実装型から面付
実装型に移行している。 【0004】このように集積度の向上、パッケージサイ
ズや形状、実装方式等の変遷に伴い、素子の微細化、パ
ッケージの封止樹脂層の薄肉化が進んでいる。そのた
め、封止品に熱的ストレスが加わると半導体装置を構成
する封止樹脂、リードフレーム、チップ等の線膨張係数
の違いによって発生する熱応力により、封止樹脂層やチ
ップのパッシベーション膜にクラックが生じたり、チッ
プ表面の配線の切断、短絡、位置ズレ等が起こり易く、
素子特性の変動や信頼性低下が問題になっている。さら
にこれらの問題は、パッケージの実装方式がピン挿入型
から面付型に移行し、従来よりも高い温度に晒されるた
めに、ますます重要な課題となっている。 【0005】樹脂封止型半導体に発生する熱応力は、各
構成材料の線膨張係数の違いによって発生する。そこ
で、各構成材料中、特に、封止樹脂の線膨張係数を小さ
くすることができれば、熱応力を大巾に低減することが
できる。 【0006】一般に、封止樹脂は線膨張係数の低減を目
的として、樹脂よりも線膨張係数の小さい無機質充填材
が配合されている。従って、線膨張係数を小さくするに
は、充填材の配合量を増せばよい。しかし、充填材の配
合量を増すと樹脂組成物の粘度が上昇し、流動性が低下
するため封止作業が困難になる。そのため、特定の粒度
分布を持つ無機充填材を用い、樹脂組成物の粘度上昇や
流動性低下をあまり起こさずに充填材の配合量を増す方
法が提案(特許第855789号)されている。 【0007】しかし、こうした手法を用いても、樹脂封
止型半導体の大部分に用いられているフェノール硬化型
エポキシ樹脂組成物は、ベース樹脂の粘度が高く、充填
材の配合量を増して線膨張係数の大巾な低減を図るには
限界があった。その理由は、従来、角ばった充填材を使
用していたため、充填材が嵩張り樹脂組成物の粘度上昇
や流動性の低下が起こり易かったものと思われる。その
対策として、例えば、特公昭60−26505号公報に
記載されているように、球形の充填材を用いる方法が提
案されているが、素子の高集積化、パッケージの小型薄
型化に十分対応し得る封止用樹脂組成物は得られなかっ
た。 【0008】また、樹脂封止した半導体素子に加わる熱
応力は、封止樹脂の弾性率やガラス転移温度を下げるこ
とによっても低減させることが可能である。しかし、樹
脂組成物のガラス転移温度を下げると、一般に高温の電
気特性や耐湿性等が低下し、半導体装置にとって好まし
くない結果を招く。そこで、アイ・イー・イー・イー、
トランザクション オン コンポーネンツ、ハイブリッ
ド、アンド マニュファクチュアリング テクノロジ
ー、シー エッチ エム テイ−8、第4号(1985
年)第486〜489頁〔IEEE,Transactions on
Components,Hybrids,and Manufacturing Techno
logy,CHMT−8.No.4 Dec.(1985)
pp486−489〕に示されているように、ベース樹
脂中にシリコーンゴムやポリブタジエンゴムのようなゴ
ム成分を配合し、硬化樹脂を海島構造化して弾性率を小
さくすることが行われている。 【0009】この方法は、樹脂の熱応力を小さくする効
果はあるが、線膨張係数の違いを減らす効果はほとんど
なく、本質的な熱応力低減の対策にはならない。こうし
た状況下で、熱応力の発生がより小さい樹脂封止型半導
体装置が強く望まれている。 【0010】本発明の目的は、線膨張係数と弾性率が小
さく、半導体素子に加わる熱応力の小さい信頼性に優れ
た樹脂封止型半導体装置とその製法を提供することにあ
る。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の要旨は、常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹
脂の変性剤であるシリコーン重合体および充填材を含む
樹脂組成物により封止された樹脂封止型半導体装置であ
って、前記充填材が石英粉を溶融して球形化した溶融石
英粉であり、その溶融石英粉の90重量%以上が0.5
〜100μmの粒径を有し、その粒度分布がRRS粒度
線図で表示した場合に直線で、その勾配nが0.65〜
0.95であり、前記樹脂組成物のSiO2成分が85重
量%以上で、硬化物の線膨張係数が1.3×10~5/℃
以下である樹脂封止型半導体装置および製法にある。 【0012】ここで、RRS粒度線図とは、図1に示す
Rosin−Rammlerの式に従う粒度分布を表わす粒度線図
(日本粉体工業協会頒布:粉体工学ハンドブック51〜
53頁)のことである。 【0013】 【数1】 【0014】〔但し、R(Dp):最大粒径から粒径D
pまでの累積重量%,Dp:粒径,bおよびn:定数〕 RRS粒度線図における勾配とは、RRS粒度線図の最
大粒径からの累積重量%が、25%と75%の二点を結
んだ直線で代表されるRosin−Rammlerの式のnの値の
ことを云う。 【0015】充填材の原石を微粉砕した場合の粒度分布
は、Rosin−Rammlerの式と一致し、この式に基づく粒
度分布を表わすRRS粒度線図では、ほぼ直線を示すと
されている。 【0016】本発明者らは、各種充填材の粒度分布を測
定したところ、特別のふるい分けをしない限り、いずれ
の充填材もその90重量%以上がRRS粒度線図で、ほ
ぼ、直線性を示し、上式によく適合することを確認して
いる。 【0017】本発明で用いる球状の溶融石英粉は、例え
ば、特開昭59−59737号公報に記載されているよ
うに、予め所定の粒度分布に粉砕した溶融石英粉を、プ
ロパン、ブタン、アセチレン、水素などの可燃性ガスを
燃料とする溶射装置から発生させた高温火炎中に一定量
ずつ供給して溶融して球形化し、冷却したものである。
上記の溶融石英はそれ自身の線膨張係数が比較的小さ
く、イオン性不純物も極めて少ないので、信頼性に優れ
た樹脂封止型半導体装置を提供するのに適している。 【0018】充填材の90重量%以上を粒径0.5〜1
00μmの範囲に限定する理由は、0.5μm未満の微
粒子が多くなると、樹脂組成物のチクソトロピック性が
大きくなり、粘度上昇や流動性が低下する。また、10
0μmを超える粒子が多くなると封止する際に、半導体
素子のAu線を変形,切断したり、粗い粒子が金型中で
目詰りを起こして、樹脂の充填不良等が発生するためで
ある。 【0019】次に、RRS粒度線図で示す勾配nを0.
65〜0.95とするのは、nが0.95より大きくなる
と充填材の嵩張りが大きくなり、樹脂組成物の粘度上昇
や流動性の低下が起こる。そこで、nはできるだけ小さ
い値が望ましいが、本発明においては実質的に全ての溶
融石英粉が0.5〜100μmの粒径範囲にあることが
望ましく、n値0.65と云うのは、この条件内でとり
得る最小の値である。 【0020】本発明で用いるシリコーン重合体は、アミ
ノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、ピリミジ
ン基等の官能基を末端あるいは側鎖に持つポリジメチル
シロキサンである。 【0021】前記の常温で固体のエポキシ樹脂は、半導
体封止用材料として一般に用いられているクレゾールノ
ボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポ
キシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を指し、
硬化剤としてフェノールノボラックやクレゾールノボラ
ック等のノボラック樹脂、無水ピロメリット酸や無水ベ
ンゾフェノン等の酸無水物等を用い、さらに硬化促進
剤、可撓化剤、カップリング剤、着色剤、難燃化剤、離
型剤等を必要に応じて配合することができる。このエポ
キシ樹脂組成物は、各素材を70〜100℃に加熱した
二軸ロールや押出機で混練し、トランスファプレスで金
型温度160〜190℃、成形圧力30〜100kg/
cm2、硬化時間1〜3分で成形することができる。 【0022】 【作用】常温で固体のエポキシ樹脂に充填材としてその
90重量%以上が粒径0.5〜100μmの範囲内にあ
って、しかも、その粒度分布をRRS粒度線図で表示し
た場合にその勾配nが0.65〜0.95の範囲で直線性
を示す球形の溶融石英粉と、変性剤としてシリコーン重
合体を配合し、その配合量が充填材とシリコーン重合体
を合せたSiO2成分が、樹脂組成物全体に対し85重
量%以上の樹脂組成物は、SiO2成分が多いにもかか
わらず、比較的低粘度で流動性に優れ、しかも、硬化物
の線膨張係数が1.3×10~5/℃以下と小さく、弾性
率も小さい。 【0023】従って、封止時の半導体素子のAuボンデ
イングワイヤの変形,断線が少なく、線膨張係数の差に
基づく熱応力が小さいために、耐温度サイクル性、耐熱
性、耐湿性等が良好である。 【0024】充填材として石英粉を溶融することにより
球形化した球状石英粉を用いたことにより、かさばりが
小さくなり高充填化し易い。さらに、半導体素子の封止
の際、充填材の角部が素子を損傷して素子特性に悪影響
を及ぼすのを防ぐことができる。さらに、シリコーン重
合体を配合したことにより弾性率を小さくすることがで
き、線膨張係数の違いによって生じる熱応力をより小さ
くすることができる。 【0025】 【実施例】本発明を実施例により具体的に説明する。 【0026】〔実施例1,2および比較例1〜3〕図1
に示す各種の充填材を用い、表1に示すエポキシ樹脂組
成物を約80℃に加熱した二軸ロールで約10分間混練
した。 【0027】得られた各組成物について180℃におけ
るゲル化時間、高化式フローテスターを用いた180℃
における最低溶融粘度(7min)、及び、流動性の尺
度としてEMMI−1−66に準じ、金型温度180
℃、成形圧力70kg/cm2、成形時間1.5分でスパ
イラルフロー(SF)を測定した。結果を表1に示す。 【0028】本発明の球状充填材を用いた組成物は、角
状の充填材を用いた組成物とゲル化時間はほとんど同じ
でも、溶融粘度が極めて低く、また、流動性も大きい。
さらに、RRS粒度線図で表示した勾配nが小さな値の
充填材を配合した組成物ほど溶融粘度が低く流動性が大
きいことが明らかである。しかし、図3に示すように、
n値が0.6より小さくなると、溶融粘度が急激に上昇
するので好ましくない。 【0029】 【表1】 【0030】〔実施例3,4および比較例4〜6〕充填
材として図1に示す球状充填材(球−1)を用い、実施
例1と同様にして、充填材とシリコーン重合体とを合せ
たSiO2成分(大気中800℃,5時間焼成後の残渣
量)が70、75、80、85重量%、及びシリコーン
重合体を含まずSiO2成分が80重量%の樹脂組成物
をそれぞれ作成した。 【0031】これらの樹脂組成物を用いてトランスファ
成形し、180℃/6時間の後硬化を行って線膨張係
数、曲げ弾性率、ガラス転移温度を測定した。 【0032】また、図2に示すような金属円筒1をモー
ルドした場合に円筒に加わる熱応力を、円筒内側に貼り
付けたストレインゲージ2によって測定した。 【0033】さらにまた、表面にアルミニウムのジグザ
グ配線を形成した半導体素子を封止し、−55℃/30
分⇔+150℃/30分の冷熱サイクル試験を行い、封
止樹脂層の耐クラック性、リード・金ワイヤボンデイン
グ,アルミニウム配線の接続信頼性(抵抗値が50%以
上変化した場合を不良と判定)を評価した。これらの結
果を表2に示す。 【0034】表2より、シリコーン重合体を含みSiO
2成分が80重量%以上の組成物は、線膨張係数が1.3
×10~5/℃以下と小さく、弾性率の増加も少ない。従
ってインサートに生じる熱応力も小さいことが分かる。 【0035】本実施例のような樹脂組成物を用いた樹脂
封止型半導体装置は、冷熱サイクル試験のような熱衝撃
が加えられても耐クラック性や配線の接続信頼性が極め
て優れている。 【0036】 【表2】【0037】 【発明の効果】本発明の半導体封止用樹脂組成物は、流
動性に優れ、硬化後の線膨張係数が小さく、弾性率も小
さいので、半導体素子との線膨張係数の差によって生じ
る熱応力を小さくすることができ、信頼性に優れた樹脂
封止型半導体装置を提供することができる。
合したエポキシ樹脂組成物で封止した樹脂封止型半導体
装置とその製法に関する。 【0002】 【従来の技術】トラジスタ、IC、LSI等の半導体装
置の外装には、金属、ガラス、セラミックス等を用いる
ハーメチック封止型と、エポキシ樹脂を主として用いる
樹脂封止型の二種類がある。前者は気密性に優れている
が非常に高価である。後者は大量生産ができるために安
価に製造することが可能である。そのため、現在では半
導体製品の80%以上が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹
脂を用いてトランスファ成形された樹脂封止型になって
いる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】半導体素子は集積度が
年々向上し、それに伴ってチップサイズの大型化、配線
の微細化、多層化等が進んでいる。一方、実装の高密度
化とパッケージサイズの小型薄型化により、パッケージ
形状も従来のDILP(Dual in Line Plastic Pack
age)からFPP(Flat Plastic Package)、SOP
(Small Outline Package)、PLCC(Plastic
Leaded Chip Carrier)等、ピン挿入実装型から面付
実装型に移行している。 【0004】このように集積度の向上、パッケージサイ
ズや形状、実装方式等の変遷に伴い、素子の微細化、パ
ッケージの封止樹脂層の薄肉化が進んでいる。そのた
め、封止品に熱的ストレスが加わると半導体装置を構成
する封止樹脂、リードフレーム、チップ等の線膨張係数
の違いによって発生する熱応力により、封止樹脂層やチ
ップのパッシベーション膜にクラックが生じたり、チッ
プ表面の配線の切断、短絡、位置ズレ等が起こり易く、
素子特性の変動や信頼性低下が問題になっている。さら
にこれらの問題は、パッケージの実装方式がピン挿入型
から面付型に移行し、従来よりも高い温度に晒されるた
めに、ますます重要な課題となっている。 【0005】樹脂封止型半導体に発生する熱応力は、各
構成材料の線膨張係数の違いによって発生する。そこ
で、各構成材料中、特に、封止樹脂の線膨張係数を小さ
くすることができれば、熱応力を大巾に低減することが
できる。 【0006】一般に、封止樹脂は線膨張係数の低減を目
的として、樹脂よりも線膨張係数の小さい無機質充填材
が配合されている。従って、線膨張係数を小さくするに
は、充填材の配合量を増せばよい。しかし、充填材の配
合量を増すと樹脂組成物の粘度が上昇し、流動性が低下
するため封止作業が困難になる。そのため、特定の粒度
分布を持つ無機充填材を用い、樹脂組成物の粘度上昇や
流動性低下をあまり起こさずに充填材の配合量を増す方
法が提案(特許第855789号)されている。 【0007】しかし、こうした手法を用いても、樹脂封
止型半導体の大部分に用いられているフェノール硬化型
エポキシ樹脂組成物は、ベース樹脂の粘度が高く、充填
材の配合量を増して線膨張係数の大巾な低減を図るには
限界があった。その理由は、従来、角ばった充填材を使
用していたため、充填材が嵩張り樹脂組成物の粘度上昇
や流動性の低下が起こり易かったものと思われる。その
対策として、例えば、特公昭60−26505号公報に
記載されているように、球形の充填材を用いる方法が提
案されているが、素子の高集積化、パッケージの小型薄
型化に十分対応し得る封止用樹脂組成物は得られなかっ
た。 【0008】また、樹脂封止した半導体素子に加わる熱
応力は、封止樹脂の弾性率やガラス転移温度を下げるこ
とによっても低減させることが可能である。しかし、樹
脂組成物のガラス転移温度を下げると、一般に高温の電
気特性や耐湿性等が低下し、半導体装置にとって好まし
くない結果を招く。そこで、アイ・イー・イー・イー、
トランザクション オン コンポーネンツ、ハイブリッ
ド、アンド マニュファクチュアリング テクノロジ
ー、シー エッチ エム テイ−8、第4号(1985
年)第486〜489頁〔IEEE,Transactions on
Components,Hybrids,and Manufacturing Techno
logy,CHMT−8.No.4 Dec.(1985)
pp486−489〕に示されているように、ベース樹
脂中にシリコーンゴムやポリブタジエンゴムのようなゴ
ム成分を配合し、硬化樹脂を海島構造化して弾性率を小
さくすることが行われている。 【0009】この方法は、樹脂の熱応力を小さくする効
果はあるが、線膨張係数の違いを減らす効果はほとんど
なく、本質的な熱応力低減の対策にはならない。こうし
た状況下で、熱応力の発生がより小さい樹脂封止型半導
体装置が強く望まれている。 【0010】本発明の目的は、線膨張係数と弾性率が小
さく、半導体素子に加わる熱応力の小さい信頼性に優れ
た樹脂封止型半導体装置とその製法を提供することにあ
る。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の要旨は、常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹
脂の変性剤であるシリコーン重合体および充填材を含む
樹脂組成物により封止された樹脂封止型半導体装置であ
って、前記充填材が石英粉を溶融して球形化した溶融石
英粉であり、その溶融石英粉の90重量%以上が0.5
〜100μmの粒径を有し、その粒度分布がRRS粒度
線図で表示した場合に直線で、その勾配nが0.65〜
0.95であり、前記樹脂組成物のSiO2成分が85重
量%以上で、硬化物の線膨張係数が1.3×10~5/℃
以下である樹脂封止型半導体装置および製法にある。 【0012】ここで、RRS粒度線図とは、図1に示す
Rosin−Rammlerの式に従う粒度分布を表わす粒度線図
(日本粉体工業協会頒布:粉体工学ハンドブック51〜
53頁)のことである。 【0013】 【数1】 【0014】〔但し、R(Dp):最大粒径から粒径D
pまでの累積重量%,Dp:粒径,bおよびn:定数〕 RRS粒度線図における勾配とは、RRS粒度線図の最
大粒径からの累積重量%が、25%と75%の二点を結
んだ直線で代表されるRosin−Rammlerの式のnの値の
ことを云う。 【0015】充填材の原石を微粉砕した場合の粒度分布
は、Rosin−Rammlerの式と一致し、この式に基づく粒
度分布を表わすRRS粒度線図では、ほぼ直線を示すと
されている。 【0016】本発明者らは、各種充填材の粒度分布を測
定したところ、特別のふるい分けをしない限り、いずれ
の充填材もその90重量%以上がRRS粒度線図で、ほ
ぼ、直線性を示し、上式によく適合することを確認して
いる。 【0017】本発明で用いる球状の溶融石英粉は、例え
ば、特開昭59−59737号公報に記載されているよ
うに、予め所定の粒度分布に粉砕した溶融石英粉を、プ
ロパン、ブタン、アセチレン、水素などの可燃性ガスを
燃料とする溶射装置から発生させた高温火炎中に一定量
ずつ供給して溶融して球形化し、冷却したものである。
上記の溶融石英はそれ自身の線膨張係数が比較的小さ
く、イオン性不純物も極めて少ないので、信頼性に優れ
た樹脂封止型半導体装置を提供するのに適している。 【0018】充填材の90重量%以上を粒径0.5〜1
00μmの範囲に限定する理由は、0.5μm未満の微
粒子が多くなると、樹脂組成物のチクソトロピック性が
大きくなり、粘度上昇や流動性が低下する。また、10
0μmを超える粒子が多くなると封止する際に、半導体
素子のAu線を変形,切断したり、粗い粒子が金型中で
目詰りを起こして、樹脂の充填不良等が発生するためで
ある。 【0019】次に、RRS粒度線図で示す勾配nを0.
65〜0.95とするのは、nが0.95より大きくなる
と充填材の嵩張りが大きくなり、樹脂組成物の粘度上昇
や流動性の低下が起こる。そこで、nはできるだけ小さ
い値が望ましいが、本発明においては実質的に全ての溶
融石英粉が0.5〜100μmの粒径範囲にあることが
望ましく、n値0.65と云うのは、この条件内でとり
得る最小の値である。 【0020】本発明で用いるシリコーン重合体は、アミ
ノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、ピリミジ
ン基等の官能基を末端あるいは側鎖に持つポリジメチル
シロキサンである。 【0021】前記の常温で固体のエポキシ樹脂は、半導
体封止用材料として一般に用いられているクレゾールノ
ボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポ
キシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を指し、
硬化剤としてフェノールノボラックやクレゾールノボラ
ック等のノボラック樹脂、無水ピロメリット酸や無水ベ
ンゾフェノン等の酸無水物等を用い、さらに硬化促進
剤、可撓化剤、カップリング剤、着色剤、難燃化剤、離
型剤等を必要に応じて配合することができる。このエポ
キシ樹脂組成物は、各素材を70〜100℃に加熱した
二軸ロールや押出機で混練し、トランスファプレスで金
型温度160〜190℃、成形圧力30〜100kg/
cm2、硬化時間1〜3分で成形することができる。 【0022】 【作用】常温で固体のエポキシ樹脂に充填材としてその
90重量%以上が粒径0.5〜100μmの範囲内にあ
って、しかも、その粒度分布をRRS粒度線図で表示し
た場合にその勾配nが0.65〜0.95の範囲で直線性
を示す球形の溶融石英粉と、変性剤としてシリコーン重
合体を配合し、その配合量が充填材とシリコーン重合体
を合せたSiO2成分が、樹脂組成物全体に対し85重
量%以上の樹脂組成物は、SiO2成分が多いにもかか
わらず、比較的低粘度で流動性に優れ、しかも、硬化物
の線膨張係数が1.3×10~5/℃以下と小さく、弾性
率も小さい。 【0023】従って、封止時の半導体素子のAuボンデ
イングワイヤの変形,断線が少なく、線膨張係数の差に
基づく熱応力が小さいために、耐温度サイクル性、耐熱
性、耐湿性等が良好である。 【0024】充填材として石英粉を溶融することにより
球形化した球状石英粉を用いたことにより、かさばりが
小さくなり高充填化し易い。さらに、半導体素子の封止
の際、充填材の角部が素子を損傷して素子特性に悪影響
を及ぼすのを防ぐことができる。さらに、シリコーン重
合体を配合したことにより弾性率を小さくすることがで
き、線膨張係数の違いによって生じる熱応力をより小さ
くすることができる。 【0025】 【実施例】本発明を実施例により具体的に説明する。 【0026】〔実施例1,2および比較例1〜3〕図1
に示す各種の充填材を用い、表1に示すエポキシ樹脂組
成物を約80℃に加熱した二軸ロールで約10分間混練
した。 【0027】得られた各組成物について180℃におけ
るゲル化時間、高化式フローテスターを用いた180℃
における最低溶融粘度(7min)、及び、流動性の尺
度としてEMMI−1−66に準じ、金型温度180
℃、成形圧力70kg/cm2、成形時間1.5分でスパ
イラルフロー(SF)を測定した。結果を表1に示す。 【0028】本発明の球状充填材を用いた組成物は、角
状の充填材を用いた組成物とゲル化時間はほとんど同じ
でも、溶融粘度が極めて低く、また、流動性も大きい。
さらに、RRS粒度線図で表示した勾配nが小さな値の
充填材を配合した組成物ほど溶融粘度が低く流動性が大
きいことが明らかである。しかし、図3に示すように、
n値が0.6より小さくなると、溶融粘度が急激に上昇
するので好ましくない。 【0029】 【表1】 【0030】〔実施例3,4および比較例4〜6〕充填
材として図1に示す球状充填材(球−1)を用い、実施
例1と同様にして、充填材とシリコーン重合体とを合せ
たSiO2成分(大気中800℃,5時間焼成後の残渣
量)が70、75、80、85重量%、及びシリコーン
重合体を含まずSiO2成分が80重量%の樹脂組成物
をそれぞれ作成した。 【0031】これらの樹脂組成物を用いてトランスファ
成形し、180℃/6時間の後硬化を行って線膨張係
数、曲げ弾性率、ガラス転移温度を測定した。 【0032】また、図2に示すような金属円筒1をモー
ルドした場合に円筒に加わる熱応力を、円筒内側に貼り
付けたストレインゲージ2によって測定した。 【0033】さらにまた、表面にアルミニウムのジグザ
グ配線を形成した半導体素子を封止し、−55℃/30
分⇔+150℃/30分の冷熱サイクル試験を行い、封
止樹脂層の耐クラック性、リード・金ワイヤボンデイン
グ,アルミニウム配線の接続信頼性(抵抗値が50%以
上変化した場合を不良と判定)を評価した。これらの結
果を表2に示す。 【0034】表2より、シリコーン重合体を含みSiO
2成分が80重量%以上の組成物は、線膨張係数が1.3
×10~5/℃以下と小さく、弾性率の増加も少ない。従
ってインサートに生じる熱応力も小さいことが分かる。 【0035】本実施例のような樹脂組成物を用いた樹脂
封止型半導体装置は、冷熱サイクル試験のような熱衝撃
が加えられても耐クラック性や配線の接続信頼性が極め
て優れている。 【0036】 【表2】【0037】 【発明の効果】本発明の半導体封止用樹脂組成物は、流
動性に優れ、硬化後の線膨張係数が小さく、弾性率も小
さいので、半導体素子との線膨張係数の差によって生じ
る熱応力を小さくすることができ、信頼性に優れた樹脂
封止型半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】充填材の粒度分布特性図である。
【図2】熱応力測定装置の模式断面図である。
【図3】充填材のn値と樹脂組成物の溶融粘度との関係
を示すグラフである。 【符号の説明】 1…金属円筒、2…ストレンゲージ、3…熱電対、4…
樹脂硬化物。
を示すグラフである。 【符号の説明】 1…金属円筒、2…ストレンゲージ、3…熱電対、4…
樹脂硬化物。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
H01L 23/31
(56)参考文献 特開 昭61−12051(JP,A)
特開 昭57−212225(JP,A)
特開 昭53−123457(JP,A)
特開 昭58−138740(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の変性
剤であるシリコーン重合体および充填材を含む樹脂組成
物により封止された樹脂封止型半導体装置であって、前
記充填材が石英粉を溶融して球形化した溶融石英粉であ
り、その溶融石英粉の90重量%以上が0.5〜100
μmの粒径を有し、その粒度分布がRRS粒度線図で表
示した場合に直線で、その勾配nが0.65〜0.95で
あり、前記樹脂組成物のSiO2成分が85重量%以上
で、硬化物の線膨張係数が1.3×10~5/℃以下であ
ることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。 2.常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の変性
剤であるシリコーン重合体および充填材を含む樹脂組成
物を用いて封止する樹脂封止型半導体装置の製法であっ
て、前記充填材が石英粉を溶融して球形化した溶融石英
粉であり、その溶融石英粉の90重量%以上が0.5〜
100μmの粒径を有し、前記樹脂組成物中のSiO2
成分が85重量%以上である樹脂組成物を用いて、トラ
ンスファ成形法により半導体素子を封止することを特徴
とする樹脂封止型半導体装置の製法。 3.常温で固体のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂の変性
剤であるシリコーン重合体および充填材を含む樹脂組成
物を用いて封止する樹脂封止型半導体装置の製法であっ
て、前記充填材が石英粉を溶融して球形化した溶融石英
粉であり、その溶融石英粉の90重量%以上が0.5〜
100μmの粒径を有し、その粒度分布がRRS粒度線
図で表示した場合に直線で、その勾配nが0.65〜0.
95であり、前記樹脂組成物中のSiO2成分が85重
量%以上である樹脂組成物を用いて、トランスファ成形
法により半導体素子を封止することを特徴とする樹脂封
止型半導体装置の製法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP6094720A JP2702401B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 樹脂封止型半導体装置とその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6094720A JP2702401B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 樹脂封止型半導体装置とその製法 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP25176286A Division JPS63108021A (ja) | 1986-10-24 | 1986-10-24 | 樹脂封止型半導体装置 |
Related Child Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9165711A Division JP3002652B2 (ja) | 1997-06-23 | 1997-06-23 | 面付実装型樹脂封止半導体装置およびその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0770282A JPH0770282A (ja) | 1995-03-14 |
JP2702401B2 true JP2702401B2 (ja) | 1998-01-21 |
Family
ID=14117972
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6094720A Expired - Fee Related JP2702401B2 (ja) | 1994-05-09 | 1994-05-09 | 樹脂封止型半導体装置とその製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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CN111684010B (zh) * | 2018-12-06 | 2023-08-04 | 浙江华飞电子基材有限公司 | 一种用于超高压器件的液态浇注树脂组合物 |
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JPS57212225A (en) * | 1981-06-24 | 1982-12-27 | Nitto Electric Ind Co Ltd | Epoxy resin composition for encapsulation of semiconductor |
JPS58138740A (ja) * | 1982-02-15 | 1983-08-17 | Denki Kagaku Kogyo Kk | 樹脂組成物 |
JPS6112051A (ja) * | 1984-06-27 | 1986-01-20 | Toshiba Corp | 半導体封止用エポキシ樹脂成形材料 |
-
1994
- 1994-05-09 JP JP6094720A patent/JP2702401B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0770282A (ja) | 1995-03-14 |
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