JP2700730B2 - 艶消し電着塗膜の形成方法 - Google Patents

艶消し電着塗膜の形成方法

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JP2700730B2
JP2700730B2 JP3216427A JP21642791A JP2700730B2 JP 2700730 B2 JP2700730 B2 JP 2700730B2 JP 3216427 A JP3216427 A JP 3216427A JP 21642791 A JP21642791 A JP 21642791A JP 2700730 B2 JP2700730 B2 JP 2700730B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、艶消し電着塗膜の形成
方法に関し、特に特定のメラミン樹脂を硬化剤として使
用することにより、艶ムラが起きず、一回の電着塗装で
厚膜が得られ、かつ良好な外観を形成し得る艶消し電着
塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電着塗膜の艶消し方法として多く
の方法が提案されている。例えばシリカ微粉末などの無
機顔料やポリエチレン、ポリプロピレンなどの微粉末を
含有させる方法(例えば、特開昭56−16569 号、特開昭
56−75596 号、特開昭60−135466号)、電着塗膜を酸性
処理液で後処理する方法(例えば、特開昭52−137444
号)等が提案されている。しかしながら、これらの方法
では、艶消し剤の沈降等により、均一な艶消塗膜が得ら
れなかったり、後処理工程が多くなり、処理溶液からの
引き上げ時や水洗時に艶ムラが生じ、さらに塗膜性能の
面で副作用が生じる等の欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の欠点を克服した
電着塗料の艶消し方法として、主剤樹脂と硬化剤である
メラミン樹脂とをあらかじめ酸の存在下で加熱して高分
子量化した電着塗料を使用する方法(例えば、特開昭58
−215466号)や、主剤樹脂にアルコキシシラン基を導入
し、共重合体樹脂中に不溶性の粒子内ゲル構造を形成す
る方法が提案されている(特公昭62−24519 号公報)。
しかしながら、これらの方法では、原料樹脂を高分子量
化する必要があり、その程度により光沢値が変動し、艶
消し度をコントロールするのが困難であるという問題が
ある。また、アルミニウム材に塗装した場合、下地の隠
蔽性が必ずしも十分でなく、アルミニウム材のダイスマ
ーク等が目立ってしまうと問題がある。さらに艶消し成
分として高度に反応した高分子量成分を含有するため、
電着塗装時の塗膜抵抗が大きく、塗装電圧が高くなり、
厚膜を得るのが困難であるという問題がある。
【0004】一方、ブチル化メラミン樹脂とアクリル樹
脂を特定条件下で反応させて電着被覆用組成物として用
いる方法が特開昭58-147467 号に開示されているが、こ
の組成物による方法は、耐溶剤性、耐薬品性、硬度、低
温焼付性等の改良にとどまっており、良好な艶消し外観
の塗膜を得るのは困難であった。
【0005】従って、本発明の目的は、一回の電着塗装
で厚膜が得られ、かつ下地のダイスマーク等の目立たな
い良好な外観を形成し得る艶消し電着塗膜の形成方法を
提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、アクリル樹脂を主剤とする艶消
し電着塗膜の形成において、硬化剤として使用するメラ
ミン樹脂の構造が、艶消し効果に大きく影響することを
見出した。さらに本発明者らは、特定のメラミン樹脂を
硬化剤として使用すれば、一回の電着塗装で厚膜が得ら
れ、かつ下地のダイスマーク等が目立たず、良好な艶消
し塗膜を安定して形成できることを見出した。以上に基
づき本発明に想到した。
【0007】すなわち、本発明の艶消し電着塗膜の形成
方法は、艶消し電着塗料組成物を希釈してなる水性塗料
から電着することにより艶消し塗膜を形成するもので、
前記艶消し電着塗料組成物が、(I)酸価が20〜150及び
水酸基価が30〜150 のアクリル樹脂、及び(II)メラミン
核1個当り、平均3.5 個以上のエーテル基を有し、前記
エーテル基の70〜100%がブトキシ基である実質的
に非水溶性のアルキルエーテル化メチロールメラミン樹
脂を含有し、かつ、前記(I)と(II)との重量比が40/60
〜80/20であることを特徴とする。
【0008】本発明を以下詳細に説明する。(I)アクリル系樹脂 本発明の方法において使用するアクリル樹脂は、酸価が
20〜150 、好ましくは30〜100 で、水酸基価が30〜150
、好ましくは40〜100 のものであり、(a) エチレン性
不飽和カルボン酸単量体と、(b) ヒドロキシル基含有重
合性不飽和単量体と、(c) エチレン性不飽和カルボン酸
エステル単量体及び/又はビニル単量体とを共重合する
ことにより製造することができる。
【0009】上記成分(a) は、主として共重合樹脂に水
稀釈性、電気泳動性、硬化時の触媒作用等を付与するも
のであり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン
酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイ
ン酸、フマル酸等が挙げられる。これらは単独でも2種
以上を混合しても用いることができる。
【0010】このような成分(a) は、アクリル樹脂 (共
重合樹脂) の酸価が20〜150 、好ましくは30〜100とな
るような範囲で使用される。アクリル樹脂の酸価が20未
満では、水稀釈性や艶消し性が低下し、また150 を超え
ると、耐水性及び耐候性が低下する。
【0011】また成分(b) は、主として硬化剤であるメ
ラミン樹脂との硬化性を付与するものであり、例えば2-
ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメ
タクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒド
ロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアク
リレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げら
れる。これらは単独でも2種以上を混合しても用いるこ
とができる。
【0012】このような成分(b) は共重合樹脂中の水酸
基価が30〜150 、好ましくは40〜100 となるような範囲
で使用される。水酸基価が30未満では硬化性が不十分で
あり、また150 を超えると塗膜が脆化したり、耐水性が
低下する。
【0013】さらに成分(c) は、主として共重合樹脂の
骨格を形成する成分であり、アクリル酸、メタクリル酸
等のアルキルエステル等の他、通常のビニル単量体を使
用することができる。これらの例としては、例えば、メ
チルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアク
リレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレ
ート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリ
レート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルアクリ
レート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレ
ート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレー
ト、t-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレ
ート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリ
レート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレ
ート、ステアリルメタクリレート、2-エチルヘキシルア
クリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ジメチ
ルアミノエチルメタクリレートなどのアクリル酸、メタ
クリル酸等のエステルの他、スチレン、メチルスチレ
ン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、
アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリ
ルアミド、メチロールメタクリルアミド、n-ブトキシメ
チルアクリルアミド等のビニル単量体が挙げられる。こ
れらは単独でも2種以上を混合しても用いることができ
る。
【0014】このようなアクリル樹脂の好ましい数平均
分子量は 3,000〜70,000である。数平均分子量が 3,000
以上であれば、塗膜耐久性が十分に得られ、また70,000
以下であれば水溶性又は水分散型となりやすく、粘度が
適切で、取り扱い性が良好である。特に艶消し性と塗装
安定性の点で数平均分子量が 10,000 〜50,000であるの
が好ましい。またアクリル樹脂の好ましいガラス転移温
度は−10〜60℃であり、特に20〜50℃が艶消性と柔軟性
の点で好ましい。
【0015】アクリル樹脂中における(a) エチレン性不
飽和カルボン酸単量体の使用量は、上述したように所定
の酸価を与えるのに必要な量とする。具体的には、(a)
+(b) +(c) の合計を100 重量%として3〜20重量%が
好ましい。
【0016】また(b) ヒドロキシル基含有重合性不飽和
単量体の使用量は、上述したように所定の水酸基価を与
えるのに必要な量とする。具体的には、(a) +(b) +
(c) の合計を100 重量%として6〜30重量%が好まし
い。
【0017】さらに(c) エチレン性不飽和カルボン酸エ
ステル単量体及び/又はビニル単量体の使用量は、アク
リル樹脂の骨格を形成するのに必要な量とする。具体的
には、(a) +(b) +(c) の合計を100 重量%として50〜
91重量%が好ましい。
【0018】上述したようなアクリル樹脂は、前記各単
量体を溶液重合、非水性分散重合、塊状重合、エマルジ
ョン重合、懸濁重合等の公知の方法で重合することによ
って得られるが、特にイソプロピルアルコール、イソブ
チルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ
等の親水性溶剤を用いた溶液重合法によって得るのが好
ましい。
【0019】得られたアクリル樹脂を水溶性又は水分散
型 (水稀釈性) とするために、樹脂中のカルボキシル基
の少なくとも一部を塩基性物質、例えば有機アミンある
いは無機塩基で中和するのが好ましい。かかる塩基性物
質としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリ
メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モ
ノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエ
タノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチル
エタノールアミン、などの有機アミン、あるいはアンモ
ニアが好適である。このような塩基性物質による中和率
は30〜100 %が適当であるが、特に50〜95%であると水
稀釈性が良好で、艶ムラを生じないので好ましい。
【0020】(II) メラミン樹脂 本発明で用いるメラミン樹脂は、メラミン核1個当り、
平均3.5 個以上のエーテル基を有し、前記エーテル基の
70〜100%がブトキシ基である実質的に非水溶性の
アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂である。こ
の場合のブトキシ基は、n−ブトキシ基、i−ブトキシ
基及びt−ブトキシ基のいずれでもよい。またブトキシ
基以外のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ
基等が挙げられる。エーテル基の含有数の平均が3.5 個
未満では、十分な艶消し効果が得られない。好ましいエ
ーテル基の含有数は平均4.5 個以上である。またブトキ
シ基が70%未満では、艶消し効果が少なくなる。好まし
くはブトキシ基が80%以上である。なお、メラミン樹脂
の平均重合度は水溶液の安定性の点で3.0 核体以下が好
ましい。
【0021】上述したような主剤のアクリル樹脂(I)
と、硬化剤のメラミン樹脂(II)の配合割合は、固形分を
基準とした重量比((I)/(II)) で40/60〜80/20、好ま
しくは50/50〜70/30である。重量比が40/60未満では
塗料の安定性が損なわれ、一方80/20を超えると、艶消
し効果が十分でなく、また塗膜の耐薬品性が低下する。
【0022】本発明において使用する艶消し電着塗料
は、アクリル樹脂(I)と、メラミン樹脂(II)とを混合
し、得られる組成物を稀釈することによって得ることが
できる。成分(I)と成分(II)の混合方法は特に制限はな
く、常温で行うことができる。混合の際の均一性を増す
ために成分(I)と成分(II)とが反応して高分子量化しな
い程度に加温するのが好ましい。また成分(I)は前記塩
基性物質の添加により、水稀釈性を付与された後、成分
(II)と混合しても、成分(II)と混合した後、塩基性物質
の添加することにより、水稀釈性を付与されてもよい。
【0023】さらに、所望により、乾きムラ及び水洗性
を改善するための界面活性剤、艶消し補助及び平滑性改
善のための顔料、平滑性及び艶消し改善のためのワック
ス、ラテックス等、その他に着色剤、可塑剤、酸性・塩
基性物質等を適宜加えることができる。これらの混合物
は、水で稀釈され、艶消し電着塗料として使用される。
また、必要に応じ、他のアクリル樹脂や他のメラミン樹
脂を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することが
できる。
【0024】このような本発明の電着塗料組成物は、被
塗物を陽極として電着塗装する。この際、電着塗料浴中
の塗料組成物の固形分濃度は、5〜15重量%が適当であ
る。5重量%未満の場合には塗装電圧が高くなりすぎ、
一方15重量%を超えると塗装系外への損失が大きく経済
的でない。また、電着塗装は、通常電着塗料浴温度15〜
35℃、塗装電圧50〜250 V及び電着時間1〜5分の条件
で行うことができる。このような本発明の艶消し電着塗
膜の形成方法によれば、塗膜の膜厚を5〜60μmの範囲
で適宜選択して調整することができる。
【0025】電着塗装した被塗物は必要により水洗し、
ついで 140〜200 ℃で10〜60分間、加熱硬化することに
より、光沢の安定した良好な外観の艶消し電着塗膜が形
成される。
【0026】本発明の艶消し電着塗装方法に適用できる
被塗物は、導電性を有するものであれば特に限定されな
いが、被塗物としてアルミニウム又はアルミニウム合金
を用いた場合には、平滑性等の性能に優れた均一な艶消
し塗膜が得られ、アルミニウム材のダイスマーク等が目
立たないおちついた外観の艶消し塗膜を得ることができ
る。
【0027】
【作用】アルキルーテル化メチロールメラミン樹脂は、
メチロール化度、エーテル化度、エーテル基の種類によ
り性質を異にするが、特に電着塗装の場合、主剤の樹脂
との組合せにより、他の塗装方法、例えばスプレー塗装
やロールコータによる塗装などに比べ、外観などの点に
おいて著しい差を生じることがある。
【0028】本発明の高度にブチルエーテル化した特定
のアルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂を硬化剤
として使用することにより、特定のアクリル樹脂を主剤
とした電着塗料により電着塗装を行い、焼付硬化させる
と、電着塗膜表面に微細な凹凸が形成され、艶消し塗膜
が得られる。この微細な凹凸の発生機構については必ず
しも明らかではないが、スプレー塗装などでは生じない
ことから、上記メラミン樹脂の非水溶性、反応性に起因
した、電着塗膜析出、あるいは加熱硬化時の収縮歪みに
よるものであると考えられる。
【0029】また電着塗装では、主剤樹脂と、硬化剤樹
脂の水溶性の差などにより、塗膜表面と塗膜内部での硬
化剤の濃度差が生じるが、この濃度差も微細な凹凸の生
じる要因の一つではないかと考えられる。
【0030】本発明の方法は、このような組成物からな
る電着塗料を用いているので、低電圧で塗装ができ、一
回の電着塗装で厚膜が得られ、かつアルミニウム材等を
下地とした場合に、下地のダイスマーク等が目立たない
良好な艶消外観を持ち、可撓性及び耐薬品性に優れた塗
膜を安定的に形成することができる。
【0031】
【実施例】本発明を以下の具体的実施例により、さらに
詳細に説明する。なお、硬化剤であるアルキルエーテル
化メチロールメラミン樹脂としては以下のものを使用し
た。 ・ブチルエーテル化メチロールメラミン樹脂 BM−1:〔マイコート506、三井サイアナミド
(株)製、エーテル化度約5、ブトキシ基の割合100
%、固形分98重量%〕 BM−2:〔サイメル1156、アメリカンサイアナミ
ド社製、エーテル化度約5、ブトキシ基の割合100 %、
固形分98重量%〕 BM−3:〔サイメル1158、アメリカンサイアナミ
ド社製、エーテル化度約4、ブトキシ基の割合100 %、
固形分80重量%〕 BM−4:〔スーパーベッカミンG−821、大日本イ
ンキ化学工業(株)製、エーテル化度約2.5 、ブトキシ
基の割合100 %、固形分60重量%〕 ・ブチル/メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂 BM−5:〔ニカラックMX−40、三和ケミカル
(株)製、エーテル化度約5、ブトキシ基の割合30%、
メトキシ基の割合70%、固形分98重量%〕
【0032】合成例1 アクリル樹脂(AR−1)の合成 反応容器中にイソプロピルアルコール400 重量部及びブ
チルセロソルブ200 重量部を仕込み、80℃に昇温した。
これに(a) カルボキシル基含有重合性アクリル単量体と
してアクリル酸 (AA)80重量部、(b) ヒドロキシル基
含有重合性アクリル単量体として2−ヒドロキシエチル
メタクリレート(2HEMA)150 重量部、(c)エチレ
ン性不飽和カルボン酸エステル単量体及び/又はビニル
単量体としてメチルメタクリレート(MMA)470 重量
部、エチルアクリレート(EA)150 重量部及びブチル
アクリレート(BA)150 重量部、及びアゾビスイソブ
チロニトリル4重量部からなる混合物を4時間で滴下し
た。滴下終了から1時間経過した後、さらにアゾビスイ
ソブチロニトリル10重量部とイソプロピルアルコール50
重量部の混合物を3時間で滴下し、滴下終了後さらに2
時間攪拌して重合を完結し、アクリル樹脂溶液(AR−
1)を得た。
【0033】得られたアクリル樹脂の(a) 、(b) 及び
(c) 成分の種類及び配合量を、酸価、水酸基価、ガラス
転移温度、数平均分子量の割合とともに第1表に示す。
【0034】合成例2 アクリル樹脂(AR−2)の合成 反応容器中にイソプロピルアルコール450 重量部及びブ
チルセロソルブ150 重量部を仕込み、80℃に昇温した。
これに成分(a)としてアクリル酸 (AA)50重量部、メ
タクリル酸(MAA)50重量部、成分(b) として2−ヒ
ドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)180 重量
部、成分(c) としてメチルメタクリレート(MMA)37
0 重量部、スチレン(ST)50重量部、エチルアクリレ
ート(EA)200 重量部及び2−エチルヘキシルアクリ
レート(2EHA)100 重量部、及びアゾビスイソブチ
ロニトリル3重量部からなる混合物を4時間で滴下し
た。滴下終了から1時間経過した後、さらにアゾビスイ
ソブチロニトリル10重量部とイソプロピルアルコール50
重量部の混合物を3時間で滴下し、滴下終了後さらに2
時間攪拌して重合を完結し、アクリル樹脂溶液(AR−
2)を得た。
【0035】得られたアクリル樹脂の(a) 、(b) 及び
(c) 成分の種類及び配合量を、酸価、水酸基価、ガラス
転移温度、数平均分子量の割合とともに第1表に示す。
【0036】
【0037】実施例1 合成例1のアクリル樹脂溶液(AR−1)1660重量部
に、ブチルエーテル化メチロールメラミン樹脂 (BM−
1)680 重量部、イソプロピルアルコール220 重量部及
びブチルセロソルブ140 重量部を加え、70℃で2時間攪
拌して、混合を行い、これにトリエチルアミン75重量部
を添加し、さらに70℃で1時間攪拌を続けた後、水を徐
々に加えて稀釈し、樹脂固形分濃度11重量%の電着塗料
を調製した。
【0038】この電着塗料を電着槽に入れ、アルマイト
処理した6063S アルミニウム板を陽極として浴温22℃
で、所定の電圧 (80〜180V) で3分間通電し、塗板を作
成した。電着終了後、これらの塗板をイソプロパノール
3重量%、ブチルセロソルブ1重量%の水洗水にて洗浄
し、180 ℃で30分間加熱硬化させた。得られた電着塗膜
の性能評価を行った。この電着塗膜は、艶消状態が安定
しており、アルミニウム板のダイスマークの目立たない
ものであった。電着塗料の組成を第2表に、また性能の
評価結果を第3表に示す。
【0039】実施例2 実施例1の方法において、ブチルエーテル化メチロール
メラミン樹脂の量を340 重量部とした以外は同様にして
電着塗料を製造し、実施例1と同様にして電着塗装行
い、同様の評価を行った。電着塗料の組成を第2表に、
また性能の評価結果を第3表に示す。
【0040】実施例3 実施例1の方法において、ブチルエーテル化メチロール
メラミン樹脂として、BM−1の代わりにBM−2を使
用した以外は同様にして、電着塗料を製造し、実施例1
と同様にして電着塗装行い、同様の評価を行った。電着
塗料の組成を第2表に、また性能の評価結果を第3表に
示す。
【0041】実施例4 合成例2のアクリル樹脂溶液(AR−2)1663重量部
に、トリエチルアミン85重量部を添加し、25℃で1時間
攪拌後、ブチルエーテル化メチロールメラミン樹脂 (B
M−3)550 重量部、イソプロピルアルコール220 重量
部及びブチルセロソルブ140 重量部を加え、25℃で4時
間攪拌した後、水を徐々に加えて稀釈し、樹脂固形分濃
度11重量%の電着塗料を調製した。
【0042】この電着塗料を用いて、実施例1と同様に
して電着塗装行った。得られた電着塗膜の性能評価を実
施例1と同様にして行った。この電着塗膜は、艶消状態
が安定しており、アルミニウム板のダイスマークの目立
たないものであった。電着塗料の組成を第2表に、また
性能の評価結果を第3表に示す。
【0043】実施例5 実施例1の方法において、BM−1の量を544 重量部と
し、さらにBM−5を136 重量部添加する以外は同様に
して電着塗料を製造し、実施例1と同様にして電着塗装
行い、同様の評価を行った。電着塗料の組成を第2表
に、また性能の評価結果を第3表に示す。
【0044】比較例1 実施例1の方法において、BM−1の代わりにBM−5
を使用した以外は同様にして、電着塗料を製造し、実施
例1と同様にして電着塗装行い、同様の評価を行った。
電着塗料の組成を第2表に、また性能の評価結果を第3
表に示す。
【0045】比較例2 合成例2のアクリル樹脂溶液(AR−2)1663重量部
に、トリエチルアミン85重量部を添加し、25℃で1時間
攪拌後、BM−4を900 重量部加え、25℃で4時間攪拌
した後、水を徐々に加えて稀釈し、樹脂固形分濃度11重
量%の電着塗料を調製した。
【0046】この電着塗料を用いて、実施例1と同様に
して電着塗装行った。得られた電着塗膜の性能評価を実
施例1と同様にして行った。この電着塗膜は、良好な艶
消し性が得られず、光沢ムラがあり、塗料の安定性が不
良であった。電着塗料の組成を第2表に、また性能の評
価結果を第3表に示す。
【0047】比較例3 実施例1で得られた塗料を電着ではなく、アプリケータ
で所定の乾燥膜厚になるように塗装し、同様に焼付を行
った。得られた塗膜は光沢が高く、艶消しにはならなか
った。性能の評価結果を第3表に示す。
【0048】比較例4 実施例1の方法において、BM−1の量を136 重量部と
し、さらにBM−5を544 重量部添加する以外は同様に
して電着塗料を製造し、実施例1と同様にして電着塗装
行い、同様の評価を行った。電着塗料の組成を第2表
に、また性能の評価結果を第3表に示す。
【0049】 第 2 表 塗料の組成(重量部) 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 アクリル樹脂 AR−1 1660 1660 1660 − 1660 AR−2 − − − 1663 − アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂 BM−1 680 340 − − 544 BM−2 − − 680 − − BM−3 − − − 550 − BM−4 − − − − − BM−5 − − − − 136 親水性溶媒 イソプロピルアルコール 220 220 220 220 220 ブチルセロソルブ 140 140 140 140 140 アミン類 トリエチルアミン 75 75 75 85 75
【0050】 第 2 表 ( 続 き ) 塗料の組成(重量部) 比較例1 比較例2 比較例3 * 比較例4 アクリル樹脂 AR−1 1660 − 1660 1660 AR−2 − 1663 − − アルキルエーテル化メチロールメラミン樹脂 BM−1 − − 680 136 BM−2 − − − − BM−3 − − − − BM−4 − 900 − − BM−5 680 − − 544 親水性溶媒 イソプロピルアルコール 220 − 220 220 ブチルセロソルブ 140 − 140 140 アミン類 トリエチルアミン 75 85 75 75 注) *:実施例1の組成物と同様の組成物である。
【0051】 第 3 表塗膜特性 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5 光沢(1) 14 20 14 16 21 塗膜外観(2) 光沢ムラ 無し 無し 無し 無し 無し ダイスマーク 目立たず 目立たず 目立たず 目立たず 目立たず 硬度(3) 4H 4H 4H 4〜5H 4H 耐アルカリ性(4) 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 耐酸性(5) 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 付着性(6) 100/100 100/100 100/100 100/100 100/100 可撓性(7) 良好 良好 良好 良好 良好 厚塗り性(8) 良好 良好 良好 良好 良好
【0052】 第 3 表 ( 続 き )塗膜特性 比較例1 比較例2 比較例3 比較例4 光沢(1) 87 70 90 80 塗膜外観(2) 光沢ムラ 無し 有り 無し 無し ダイスマーク 目立つ 目立つ 目立つ 目立つ 硬度(3) 4H 4H 4H 4H 耐アルカリ性(4) 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 耐酸性(5) 異常無し 異常無し 異常無し 異常無し 付着性(6) 100/100 100/100 100/100 100/100 可撓性(7) 良好 良好 良好 良好 厚塗り性(8) 良好 良好 −* 良好 注) *:電着塗装による塗膜でないので、評価の対象としなかった。
【0053】評価方法及び評価基準 (1)光沢: 60°鏡面反射による光沢度を JIS K 5400
7.6 に準拠して測定した。 (2)塗膜外観:焼付け後の電着塗膜面を目視により観察
し、光沢ムラの有無、及びダイスマークが目立つか
否かを評価した。 (3)硬度:焼付け後の塗膜を20℃まで徐冷後、JIS K 54
00 8.4に準拠して鉛筆引っかきテストを行った。引っか
き傷が生じた鉛筆の硬度により塗膜の硬度を表わす。 (4)耐アルカリ性:1%水酸化ナトリウム水溶液を用い
て、24時間スポット試験(温度23℃)を行った後の塗膜
表面の以上の有無を観察した。 (5)耐酸性:5%硫酸水溶液を用いて、24時間スポット
試験 (温度23℃)を行った後の塗膜表面の以上の有無を
観察した。 (6)付着性:1mm目で10×10個のゴバン目テスト(JIS
K 5400準拠) を行い、アルミニウム素地との付着性を、
剥離しない個数/100 により表示。 (7)可撓性:鉄のつめ (岡田工業(株)製) による塗膜
傷つけ試験を行い、傷の認められないものを良好、認め
られるものを不良として評価した。 (8)厚塗り性:所定の塗装電圧での膜厚を測定し、20μ
m以上の膜厚で外観異常のないものを良好、それ以外の
ものを不良として評価。
【0054】第3表から明らかなように、本発明の方法
による実施例1〜5の塗膜は、良好な艶消し面を有して
おり、アルミニウム材のダイスマーク等も目立たなかっ
た。これに対して、比較例1〜4の方法による塗膜は、
艶消しの度合いが十分でなく(光沢の値が大きい)、さ
らに光沢ムラやダイスマーク等が目立つものであった。
特に実施例1と同様の組成物を、アプリケータにより塗
装した比較例3の塗膜は、艶消しの度合いが十分でな
く、ダイスマークが目立つものであった。
【0055】
【効果】以上に詳述した通り、本発明の艶消し電着塗膜
の形成方法においては、特定の酸価及び水酸基価を有す
るアクリル樹脂に、エーテル化度が高く、かつそのエー
テル基のブトキシ基の割合が高い特定のアルキルーテル
化メチロールメラミン樹脂を硬化剤として混合してなる
ものを稀釈して電着塗料としているので、低電圧で塗装
ができ、一回の電着塗装で厚膜が得られ、かつアルミニ
ウム材等を下地とした場合に、下地のダイスマーク等が
目立たない、良好な艶消外観を持ち、可撓性及び耐薬品
性に優れた塗膜を安定的に形成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原 行宏 千葉県市原市千種海岸2番1 東レ株式 会社 千葉工場内 (72)発明者 西谷 幸彦 東京都品川区南品川4丁目1番15号 日 本ペイント株式会社東京事業所内 (72)発明者 小野 正利 東京都品川区南品川4丁目1番15号 日 本ペイント株式会社東京事業所内 (56)参考文献 特開 昭59−47269(JP,A) 特開 昭63−43975(JP,A) 特開 平3−139574(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 艶消し電着塗料組成物を希釈してなる水
    性塗料から電着することにより艶消し塗膜を形成する方
    法において、前記艶消し電着塗料組成物が、(I)酸価が
    20〜150 及び水酸基価が30〜150 のアクリル樹脂、及び
    (II)メラミン核1個当り、平均3.5 個以上のエーテル基
    を有し、前記エーテル基の70〜100%がブトキシ基
    である実質的に非水溶性のアルキルエーテル化メチロー
    ルメラミン樹脂を含有し、かつ、前記(I)と(II)との重
    量比が40/60〜80/20であることを特徴とする艶消し電
    着塗膜の形成方法。
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