JP2695076B2 - X線源用ベリリウム窓の製造方法 - Google Patents

X線源用ベリリウム窓の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は各種のX線発生装置や放
射光発生装置に用いられるX線源用ベリリウム窓の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】X線源用ベリリウム窓の製造に当たって
は、ベリリウムの箔又は薄板を外枠を構成するステンレ
ス鋼や銅などの金属に気密に接合することが必要であ
る。従来このための接合法としては、有機系接着剤によ
る接着、ろう付け、拡散接合等が知られている。しかし
近年X線の大出力化にともないベリリウム窓にて吸収さ
れるX線の発熱が大きくなってきたので、有機系接着剤
では気密な接合を維持できなくなるという問題が発生し
てきた。
【0003】そこでろう付け法や拡散接合法が注目され
ているが、一般に行われている被接合体どうしを突き合
わせただけのろう付け法では、ベリリウムの表面にろう
が流れにくいので気密な接合が行いにくく、また強度も
充分ではないという問題があった。更にろう付けのため
の加熱によりベリリウムの箔又は薄板が変形したり再結
晶し、強度が低下するという問題もあった。
【0004】一方、拡散接合法は被接合体どうしを加圧
下において融点以下に加熱し、接合させる方法である。
しかしこの場合には被接合体のひとつひとつに加圧用治
具をセットしなければならぬうえ、外部から真空室内に
加圧用治具を導入しなければならないので装置が複雑化
する欠点があった。しかも高真空を保ちにくいのでベリ
リウムが酸化し易く、また広い面積を拡散接合した場合
には全ての接合面をリークタイトとすることが困難で、
信頼性に欠けるという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記した従来
の問題点を解決して、複雑な設備や治具を使用すること
なく、またベリリウムの箔又は薄板に変形、再結晶、酸
化等を生じさせることなくベリリウムを外枠に対して気
密で強固に接合させることができるX線源用ベリリウム
窓の製造方法を提供するために完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、金属製の
外枠の内側にインサート材を介在させてベリリウムの箔
又は薄板を入れ、その内側に外枠よりも熱膨張率が7×
10-7/ ℃以上大きい金属からなる押さえ部品をセット
し、全体を加熱して熱応力によりベリリウムを拡散接合
することを特徴とするX線源用ベリリウム窓の製造方法
により解決することができる。また上記の課題は、金属
製の外枠の内側にろう材を介在させてベリリウムの箔又
は薄板を入れ、その内側に外枠よりも熱膨張率が7×10
-7/ ℃以上大きい金属からなる押さえ部品を固定し、全
体を加熱してベリリウムをろう付け接合することを特徴
とするX線源用ベリリウム窓の製造方法により解決でき
る。
【0007】
【実施例】以下にこれらの発明を図面を参照しつつ更に
詳細に説明する。図1は第1の発明の実施例を示すもの
で、1はステンレス鋼や銅などの金属からなる外枠、2
は必要に応じて使用されるインサート材又はろう材、3
はベリリウムの箔又は薄板、4は押さえ部品、5はバッ
クアップ部品である。第1の発明においては、この押さ
え部品4として外枠1やバックアップ部品5よりも熱膨
張率が7×10-7/ ℃以上大きい金属を使用する。
【0008】外枠1やバックアップ部品5の材質として
例えばステンレス(SUS 304 、熱膨張率17.3×10-6/
℃) や無酸素銅 (C 1020、熱膨張率17.3×10-6/℃) を
使用した場合には、押さえ部品4の材質として7/3 黄銅
(熱膨張率19.9×10-6/ ℃) 、65/35 黄銅 (熱膨張率2
0.3×10-6/ ℃) 、6/4 黄銅 (熱膨張率20.8×10-6/
℃)、快削黄銅 (熱膨張率20.6×10-6/ ℃) 、ネーパル
黄銅 (熱膨張率21.2×10-6/℃) 等を使用することがで
きる。
【0009】なお、外枠1やバックアップ部品5の材質
として例えばインバー、スーパーインバー、ステンレス
インバー、コバールのような低熱膨張率の金属を使用す
れば押さえ部品4との熱膨張率の差を更に大きくできる
のでより好ましい結果を得ることができる。いずれの発
明においても熱膨張率の差が7×10-7/ ℃未満であると
充分な熱応力を発生させることができないので好ましく
ない。
【0010】このような材質からなる押さえ部品4を図
1のように外枠1に嵌め、更にネジを切ってあるバック
アップ部品5を締めつけて固定したうえ、真空中または
不活性ガス中で加熱する。図3はそのための高周波誘導
加熱炉を示しているが、第1の発明では加熱手段は特に
限定されるものではない。なお図3において6は耐熱容
器、7は高周波誘導コイル、8は真空排気口、9はアル
ゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス導入口、10は蓋で
ある。
【0011】かくして加熱を行うと、押さえ部品4が他
の部品よりも大きく膨張するのでベリリウムの箔又は薄
板3の周囲は熱応力により強く外枠1に向かって押しつ
けられ、これによる高い圧力と温度とによってベリリウ
ムの箔又は薄板3の表面において他の部品との間に原子
の拡散が生じ、ベリリウムが気密に接合されたX線源用
ベリリウム窓を得ることができる。
【0012】なお、ベリリウムの箔又は薄板3が薄くか
つ接合面積が大きく、しかも押さえ部品4と他の部品と
の熱膨張差が大きい場合には、冷却過程においてベリリ
ウムの箔又は薄板3が変形したり破壊されるおそれがあ
る。このため、図2に示すように例えばニッケルのよう
な熱膨張率がベリリウムに近い金属を中間材11としてイ
ンサート材又はろう材2の両側に配置しておけば、上記
の欠点の発生を防止することができる。
【0013】第1および第2の発明では、図1又は図2
のようにセットされたものを図3のような高周波誘導加
熱炉において加熱する。このためにはまず耐熱容器6の
内部に被接合物を入れ、蓋10を閉じて高真空に排気し、
不活性ガスを導入する。この排気、不活性ガスの導入の
操作を数回繰り返して内部の酸素を充分に除去したう
え、高周波誘導コイル7に通電して真空中又は不活性ガ
ス中で被接合物を加熱する。
【0014】このように高周波誘導加熱を行えば、薄い
ベリリウムよりもバルク形状をした外枠1、押さえ部品
4、バックアップ部品5等が早く加熱されるのでベリリ
ウムの箔又は薄板3が高温になる前にろう材2が溶けて
均一なろう付けが行われる。従ってベリリウムに変形、
酸化、再結晶等を生じさせることなくろう付けを行わせ
ることが可能である。なおベリリウムに水冷した銅を接
触させることにより、ベリリウムの加熱をより確実に防
止することができる。なお以上に説明した第1の発明と
第2の発明は、組み合わせて実施することも可能である
ことはいうまでもない。
【0015】次に表1に示す種々の材質の組合せでベリ
リウム窓を製造した結果を表2に示す。窓の径は50mmで
あり、ベリリウム板の厚さは0.3mm 、中間材の厚さは0.
05mmである。1〜6は第1の発明の実施例であり、7〜
9は第2の発明の実施例である。また10は比較例であ
る。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のX線源
用ベリリウム窓の製造方法によれば、接合部加圧用の治
具が不要であるので安価な設備で生産性良くベリリウム
窓の製造ができ、接合面にかかる圧力を一定とすること
ができるので均一かつ強固な接合ができる。またろう材
を使用することにより、更に強固な接合が可能である。
また本発明によればベリリウム箔やベリリウム薄板の熱
による変形、再結晶、酸化等を防止することができるの
で、強度やX線透過性に優れたX線源用ベリリウム窓を
製造することができる。よって本発明は従来の問題点を
解消したX線源用ベリリウム窓の製造方法として、産業
の発展に寄与するところは極めて大きいものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明に使用される高周波誘導加熱炉の断面図
である。
【符号の説明】
1 外枠 2 インサート材又はろう材 3 ベリリウム箔または薄板 4 押さえ部品 5 バックアップ部品 11 中間材

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製の外枠の内側にインサート材を介
    在させてベリリウムの箔又は薄板を入れ、その内側に外
    枠よりも熱膨張率が7×10-7/ ℃以上大きい金属からな
    る押さえ部品をセットし、全体を加熱して熱応力により
    ベリリウムを拡散接合することを特徴とするX線源用ベ
    リリウム窓の製造方法。
  2. 【請求項2】 金属製の外枠の内側にろう材を介在させ
    てベリリウムの箔又は薄板を入れ、その内側に外枠より
    も熱膨張率が7×10-7/ ℃以上大きい金属からなる押さ
    え部品を固定し、全体を加熱してベリリウムをろう付け
    接合することを特徴とするX線源用ベリリウム窓の製造
    方法。
JP27462291A 1991-09-26 1991-09-26 X線源用ベリリウム窓の製造方法 Expired - Lifetime JP2695076B2 (ja)

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