JP2692100B2 - リングのポケット孔製造装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【発明の目的】

（産業上の利用分野） 本発明は、例えば、ケージあるいはリテーナと言われ
るリング状の部品にポケット孔を穿設するために利用す
るリングのポケット孔製造装置に関するものである。 （従来の技術） バーフィールド型の等速自在継手には、複数の鋼球を
保持するための複数のポケット孔を有するボールケージ
が用いられている。このような部品を形成するリング状
素材にポケット孔を穿設する手段としては、例えば特公
昭61−13935号公報に記載されているものがある。 上記公報における手段は、リング状素材の外周にガイ
ドリングを嵌合させ、前記ガイリングに形成された孔に
位置決めピンを嵌合してリング状素材の円周方向の位置
決めを行うようにしている。また、リング状素材にポケ
ット孔を穿設するためのダイスを棒状のものとして前記
リング状素材内に貫通させており、このダイスと協働に
よって前記ポケット孔を穿設するためのポンチを前記リ
ング状素材の外方に位置させている。 （発明が解決しようとする問題点） ところが、上記したような従来の手段にあっては、リ
ング状素材を貫通するダイスを用いており、ダイスを安
定させるために棒状のダイスの両端を強固に支持しなけ
ればならないが、リング状素材をダイスに着脱する必要
上、ダイスの一端をダイス押えで支持するようにし、こ
れをテーブルで移動させるようにしなければならず、リ
ング状素材の着脱機構が複雑となるだけでなく、着脱に
時間がかかって製造能率の向上を図るうえで好ましくな
かった。また、上述のようにダイスがリング状素材の内
側になることから、リング状素材のプレス加工によって
生じたスクラップを、ダイスに形成した中空孔内から、
空気圧等で強制的に排出しなければならず、装置がより
複雑化するという問題点があった。 （発明の目的） 本発明は、このような従来の諸問題点に鑑みて成され
たもので、加工時におけるダイの安定性を十分に確保す
ることが可能であって、製造能率や加工精度の向上を図
ることができ、装置自体の簡略化も図ることができるリ
ングのポケット孔製造装置を提供することを目的として
いる。

【発明の構成】

（問題点を解決するための手段） 本発明に係るリングのポケット孔製造装置は、基台
に、リング状素材の一端面と接触する位置決め用ネスト
と、前記リング状素材の他端部と係合し且つ油圧駆動式
のチャック用シリンダによって前記ネストに向けて進退
自在なチャックと、チャックを軸回りに回転させる割出
し用モータと、前進位置に達したチャックを後退方向に
付勢する戻し機構と、前記ネストで位置決めされたリン
グ状素材の外表面に向けてその径方向に移動可能なダイ
とを備え、前記基台とダイとの間に、駆動手段によって
ダイの移動方向と交差する方向に移動可能なスライドブ
ロックを介装すると共に、前記スライドブロックのダイ
側との対向面に、ダイの移動方向に直交した支持面と傾
斜面を有する断面略台形状のスライド側凹凸部を形成
し、且つダイ側に、同じく支持面と傾斜面を有するとと
もにスライドブロックの移動によりスライド側凹凸部に
係脱可能なダイ側凹凸部を形成し、前記ダイに対応する
ポンチを、位置決め状態のリング状素材内に位置させる
と共に前記リング状素材の径方向に移動可能に備えたこ
とを特徴とするものである。 （実施例） 以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。 第１図〜第４図は、本発明の一実施例に係るリングの
ポケット孔の製造装置を説明する図であって、上記製造
装置によってポケット孔Ｈが穿設されるリング状素材Ｗ
は、全体としてほぼ球面形状を成す外周面１を有すると
共に、球面形状部分２と、この球面形状部分２の最大直
径よりも大きい孔径を有するストレート部分３とから成
る中空孔を有している。このとき、前記ストレート部分
３がリング状素材Ｗの一端部（第１図において右端部）
に位置し、球面形状部分３がリング状素材Ｗの他端部に
位置している。これらの部分2,3間には、リング状素材
Ｗの半径方向内方に突出した突条部４が形成してある。
したがって、前記リング状素材Ｗは、上記内周面形状に
より、その軸線方向に肉厚が大きく変化している。 第１図に示すように、プレス下型を成す基台５には、
リング状素材Ｗの一端部と接触する位置決め用ネスト６
と、前記リング状素材Ｗの他端部と係合し且つ油圧駆動
式のチャック用シリンダ７によって前記ネスト６に向け
て進退自在なチャック８と、チャック８を軸回りに回転
させる割出し用モータ22と、前進位置に達したチャック
８を後退方向に付勢する戻し機構50と、前記ネスト６で
位置決めされたリング状素材Ｗの外表面１に向けてその
径方向に移動自在なダイ９とが備えてある。 前記ネスト６は、基台に５に支持台10を介して固定し
てあって、中央の貫通孔11を貫いた状態ポンチリテーナ
12が位置している。このポンチリテーナ12には、ボルト
等の適宜取付け手段によってポンチ13が取付けてある。
また、前記ポンチリテーナ12には、ホルダ14を介してプ
レス型15に取付けてある。前記プレス上型15は、第２図
に示すように、基台５に立設した一対のガイドポスト1
6,16で案内され上下方向に移動する。 前記チャック８は、基台５に設けた支持台18上のチャ
ック本体19に回転軸20を介して取付けてあって、前記チ
ャック本体19に、支持台18上に固定したチャック用シリ
ンダ７のロッド7aを連結すると共に、同チャック本体19
を支持台18上のガイドバー（図示せず）に係合させるこ
とにより、前記ネスト６に向けて水平に進退可能であ
る。このとき、前記チャック８は、最も後退した位置ａ
と、図外の搬送手段によってリング状素材Ｗが当該チャ
ック８に組付けらる装填位置ｂと、前進位置であるプレ
ス加工位置ｃとの間で進退移動する。また、前記チャッ
ク本体19には、図示を省略したが、軸，歯車およびタイ
ミングベルト等で構成される回転伝達機構が内蔵してあ
り、前記チャック本体19に取付けた割出し用モータ22と
前記回転軸20とが上記回転伝達機構によって連結してあ
る。したがって、前記チャック８は、割出し用モータ22
の駆動により、軸回りに割出し回転するようになってい
る。さらに、前記チャック８は、その先端に、リング状
素材Ｗの内周面と係合する段部23aを備えたコレットチ
ャック部23を有している。このコレットチャック部23
は、図示を省略したスリ割りよって径方向に変形可能で
あると共に、その内部に、軸方向へ移動可能な作動部売
（図示せず）を有し、前記回転軸20とチャック８との間
に組付けたコレット用シリンダ24の駆動により、径方向
に変形してリング状素材Ｗを把持するようになってい
る。なお、前記コレット用シリンダ24は、回転軸20の端
部に設けたスイベルジョイント部25、および前記回転軸
20内に形成した油路を通して作動油が供給されるように
なっており、チャック８とともに回転することができ
る。 前記ダイ９は、昇降台26に固定したダイリテーナ27に
よって保持してある。前記昇降台26は、基台５に立設し
た一対のガイドポスト28,28によって上下方向に案内さ
れている。また各ガイドポスト28,28の上端部に形成し
たフランジ部28a,28aと昇降台26との間には、コイルば
ね29,29がそれぞれ装着してあり、このコイルばね29,29
によって、昇降台26つまりダイ９には下方向への弾発力
が付与してある。 上記のダイ９と基台５との間には、駆動手段30によっ
てダイ９の移動方向と交差する方向、すなわち水平方向
に移動可能なスライドブロック31が介装してある。前記
スライドブロック31は、基台５上に固定したガイドブロ
ック32に摺動自在に保持されると共に、ダイ９側である
上面に、その移動方向に沿った断面が略台形状を成すス
ライド側凹凸部が形成してあり、凸部分の上面がダイ移
動方向に直交する支持面31aとなっている。このとき、
上記凸部分の形状は、少なくともスライドブロック31の
前進側（第１図において右側）が傾斜面31bになってい
る。また、ダイ９側となる昇降台26の下面には、前記ス
ライドブロック31の移動によりスライド側凹凸部と相互
に係脱自在なダイ側凹凸部を有するバックプレート33が
固定してあり、このバックプレート33も同様に支持面33
aおよび傾斜面33bを有している。なお、前記バックプレ
ート33には、ダイ９、ダイリテーナ27および昇降台26を
上下方向に連ねたスクラップ落し穴34と連通するスリー
ブ35が上下に貫通した状態で設けてある。したがって、
前記スライドブロック31は、前記スリーブ35に対応する
部分を適宜切欠いた形態を成している。 上記スライドブロック31の駆動手段30は、基台５上に
おいて、前記チャック本体19を設けた支持台18の下側に
配設してある。前記駆動手段30は、第３図にも示すよう
に、スライドブロック31の端部に、屈曲した駆動リンク
36の一端部を第１ピン37で連結すると共に、前記駆動リ
ンク36の他端部に、スライドブロック31の移動方向に対
してほぼ直角方向に駆動される油圧シリンダ38のロッド
38aを第２ピン39で連結し、さらに、基台５側に固設し
た受け部40に、第３ピン41を介して受けリンク42の一端
部を連結すると共に、この受けリング42の他端部と前記
駆動リンク36の屈曲部分とを第４ピン43で連結した構成
になっている。 上記の駆動手段30は、油圧シリンダ38の伸長駆動によ
り、両リンク36,42を介して前記スライドブロック31を
前進させ、逆に収縮駆動でスライドブロック31を後退さ
せる。 ここで、ポンチ13とダイ９との協働によってリング状
素材Ｗにポケット孔Ｈを穿設する際には、リング状素材
Ｗは、その一端面がネスト６に接触し、他端部がチャッ
ク８のコレットチャック部23により係合把持された状態
となる。そして、１つのポケット孔Ｈを穿設した後に他
のポケット孔Ｈを穿設する際には、リング状素材Ｗをそ
の中心軸回りに割出し回転させるが、この前には、予め
ダイ９を昇降台26とともに下降移動させておく。しかし
ながら、リング状素材Ｗの一端面がネスト６の前端面に
密着した状態となっていると、より円滑にリング状素材
Ｗをチャック８によって割出し回転させることができな
いため、第18図に示すように、戻し機構50が支持台18に
取付けてある。この戻し機構50は支持台18に固定した支
持金具51と、この支持金具51に対してチャック８の進退
移動方向と同方向に摺動可能となったロッド52とを有し
ており、このロッド52の端部には、チャック本体19と当
接する押圧部53が取付けてある。また、ロッド52の外側
にはコイルばね54が装着してあって、ロッド52にはチャ
ック本体19方向への弾発力が付与してある。前記押圧部
53は、チャック本体19が第１図において仮想線で示す位
置Ａにまで前進した状態では、ばね54を僅かに収縮させ
てチャック本体19に接触するようになっている。これに
より、上記戻し機構50は、チャック８が第１図における
プレ加工位置Ｃにあって、チャック用シリンダ７への油
圧の供給を停止させた中立状態にすると、コイルばね54
の弾発力によって、チャック本体19を押圧して例えば1m
m程度工程させる働きをし、結果的にチャック８に把持
されたリング状素材Ｗの一端面は、その寸法だけネスト
６から離れることとなる。この状態でリング状素材Ｗを
割出し回転させる。 次に、上述した構成のリングのポケット孔製造装置を
用いて、リング状素材Ｗに対して、例えば円周方向に等
間隔で６つのポケット孔Ｈを穿設する場合について説明
する。 チャック用シリンダ７を伸長駆動して、チャック８が
装填位置ｂとなるところまでチャック本体19を前進させ
た状態で、図投写型カラーの搬送装置によって、リング
状素材Ｗを搬入し、コレット用シリンダ24の作動ととも
に前記リング状素材Ｗをチャック８のコレットチャック
部23に係合して把持させる。このとき、スライドブロッ
ク31は、油圧シリンダ38の収縮駆動によって、駆動手段
30側に後退した状態にあり、第４図に示すように、その
上面のスライド側凹凸部とダイ９側であるバックプレー
ト33のダイ側凹凸部とが互いに係合した状態になる。こ
れにより、昇降台26が双方の凹凸部の段差分だけ下降し
た状態となり、ダイ９がプレス加工位置よりも下側に離
間する。 次に、チャック用シリンダ７の伸長駆動をさらに続け
てチャック８がプレス加工位置Ｃとなり、且つリング状
素材Ｗをその一端面がネストｂに接触するまで前進させ
ると、前記リング状素材Ｗの位置決め完了となる。この
とき、ポンチ13は、上死点位置にあると共に、リング状
素材Ｗの内部に位置している。この状態で、油圧シリン
ダ38を伸長駆動して、スライドブロック31を前進させる
と、スライドブロック31の傾斜面31bがバックプレート3
3の傾斜面33bを押圧することによって昇降台26を押し上
げ、スライドブロック31の前進が完了したときには、支
持面31a,33a同士が当接すると共に、双方の凹凸部の段
差分だけ昇降台26を上昇させた状態にし、その結果、位
置決めされたリング状素材Ｗの下部外表面にダイ９が当
接しこれを保持する。 こののち、プレス上型15の下降により、ダイ９とポン
チ13とでリング状素材Ｗにポケット孔Ｈを形成する。こ
のとき、ダイ９は、その昇降機構としてのスライドブロ
ック31およびバックプレート33において、水平な支持面
31a,33a同士の当接により支持されているため、ポンチ1
3による加工時の衝撃に対して充分安定した状態にあ
る。また、リング状素材Ｗから切除されたスクラップ
は、落し穴34内を自重で落下し、スリーブ35および基台
５に形成した排出孔5aを経て外部に排出される。 １つのポケット孔Ｈがこのようにして穿設された後
は、プレス上型15に上昇させると共に、リング状素材Ｗ
をチャック８によって把持した状態で、油圧シリンダ38
を駆動し、スライドブロック31を後退させて昇降台26の
下降とともにダイ９をリング状素材Ｗから離す。そし
て、この状態のときにチャック用シリンダ７への油圧の
供給を停止させて中立状態とすると、チャック本体19が
最前進の位置では、戻し機構50のコイルばねによって後
退方向の弾発力が付与されているので、この弾発力によ
ってチャック本体19は僅かに後退する。これにより、リ
ング状素材Ｗの一端面はネスト６から僅かに離れる。こ
ののち、前述した如くリング状素材Ｗに６個のポケット
孔Ｈを穿設することか、割出し用モータ22を駆動して、
回転軸20とともにチャック８を60度回転させる。これに
より、リング状素材Ｗは割出し回転することとなる。し
かも、リング状素材Ｗの一端面がネスト６から離れてい
るのでこの割出し回転がより円滑かつ高精度になされる
ことになる。 このようにして、リング状素材Ｗの割出し回転が完了
した後は、チャック用シリンダ７に油圧を加えてリング
状素材Ｗをネスト６に当接させ、次いで、油圧シリンダ
38の駆動に伴うスライドブロック31の前進で再度昇降台
26を上昇させて、ダイ９をリング状素材Ｗの下側外周面
１に接触させ、上述したように、スライドブロック31お
よびバックプレート33の支持面31a,33a同士の当接によ
ってダイ９を支持しながら、前記ダイ９とポンチ13との
協働によってポケット孔Ｈを穿設する。このようにして
所定数のポケット孔Ｈを穿設した後には、チャック８を
装填位置ｂまで後退させて、図示しない搬送装置を用い
てリング状素材Ｗを次工程へ搬出する。

【発明の効果】

以上のように、本発明に係るリングのポケット孔製造
装置によれば、チャックの使用によりリング状素材の着
脱が容易であって製造能率を向上させることができると
共に、リング状素材内に位置するポンチとリング状素材
の外表面に当接するダイの採用により、切除されたスク
ラップをその自重で排出することが可能となって、リン
グ状素材の着脱機能を含めて装置自体を大幅に簡略化す
ることがきる。また、駆動手段により移動可能であり且
つその移動とともにダイ側凹凸部に係脱可能なスライド
側凹凸部を有するスライドブロックを採用したことによ
り、スライドブロックの移動により双方の凹凸部の段差
分だけダイが移動可能になって、これによりリング状素
材に対するダイの当接および離間が行われることとな
り、加工の際には、両凹凸部の支持面によりリング状素
材に当接しているダイの安定性を十分に確保することが
でき、加工以外のときには、スライドブロックの移動に
よりリング状素材からダイを速やかに離間させることが
でき、リング状素材の割出し回転にも迅速に対応するこ
とができる。さらに、チャックとネストでリング状素材
の両端部を保持して加工を行ったのち、リング状素材を
割出し回転させる場合には、ダイをリング状素材から離
間させた状態にしてチャック用シリンダへの油圧供給を
停止すれば、戻し機構によりチャックを一時的に後退さ
せてリング状素材をネストから離間させることができ、
これにより割出し用モータを駆動源とするチャックの回
転でリング状素材の割出し回転を円滑に且つ正確に行う
ことができ、きわめて精度良くポケット孔を形成するこ
とができるなどの優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係るリングのポケット孔製
造装置を説明する断面図、第２図は第１図に示すＢ−Ｂ
線に基づく半断面図、第３図は基台上のスライドブロッ
ク駆動手段を説明する平面図、第４図はスライドブロッ
クの後退によるダイの下降状態を説明する要部の断面図
である。 Ｗ……リング状素材、Ｈ……ポケット孔、５……基台、
６……ネスト、７……チャック用シリンダ、８……チャ
ック、９……ダイ、13……ポンチ、22……割出し用モー
タ、30……駆動手段、31……スライドブロック、31a,33
a……支持面、31b,33b……傾斜面、50……戻し機構。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基台に、リング状素材の一端面と接触する
   位置決め用ネストと、前記リング状素材の他端部と係合
   し且つ油圧駆動式のチャック用シリンダによって前記ネ
   ストに向けて進退自在なチャックと、チャックを軸回り
   に回転させる割出し用モータと、前進位置に達したチャ
   ックを後退方向に付勢する戻し機構と、前記ネストで位
   置決めされたリング状素材の外表面に向けてその径方向
   に移動可能なダイとを備え、前記基台とダイとの間に、
   駆動手段によってダイの移動方向と交差する方向に移動
   可能なスライドブロックを介装すると共に、前記スライ
   ドブロックのダイ側との対向面に、ダイの移動方向に直
   交した支持面と傾斜面を有する断面略台形状のスライド
   側凹凸部を形成し、且つダイ側に、同じく支持面と傾斜
   面を有するとともにスライドブロックの移動によりスラ
   イド側凹凸部に係脱可能なダイ側凹凸部を形成し、前記
   ダイに対応するポンチを、位置決め状態のリング状素材
   内に位置させると共に前記リング状素材の径方向に移動
   可能に備えたことを特徴とするリングのポケット孔製造
   装置。