JP2690953B2 - 光学活性1,3−ブタンジオールおよびその誘導体の製造法 - Google Patents

光学活性1,3−ブタンジオールおよびその誘導体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は光学活性な1,3−ブタンジオールおよびその
誘導体の製造法に関する。
光学活性な1,3−ブタンジオールは、種々の医薬品や
光学活性な生理活性物質、およびその誘導体の中間体と
して重要な化合物である。(R)−1,3−ブタンジオー
ルは種々の生理活性があり、例えば糖尿病治療効果があ
ることが知られている(Seijinbyou Kenkyu,5,91(197
6))。
(従来技術および発明が解決しようとする課題) 従来、光学活性な1、3−ブタンジオールおよびその
誘導体を製造する方法としては、化学的に合成された
ラセミ体を光学分割剤を用いて光学分割する方法(特開
昭61-191631)や、光学活性化合物で修飾したラネー
ニッケル触媒を用いて4−ヒドロキシ−2−ブタノンを
不斉還元する方法(特開昭58-20417およびBu11.Chem.So
c.Jpn.,53,1356-1360(1980))等が知られている。
しかし、,ともに高価な光学分割剤、触媒を用い
なければならないこと、および、は光学純度が低いこ
と等の欠点があるため、経済的に優れ、かつ、簡便な手
段で光学純度の高い光学活性な1、3−ブタンジオール
およびその誘導体を得る方法の確立が望まれている。
また、リパーゼによるエステル交換反応を利用したア
ルコールのエステル化反応は、最近、活発に研究されて
いる。例えば、油化学,36,55(1987)においては、リ
パーゼによる脂肪族第一級アルコールとトリ−n−ブチ
リンとのエステル交換反応が研究されており、反応液中
の微量水分の効果、脂肪族第一級アルコールの反応性、
反応温度の効果等を検討している。また、リパーゼによ
るエステル交換反応をアルコールの光学分割に利用した
例としては、(R,S)アルコールとトリグリセリドを基
質として用いた特開昭62-166898、特開昭63-112998等が
ある。しかし、これらは、1価アルコールを基質とした
ものであり、リパーゼによるエステル交換反応を2価ア
ルコールの光学分割に応用した例は知られていない。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは経済的に優れ、かつ、簡便な方法で光学
純度の高い光学活性な1,3−ブタンジオールおよびその
誘導体を得る手段として、安価なラセミ体の1,3−ブタ
ンジオールおよびその誘導体を原料とした酵素による製
造方法に着目し、この目的に適した酵素を得ることを目
的に鋭意研究した結果、キャンディダ属、クロモバクテ
リウム属、シュードモナス属、ペニシリューム属、およ
びアスペルギルス属に属する微生物の生産するリパーゼ
が、1,3−ブタンジオールに対して極めて高い不斉エス
テル交換能を有しており、さらに極めて効率良く1,3−
ブタンジオールのジエステル体を不斉加水分解すること
を見出だし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 (A) 1,3−ブタンジオールのエナンチオマー混合物
を、一般式(I) R1−COOR2 (I) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアル
キル基またはアルケニル基を示す。R2は、C1〜C6
アルキル基またはアルケニル基を示し、このアルキル基
またはアルケニル基はハロゲンで置換されていてもよ
い) で表わされる化合物、または一般式(II) (式中、R1は前記と同じ) で表わされる化合物とともに、リパーゼと反応させるこ
とにより、前記エナンチオマー混合物のうちS−体のヒ
ドロキシル基を立体選択的にエステル化することを特徴
とする光学活性1,3−ブタンジオールおよびその誘導体
の製造法(以下、この方法をA法と称する)、および (B) 一般式(III) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアル
キル基またはアルケニル基を示す。) で表わされる化合物のエナンチオマー混合物を、水溶液
中で、または R2−OH (式中、R2はC1〜C6のアルキル基またはアルケニル
基を示し、このアルキル基またはアルケニル基はハロゲ
ンで置換されていてもよい) で表わされる化合物とともに、リパーゼと反応させるこ
とにより、前記エナンチオマー混合物のうちS−体のエ
ステル基を立体選択的にヒドロキシル基に変換すること
を特徴とする光学活性1,3−ブタンジオールおよびその
誘導体の製造法(以下、この方法をB法と称する) を提供する。
本発明に於いて、−COR1で表わされるアシル基の具体
例としては、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリ
ル基、バレリル基、パルミトイル基、オレイル基、ステ
アロイル基等を挙げることができる。また、R2で表わ
されるアルキル基またはアルケニル基の具体例として
は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル
基、イソプロペニル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキ
シル基、トリクロルエチル基等を挙げることができる。
本発明において基質として用いられる1,3−ブタンジ
オールおよび一般式(II)で表わされる1,3−ブタンジ
オール誘導体は、その価格の面でラセミ体が好ましい
が、そのエナンチオマー混合比率は特に限定されるもの
ではなく、本発明は該混合比率がいかなるものにも適用
できる。
本発明で用いることのできるリパーゼとしては、キャ
ンディダ属、クロモバクテリウム属、シュードモナス
属、ペニシリューム属、およびアスペルギルス属に属す
る微生物の生産するリパーゼで本発明の目的を達し得る
ものであればどのようなものでもよいが、好適な例とし
ては、キャンディダ・シリンドラセア(Candida cylind
racea)、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobac
terium viscosum)、シュードモナス・フルオレッセン
ス(Pseudomonas fluorescens)、ペニシリウム・シク
ロピウム(Penicillium cyclopium)、アスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ等が挙
げられる。これらのリパーゼは、それらを生産する微生
物を培養することによって得られるが、その使用形態
は、菌体培養液そのまま、粗酵素、精製酵素として等、
限定されるものではない。また、キャンディダ・シリン
ドラセア(Candida cylindracea)由来のものはリパー
ゼMY(名糖産業製)、リパーゼOF(名糖産業製)、リパ
ーゼAY『アマノ』30(天野製薬製)として、クロモバク
テリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)由
来のものはリパーゼ(東洋醸造製)として、シュードモ
ナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)
由来のものはリパーゼP『アマノ』(天野製薬製)とし
て、ペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclop
ium)由来のものはリパーゼG(天野製薬製)として、
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の
ものはPalatase 750 L(ノボ製)として市販されてお
り、これらを使用することは好ましい。
これらのリパーゼは、それぞれ単独でも、あるいは、
必要に応じて混合して用いることもできる。
また、これらを常法により固定化して用いることもで
きる。
本発明のA法において、反応液中の1,3−ブタンジオ
ールと、一般式(I)または一般式(II)で表わされる
化合物との割合は、1:0.6〜1:5(モル比)であり、好ま
しくは1:0.9〜1:3である。
また、B法において、反応液中の基質濃度は、通常、
0.1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。
本発明の反応を行なうに際して、反応液のpHは使用す
る酵素の最適pHに合わせることが好ましく、このために
は、適当な緩衝液を用いても良いし、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等の水溶液を用い、pHスタットを用
いて反応中のpHをコントロールしても良い。
反応温度もまた使用する酵素により異なるが、通常、
0〜60℃、好ましくは4〜50℃が適当である。
反応液中の酵素濃度は、市販品を用いる場合それぞれ
の酵素標品の酵素活性に応じて決めることができるが、
例えば0.1〜10重量%を例示することができる。
反応は、攪拌下、あるいは静置下いずれの方法でも行
なう事ができるが、好ましくは攪拌下で行われる。
A法の、1,3−ブタンジオールを一般式(I)または
一般式(II)で表わされる化合物と反応させるに際して
は、特に溶媒類を加える必要はないが、0.5〜2%程度
の少量の水を加えて行なってもよい。
また、B法の一般式(III)で表わされる化合物と一
般式R2−OHで表わされる化合物との反応においてもA
法の場合と同様に行うことができるが、適当な有機溶
媒、例えばn−ヘキサン等を加えて行ってもよい。
反応終了後、酵素は遠心分離または過操作等で除去
することができ、再使用することができる。
A法においては、反応終了後、酵素を除去した反応液
に水を加えた後、適当な有機溶剤、例えば酢酸エチル等
で不純物を抽出し、残った水層から蒸留あるいはカラム
クロマトグラフィー等の常法を適用することにより、生
成した光学活性1,3−ブタンジオールを精製、取得する
ことができる。
また、B法においては、反応終了後、反応液に、適当
な有機溶剤、例えば酢酸エチル等を加え、生成物を抽出
した後、蒸留あるいはカラムクロマトグラフィー等の常
法を適用することにより、精製した光学活性1,3−ブタ
ンジオール誘導体を精製、取得することができる。
以上の反応で得られた光学活性1,3−ブタンジオール
誘導体は、常法により加水分解して光学活性1,3−ブタ
ンジオールへ変換することもできる。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は
これらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 直径21mmのねじ口試験管に表1に示すリパーゼ0.1gを
取り、1,3−ブタンジオールのラセミ体2.0g,トリアセチ
ン4.0gを加え、30℃で140時間振盪した。反応終了後、
ガスクロマトグラフィー(カラム条件:島津製Thermon-
3000 5%,2m 120℃)で、残存する1,3−ブタンジオール
を定量し反応収率を求めた。反応液1.0gを取り、遠心分
離で酵素を除き、水5mlを加えた後、1,3−ブタンジオー
ルモノアセテート、1,3−ブタンジオールジアセテート
及びトリアセチン等を酢酸エチルで抽出・除去した。水
層から水を留去し、残った1,3−ブタンジオールを常法
により、1,3−ブタンジオールジアセテートに変換した
後、光学分割カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ
ー(カラム:ダイセル化学工業製キラルセルOB,溶媒:n
−ヘキサン/2−プロパノール=9:1)により絶対配置及
び光学純度を求めた。
得られた結果を表1に示す。
実施例2 直径21mmのねじ口試験管に表2に示すリパーゼ0.1gを
取り、1,3−ブタンジオールのラセミ体2.0g、トリブチ
リン6.0gを加え、30℃で72時間振盪した。反応終了後、
実施例1と同様の操作を行ない、反応収率と残存する1,
3−ブタンジオールの絶対配置および光学純度を求め
た。
得られた結果を表2に示した。
実施例3 リパーゼOF(名糖産業製)0.1g,酢酸n−ブチル8ml、
1,3−ブタンジオールのラセミ体2.0g、水0.1gを直径21m
mのねじ口試験管に取り、30℃で270時間振盪した。反応
終了後、実施例1と同様の操作を行ない反応収率と残存
する1,3−ブタンジオールの絶対配置および光学純度を
求めた。その結果、収率は62%であり、残存する1,3−
ブタンジオールの絶対配置および光学純度はR体 27%
eeであった。
実施例4 n−ヘキサン6.0ml,n−ブタノール0.3ml,1,3−ブタン
ジオールアセテートのラセミ体0.5ml,表3に示したリパ
ーゼ0.1gを直径21mmのねじ口試験管に取り、30℃で24時
間振盪した。反応終了後と、実施例1と同様の操作を行
ない反応収率を求め、更に光学分割カラムを用いた高速
液体クロマトグラフィー(分析条件は実施例1と同様)
により残存する1,3−ブタンジオールジアセテートの絶
対配置および光学純度を求めた。得られた結果を表3に
示した。
実施例5 1,3−ブタンジオールジアセテートのラセミ体5.0g,0.
2Mリン酸緩衝液(pH7.1)50ml,表4に示したリパーゼ0.
3gを共栓付100ml三角フラスコに取り、30℃で5時間振
盪した。反応終了後、食塩8gを加え、酢酸エチルで反応
生成物を抽出した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン:酢酸エチ
ル=1:1)で1,3−ブタンジオールジアセテート画分と1,
3−ブタンジオールモノアセテート画分を分離し、絶対
配置および光学純度を求めた(モノアセテートは常法に
よりジアセテートに変換してから分析した。分析常法は
実施例1と同様)。さらに、高速液体クロマトグラフィ
ー(カラム:ガスクロ工業製Innertsil ODS,溶離液:ア
セトニトリル/水=1/9)により、モノアセテート画分
における1位アセテートと3位アセテートの存在比を求
めた。
結果を表4に示した。
実施例6 1,3−ブタンジオールジブチレートのラセミ体1.5g,0.
2Mリン酸緩衝液(pH7.1)6ml,表5に示したリパーゼ0.1
gを直径21mmのねじ口試験管に取り、30℃で95時間振盪
した。反応終了後、実施例1と同様にして反応収率を求
めた(カラム温度:130℃)。さらに、高速液体クロマト
グラフィー(カラム:ダイセル化学工業製キラルセルO
B,溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=19:1)により残
存する1,3−ブタンジオールジブチレートの絶対配置及
び光学純度を求めた。
結果を表5に示した。
(発明の効果) 本発明の光学活性1,3−ブタンジオールおよび光学活
性1,3−ブタンジオール誘導体の製造方法は、簡便に光
学活性1,3−ブタンジオールおよび光学活性1,3−ブタン
ジオール誘導体を製造する事を可能にさせるものであ
り、工業的に極めて有用である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,3−ブタンジオールのエナンチオマー混
    合物を、一般式(I) R1−COOR2 (I) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアル
    キル基またはアルケニル基を示す。R2は、C1〜C6
    アルキル基またはアルケニル基を示し、このアルキル基
    またはアルケニル基はハロゲンで置換されていてもよ
    い) で表わされる化合物、または一般式(II) (式中、R1は前記と同じ) で表わされる化合物とともに、リパーゼと反応させるこ
    とにより、前記エナンチオマー混合物のうちS−体のヒ
    ドロキシル基を立体選択的にエステル化することを特徴
    とする光学活性1,3−ブタンジオールおよびその誘導体
    の製造法。
  2. 【請求項2】一般式(III) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアル
    キル基またはアルケニル基を示す) で表わされる化合物のエナンチオマー混合物を、水溶液
    中で、または R2−OH (式中、R2はC1〜C6のアルキル基またはアルケニル
    基を示し、このアルキル基またはアルケニル基はハロゲ
    ンで置換されていてもよい) で表わされる化合物とともに、リパーゼと反応させるこ
    とにより、前記エナンチオマー混合物のうちS−体のエ
    ステル基を立体選択的にヒドロキシル基に変換すること
    を特徴とする光学活性1,3−ブタンジオールおよびその
    誘導体の製造法。
  3. 【請求項3】リパーゼが、キャンディダ(Candida)
    属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、シュ
    ードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリューム(Penic
    illium)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属に
    属する微生物の生産するリパーゼである請求項1または
    2記載の製造法。
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JPS63169996A (ja) * 1987-01-05 1988-07-13 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 光学活性1−ハロゲノ−2−アルカノ−ル誘導体の製造方法

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