JP2736075B2 - 光学活性1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルおよびその誘導体の製造法 - Google Patents

光学活性1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルおよびその誘導体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は光学活性な1,3−ブタンジオール−1−ベン
ジルエーテル及びその誘導体の製造法に関する。
光学活性な1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエー
テル及びその誘導体は、種々の医薬品や光学活性な生理
活性物質、およびその誘導体の中間体として重要であ
る。
(従来技術および発明が解決しようとする課題) 従来、光学活性な1,3−ブダンジオール−1−ベンジ
ルエーテル及びその誘導体を製造する方法としては、4
−ベンジルオキシ−2−ブタノンをパン酵母で不斉還元
する方法(Synthesis,1007(1987))が知られている。
しかし、この方法は、実験室レベルでは有効であるが、
数十グラムのサンプルを得るのに数百リットルの溶媒が
必要であること、また、数十キログラムの糖を使用する
ことなどの理由から工業化には不向きである。そのた
め、経済的に優れ、かつ簡便な手段で光学純度の高い光
学活性な1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル
及びその誘導体を製造する方法の確立が望まれている。
また、リパーゼによるエステル交換反応を利用したア
ルコールのエステル化反応は、最近、活発に研究されて
いる。例えば、油化学,36,55(1987)においては、リ
パーゼによる脂肪族第一級アルコールとトリ−n−ブチ
リンとのエステル交換反応が研究されており、反応液中
の微量水分の効果、脂肪族第一級アルコールの反応性、
反応温度の効果等を検討している。また、リパーゼによ
るエステル交換反応をアルコールの光学分割に利用した
例として、(R,S)アルコールとトリグリセリドを基質
として用いた方法が、特開昭62−166898号公報、特開昭
63−112998号公報等に開示されている。しかし、リパー
ゼによるエステル交換反応を1,3−ブタンジオール−1
−ベンジルエーテル及びその誘導体の光学分割に応用し
た例は知られていない。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは経済的に優れ、かつ、簡便な手段で光学
純度の高い光学活性な1,3−ブタンジオール−1ベンジ
ルエーテル及びその誘導体を得る手段として、安価なラ
セミ体の1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル
及びその誘導体を原料とした酵素による製造方法に着目
し、これに適した酵素を得ることを目的に鋭意検討した
結果、キャンディダ属、シュードモナス属、およびクロ
モバクテリウム属に属する微生物の生産するリパーゼ
が、1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルに対
して極めて高い不斉エステル交換能を有しており、さら
に極めて効率よく1,3−ブタンジオール−1−ベンジル
エーテルのエステル体を不斉加水分解することを見出だ
し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 (A)1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテルの
エナンチオマー混合物を、一般式(I) R1−COOR2 (I) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアルキ
ル基またはアルケニル基を示す。R2は、C1〜C6のアルキ
ル基またはアルケニル基を示し、このアルキル基または
アルケニル基はハロゲンで置換されていてもよい)で表
わされる化合物、または一般式(II) (式中、R1は前記と同じ) で表わされる化合物とともに、加水分解酵素と反応させ
ることにより、ヒドロキシル基を立体選択的にエステル
化して、光学活性な1,3−ブタジオール−1−ベンジル
エーテルおよびその誘導体を製造する方法であって、加
水分解酵素として、キャンディダ(Candida)属、シュ
ードモナス(Pseudomonas)属またはクロモバクテリウ
ム(Chromobacterium)属に属する微生物の生産するリ
パーゼを用いる光学活性1,3−ブタンジオール−1−ベ
ンジルエーテルおよびその誘導体の製造法(以下、この
方法をA法と称する)、および (B)一般式(III) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアルキ
ル基またはアルケニル基を示す) で表わされる化合物のエナンチオマー混合物を、水溶液
中で、または R2−OH (式中、R2はC1〜C6のアルキル基またはアルケニル基を
示し、このアルキル基またはアルケニル基はハロゲンで
置換されていてもよい) で表わされる化合物とともに、加水分解酵素と反応させ
ることにより、エステル基を立体選択的にヒドロキシル
基に変換して、光学活性な1,3−ブタンジオール−1−
ベンジルエーテルおよびその誘導体を製造する方法であ
って、加水分解酵素として、キャンディダ(Candida)
属、シュードモナス(Pseudomonas)属またはクロモバ
クテリウム(Chromobacterium)属に属する微生物の生
産するリパーゼを用いる光学活性1,3−ブタンジオール
−1−ベンジルエーテルおよびその誘導体の製造法(以
下、この方法をB法と称する) を提供する。
本発明において、−COR1で表わされるアシル基の具体
例としては、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリ
ル基、バレリル基、パルミトイル基、オレイル基、ステ
アロイル基等を挙げることができる。また、R2−で表わ
されるアルキル基またはアルケニル基の具体例として
は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル
基、イソプロペニル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキ
シル基、トリクロロエチル基等を挙げることができる。
基質として用いられる1,3−ブタンジオール−1−ベ
ンジルエーテルおよび一般式(III)で表される1,3−ブ
タンジオール−1−ベンジルエーテル誘導体は、その価
格の面でラセミ体が好ましいが、そのエナンチオマー混
合比率は特に限定されるものではなく、本発明は該混合
比率がいかなるエナンチオマー混合物にも適用できる。
本発明で用いることのできるリパーゼとしては、キャ
ンディダ属、シュードモナス属、またはクロモバクテリ
ウム属に属する微生物の生産するリパーゼであって、本
発明の目的を達し得るものであればどのようなものでも
よいが、好適な例としては、キャンディダ・シリンドラ
セア(Candida cylindracea)、シュードモナス・フル
オレッセンス(Pseudomanas fluorescens)、クロモバ
クテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosu
m)由来のリパーゼ等が挙げられる。これらのリパーゼ
は、それらを生産する微生物を培養することによって得
られるが、その使用形態は、特に限定されず、菌体培養
液をそのまま用いてもよく、また、粗酵素、精製酵素等
として用いてもよい。また、キャンディダ・シリンドラ
セア(Candida cylindracea)由来のものはリパーゼMY
(名糖産業製)、リパーゼOF(名糖産業製)、リパーゼ
AY「アマノ」30(天野製薬製)として、シュードモナス
・フルオレッセンス(Pseudomanas fluorescens)由来
のものはリパーゼP「アマノ」(天野製薬製)として、
クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium v
iscosum)由来のものはリパーゼ(東洋醸造製)として
市販されており、これらを使用することは好ましい。
これらのリパーゼは、それぞれ単独でも、あるいは、
必要に応じて混合して用いることもできる。また、これ
らを常法により固定化して用いることもできる。
本発明のA法において、反応液中の基質1,3−ブタン
ジオール−1−ベンジルエーテルと、一般式(I)また
は一般式(II)で表わされる化合物との割合は、通常、
1:0.6〜1:5(モル比)であり、好ましくは、1:0.9〜1:3
(モル比)である。
また、B法において反応液中の基質濃度は、通常、0.
1〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%である。
本発明の反応を行うに際し、反応液のpHは使用する酵
素の最適pHに合わせて行うのが好ましく、このために
は、適当な緩衝液を用いてもよいし、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等の水溶液を用い、pHスタットを用
いて反応中のpHをコントロールしてもよい。
反応温度もまた用いる酵素に異なるが、通常、10〜60
℃の範囲、好ましくは25〜50℃の範囲で反応が行われ
る。
反応液中の酵素濃度は、市販品を用いる場合、それぞ
れの酵素標品の酵素活性に応じて定めることができる。
前記酵素濃度として、例えば0.1〜10重量%を例示する
ことができる。
反応は、撹拌下、あるいは、静置下の何れの方法でも
行うことができるが、好ましくは撹拌下で行われる。
A法において、1,3−ブタンジオール−1−ベンジル
エーテルと一般式(I)または一般式(II)で表される
化合物とを反応させる際、特に溶媒類を加える必要はな
いが、0.5〜2%程度の少量の水を加えて反応を行って
もよい。
反応終了後、酵素は遠心分離または濾過操作等で除去
し、再使用することができる。酵素を除去した反応液
に、適当な有機溶剤、例えば酢酸エチル等を加え、生成
物を抽出した後、蒸留あるいはカラムクロマトグラフィ
ー等の常法を適用することにより、光学活性1,3−ブタ
ンジオール−1−ベンジルエーテル及びその誘導体を精
製、取得することができる。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は
これらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 直径21mmのねじ口試験管に、表1に示したリパーゼ0.
1gを採り、4−ベンジルオキシ−2−アセチルオキシブ
タンのラセミ体0.3g、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を加
え、30℃で24時間振盪した。反応終了後、ガスクロマト
グラフィー(カラム条件:ガスクロ工業製、Silicone
OV−17 10%,2m 180℃)により、残存する4−ベンジ
ルオキシ−2−アセチルオキシブタンを定量し、反応収
率を求めた。さらに、光学分割カラムを用いた高速液体
クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業製、キ
ラルセルOB,溶媒:n−ヘキサン/2−プロパノール=19/
1)により、残存する4−ベンジルオキシ−2−アセチ
ルオキシブタンの絶対配置及び光学純度を求めた。
得られた結果を表1に示した。
実施例2 直径21mmのねじ口試験管に表2に示したリパーゼ0.1g
を採り、1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル
のラセミ体3.0g、トリアセチン4.0gを加え、30℃で119
時間振盪した。反応終了後、実施例1と同様にして反応
収率と生成した4−ベンジルオキシ−2−アセチルオキ
シブタンの絶対配置及び光学純度を求めた。得られた結
果を表2に示した。
実施例3 n−ヘキサン6.0ml、n−ブタノール03ml,4−ベンジ
ルオキシ−2−アセチルオキシブタンのラセミ体1.0g、
表3に示したリパーゼ0.1gを直径21mmのねじ口試験管に
採り、30℃で36時間振盪した。反応終了後、実施例1と
同様にして反応収率と残存する4−ベンジルオキシ−2
−アセチルオキシブタンの絶対配置及び光学純度を求め
た。得られた結果を表3に示した。
(発明の効果) 本発明の光学活性1,3−ブタンジオール−1−ベンジ
ルエーテル及びその誘導体の製造方法は、簡便に光学活
性1,3−ブタンジオール−1−ベンジエーテル及び光学
活性1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエーテル誘導
体を製造することを可能とするものであり、工業的に極
めて有利である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,3−ブタンジオール−1−ベンジルエー
    テルのエナンチオマー混合物を、一般式(I) R1−COOR2 (I) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアルキ
    ル基またはアルケニル基を示す。R2は、C1〜C6のアルキ
    ル基またはアルケニル基を示し、このアルキル基または
    アルケニル基はハロゲンで置換されていてもよい) で表わされる化合物、または一般式(II) (式中、R1は前記と同じ) で表わされる化合物とともに、加水分解酵素と反応させ
    ることにより、ヒドロキシル基を立体選択的にエステル
    化して、光学活性な1,3−ブタンジオール−1−ベンジ
    ルエーテルおよびその誘導体を製造する方法であって、
    加水分解酵素として、キャンディダ(Candida)属、シ
    ュードモナス(Pseudomonas)属またはクロモバクテリ
    ウム(Chromobacterium)属に属する微生物の生産する
    リパーゼを用いる光学活性1,3−ブタンジオール−1−
    ベンジルエーテルおよびその誘導体の製造法。
  2. 【請求項2】一般式(III) (式中、R1は、直鎖または分枝鎖状のC1〜C18のアルキ
    ル基またはアルケニル基を示す) で表わされる化合物のエナンチオマー混合物を、水溶液
    中で、または R2−OH (式中、R2はC1〜C6のアルキル基またはアルケニル基を
    示し、このアルキル基またはアルケニル基はハロゲンで
    置換されていてもよい) で表わされる化合物とともに、加水分解酵素と反応させ
    ることにより、エステル基を立体選択的にヒドロキシル
    基に変換して、光学活性な1,3−ブタンジオール−1−
    ベンジルエーテルおよびその誘導体を製造する方法であ
    って、加水分解酵素として、キャンディダ(Candida)
    属、シュードモナス(Pseudomonas)属またはクロモバ
    クテリウム(Chromobacterium)属に属する微生物の生
    産するリパーゼを用いる光学活性1,3−ブタンジオール
    −1−ベンジルエーテルおよびその誘導体の製造法。
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