JP2690388B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

希土類ボンド磁石の製造方法

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JP2690388B2 JP2182496A JP18249690A JP2690388B2 JP 2690388 B2 JP2690388 B2 JP 2690388B2 JP 2182496 A JP2182496 A JP 2182496A JP 18249690 A JP18249690 A JP 18249690A JP 2690388 B2 JP2690388 B2 JP 2690388B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、回転電機等の各種装置に用いられる希土類
ボンド磁石の製造方法に関する。
(従来の技術) 従来から、比較的安価でしかも強力な永久磁石の開発
が種々行なわれている。例えば特開昭59-211549号公報
には、希土類−鉄−ホウ素系磁粉を接着剤で固化するこ
ととしたボンド磁石が提案されており、また特開昭61-1
74364号公報には、ミッシュメタル−遷移金属−ホウ素
系磁粉をバインダーと混合してなるプラスチック磁石が
提案されている。
このような希土類ボンド磁石は、希土類と遷移金属と
を含む磁性粉末を混練によってバインダー樹脂中に分散
してなるものであり、その製造方法が例えば特開昭60-1
64313号公報に記載されている。上記公報に開示された
製造方法の混練工程にはミキシングロールが使用されて
おり、バインダー樹脂中に、少量ずつ希土類磁性粉末と
シラン系カップリング剤とを混合しつつ混練を行なうよ
うにしている。得られた混練物は粉砕された後に圧延さ
れてシート状になされ、その後水蒸気による熱処理を通
して応力除去が行なわれる。
上記熱処理の工程には蒸気缶が用いられており、所定
の大きさに巻かれたシート状磁石が蒸気缶内に搬入さ
れ、ここで前記圧延工程にて生じた歪の除去が行なわ
れ、また加硫処理が行なわれるようになっている。
(発明が解決しようとする課題) ところがフェライト系磁粉を混練した磁石に対し水蒸
気を当てて上述のような歪除去あるいは加硫処理を行な
う場合には何ら問題を生じることはないが、希土類−遷
移金属系の磁性粉末を含む希土類ボンド磁石に対して水
蒸気を当てると、直ちに錆が発生する。このため希土類
−遷移金属系の磁性粉末を含む希土類ボンド磁石に対し
て、上述した缶加硫法を用いることはできない。
そこで本発明は、希土類−遷移金属系の磁石の歪取り
および加硫処理を、蒸気を用いることなしかも高効率で
行なうことができるようにした希土類ボンド磁石の製造
方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段および作用) 上記目的を達成するために請求項の1に記載された希
土類ボンド磁石の製造方法は、希土類と遷移金属とを含
む磁性粉末を、バインダー樹脂中に分散してなる希土類
ボンド磁石の製造方法において、(a)希土類と遷移金
属とを含む磁性粉末および防錆剤を、混合装置中に投入
し混合することにより上記磁性粉末に防錆被膜を形成す
る混合工程と、(b)上記混合工程により得られた混合
物と前記バインダー樹脂とを混練し、希土類と遷移金属
とを含む磁性粉末をバインダー樹脂中に分散させる混練
工程と、(c)上記混練工程により得られた混練物を、
不活性ガスの流動下で粒度5mm以下に砕く粉砕工程と、
(d)上記粉砕工程により得られた粉砕物を、表面温度
が20〜80℃に維持された圧延ロールによってシート状に
なす圧延工程と、(e)上記圧延工程によって得られた
シート状磁石を鉄板間に挟み込み、高温加熱により、12
5〜180℃の高温中に12分〜12時間放置する熱処理工程と
を備えている。
また請求項の2に記載された希土類ボンド磁石の製造
方法は、請求項の1に記載の希土類ボンド磁石の製造方
法において、混合工程および混練工程の少なくとも一方
の工程に、エポキシ樹脂を投入し混合することによって
磁性粉末にエポキシ樹脂被膜を形成する工程を備えてい
る。
さらに請求項の3に記載されたれ希土類ボンド磁石の
製造方法は、請求項の1に記載の希土類ボンド磁石の製
造方法において、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末
は、ホウ素を含有する磁性粉末からなる。
このような構成を有する手段においては、まず希土類
および遷移金属を含む磁性粉末と防錆剤との混合が行な
われて上記磁性粉末に防錆被膜が形成され、その上で磁
性粉末はバインダー樹脂と混練され分散が行なわれる。
上記混練工程においては、防錆被膜によって磁粉表面
の活性度が低下されているとともに、素材内への空気巻
き込みが極力防止されるようになっている。
さらに上記混練工程で得られた混練物は、不活性ガス
の流動下で所定の小粒径に粉砕され、その上で圧延行な
われる。したがって圧延工程においても、空気の巻き込
みを生じることはなく、平滑なシート状磁石が形成され
る。
またこのとき用いられる圧延ロールの表面温度は、所
定の範囲に維持されているため、シート状磁石の引っ張
り強度が巻き取り可能な範囲良好に維持されるととも
に、磁粉の酸化が抑制され磁気特性の劣化が防止される
ようになっている。
このようにして圧延形成されたシート状磁石は鉄板の
間に挟み込まれて熱処理が施されるが、当該シート状磁
石には上述のように空気の巻き込みが予め極力抑えられ
ている。したがって鉄板による高温加熱を行なっても、
シート状磁石に空気発泡等の不具合を生じることはな
い。しかしながら加熱温度が180℃を越えると、磁粉の
酸化が顕著となって磁気特性の劣化を招来するととも
に、加熱温度が125℃以下では加硫が進まず、所定の引
っ張り強度を得ることができない。
特に請求項の2にかかる発明のように、混合工程およ
び混練工程の少なくとも一方の工程に、エポキシ樹脂を
投入し混合して磁性粉末にエポキシ樹脂被膜を形成する
ようにすれば、空気の巻き込みが一層低減される。
本発明にかかる希土類ボンド磁石の製造方法は、第1
図に示されるような工程を有している。
まず超急冷法により希土類−遷移金属系磁性粉末を得
る。超急冷法の一例としてはジェットキャスティング法
がある。
ジェットキャスティング法においては、インゴッド状
に形成された希土類−遷移金属系磁性合金が受皿内に収
容され、不活性環境下で上記合金が高周波等によって溶
融される。溶融状態となった磁性合金はノズル付き湯溜
りに注入され、ノズルを通して回転ホイール上に落下さ
れる。回転ホイールは水によって冷却されており、ここ
で急速冷却が行なわれる。急冷された磁性合金は、リボ
ン状の磁粉に凝固されて下方に落下していき、容器内に
収集される。
ここで希土類−遷移金属系磁粉を構成する希土類とし
ては、ランタノイドのうち一種または二種以上が用いら
れ、遷移金属としては、Fe,Co,Niのうち一種または二種
以上が用いられる。この希土類−遷移金属系磁粉には、
ホウ素を含ませて希土類−遷移金属−ホウ素系磁性粉末
とすることができる。具体的には、Nd-Fe−B、Nd-Fe-C
o−B、Ce-La-Fe-Co−B、Sm-Co、Sm-Co-Fe、Sm-Co-Mn
等が用いられる。
つぎに希土類−遷移金属系磁性粉末にエポキシ主剤お
よび防錆剤を混合し、酸化膜、エポキシ樹脂膜および防
錆被膜を形成する(被覆形成工程)。
この酸化膜、エポキシ樹脂膜および防錆被膜を形成す
るにあたっては、まず混合装置中に不活性ガスが注入さ
れ、該混合装置中の空気は、酸素濃度が0.08〜3%とな
るようにガス置換される。混合装置としては、ボールミ
ル、V型ブレンダー、ダブルコーン型ブレンダー等が用
いられる。この不活性ガスとしては、アルゴンガス(A
r)、窒素ガス(N2)、炭酸ガス(CO2)などが用いら
れる。
そしてこのガス置換が行なわれた混合装置中に、希土
類−遷移金属系磁性粉末、エポキシ主剤および防錆剤が
投入され、約2時間程度にわたって混合が行なわれる。
この混合時には、まず混合装置中に僅かに残留している
酸素によって上記磁性粉末の表面上に酸化膜が形成さ
れ、さらにその上にエポキシ樹脂膜および防錆被膜が形
成される。酸素濃度を0.08〜3%とするのは、酸素濃度
が0.08%より小さい場合には酸化膜を形成することがで
きなくなるか、あるいは形成されても極めて薄いものに
しかならず、また酸素濃度が3%を越えると、酸素によ
る発火の危険を生じるからである。
上記エポキシ主剤としては、ビスフェノール系、フェ
ノキシ系、ノボラック系、ポリフェノール系、ポリヒド
ロキシベンゼン系あるいはこれらの誘導体等の一種また
は二種以上が用いられ、また防錆剤としてはソルビタン
モノオレエートと鉱物油または合成油の混合物等が用い
られる。
酸化膜、エポキシ樹脂膜および防錆剤の被膜が形成さ
れた磁粉は、取り出されて計量された後、加圧式ニーダ
ー等により可撓性を有するバインダー樹脂と数分にわた
って混練される(混練工程)。このときエポキシ樹脂の
硬化剤および硬化促進剤が添加される。硬化剤および硬
化促進剤をこの段階で添加するのは、磁粉の混合物を取
り出した直後から直ちに磁粉が硬化してしまうのを回避
するためである。このように混練工程により、希土類−
遷移金属系磁性粉末は、可撓性を有するバインダー樹脂
中にほぼ均一に分散される。
このときの可撓性を有するバインダー樹脂としては、
天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブダジエンゴ
ム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチル
ゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチ
レン−酢ビゴム(EVA)、ニトリルゴム(NBR)、アクリ
ルゴム(AR)、ウレタンゴム(UR)等が、一種または二
種以上にわたって用いられる。
すなわち本実施例におけるバインダー樹脂は、いわゆ
る3元ゴムからなり、極性がないゴム成分(例えばII
R)と、極性が強いゴム成分(例えばNBR)とが、ハロゲ
ンを含有するゴム成分(例えばCR)を介して良好に混合
されている。
極性がないゴム成分は耐油性・耐候性に難点があり、
また極性が強いゴム成分は非常に硬く伸展油または可塑
剤の添加を要する。そこでハロゲンを含有するゴム成分
を介して両ゴム成分を混合させることとすれば、それぞ
れのゴム成分の難点を補い合うゴム成分どうしが容易に
混合され、耐油性・耐候性の改善が行なわれるものであ
る。
上記ハロゲンを含有するゴム成分としては、クロロプ
レンゴム(CR)、ハイパロン(CSM)、塩素化ポリエチ
レン等の塩素を含有するものが一種または二種以上にわ
たって用いられる。この場合、当該ハロゲン含有のゴム
成分は、バインダー樹脂全体重量に対して15重量%以下
に設定されることが好ましい。ハロゲンを含有するゴム
成分がバインダー樹脂全体重量の15重量%を越えて含ま
れる場合には、塩素ガス(Cl2)や塩酸ガス(HCl)が発
生することとなり、例えばモータの場合には整流子腐食
や磁石の錆およびコア錆の原因となるからである。
上記硬化剤としては、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリ
アミン等のポリアミン、無水フタル酸等の酸無水物、ポ
リアミド樹脂、ポリスルフィッド樹脂、三フッ化ホウ素
等のアミンコンプレックス、フェノール樹脂等の合成樹
脂初期縮合物あるいはこれらの誘導体の一種または二種
以上が用いられる。硬化促進剤しては、トリスジメチル
アミノメチルフェノール等のアミン、1−イソブチル−
2−メチルイミダゾール等のイミダゾールあるいはこれ
らの誘導体の一種または二種以上が用いられる。
この混練工程において、加圧ニーダーは冷却されてお
り、95℃以下、好ましくは50〜60℃の温度条件下で混練
が行なわれる。この温度設定により、混練工程における
発火の危険性が回避される。すなわち95℃を越えて混練
が行なわれると発熱より発火を生じる危険があり、また
40℃以下ではゴムの可塑化が進まず十分な混練が行なわ
れない。
以上の混練工程により得られた混練物としての磁石素
材は、加圧式ニーダーから取り出され、直ちに10kg以下
の小ロットごとに小分けされる。小分け各磁石素材は、
密閉容器内にそれぞれ封入されて保存され、磁石素材の
温度が室温に低下するまでそのまま放置される(保存工
程)。この保存工程による放熱によって発火の危険が回
避される。
上記保存工程によって十分な放熱が行なわれた混練物
としての磁石素材は、取り出されて粒度5mm以下の大き
さに砕かれる(粉砕工程)。この粉砕工程は、アルゴン
ガス(Ar)、窒素ガス(N2)、炭酸ガス(CO2)などの
不活性ガスの流動による冷却下で行なわれ、温度条件は
95℃以下に設定される。粉砕には回転刃等が使用され
る。すなわちこの粉砕工程では、不活性ガスによる空冷
が行なわれることとなり、ほぼ大気中での粉砕が可能に
なっている。
ついで上記粉砕工程により得られた粉砕物に対してロ
ール等による圧延が施され、シート状のボンド磁石が得
られる(シート形成工程)。このとき圧延ロールの表面
温度は、20〜80℃に維持される。
さらに上記圧延工程によって得られたシート状磁石
は、第2図に示される加熱装置に通される。すなわち複
数枚のシート状磁石1,1,……は、複数枚の鉄板2,2,……
の間にそれぞれ挟み込まれて、125〜180℃の高温恒温槽
中に12分〜12時間放置され、所定の加熱処理が施され
る。この加熱処理によって加硫が行なわれ、所定の引っ
張り強度が付与されるようになっている。
ついで加熱処理が行なわれたシート状磁石は、適宜の
寸法に切断される。このとき磁性粉末には防錆処理が施
されているのでシート状ボンド磁石切断面も十分な防錆
能力を持っており、切断後にコーティング等の防錆処理
を行なう必要はない。
このような工程によって、最大エネルギー積が9.0[M
GOe]未満のシート状希土類ボンド磁石が得られる。最
大エネルギー積が9.0[MGOe]以上では、バインダー量
に対して磁粒量が多くなり過ぎて可撓性が失われてしま
い、実用性に適さない。また種々の回転電機等に用いる
のに最適な最大エネルギー積は3.0[MGOe]以上であ
り、最大エネルギー積は3.0[MGOe]未満の場合には、
磁石の価格の割に回転電機の特性を上げることはできな
い。
(実施例) 以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例1 磁粉としては、ゼネラルモーターズ社製MQPを湿式ボ
ールミルにより予め粉砕し粒度調整したものを用いた。
また上記磁粉は、超急冷法により形成したままでは粒度
2mm以下の磁粉であるため、これを粉砕して粒度78μm
以下としたものを用いた。防錆剤としては、花王社製レ
オドールSP-10を用い、またエポキシ主剤としては、
油化シェル社製エピコート828を用いた。
そしてボールミル容器の中に、磁粉、エポキシ主剤、
防錆剤およびアルミナボールを入れ、容器内の空気をN
2ガスで、酸素濃度が1.2%となるようにガス置換した
後、1時間の混合を行ない磁粉表面に、酸化膜、エポキ
シ樹脂膜および防錆膜を形成した。
つぎに以上の混合物とゴムバインダーとを、硬化剤お
よび硬化促進剤とともに加圧式ニーダーで7分間にわた
って混練した。上記硬化剤および硬化促進剤として、油
化シェル社製のYH-302およびIBMI-12を用いた。
得られた混練物を、4kgずつの小ロットに小分けして
ビニール袋に入れ、直ちに口元を縛ってから密閉容器内
に収納した。その後適当時間放置して密閉容器から混練
物を取り出し、粉砕機で粒度約26mm程度に粉砕した。粉
砕機には朋来鉄工所製U−140回転刃式を用いた。
シートを得るために用いられる圧延ロールの表面温度
を約50℃に維持しながら圧延を行ない、シート状磁石を
得た。
ついでシート磁石を約170℃に加熱してゴムバインダ
ーを加硫した後、所定の寸法に切断して可撓性磁石を得
た。
本実施例における配合を次表に示す。
上表中のIIR-NBR-CRは、IIR(ブチルゴム)100に対し
て、NBR(ニトリルゴム)が60、CR(クロロプレンゴ
ム)が15に設定されたものである。
この実施例の混練工程において、予め形成された防錆
被膜によって磁粉表面の活性度が低下されていること、
および素材内への空気巻き込みがほとんど生じないこと
が確認された。
さらに混練物は、粉砕工程により不活性ガスの流動下
で所定の小粒径に粉砕され、これによりつぎの圧延工程
においても空気の巻き込みはほとんど生じることがない
ことが確認された。
また圧延工程においては、圧延ロールの表面が所定の
温度に維持されたため、シート状磁石の引っ張り強度が
巻き取り可能な範囲に良好に維持され、かつ磁粉の酸化
が抑制されて磁気特性の劣化を生じることはなかった。
さらにつぎの鉄板による高温加熱においては、シート
状磁石に空気発泡等の不具合を生じることがないことが
確認された。なお加熱温度が180℃を越えると、磁粉の
酸化が顕著となって磁気特性の劣化を招来し、加熱温度
が125℃以下では加硫が進まず、所定の引っ張り強度を
得ることができなかった。
また本実例では、混合工程に、エポキシ樹脂を投入し
て混合し、そこで磁性粉末にエポキシ樹脂被膜を形成し
ているから、空気の巻き込みは一層低減された。エポキ
シ樹脂を混練工程で加えることとしても同様の作用・効
果が得られた。
なお得られた磁石の磁気特性は、Br=5.5[KG]、iHc
=9.9[kOe]、bHc=4.5[kOe]、(BH)max=6.2[MGO
e]であった。
また得られた磁石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間放
置したところ、表面に発錆はみられなかった。さらにブ
ラシ付きDCモータの駆動用磁石として用いたところ、60
℃、200時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag-Pd)とコ
ミュテータ材質(Ag-Cd)に腐食の発生はなかった。
実施例2 磁粉としては、MM14(Fe0・9Co0・1797なる組成の
合金を単ロール法によって超急冷リボンとし、湿式ボー
ルミルにより粉砕し粒度調整したものを用いた。防錆剤
としては、花王社製レオドルSP-10と米国テネコケミ
カル社製アンデロール456との混合液とを用いた。以下
上述した実施例1と同様にしてシート状の可撓性磁石を
得た。
この実施例による混練工程においても、予め形成され
た防錆被膜によって磁粉表面の活性度が低下されている
こと、および素材内への空気巻き込みはほとんどないこ
とが確認された。
さらにこの混練物は、粉砕工程により不活性ガスの流
動下で所定の小粒径に粉砕され、これによりつぎの圧延
工程においても空気の巻き込みはほとんど生じることが
なかった。
また圧延工程においても、圧延ロールの表面温度が所
定値に維持され、所定の引っ張り強度を得た。さらに磁
粉の酸化も同様に抑制され、磁気特性の劣化を生じるこ
とはなかった。
つぎの鉄板による高温加熱においても、シート状磁石
に空気発泡等の不具合を生じることはなかった。
なおこの実施例2により得られた磁石の磁気特性は、
Br=4.6[KG]、iHc=7.0[kOe]、bHc=3.1[kOe]、
(BH)max=4.0[MGOe]であった。
さらに得られた磁石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間
放置したところ、表面に発錆はみられなかった。さらに
ブラシ付きDCモータの駆動用磁石として用いたところ、
60℃、200時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag-Pd)と
コミュテータ材質(Ag-Cd)に腐食は発生しなかった。
このように本発明によるシート状希土類ボンド磁石
は、回転電機等に対して好適に取り付けられ使用される
ことが確認された。
なお永久磁石粉の代わりに、鉄粉、鉄合金等の高透磁
率を有する金属粉を用いることとすれば、可撓性を有す
る高透磁率材を形成することができる。
(発明の効果) 以上述べたように本発明による希土類ボンド磁石の製
造方法は、まず混合工程において、希土類および遷移金
属を含む磁性粉末に防錆被膜を形成し、その上で磁性粉
末をバインダー樹脂と混練して分散を行ない、混練工程
における素材内への空気巻き込みを極力防止するととも
に、その混練工程で得られた混練物を、不活性ガスの流
動下で所定の小粒径に粉砕した上で圧延を行ない、圧延
工程においても空気の巻き込みを生じなくし、この空気
巻き込みのない状態で鉄板間に挟み込み加熱を行なうこ
ととしたから、空気発泡等の不具合を生じることなく鉄
板による高温加熱に行なうことができる。したがって、
蒸気を用いることなく希土類−遷移金属系の磁石の歪取
りおよび加硫処理を高効率で行なうことができる。
また圧延ロールの表面温度および加熱処理温度を所定
の範囲に維持することによって、シートの引っ張り強度
を巻き取り可能な範囲良好に維持するとともに、磁粉の
酸化を抑制し磁気特性の劣化を防止することとしたか
ら、極めて高品質な希土類ボンド磁石を得ることができ
る。
さらにまた特に請求項の2にかかる発明のように、混
合工程および混練工程の少なくとも一方の工程にエポキ
シ樹脂を投入して磁性粉末にエポキシ樹脂被膜を形成す
れば、空気の巻き込みを一層低減することができ、上述
た効果をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる希土類ボンド磁石の製造工程を
表わしたフロー図、第2図は本発明の加熱工程を実施す
るための加熱装置の一例を表わした側面説明図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類と遷移金属とを含む磁性粉末を、バ
    インダー樹脂中に分散してなる希土類ボンド磁石の製造
    方法において、少なくとも次の工程を備えてなることを
    特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。 (a) 希土類と遷移金属とを含む磁性粉末および防錆
    剤を、混合装置中に投入し混合することにより上記磁性
    粉末に防錆被膜を形成する混合工程。 (b) 上記混合工程により得られた混合物と前記バイ
    ンダー樹脂とを混練し、希土類と遷移金属とを含む磁性
    粉末をバインダー樹脂中に分散させる混練工程。 (c) 上記混練工程により得られた混練物を、不活性
    ガスの流動下で粒度5mm以下に砕く粉砕工程。 (d) 上記粉砕工程により得られた粉砕物を、表面温
    度が20〜80℃に維持された圧延ロールによってシート状
    になす圧延工程。 (e) 上記圧延工程によって得られたシート状磁石を
    鉄板の間に挟み込み、鉄板による高温加熱により125〜1
    80℃の高温中に12分〜12時間放置する熱処理工程。
  2. 【請求項2】請求項の1に記載のシート状希土類ボンド
    磁石の製造方法において、混合工程および混練工程の少
    なくとも一方の工程に、エポキシ樹脂を投入し混合する
    ことによって磁性粉末にエポキシ樹脂被膜を形成するよ
    うにしたことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方
    法。
  3. 【請求項3】請求項の1に記載のシート状希土類ボンド
    磁石の製造方法において、希土類と遷移金属とを含む磁
    性粉末は、ホウ素を含有していることを特徴とする希土
    類ボンド磁石の製造方法。
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