JP2685633B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

希土類ボンド磁石の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、回転電機等の各種装置に用いられる希土類
ボンド磁石の製造方法に関する。
(従来の技術) 従来から、比較的安価でしかも強力な永久磁石の開発
が種々行なわれている。例えば特開昭59−211549号公報
には、希土類−鉄−ホウ素系磁粉を接着剤で固化するこ
ととしたボンド磁石が提案されており、また特開昭61−
174364号公報には、ミッシュメタル−遷移金属−ホウ素
系磁粉をバインダーと混合してなるプラスチック磁石が
提案されている。
このような希土類ボンド磁石は、希土類と遷移金属と
を含む磁性粉末を混練によってバインダー樹脂中に分散
してなるものであり、その製造方法が例えば特開昭60−
164313号公報に記載されている。上記公報に開示された
製造方法の混練工程にはミキシングロールが使用されて
おり、バインダー樹脂中に、少量ずつ希土類磁性粉末と
シラン系カップリング剤とを混合しつつ混練を行なうよ
うにしている。得られた混練物は粉砕された後に圧延さ
れる。
(発明が解決しようとする課題) ここで希土類と遷移金属とを含む磁性粉末と固形のバ
インダー樹脂との混練を行なう場合、またはその混練物
の粉砕を行なう場合には、発火を生じる危険性があり、
発火から生産不能に陥るおそれもある。このため従来方
法により、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末を混練ま
たは粉砕する場合には、所定の雰囲気形成が行なわれ、
それにより発火の危険を回避するようにしている。
しかしながら雰囲気形成用の設備は非常に大がかりに
なものにならざるを得ず、多大の設備投資を行なう必要
がある。
そこで本発明は、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末
の混練および粉砕をほぼ大気中で行なうことができ、設
備の簡易化を図ることができるようにし希土類ボンド磁
石の製造方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段および作用) 上記目的を達成するために請求項の1に記載された希
土類ボンド磁石の製造方法は、希土類と遷移金属とを含
む磁性粉末を固形のバインダー樹脂中に分散してなる希
土類ボンド磁石の製造方法において、少なくとも、
(a)希土類と遷移金属とを含む磁性粉末、エポキシ樹
脂および防錆剤をボールミル等の混合装置中に投入して
混合を行ない、エポキシ樹脂膜および防錆被膜を上記磁
性粉末に形成する混合工程と、(b)上記上記混合工程
により得られた混合物と前記固形のバインダー樹脂と
を、95℃以下の温度条件下で大気中で混練し、希土類と
遷移金属とを含む磁性粉末を、バインダー樹脂中に分散
させる混練工程と、(c)上記混練工程により得られた
混練物を、不活性ガスの流動下で粉砕する粉砕工程とを
備えている。
また請求項の2に記載された希土類ボンド磁石の製造
方法は、請求項の1に記載の希土類ボンド磁石の製造方
法において、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末にはホ
ウ素が含有されている。
このような構成を有する手段においては、まず希土類
と遷移金属とを含む磁性粉末にエポキシ樹脂および防錆
被膜を予め形成し、その上で混練および粉砕の各工程が
行なわれる。このため混練および粉砕の工程において
は、素材内への酸素流入が遮断れるようになっている。
さらに上記酸素遮断作用に加えて混練工程の温度が発
火点以下の95℃以下に規制されており、また粉砕工程で
は不活性ガスの流動下で冷却が行なわれつつ粉砕が行な
われる。このため発火のおそれをほとんど生じることな
く混練および粉砕が行なわれるようになっている。
本発明にかかる希土類ボンド磁石の製造方法は、第1
図に示されるような工程を有している。
まず超急冷法により希土類−遷移金属系磁性粉末を得
る。超急冷法の一例としてはジェットキャスティング法
がある。
ジェットキャスティング法においては、インゴッド状
に形成された希土類−遷移金属系磁性合金が受皿内に収
容され、不活性環境下で上記合金が高周波等によって溶
融れる。溶融状態となった磁性合金はノズル付きの湯溜
りに注入され、ノズルを通して回転ホイール上に落下さ
れる。回転ホイールには水によって冷却されており、こ
こで急速冷却が行なわれる。急冷された磁性合金は、リ
ボン状の磁粉に凝固されて下方に落下していき、容器内
に収集される。
ここで希土類−遷移金属系磁粉を構成する希土類とし
ては、ランタノイドのうち一種または二種以上が用いら
れ、遷移金属としては、Fe,Co,Niのうち一種または二種
以上が用いられる。この希土類−遷移金属系磁粉には、
ホウ素を含ませて希土類−遷移金属−ホウ素系磁性粉末
とすることができる。具体的には、Nd−Fe−B、Nd−Fe
−Co−B、Ce−La−Fe−Co−B、Sm−Co、Sm−Co−Fe、
Sm−Co−Mn等が用いられる。
つぎに希土類−遷移金属系磁性粉末にエポキシ主剤お
よび防錆剤を混合し被膜を形成する(被膜形成工程)。
このエポキシ主剤および防錆剤の被膜を形成するにあ
たっては、酸素を不活性ガスによりガス置換した上で混
合装置により約2時間程度行なわれる。混合装置として
は、ボールミル、V型ブレンダー、ダブルコーン型ブレ
ンダー等が用いられる。
上記エポキシ主剤としては、ビスフェノール系、フェ
ノキシ系、ノボラック系、ポリフェノール系、ポリヒド
ロキシベンゼン系あるいはこれらの誘導体等の一種また
は二種以上が用いられ、また防錆剤としてはソルビタン
モノオレエートと鉱物油または合成油の混合物等が用い
られる。さらに上記不活性ガスとしては、アルゴンガス
(Ar)、窒素ガス(N2)、炭酸ガス(CO2)などが用い
られ、ガス置換後の酸素濃度は、3%〜0.08%に設定さ
れる。
エポキシ樹脂膜および防錆剤の被膜が形成された磁粉
は、取り出されて計量された後、加圧式ニーダー等によ
り可撓性を有する固形のバインダー樹脂と数分にわたっ
て大気中で混練される(混練工程)。このときエポキシ
樹脂の硬化剤および硬化促進剤が添加される。硬化剤お
よび硬化促進剤をこの段階で添加するのは、磁粉の混合
物を取り出した直後から直ちに磁粉が硬化してしまうの
を回避するためである。このような混練工程により、希
土類−遷移金属系磁性粉末は、可撓性を有するバインダ
ー樹脂中にほぼ均一に分散される。
このときの可撓性を有する固形のバインダー樹脂とし
ては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジ
エンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、
ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EP
R)、エチレン−酢ビゴム(EVA)、ニトリルゴム(NB
R)、アクリルゴム(AR)、ウレタンゴム(UR)等が、
一種または二種以上にわたって用いられる。
すなわち本実施例におけるバインダー樹脂は、いわゆ
る3元ゴムからなり、極性のないゴム成分(例えばII
R)と、極性が強いゴム成分(例えばNBR)とが、ハロゲ
ンを含有するゴム成分(例えばCR)を介して良好に混合
されている。
極性のないゴム成分は耐油性・耐候性に難点があり、
また極性の強いゴム成分は非常に硬く伸展油または可塑
剤の添加を要する。そこでハロゲンを含有するゴム成分
を介して両ゴム成分を混合させることとすれば、それぞ
れのゴム成分の難点を補い合うゴム成分どうしが容易に
混合され、耐油性・耐候性の改善が行なわれるものであ
る。
上記ハロゲンを含有するゴム成分としては、クロロプ
レンゴム(CR)、ハイパロン(CSM)、塩素化ポリエチ
レン等の塩素を含有するものが一種または二種以上にわ
たって用いられる。この場合、当該ハロゲン含有のゴム
成分は、バインダー樹脂全体重量に対して15重量%以下
に設定されることが好ましい。ハロゲンを含有するゴム
成分がバインダー樹脂全体重量の15重量%を超えて含ま
れる場合には、塩素ス(Cl2)や塩素ガス(HCl)が発生
することとなり、例えばモータの場合には整流子腐食や
磁石の錆およびコア錆の原因となるからである。
上記硬化剤としては、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリ
アミン等のポリアミン、無水フタル酸等の酸無水物、ポ
リアミド樹脂、ポリスルフィッド樹脂、三フッ化ホウ素
等のアミンコンプレックス、フェノール樹脂等の合成樹
脂初期縮合物あるいはこれらの誘導体の一種または二種
以上が用いられる。硬化促進剤としては、トリスジメチ
ルアミノメチルフェノール等のアミン、1−イソブチル
−2−メチルイミダゾール等のイミダゾールあるいはこ
れらの誘導体の一種または二種以上が用いられる。
この混練工程において、加圧ニーダーは冷却されてお
り、95℃以下、好ましくは50〜60℃の温度条件下で混練
が行なわれる。この温度設定により、混練工程における
発火の危険性が回避される。すなわち95℃を超えて混練
が行なわれると発熱より発火を生じる危険性があり、ま
た40℃以下ではゴムの可塑化が進まず十分な混練が行な
われない。
以上の混練工程により得られた磁石素材は、加圧式ニ
ーダーから取り出されて所定の大きさに砕かれる(粉砕
工程)。この粉砕工程は、アルゴンガス(Ar)、窒素ガ
ス(N2)、炭酸ガス(CO2)などの不活性ガスの流動下
で行なわれ、温度条件は95℃以下に設定される。粉砕に
は回転刃等が使用される。
すなわちこの粉砕工程では、不活性ガスによる空冷が
行なわれることとなり、ほぼ大気中での粉砕工程が可能
になっている。
ついで上記粉砕工程により得られた粉砕物に対してロ
ール等による圧延が施され、シート状のボンド磁石が得
られる(シート形成工程)。
その後、所定の熱処理が施され、適宜の寸法に切断さ
れる。このとき磁性粉末には防錆処理が施されているの
でシート状ボンド磁石切断面も十分な防錆能力を持って
おり、切断後にコーティング等の防錆処理を行なう必要
はない。
このような工程によって、最大エネルギー積が9.0[M
GOe]未満のシート状希土類ボンド磁石が得られる。最
大エネルギー積が9.0[MGOe]以上では、バインダー量
に対して磁粉量が多くなり過ぎて可撓性が失われてしま
い、実用性に適さない。また種々の回転電機等に用いる
のに最適な最大エネルギー積は3.0[MGOe]以上であ
り、最大エネルギー積は3.0[MGOe]未満の場合には、
磁石の価格の割に回転電機の特性を上げることはできな
い。
(実施例) 以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例1 磁粉としては、ゼネラルモーター社製MQPを湿式ボー
ルミルにより予め粉砕し粒度調整したものを用いた。ま
た上記磁粉は、超急冷法により形成したままでは粒度2m
m以下の磁粉であるため、これを粉砕して粒度78μm以
下としたものを用いた。防錆剤としては、花王社製レオ
ドールSP−O10を用い、またエポキシ主剤としては、油
化シェル社製エピコート828を用いた。
そしてボールミル容器の中に、磁粉、防錆剤およびア
ルミナボールを入れ、容器内の空気をN2で置換した後、
1時間混合して磁粉表面に防錆剤の被膜を形成した。
つぎに以上の混合物とゴムバインダーとを、硬化剤お
よび硬化促進剤とともに加圧式ニーダーで7分間にわた
って混練した後、粉砕機で粉砕し、ロール圧延してシー
トを得た。上記硬化剤および硬化促進剤としては、油化
シェル社製のYH−302およびIBMI−12を用いた。混練お
よび粉砕が行なわれるときの温度は約55℃に保った。
ついでシートを約170℃に加熱してゴムバインダーを
加硫した後、所定の寸法に切断して可撓性磁石を得た。
本実施例における配合を次表に示す。
上表中のIIR−NBR−CRは、IIR(ブチルゴム)100に対
して、NBR(ニトリルゴム)が60、CR(クロロプレンゴ
ム)が15に設定されたものである。
この本実施例の混練および粉砕の各工程においては、
エポキシ樹脂膜および防錆被膜が磁性粉末に予め形成さ
れているため、素材内への酸素流入にほぼ完全に阻止さ
れていることが確認された。また特に混練工程では、上
記酸素遮断作用に加えて冷却による温度規制が行なわ
れ、さらに粉砕工程では、不活性ガスの流動による冷却
が行なわれて設定温度以上の温度上昇を生じることはな
かった。したがって混練工程および粉砕工程において発
火のおそれはほとんどなかった。
なお得られた磁石の磁気特性は、Br=5.5[KG]、iHc
=9.9[KOe]、bHc=4.5[KOe]、(BH)max=6.2[KGO
e]であった。
また得られた磁石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間放
置したところ、表面に発錆はみられなかった。さらにブ
ラシ付きDCモータの駆動用磁石として用いたところ、60
℃、200時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag−Pd)と
コミュテータ材質(Ag−Cd)に腐食の発生はなかった。
実施例2 磁粉としては、MM14(Fe0・9Co0・179B7なる組成の合
金を単ロール法によって超急冷リボンとし、湿式ボール
ミルにより粉砕し粒度調整したものを用いた。防錆剤と
しては、花王社製レオドールSP−10と米国テネオケミ
カル社製アンデロール456との混合液とを用いた。以下
上述した実施例1と同様にしてシート状の可撓性磁石を
得た。
この実施例による混練および粉砕の各工程において
も、エポキシ樹脂膜および防錆被膜によって磁性素材内
への酸素流入はほぼ完全に阻止されていることが確認さ
れた。また混練工程および粉砕工程における冷却も十分
に行なわれ、混練工程および粉砕工程における発火のお
それはほとんどなかった。
なおこの実施例2により得られた磁石の磁気特性は、
Br=4.6[KG]、iHc=7.0[KOe]、bHc=3.1[KOe]、
(BH)max=4.0[KGOe]であった。
さらに得られた磁石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間
放置したところ、表面に発錆はみられなかった。さらに
ブラシ付きDCモータの駆動用磁石として用いたところ、
60℃、200時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag−Pd)
とコミュテータ材質(Ag−Cd)に腐食は発生しなかっ
た。
このように本発明によるシート状希土類ボンド磁石
は、回転電機等に対して好適に取り付けられ使用される
ことが確認された。
なお永久磁石の代わりに、鉄粉、鉄合金等の高透磁率
を有する金属粉を用いることとすれば、可撓性を有する
高透磁率材を形成することができる。
(発明の効果) 以上述べたように本発明による希土類ボンド磁石の製
造方法は、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末にエポキ
シ樹脂膜および防錆被膜を予め形成してから上記磁性粉
末、エポキシ樹脂、防錆剤の混合物と、固形のバインダ
ー樹脂との混練および粉砕の各工程を行ない、磁性素材
内への酸素流入を阻止するとともに、混練工程および粉
砕工程において発火点以下の所定の温度に冷却を行なう
こととしたから、混練工程および粉砕工程における発火
の危険性を回避することができ、希土類と遷移金属とを
含む磁性粉末の混練および粉砕をほぼ大気中で行なうこ
とができる。したがって本発明によれば、混練および粉
砕にあたって多大の設備は不要となり設備全体の簡易化
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる希土類ボンド磁石の製造工程を
表わしたフロー図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−184804(JP,A) 特開 昭63−33802(JP,A) 特開 昭61−287104(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類と遷移金属とを含む磁性粉末を、固
    形のバインダー樹脂中に分散してなる希土類ボンド磁石
    の製造方法において、少なくとも次の工程を備えてなる
    ことを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法、 (a)希土類と遷移金属とを含む磁性粉末、エポキシ樹
    脂および防錆剤を混合装置中に投入して混合を行い、エ
    ポキシ樹脂膜および防錆被膜を上記磁性粉末に形成する
    混合工程、 (b)上記混合工程により得られた混合物と前記固形の
    バインダー樹脂とを、95℃以下の温度条件下で大気中で
    混練し、希土類と遷移金属とを含む磁性粉末をバインダ
    ー樹脂中に分散させる混練工程、 (c)上記混練工程により得られた混練物を、不活性ガ
    スの流動下で粉砕する粉砕工程。
  2. 【請求項2】請求項の1に記載の希土類ボンド磁石の製
    造方法において、 希土類と遷移金属とを含む磁性粉末は、ホウ素を含有し
    ていることを特徴とする希土類ボンド磁石の製造方法。
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JPS6333802A (ja) * 1986-07-29 1988-02-13 Tohoku Metal Ind Ltd 複合磁石の製造方法

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