JP2528574B2 - 希土類ボンド磁石の製造方法 - Google Patents

希土類ボンド磁石の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転電機等に組み込ま
れて使用される希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、比較的安価でしかも良好な磁
気特性を備えたボンド磁石の開発が種々行われている。
例えば、特開昭59−211549号公報には、希土類
−鉄−ホウ素系磁性粉末を接着剤で固化してなるボンド
磁石が提案されており、また特開昭61−174364
号公報には、ミッシュメタル−遷移金属−ホウ素系磁性
粉末をバインダーと混合してなるプラスチック磁石が提
案されている。さらに特開昭63−274114号公報
及び特開昭63−287003号公報には、希土類磁性
粉末とフェライト磁性粉末との混合物を用いたプラスチ
ック磁石が提案されており、特開平2−22803号公
報には、希土類磁性粉末どうしを混合してなるボンド磁
石が提案されている。
【0003】このようなボンド磁石は、磁性粉末を混練
によって樹脂バインダー中に分散してなるものである
が、その製造方法が例えば特開昭60−164313号
公報に記載されている。当該公報に開示された製造方法
によれば、磁性粉末とシラン系カップリング剤とを樹脂
バインダー中に少量ずつ混合しつつ、ミキシングロール
を用いて混練を行っている。得られた混練物は、一旦粉
砕された後に圧延され、シート状になされる。そのシー
ト状の磁石素材には水蒸気による熱処理が施され、これ
により圧延工程にて生じた歪の除去が行なわれ、あるい
は加硫が行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところがこのようなボ
ンド磁石において、可撓性を有する樹脂バインダー中に
希土類磁性粉末を分散させることによって可撓性の希土
類ボンド磁石を得る場合に、上述のような熱処理を行っ
ても内部まで十分な加硫を行い得ないことがあり、磁石
に剛性不足を生じることがある。特にNd−Fe−B系磁
性粉末の場合に対しては加硫を行いにくく、剛性不足を
生じ易い。
【0005】そこで本発明は、可撓性のボンド磁石に対
する加硫を良好に行うことができるようにした希土類ボ
ンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明にかかる希土類ボンド磁石の製造方法は、可撓性
を有する樹脂バインダー中に、希土類−遷移金属−ホウ
素系の磁性粉末を分散してなる希土類ボンド磁石の製造
方法において、少なくとも、(a)希土類−遷移金属−ホ
ウ素系の磁性粉末と樹脂バインダーとを混練する混練工
程と、(b)上記工程により得られた混練物を粉砕した
後、シート状に圧延する圧延工程と、(c)シート状に圧
延された磁石素材を、125〜180℃の温度条件で6
0〜180分間放置して熱処理する熱処理工程と、(d)
熱処理されたシート状磁石素材を切断する切断工程と、
(e)切断後のシート状磁石素材を、100〜180℃の
恒温槽中に20〜180分間放置して再度の熱処理をす
る再熱処理工程とを備えた構成を有している。
【0007】
【作用】このような構成を有する手段においては、切断
によって現出された磁石の新生面に対して、熱処理が再
度加えられることとなり、熱処理による加硫が磁石内部
まで良好に進行される。
【0008】上記手段のより具体的な構成を説明する
と、まず超急冷法により希土類−遷移金属−ホウ素系磁
性粉末を得る。超急冷法の一例としてはジェットキャス
ティング法がある。このジェットキャスティング法にお
いては、インゴッド状に形成された磁性合金が受皿内に
収容され、不活性環境下で上記合金が高周波等によって
溶融される。溶融状態となった磁性合金はノズル付きの
湯溜りに注入され、ノズルを通して回転ホイール上に落
下される。回転ホイールは水によって冷却されており、
ここで急速冷却が行なわれる。急冷された磁性合金は、
リボン状の磁性粉末に凝固されて下方に落下していき、
容器内に収集される。
【0009】ここで希土類−遷移金属系磁性粉末を用い
る場合の希土類としては、ランタノイドのうち一種また
は二種以上が用いられ、遷移金属としては、Fe,Co,
Niのうち一種または二種以上が用いられる。この希土
類−遷移金属系磁性粉末には、ホウ素を含ませて希土類
−遷移金属−ホウ素系(R−T−B)磁性粉末とするこ
とができる。具体的には、Nd−Fe−B系磁性粉末とし
て、Nd−Fe−B,Nd−Fe−Co−B,(Nd,Pr)
−Fe−B,(Nd,Pr)−Fe−Co−B等が用いら
れ、(Ce,La)−Fe−B系磁性粉末としては、(Ce,L
a)−Fe−B,(Ce,La)−Fe−Co−B,MM−Fe−
B,MM−Fe−Co−B等が用いられ、さらにSm−Co
系磁性粉末としては、Sm−Co,Sm−Co−Fe,Sm−
Co−Mn等が用いられる。
【0011】つぎに図1に示されているように、希土類
−遷移金属−ホウ素系磁性粉末が、磁石全体に対して5
5〜96重量%となるように計量される。磁性粉末を磁
石全体に対して96重量%以下とするのは、磁性粉末の
割合が96重量%を越えた高充填率となると、磁性粉末
に対するバインダーの量が不足状態になり、磁石自身の
磁力にバインダー強度が負けて磁石の倒壊を招き、ある
いは磁石が硬くなり過ぎになってシート状に成形できな
くなったり、可撓性が不足し製品への組込が不可能にな
るからである。一方磁性粉末を磁石全体に対して55重
量%以上とするのは、磁性粉末の割合が55重量%より
少ないと、磁力不足が生じて高磁力を目的とする希土類
磁性粉末の有用性がなくなるためである。なお磁性粉末
を磁石全体に対して93重量%より少なくした場合に
は、磁性粉末の充填率が低くなり過ぎて磁石に変形を生
じ易くなる。
【0012】このとき希土類−遷移金属−ホウ素系(R
−T−B)磁性粉末を用いる場合には、磁性粉末の粒度
をメジアン径で78μm以下の微粉、例えば42μmに粉
砕することが上記充填率を得る上で好ましい。磁性粉末
の調整は、ボールミルやロール等を用いて行うこととす
る。
【0013】また特に磁石の要求磁気力が小さく設定さ
れている等の場合に、磁性粉末の投入量が少なく所定の
充填率を達し得ないことがある。その場合には、ホワイ
トカーボン等の非磁性の粉体を、磁性粉末とともにバイ
ンダー(後述)中に補強材として用いればよい。このよ
うな混入フィラーを用いれば、磁石中のいわゆるフィラ
ー充填率を必要値まで高めることができ、それによって
磁石の変形性を改善し、磁石の剛性を高めることができ
る。このときの充填率の範囲は、磁性粉末と混入フィラ
ーを合わせたフィラーの全体で、73〜50体積%、特
に希土類−遷移金属−ホウ素(R−T−B)系磁性粉末
を用いる場合には、磁性粉末と混入フィラーの全体で7
3〜50体積%かつ磁性粉末の範囲は71〜13体積%
が適切であり、混入フィラーの範囲は、60〜2体積%
とする。
【0014】上記非磁性の混入フィラーとしては、上述
したホワイトカーボンの他に、タルク、カーボンブラッ
ク、カーボン繊維、フェライト粉等の化学的あるいは物
理的に安定な粉体を使用することができる。また混入フ
ィラーの粒度は、メジアン径で78μm以下とする。
【0015】さらに磁性粉末としてNd−Fe−Bを用い
る場合には、上述した非磁性の混入フィラーの代わり
に、(Ce,La)−Fe−B系磁性粉末を用いることが好ま
しい。これは、Nd−Fe−Bを用いた磁石が加硫(後
述)しにくく、必要な剛性を得にくいという問題がある
からである。加硫を行い易い希土類−遷移金属−ホウ素
系(R−T−B)磁性粉末を混入れば、加硫が磁石内部
まで促進されて、磁石の剛性が高められ磁石の変形を防
止することができるものである。この場合の混入希土類
−遷移金属−ホウ素系(R−T−B)磁性粉末として
は、(Ce,La)−Fe−B、ミッシュメタル−Fe−B等
を採用することができる。
【0016】また磁性粉末どうしの混合割合は、残留磁
束密度Brが6300G以下となる割合ならば、どのよ
うな割合でも採用することができるが、特にNd−Fe−
B系磁性粉末と(Ce,La)−Fe−B系磁性粉末とを混合
させる場合には、(Ce,La)−Fe−B系磁性粉末を、磁
性粉末全体に対して5重量%以上に配合すれば、所定の
剛性を得ることが可能である。
【0017】次に所定量の防錆剤及びエポキシ主剤が混
合され、酸化膜、エポキシ樹脂膜及び防錆被膜の形成が
行われる(被膜形成工程)。すなわちまず混合装置中に
不活性ガスが注入され、該混合装置中の空気が、酸素濃
度0.08〜3%となるようにガス置換される。混合装
置としては、ボールミル、V型ブレンダー、ダブルコー
ン型ブレンダー等が用いられる。また不活性ガスとして
は、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N2)、炭酸ガス(C
2)などが用いられる。
【0018】このようにしてガス置換が行なわれた混合
装置中には、希土類−遷移金属系磁性粉末、エポキシ主
剤及び防錆剤が投入され、約2時間程度にわたって混合
が行なわれる。混合では、まず混合装置中に僅かに残留
している酸素によって上記磁性粉末の表面上に酸化膜が
形成され、さらにその上にエポキシ樹脂膜及び防錆被膜
が形成される。酸素濃度を0.08%〜3%としておく
のは、酸素濃度が0.08%より小さいと、酸化膜を形
成することができなくなるか、あるいは形成されても極
めて薄いものにしかならず、また酸素濃度が3%を越え
ると、酸素による発火の危険を生じるからである。
【0019】上記エポキシ主剤としては、ビスフェノー
ル系、フェノキシ系、ノボラック系、ポリフェノール
系、ポリヒドロキシベンゼン系あるいはこれらの誘導体
等の一種または二種以上が用いられ、また防錆剤として
はソルビタンモノオレエートと鉱物油または合成油の混
合物等が用いられる。
【0021】酸化膜、エポキシ樹脂膜及び防錆剤の被膜
が形成された磁性粉末は、取り出されて計量された後、
加圧式ニーダー等により可撓性を有する樹脂バインダー
と数分にわたって混練される(混練工程)。このときエ
ポキシ樹脂の硬化剤及び硬化促進剤が添加される。硬化
剤及び硬化促進剤をこの段階で添加するのは、磁性粉末
の混合物を取り出した直後から直ちに磁性粉末が硬化し
てしまうのを回避するためである。このような混練工程
により、希土類−遷移金属系磁性粉末は、可撓性を有す
る樹脂バインダー中にほぼ均一に分散される。
【0022】このときの可撓性を有する樹脂バインダー
としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(I
R)、ブダジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン
ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プ
ロピレンゴム(EPR)、エチレン−酢ビゴム(EV
A)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(A
R)、ウレタンゴム(UR)等が、一種または二種以上
にわたって用いられる。すなわちこれらの樹脂バインダ
ーは、いわゆる3元ゴムであり、極性がないゴム成分
(例えばIIR)と、極性が強いゴム成分(例えばNB
R)とが、ハロゲンを含有するゴム成分(例えばCR)
を介して良好に混合されている。極性がないゴム成分は
耐油性・耐候性に難点があり、また極性が強いゴム成分
は非常に硬く伸展油または可塑剤の添加を要する。そこ
でハロゲンを含有するゴム成分を介して両ゴム成分を混
合させることとすれば、それぞれのゴム成分の難点を補
い合うゴム成分どうしが容易に混合され、耐油性・耐候
性の改善が行なわれるものである。
【0023】上記ハロゲンを含有するゴム成分として
は、クロロプレンゴム(CR)、ハイパロン(CSM)、
塩素化ポリエチレン等の塩素を含有するものが一種また
は二種以上にわたって用いられる。この場合、当該ハロ
ゲン含有のゴム成分は、樹脂バインダー全体の重量に対
して15重量%以下、好ましくは6.2重量%以下に設
定する必要がある。ハロゲンを含有するゴム成分が樹脂
バインダー全体重量の15重量%を越えて含まれる場合
には、塩素ガス(Cl2)や塩酸ガス(HCl)が発生する
こととなり、例えばモータの場合には整流子腐食や磁石
の錆及びコア錆の原因となるからである。またハロゲン
を含有するゴム成分が樹脂バインダー全体重量の6.2
重量%を越えて含まれる場合には、磁石が硬くなり過ぎ
て脆性状態となり、シート状に成形できなくなったり、
可撓性が不足し製品への組込が不可能になるとともに、
外力あるいは自己の磁力によって破壊し易くなるからで
ある。
【0024】上記硬化剤としては、脂肪族ポリアミンや
芳香族ポリアミン等のポリアミン、無水フタル酸等の酸
無水物、ポリアミド樹脂、ポリスルフィッド樹脂、三フ
ッ化ホウ素等のアミンコンプレックス、フェノール樹脂
等の合成樹脂初期縮合物あるいはこれらの誘導体の一種
または二種以上が用いられる。硬化促進剤しては、トリ
スジメチルアミノメチルフェノール等のアミン、1−イ
ソブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾールあ
るいはこれらの誘導体の一種または二種以上が用いられ
る。
【0025】この混練工程において、加圧ニーダーは冷
却されており、95℃以下、好ましくは50〜60℃の
温度条件下で混練が行なわれる。この温度設定により、
混練工程における発火の危険性が回避される。すなわち
95℃を越えて混練が行なわれると発熱より発火を生じ
る危険があり、また40℃以下ではゴムの可塑化が進ま
ず十分な混練が行なわれない。
【0026】以上の混練工程により得られた混練物とし
ての磁石素材は、加圧式ニーダーから取り出され、直ち
に10kg以下の小ロットごとに小分けされる。これらの
小分けされた各磁石素材は、密閉容器内にそれぞれ封入
されて保存され、磁石素材の温度が室温に低下するまで
そのまま放置される(保存工程)。この保存工程による
放熱によって発火の危険が回避される。
【0027】上記保存工程によって十分な放熱が行なわ
れた混練物としての磁石素材は、取り出されて粒度5mm
以下の大きさに砕かれる(粉砕工程)。この粉砕工程
は、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N2)、炭酸ガス(CO
2)などの不活性ガスの流動による冷却下で行なわれ、
温度条件は95℃以下に設定される。粉砕には回転刃等
が使用される。すなわちこの粉砕工程では、不活性ガス
による空冷が行なわれることとなり、ほぼ大気中での粉
砕が可能になっている。
【0028】ついで上記粉砕工程により得られた粉砕物
に対してロール等による圧延が施され、シート状のボン
ド磁石が得られる(シート形成工程)。このとき圧延ロ
ールの表面温度は、20〜80℃に維持されており、こ
れによって上記シート状磁石素材の引っ張り強度が巻き
取り可能な範囲に良好に維持されるとともに、磁性粉末
の酸化が抑制され磁気特性の劣化が防止されるようにな
っている。
【0029】この場合特に希土類−遷移金属−ホウ素系
(R−T−B)磁性粉末を用いた磁石においては、圧延
後の密度が4.9〜5.8となるように磁性粉末等のフィ
ラー充填率を調整しておく必要がある。磁石の密度が
4.9より小さい場合には、磁石の剛性不足が生じて変
形し易くなってしまい、製品への組込が不可能になるか
らであり、また磁石の密度が5.8を越えると、磁石の
脆性が大きくなって割れ等の発生が起き易くなってしま
い、着磁によって磁石が崩れる等の問題を生じるからで
ある。
【0031】さらに上記圧延工程によって得られたシー
ト状磁石素材は、予熱された後に熱処理が施される。予
熱工程によって、シート状磁石素材中に不可避的に含ま
れている水分やガス等を外部へ発散させるためである。
この予熱工程における温度条件及び時間条件は、30℃
〜70℃及び6時間以上に設定される。このときシート
状磁石素材に対する空気の巻き込みは予め極力抑えられ
る。
【0032】一方予熱後の熱処理工程における温度条件
及び時間条件は、125℃〜180℃及び60分以上1
80分以内に設定されており、シート状磁石素材は、例
えば上下各3段に鉄板を積層してなる加熱装置、あるい
は蒸気缶等からなる高温恒温槽中に60〜180分間放
置される。これによって加硫が行われると、所定の引っ
張り強度が付与される。このときにもシート状磁石素材
に対する空気の巻き込みは予め極力抑えられている。こ
のような高温加熱を行う場合において、シート状磁石素
材中の水分やガス等は、上述した予熱工程によって予め
発散させられているため、加熱工程中においてシート状
磁石素材に空気発泡等の不具合を生じることはない。
【0033】この加熱時において、加熱温度が180℃
を越えると、磁性粉末の酸化が顕著となって磁気特性の
劣化を招来するとともに、加熱温度が125℃以下で
ると加硫が進まず、必要な引張強度が得られなくなる。
同様の理由から、加熱時間として60〜120分間を要
する。
【0034】加熱処理が行なわれたシート状磁石素材
は、適宜の寸法に切断されてシート状磁石になされる
が、切断後に恒温槽中で100〜180℃、20〜18
0分間の条件で再び熱処理が行われる。切断後の再熱処
理によって、元々の表面のみならず切断面により現出さ
れた新生面からの加硫が促進されることとなり、磁石の
剛性が高められるものである。この再熱処理工程におい
ては、恒温槽中がN2ガス雰囲気等の不活性雰囲気にな
され、これによってシート状磁石素材の酸化が防止され
るようになっている。また恒温槽中を不活性雰囲気とし
ない場合には、シート状磁石素材の表面ができるだけ大
気に触れることのないように、周囲をアルミホイルで包
む等の手段が施される。
【0035】上記再熱処理後のシート状磁石素材は、希
土類−遷移金属−ホウ素系(R−T−B)磁性粉末の場
合に、ショアー硬さDが45°以上になされるととも
に、引張強度が4.5Kg/mm2以上になされる。また撓み
量は60mm以内になされる。ここで撓み量とは、横断面
寸法が2.55mm×2.45mm、長さ寸法が205.5mm
の寸法及び形状に成形された試験片の基部側50mmを水
平台上に固定し、この試験片の自由端が15秒後に自重
で撓んだ量を、雰囲気温度15〜25℃で測定した量と
定義する。上述したような加熱温度条件の範囲内になけ
れば、磁気特性の低下を招くか(温度範囲を越えた場
合)、あるいは加硫が進まず(温度範囲を下回った場
合)、硬度の低下、引張強度の低下及び撓み量の増大を
生ずるものである。
【0036】以上のようにして得られたシート状磁石に
は、所定の方向に着磁が行われる。このとき希土類−遷
移金属−ホウ素系(R−T−B)磁性粉末を用いた磁石
の圧延面に対して着磁が行われる場合には、表面磁束密
度の範囲が350G〜1400Gになされるとともに、
希土類−遷移金属−ホウ素系(R−T−B)磁性粉末を
用いた磁石の圧延面に直交する面に対して着磁が行われ
る場合には、表面磁束密度の範囲が40G〜1400G
になされる。圧延面に対して着磁が行われる場合は、例
えばモータ駆動用の主着磁として行われる場合であり、
また圧延面の直交面に対して着磁が行われる場合は、例
えばモータ回転検出用のFG着磁として行われる場合で
ある。
【0037】表面磁束密度が1400Gを越えて着磁さ
れた場合には、磁石中のバインダーが磁力に打ち勝って
磁性粉末を固定することができなくなり、磁石に崩れを
生じる。一方圧延面に対して例えばモータ駆動用の主着
磁が行われる場合において、表面磁束密度が350G以
下であると、磁束密度が小さ過ぎて希土類−遷移金属−
ホウ素系(R−T−B)磁性粉末を用いる有用性がなく
なる。350G以下の磁束密度の磁石は、生産コストの
安いフェライト系磁性粉末を用いれば十分であるからで
ある。また圧延面の直交面に対して例えばモータ回転検
出用のFG着磁が行われる場合において、表面磁束密度
が40G以下であると、磁束密度が小さ過ぎて必要なF
G波形が得られなくなる。
【0038】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。 実施例1 磁性粉末としては、ゼネラルモーターズ社製MQPを湿
式ボールミルにより予め粉砕し粒度調整したNd−Fe−
B磁性粉末を用いた。この磁性粉末は、超急冷法により
形成したままでは粒度2mm以下の磁性粉末であるため、
これを粉砕して粒度70μm以下としたものを用いた。
防錆剤としては、花王社製レオドールSP−O10を用
い、エポキシ主剤としては、油化シェル社製エピコート
828を用いた。
【0039】そしてボールミル容器の中に、磁性粉末、
エポキシ主剤、防錆剤及びアルミナボールを入れ、容器
内の空気をN2ガスで、酸素濃度が1.2%となるように
ガス置換した後、1時間の混合を行ない磁性粉末表面
に、酸化膜、エポキシ樹脂膜及び防錆膜を形成した。
【0041】つぎに上記のようにして得られた混合物と
ゴムバインダーとを、硬化剤及び硬化促進剤とともに加
圧式ニーダーで7分間にわたって混練した。上記硬化剤
及び硬化促進剤としては、油化シェル社製のYH−30
2及びIBMI−12を用いた。
【0042】さらに得られた混練物を、4kgずつの小ロ
ットに小分けしてビニール袋に入れ、直ちに口元を縛っ
てから密閉容器内に収納した。その後適当時間放置して
密閉容器から混練物を取り出し、粉砕機で粒度約2.6m
m程度に粉砕した。粉砕機には朋来鉄工所製U−140
回転刃式を用いた。
【0043】シートを得るために用いられる圧延ロール
の表面温度を約50℃に維持しながら圧延を行ない、シ
ート状磁石素材を得た。ついでこのシート磁石素材を約
50℃の温度条件下で約8時間にわたって予熱した後、
約170℃に加熱してゴムバインダーの加硫を行った。
そして所定の寸法に切断した後に周囲をアルミホイルで
包み、130℃で60分間の再熱処理を行って可撓性を
有するシート状磁石を得た。
【0044】本実施例における配合を次表1に示す。
【表1】 上表中のNd−Fe−B磁性粉末は、磁石全体に対して、
94.5重量%に設定されたものである。このような配
合実施例によれば、磁力による磁石の倒壊を生じること
なく、しかも例えばモータに必要で十分な磁力を得られ
ることが確認された。
【0045】この実施例の混練工程において、予め形成
された防錆被膜によって磁性粉末表面の活性度が低下さ
れていること、及び素材内への空気巻き込みがほとんど
生じないことが確認された。さらに混練物は、粉砕工程
により不活性ガスの流動下で所定の小粒径に粉砕され、
これによりつぎの圧延工程においても空気の巻き込みは
ほとんど生じることがないことが確認された。
【0046】また圧延工程においては、圧延ロールの表
面が所定の温度に維持されたため、シート状磁石の引っ
張り強度が巻き取り可能な範囲に良好に維持され、かつ
磁性粉末の酸化が抑制されて磁気特性の劣化を生じるこ
とはなかった。
【0047】さらにつぎの高温加熱においては、シート
状磁石素材に空気発泡等の不具合を生じることがないこ
とが確認された。なお加熱温度が180℃を越えると、
磁性粉末の酸化が顕著となって磁気特性の劣化を招来
し、加熱温度が125℃以下では加硫が進まず、所定の
引っ張り強度を得ることができなかった。また再熱処理
工程においては、アルミホイルによって磁石表面が空気
から遮断されることにより、磁石の酸化が防止されるこ
とが確認された。なお再加熱温度が180℃を越える
と、加硫が進行しすぎて可撓性が不足になり、再加熱温
度が100℃以下では、加硫が進まず所定の引張強度を
得ることができなかった。
【0048】また本実施例では、混合工程に、エポキシ
樹脂を投入して混合し、そこで磁性粉末にエポキシ樹脂
被膜を形成しているから、空気の巻き込みは一層低減さ
れた。エポキシ樹脂を混練工程で加えることとしても同
様の作用・効果が得られた。
【0049】なお本実施例により得られた磁石の磁気特
性は、Br=5.5[KG]、iHc=9.9[kOe]、bHc=4.5[k
Oe]、(BH)max=6.2[MGOe]であった。また得られた磁
石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間放置したとこ
ろ、表面に発錆はみられなかった。さらにブラシ付きD
Cモータの駆動用磁石として用いたところ、60℃、2
00時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag-Pd)とコミ
ュテータ材質(Ag-Cd)に腐食の発生はなかった。
【0051】実施例2 磁性粉末としては、MM14(Fe0.9Co0.1)79B7なる組成
の合金を単ロール法によって超急冷リボンとし、湿式ボ
ールミルにより粉砕し粒度調整したものを用いた。防錆
剤としては、花王社製レオドルSP−O10と米国テネ
コケミカル社製アンデロール456との混合液とを用い
た。以下上述した実施例1と同様にしてシート状の可撓
性磁石を得た。
【0052】この実施例による混練工程においても、予
め形成された防錆被膜によって磁性粉末表面の活性度が
低下されていること、及び素材内への空気巻き込みはほ
とんどないことが確認された。さらにこの混練物は、粉
砕工程により不活性ガスの流動下で所定の小粒径に粉砕
され、これによりつぎの圧延工程においても空気の巻き
込みはほとんど生じることがなかった。
【0053】また圧延工程においても、圧延ロールの表
面温度が所定値に維持され、所定の引っ張り強度を得
た。さらに磁性粉末の酸化も同様に抑制され、磁気特性
の劣化を生じることはなかった。つぎの高温加熱におい
ても、シート状磁石素材に空気発泡等の不具合を生じる
ことはなかった。再熱処理工程においても、磁石の酸化
はほとんど生じることがなかった。
【0054】なおこの実施例2により得られた磁石の磁
気特性は、Br=4.6[KG]、iHc=7.0[kOe]、bHc=3.
1[kOe]、(BH)max=4.0[MGOe]であった。さらに得ら
れた磁石を60℃、90%RH雰囲気中に80時間放置し
たところ、表面に発錆はみられなかった。さらにブラシ
付きDCモータの駆動用磁石として用いたところ、60
℃、200時間の連続回転後も、ブラシ材質(Ag-Pd)
とコミュテータ材質(Ag-Cd)に腐食は発生しなかっ
た。
【0055】このように本発明によるシート状の可撓性
ボンド磁石は、回転電機等に対して好適に取り付けられ
使用されることが確認された。なお永久磁石粉の代わり
に、鉄粉、鉄合金等の高透磁率を有する金属粉を用いる
こととすれば、可撓性を有する高透磁率材を形成するこ
とができる。
【0056】
【発明の効果】以上述べたように本発明による可撓性ボ
ンド磁石の製造方法は、加熱処理が行なわれた後に適宜
の寸法に切断されたときに現出するシート状磁石の新生
面に対し、恒温槽中で100〜180℃、20〜180
分間の条件で再熱処理を施すこととしたものであるか
ら、切断前の元々の表面に加えて切断による新生面から
の加硫を促進させることができ、希土類ボンド磁石の磁
石の剛性を高めることができる。特にNd−Fe−B系磁
性粉末を用いたボンド磁石に対しては顕著な効果を得る
ことができる。
【0057】また再熱処理工程を、空気を遮断した恒温
槽中で行うこととすれば、シート状磁石素材の酸化を防
止することができ、一層良好な加硫を行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる可撓性ボンド磁石の製造工程を
表わしたフロー図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可撓性を有する樹脂バインダー中に、希
    土類−遷移金属−ホウ素系の磁性粉末を分散してなる希
    土類ボンド磁石の製造方法において、少なくとも次の工
    程を備えていることを特徴とする希土類ボンド磁石の製
    造方法。 (a)希土類−遷移金属−ホウ素系の磁性粉末と樹脂バイ
    ンダーとを混練する工程。 (b)上記工程により得られた混練物を粉砕した後、シー
    ト状に圧延する工程。 (c)シート状に圧延された磁石素材を、125〜180
    ℃の温度条件で60〜180分間放置し熱処理する工
    程。 (d)熱処理されたシート状磁石素材を切断する工程。 (e)切断後のシート状磁石素材を、100〜180℃の
    恒温槽中に20〜180分間放置して再度の熱処理をす
    る再熱処理工程。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製
    造方法において、再度の熱処理工程は、空気を遮断した
    恒温槽中で行うようにしたことを特徴とする希土類ボン
    ド磁石の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の希土類ボンド磁石の製
    造方法において、希土類−遷移金属−ホウ素系の磁性粉
    末が、Nd−Fe−B系磁性粉末であることを特徴とする
    希土類ボンド磁石の製造方法。
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