JP2686459B2 - コンクリート構造物の補修用注入材 - Google Patents

コンクリート構造物の補修用注入材

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、コンクリート構造物の微小なひびわれや浮
きの補修工事に用いる微粉末の高炉スラグ−ポルトラン
ドセメント系の注入材であって、該注入材に特定の添加
物を配合することにより、引張接着強さを著しく改良し
た補修用注入材に関する。
〔従来の技術〕 建設物の外壁、具体的に言えばタイル張りやモルタル
塗装したコンクリート構造物は、施行後長期間経過する
とひびわれが生じたり、あるいは躯体コンクリートと前
記タイル、モルタルとの間の接着が弱まり、浮きが生じ
る。
それらひび割れや浮きによって生じた空隙(以下、こ
れらを総称して「間隙」という)を補修するための器具
や数種の注入材も知られている。
注入材としては、ポルトランドセメント、骨材、混
和剤およびポリマー(例えばエチレン酢酸ビニル系重合
体、スチレンブタジエンゴム等)を配合したポリマーセ
メント(国土開発技術研究センター編「外壁タイル張り
の仕上げ補修指針」p.156)、高炉スラグ、石こう、
ポルトランドセメントクリンカーの微粉末に高性能減水
剤を配合してなるもの(特開昭63−206346)、さらには
エチレン酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂エマルジョ
ン、セメントおよび高炉水滓スラグを配合したもの(特
公昭63−17787)等が知られている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来の注入材は、市販のポルトランドセメントを用
いているため、粒子径が大きく(最大粒径100〜150μ
m)、微小なひび割れや浮きの間隙に注入が困難であ
る。従って1.0mm以上の間隙が補修対象とされている。
同は、主組成である高炉スラグ、石膏、ポルトランド
セメントクリンカーの最大粒径を1.6μm以下に調整さ
れているため、この注入材のスラリーは0.3mm程度の微
小間隙にまで注入させることができ、一応補修目的は達
成されるが、高炉スラグを多量に含有しているため引張
接着強さが2kgf/cm2度と低く、そのうえ材料分離に起因
したと思われるが、同一注入口から注入したスラリーを
硬化させたとき、該スラリーの拡散した部分の位置によ
って、引張接着強さが著しくばらつき、場所によっては
殆ど前記強さを保持していない部分も見られる。また同
は、合成樹脂エマルジョンの配合量が多いため、材料
分離こそ前記に比して小さいが、市販の普通ポルトラ
ンドセメントを使用していること、および最大粒径0.5m
mの高炉水滓スラグを採用していることから、前記の
場合より大きい間隙の補修工事にのみ使用可能である。
そのうえ、比張接着強さも低い。
以上のように、従来の注入材は微小間隙への注入がで
きなかったり、あるいは引張接着強さが低かったり、ば
らついたりという欠点をそれぞれが有していた。
〔問題点を解決するための手段〕
そこで本発明者らは、0.5mm以下のような微小間隙に
注入が可能であり、硬化後の引張接着強さが少なくとも
5kgf/cm2以上、かつ注入スリーの材料分離の改良をし、
該強さがほぼ等しく発現する補修用注入材について研究
した結果、微粉末の高炉スラグ−ポルトランドセメント
系注入材に特定の物質を配合すれば、上記目的が達成で
きることを知見して、本発明を完成に導いた。
すなわち、本発明の要旨は、微粉高炉スラグ、微粉ポ
ルトランドセメント、ポリマーおよび高性能減水剤から
なる注入材において、上記高炉スラグおよびポルトラン
ドセメントの合量(以下「固形分」という)に対し、ア
ルカリ刺激剤を1.5〜4.5重量%および増粘剤を0.05〜0.
2重量%配合してなるコンクリート構造物の補修用注入
材にある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用されるアルカリ刺激剤は、水和反応の緩
慢な高炉スラグを刺激し、硬化を促進させるために配合
するものである。アルカリ刺激剤の中にあっては、特に
アルカリ金属塩が適しており、アルカリ金属の硫酸塩、
水酸化物、炭酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩等の組合せの
うち、硫酸塩が好ましい。また、アルカリ金属塩にはリ
チウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などがあるが、ナ
トリウム塩が一般的である。すなわち、硫酸ナトリウム
が最も好ましい。このアルカリ刺激剤を配合するにあた
り、できるだけ細かいものを用いる方が溶解が早く、か
つ反応を促進させる上で望ましい。アルカリ刺激剤の配
合割合が1.5重量%未満では反応促進作用が弱く、逆に
4.5重量%を超えると引張接着強さが低下するので、い
ずれも好ましくない。好ましい範囲は2.0〜3.5重量%で
ある。
増粘剤は注入材をスラリーとしたときに、適当な粘性
を付与し、さらに注入後凝結硬化するまでの間材料分離
を防止し、かつ硬化後の引張接着強さをほぼ等しくする
ために配合するものである。増粘剤としては、メチルセ
ルロース、カルボキシメチルセルロース等が示され,特
にメチルセルロースが好ましい。増粘剤の配合割合は、
固形分に対し0.05〜0.2重量%であり、0.05重量%未満
では施工方法によっては、往々にして材料分離が生じる
ことがあり、逆に0.2重量%を超えるとスラリーの粘性
が大きくなり過ぎ、面の粗い間隙ではスラリーが拡散し
ないこともあるので、補修箇所が限定される。好ましく
範囲は0往1〜0.15重量%である。
以上述べたアルカリ刺激剤と増粘剤を併用することに
より、スラリーに適当な粘性を具備させ、注入の際スラ
リーをスムーズに広範囲に拡散でき、しかも拡散スラリ
ーの硬化を早め、かつ材料分離を防いで引張接着強さを
ほぼ等しく発現させる作用を有している。
次に母材である微粉高炉スラグ、微粉ポルトランドセ
メント、ポリマーおよび高性能減水剤について説明す
る。
高炉スラグは水和反応が緩慢であり、しかも、副産物
として製造されるため、品質も一定せず、前記反応にム
ラがある。この高炉スラグは硫酸ナトリウムの刺激作用
によって反応性が高められ、かつ前記ムラも少なくな
る。また、該スラグは微小間隙にスムーズに拡散できる
ようにするために粒径10μm以下のものを用いるのが望
ましい。もちろん、粒径10μm以上の高炉スラグを使用
することはできるが、その場合、間隙の大きな補修にし
か注入できなくなる。
ポルトランドセメントとは、普通、早強等のポルトラ
ンドセメントであり、その粒径は20μm以下であること
が望ましい。従って、一般に市販されてる上記セメント
は最大粒径が100μm程度であるので、適当な方法で20
μm以下に調整する必要がある。そこで調整方法は特に
本願では問わない。20μmをいくらか上回る粒径のもの
であっても、注入は可能であるが、間隙が粗面の場合に
は粗い粒子の拡散が阻害され、一回の注入作業による補
修面積が小さくなるため、該作業を繰り返し行わねばな
らず、作業が繁雑になる。逆に非常に細かいと水和反応
が急激になるので、その場合は公知の凝結遅延剤を適宜
配合することによって、該反応を調節すればよい。細か
さを平均粒径でいえば4〜12μmが適当である。
本発明において、固形分としての微粉高炉スラグと微
粉ポルトランドセメントんとの配合割合は70〜95重量
%、30〜5重量%が好ましい。前記両者の関係は高炉ス
ラグが70重量%未満になると、間隙に注入されたスラリ
ーの拡散が急激に小さくなる傾向にあり、逆に95重量%
を超えると引張接着強さが低下する。さらに好ましい範
囲は該スラグ85〜93重量%、セメントが15〜7重量%で
ある。
ポリマーは接着性向上のために配合されるもので、本
発明では特に合成ゴムラテックス、具体的にはスチレン
ブタジエンゴム、アクリトロニトリルブタジエンゴム等
が好ましい。その配合割合は、固形分に対し5〜20重量
%である。5重量%未満では接着効果が小さく、20重量
%を超えると、スラリーの間隙内の拡散が悪くなる場合
があり、いずれも好ましくない。
高性能減水剤は減水効果による引張接着強さの向上お
よび固形分の分散効果を向上させるために配合されるも
ので、具体的にはポリアルキルアリルスリフォン酸塩、
メラミンホルマリン樹脂スルフォン酸塩等が挙げられ
る。その配合割合は固形分に対し、0.1重量%以上であ
る。0.1重量%未満では配合効果が見られない。逆に多
量に配合しても効果の改善は見られず、価格を考慮すれ
ば2.0重量%以上配合することは不経済である。
以上、説明した微粉高炉スラグ、微粉ポルトランドセ
メント、ポリマーおよび高性能減水剤からなる母材に対
し、アルカリ刺激剤および増粘剤をそれぞれ所定割合に
配合し、慣用の方法に従って混合することにより、本発
明の補修用注入材が製造される。その混合順序や方法は
本願では特に限定しない。なお、本願はスラリーを注入
する時点において、上記各材料が所定量配合されており
さえすれば同効果が得られるので、上記のように全ての
材料を一緒に混合して注入材とする場合はもとより、現
場において母材のスラリーにアルカリ刺激剤および増粘
剤を規定量添加し、混合するような場合も含まれる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
〔実施例〕
下記微粉高炉スラグおよび微粉ポルトランドセメント
を92.5重量%、7.5重量%の割合に配合した固形分に高
性能減水剤としてポリアルキルアリスルフォン酸塩(花
王社製「マイティ100」)を1.5重量%およびポリマーと
してスチレンブタジエンゴム系ラテックス(日本セメン
ト社製「ARP91」)を乾燥ベースで15重量%配合し、十
分に混合して母材を調整した。
・微粉高炉スラグ:第一セメント社製「ファインセラメ
ント10A」、最大粒径10μm ・微粉ポルトランドセメント:日本セメント社製「ベロ
セメント」(早強ポルトランドセメント)の分級したも
の、最大粒径20μm 上記母材に対し、市販のアルカリ刺激剤として硫酸ナ
トリウム(ヤクシ化成社製「無水芒硝」)(NaSO4)お
よび増粘剤としてメチルセルロース(信越化学社製「ハ
イメトローズ」)(MC)をそれぞれ第1表に示す割合に
配合して十分混合して、注入材を製造した。
次いで、各注入材について水を添加し、水粉体比60%
のスラリーを調整した。
一方、スラリーの注入実験を行うために第1図に示す
ように、コンクリート壁に直径6mmの有孔スレート平板
(厚さ5mm)を0.2mmの間隙を設けて取り付けて、実験設
備を作製した。
上記スレート平板の孔より、調整された前記スラリー
を圧力2.0kgf/cm2で注入し、7日間放置した。
その後、第2図に示すように、孔中心より7cm離れた
ところの4個所にダイヤモンドカッターで正方形(一辺
4cm)に、かつコンクリート壁に達するまで切り込みを
入れて試験体とした。
各試験体について建研式引張試験機を用いて引張接着
強さをを測定し、次いで、スラリーの拡散状態を調べる
ため、スレート平板を破壊して、孔中心より真上方向に
拡散したスラリー硬化体の長さ(l)を測定し、それぞ
れの結果を第1表に併記した。表中の標準偏差は、a,b,
c,dの4点の引張接着強さのバラツキを示す。
なお、市販の注入材として、微粉スラグ系のものおよ
び微粉セメント系のものについても合わせて実験を行
い、得た結果を第1表比較例5および6に記載した。
〔発明の効果〕 本発明は、微粉高炉スラグ、微粉ポルトランドセメン
ト、ポリマーおよび高性能減水剤からなる用材に対し、
アルカリ刺激剤および増粘剤を特定割合で配合してなる
コンクリート構造物の補修用注入材に係り、従来の注入
材に比べ、引張接着強さが高く、注入時のスラリーの拡
散が大きく、しかも注入後におけるスラリーの材料分離
が比較的小さいために、硬化面における引張接着強さの
バラツキが小さい特徴を具備している。その結果、従来
なし得なかった微細間隙にまで補修範囲が拡大され、し
かも補修作業が促進され、信頼性は向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の注入材を間隙に注入したときの断面拡
大図であり、第2図は注入後における状態をストレート
平板方向から見た場合の透視図である。 1……コンクリート壁、2,2′……スレート平板、3…
…孔、4……注入スラリーの硬化体、5……間隙、a,b,
c,d……試験体用に切取った位置、l……拡散の長さ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C04B 22:14 24:16 24:38) 111:72 (56)参考文献 特開 平2−175647(JP,A) 特開 平3−115147(JP,A) 特開 昭63−206346(JP,A) 特開 昭55−121938(JP,A) 特公 昭63−17787(JP,B2) 特公 昭63−66788(JP,B2) 特公 昭54−19410(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微粉高炉スラグ、微粉ポルトランドセメン
    ト、ポリマーおよび高性能減水剤からなる注入材におい
    て、上記高炉スラグおよびポルトランドセメントの合量
    に対し、アルカリ刺激剤を1.5〜4.5重量%および増粘剤
    を0.05〜0.2重量%配合してなるコンクリート構造物の
    補修用注入材。
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