JP2686244B2 - 回転式冷媒ガス圧縮機およびその製造方法 - Google Patents
回転式冷媒ガス圧縮機およびその製造方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転式冷媒ガス圧縮機
およびその製造方法に係り、特にその摺動部を構成する
摺動構成部品の耐摩耗性を改善した回転式冷媒ガス圧縮
機およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】回転式冷媒ガス圧縮機は、上ベアリング
と下ベアリングに摺動支持されるクランクシャフトによ
り偏心回転するローラを収納するシリンダと、このシリ
ンダに形成されたベーン溝に先端部を上記ローラの外周
面に摺接させたベーンが摺動自在に設けられており、こ
れらの摺動構成部品がフロンガス等の冷媒ガスを溶解し
た冷凍機油の潤滑により、冷媒ガスの圧縮動作をする。 【0003】このような摺動構成部品では適正な潤滑条
件および耐摩耗性が必要とされることから、従来、上ベ
アリング、下ベアリングに普通鋳鉄、シャフトに共晶黒
鉛鋳鉄、ローラに調質した共晶黒鉛鋳鉄、ベーンにばね
鋼(SUP9)もしくは高速度鋼(SKH51)の調質
材、シリンダには共晶黒鉛鋳鉄などの溶製材を用いた鉄
系構成部品を用いるのが一般的である。 【0004】しかしながら、インバータ制御方式の回転
式冷媒ガス圧縮機においては、溶製材を用いた鉄系構成
部品は高速高負荷運転や急速始動運転などの過酷な摺動
条件下では、互いの摺動面において十分な潤滑条件で運
転することは未だ不充分であり、金属接触が発生し易い
と共に長時間運転の間に摩耗が増大して圧縮機の性能と
信頼性とを著しく低下させるという欠点があった。 【0005】また、これらの摩耗の問題を改善する部品
の表面処理法として、塩浴やアンモニアガスを使用する
軟窒化法、炭化水素の分解ガスを使用するガス浸炭法な
どが知られているが、いずれも公害や爆発危険性を伴
い、処理コストが高く、経済性にも劣るという欠点があ
った。 【0006】また、例えば特開昭61−157871号
公報のように、鉄を主成分とする金属粉末を焼結した多
孔率10%を超えるカム(鉄系焼結体)をシャフト(鋼
管)に拡散接合してカムシャフトを作成し、さらにカム
の外表面に水蒸気処理によって酸化物層を形成して表面
を封孔することにより耐摩耗性を改善することが知られ
ている。 【0007】また、特開昭62−32293号公報のよ
うに、鉄系焼結体から成る仕切りベーンの表面処理とし
て、多孔質の焼結体をCr2O3溶液に含浸し、熱処理す
ることによりCr2O3を形成した後、さらに水蒸気処理
により鉄酸化物(Fe3O4)を形成して焼結体表面の空
孔を封孔して耐摩耗性をもたせることも知られている。 【0008】しかし、これらいずれの表面処理も鉄系焼
結体(多孔質)の表面に酸化物層を形成して空孔を封孔
することによって耐摩耗性を改善するものであるが、基
材が焼結体であることから保油性については優れている
ものの、高速回転による過酷な運転に耐えるためには、
さらに強度を向上させる必要があった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、
構成部品のうち特にシャフト、ローラ、ベーン、シリン
ダ、上ベアリング、下ベアリング等の摩擦摺動部品の全
般にわたり、それ自身が優れた耐摩耗性を有し、かつ厳
しい境界潤滑条件に耐え得るようにした回転式冷媒ガス
圧縮機と、その製造方法とを提供することにある。すな
わち、油膜保持性を改善して耐摩耗性を向上させ、摺動
部の摩耗を低減して、凝着摩耗による焼き付き事故の発
生を防止し信頼性の高い回転式冷媒ガス圧縮機と、その
製造方法とを提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的は、鋳鉄や鋼の
ごとく空孔の存在しない鉄系溶製材からなる摺動構成部
品の摺動面を形成する素地上に、直にFe3O4を主成分
とする多孔質の第1の層と、その下地に緻密質の第2の
層とからなる2層構造の酸化鉄被膜を形成した摺動構成
部品を備える回転式冷媒ガス圧縮機によって達成され
る。 【0011】そして、この目的とする回転式冷媒ガス圧
縮機(以下、回転式圧縮機と略称する)は、鉄系溶製材
からなる摺動構成部品の摺動面を、ガス組成域H2/
(H2+H2O)が0〜80%、処理温度が400℃以
上、Fe、FeO及びFe 3 O 4 の共析温度以下の水蒸気
雰囲気に晒し、この摺動面を形成する素地上に直に緻密
質のFe 3 O 4 を主成分とする第2の層を形成した後、そ
の上層に表面に開口部を有 する多孔質のFe 3 O 4 を主成
分とする第1の層を順次形成し、Fe 3 O 4 を主成分とす
る酸化鉄被膜の2層構造を摺動面素地上に形成する工程
を有して成る製造方法によって得られる。このガス組成
H2/(H2+H2O)の調整は、加熱された摺動構成部
品に供給する水分と、部品の加熱温度とを管理すること
により容易に行なえる。 【0012】すなわち、この表面酸化処理工程は、一般
には水蒸気処理工程として知られた工程ではあるが、上
記のように特定のガス組成域と処理温度との関係によっ
て、鉄系溶製材からなる摺動構成部品の素地面に直に、
本発明の目的とする多孔質の第1の層と、その下地に緻
密質の第2の層とからなる2層構造のFe 3 O 4 を主成分
とする酸化鉄被膜が形成されることは知られておらず、
本発明者等の詳細な実験検討の結果に基づいて初めて得
られたものである。 【0013】そして、Fe3O4を主成分とする酸化鉄被
膜は、後述する図3の状態図から明らかなように、処理
条件をFe、FeOおよびFe3O4の共析点以下の矢印
で示した温度域にすれば酸化物はFe3O4 が主体となっ
て生成し好ましい。 【0014】 【作用】このFe3O4を主成分とする2層構造の酸化鉄
被膜は、図7に断面図で部品の摺動面を示すように、鋳
鉄や鋼のごとく空孔の存在しない鉄系溶製材からなる摺
動構成部品の鉄系基材14の素地上に、第2の層13と
なる緻密質の酸化鉄層と、その表層に第1の層12とな
る多孔質の酸化鉄層とを順次形成し、この多孔質の第1
の層12が油膜保持性改善し、緻密質の第2の層13が
耐食性を改善し、これらの相互作用により潤滑性、耐腐
食摩耗性を大幅に改善することができるものである。 【0015】このFe3O4の成分組成は、図3に示すよ
うに温度条件を管理することにより容易に制御でき、F
e、FeOおよびFe3O4の共析点以下の矢印で示した
温度域、すなわち400℃〜共析点温度にすれば、酸化
物は高純度のFe3O4とすることができる。処理温度が
400℃より低くなるとFe3O4が生成しにくくなり、
また、共析点温度を超えるとFeOの生成が増大し、F
e3O4が激減するので、実用的な処理温度は上述のよう
に400℃以上、共析点以下の温度となる。これによ
り、鉄系溶製材の表面を酸化して、薄く均一なFe3O4
を主成分とする2層構造の酸化鉄被膜を形成することが
できる。 【0016】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面にしたがって
説明する。 〈実施例1〜3〉 図1は回転式圧縮機の縦断面図、図2は図1のA−A線
横断面図である。 【0017】先ず、圧縮機の構成を説明すると、図中1
は密閉容器、2はクランクシャフト、3は電動機部、3
aはロータ、4は圧縮機部である。圧縮機部4は、図2
に示すごとく、シリンダ5、上ベアリング6(図1参
照)、下ベアリング7(図1参照)、ローラ8、クラン
クピン部9およびベーン10より構成される。上記クラ
ンクシャフト2は上ベアリング6と下ベアリング7によ
り、軸受支持され、クランクピン部9は摺動してローラ
8に偏心回転を与える。ローラ8を収納するシリンダ5
に形成されたベーン溝11と、先端部が上記ローラ8の
外周面とにそれぞれ摺接されたベーン10が摺動自在に
設けられている。 【0018】これらの摺動を伴う構成部品のうち、低速
から高速運転の広範囲の領域において、高負荷運転や高
速始動運転によって、給油遅れや高荷重運転により最も
過酷な潤滑条件となり、この場合の主に金属接触を生じ
易い、境界潤滑を伴う摺動部分は、クランクピン部9と
ローラ8、シリンダ5のベーンスロット部(ベーン溝)
11とベーン10、ベーンの先端10aとローラ8との
組合せが主である。前項で述べた従来の構成部品の材質
では、以下に表1で説明するように十分な耐摩耗性を保
持しているとは云えない状況である。 【0019】本発明の特徴である摺動構成部品の摺動面
素地に直に生成させるFe3O4を主体とする多孔質と緻
密質との2層構造を有する酸化鉄被膜は、従来の鉄系溶
製材の素地面に図3に示すガス組成域H2/(H2+H
2O):0〜80%、温度:400〜1000℃、特に
400℃〜FeOの析出しないFe、FeOおよびFe
3 O 4 の共析温度以下(矢印で表示した領域)の水蒸気雰
囲気に晒すことにより、容易に形成できる。すなわち、
上記ガス組成域および温度条件のもとで所定時間処理す
ることにより、図7に示すごとく摺動面(鉄系基材)1
4の素地に直にFe 3 O 4 を主体とする緻密質層(第2の
層)13を形成してから、その上にFe 3 O 4 を主体とす
る多孔質層(第1の層)12を容易に形成することがで
きる。 【0020】なお、図3から明らかなように、上記F
e、FeOおよびFe3O4の共析温度を超えると、Fe
Oの生成量が増大し、H2/(H2+H2O)の範囲を小さ
く抑制管理する必要を生じ、1000℃に至っては10
%以下に管理する必要があり、作業性に難点が生じてく
ると共に、Fe3O4の生成量が著しく低下するので、好
ましい処理温度の上限は上記のように共析温度以下にす
ることである。また、400℃より低くなるとFe3O4
の生成量が不十分であることと、被膜の強度が低下する
ことから、実用的に使用可能な下限の処理温度は上述の
通り400℃である。 【0021】図4は、このようにして得られた酸化鉄被
膜の表面組織を示す電子顕微鏡写真であり、表面が均一
な多孔質層で被覆されている様子が理解できよう。この
多孔質層は先に図7に示した断面図の第1の層12に該
当し、厚さが均一で開孔部が外部に拡張された構造を有
していることがわかる。 【0022】また、この酸化鉄被膜のX線回折像では図
5および図6に示すごとく、鋼の代表例の高速度鋼SK
H51および鋳鉄の代表例である片状黒鉛の普通鋳FC
20においても、耐食性および高硬度の特性をもつ、F
e3O4が主体であることを証明するものである。 【0023】すなわち、この酸化鉄被膜は既に図7に示
したように、鋳鉄や鋼の溶製材のごとく空孔の存在しな
い鉄系基材14の素地上に、緻密なFe3O4を主体とす
る酸化鉄層(第2の層13)と、その表層にFe3O4を
主体とする多孔質層(第1の層12)との2層構造を有
する酸化鉄被膜を順次形成し、この多孔質層12が油膜
保持性を改善し、緻密質層13が耐食性を改善し、これ
らの相互作用により潤滑性、耐腐食摩耗性を著しく改善
することができた。 【0024】以下、多孔質層12と緻密質層13との2
層構造を有するFe 3 O 4 を主体とする酸化鉄被膜を形成
した圧縮機構成部品の摺動面の摩耗特性について、表1
に実施例1〜3の測定結果を従来例1〜3と対比して示
し、フロンと冷凍機油の存在する境界潤滑条件における
油膜保特性、焼付性、擬着性、摩耗量および摩擦係数な
らびに耐食性が如何に改善されたか、すなわち耐摩耗性
が如何に向上したかについて具体的に説明する。 【0025】なお、ここでの耐摩耗性評価は回転式冷媒
ガス圧縮機の実用条件に近似させるために冷媒ガスとし
てのフロン12やフロン22と同様な特性を持つフロン
113を溶解したナフテン系冷凍機油中で、周速5.7
m/s、荷重75kgf/cm2の条件で、鈴木式円筒状試験片
の摩耗量、摩擦係数および摩擦面の形態により判定し
た。 【0026】 【表1】 【0027】先ず、従来のベーン材の高速度鋼SKH5
1調質材とシリンダ材の共晶黒鉛鋳鉄FCE20の組合
せにおいては、従来例1に示すごとく、硬質(Hv80
0)のベーン材が軟質(Hv220)のシリンダ材を摩耗
させ、初期のアブレシブ摩耗から凝着摩耗に進行し、摩
耗量および摩擦係数とも大きく耐摩耗性が充分でないこ
とを示している。 【0028】なお、表中に示したアブレシブ摩耗とは、
表面は互いにヤスリで擦ったように摩耗しているが、金
属接触は起こさず、摺動部が焼き付くことのない、ごく
自然な摩耗状態を指しており、摺動部がロックすること
はない。それに対して凝着摩耗とは、摺動部品同志が摩
耗によって金属接触を起こし、摺動部が焼き付いてロッ
クしてしまう最悪の状態を指している。 【0029】これに対して本発明のベーン材の高速度鋼
SKH51調質材上にFe3O4を主体とする酸化鉄被膜
を生成させたものでは、実施例1に示すごとく、軟質の
シリンダ材共晶黒鉛鋳鉄FCE20に対して、摩耗量が
未処理品の100分の1以下、摩擦係数が4分の1、凝
着摩耗を全くおこさない良好な摺動面を示した。 【0030】これは、ベーン材の表面の多孔質と緻密質
との2層構造の酸化鉄膜が油膜保持性と相手材に対する
なじみ性を、相手材表面に酸化鉄の薄膜を形成させるた
めの凝着性の面でも改善する効果も示すものである。こ
のように、硬さ比が3以上のものであっても、軟質材側
を摩耗させない優れた効果がある。 【0031】次にベーン材とローラ材の組合せにおける
摩耗特性について実施例2を用いて説明する。この場合
においても従来例2に示すベーン材高速度鋼SKH51
調質材が硬さの低い相手のローラ材共晶黒鉛鋳鉄FCC
25調質材を摩耗させ、凝着摩耗に至る傾向があるのに
対して、前述した処理で酸化鉄被膜を形成したベーンに
すると実施例2に示すごとく、摩耗量が100分の1以
下、摩擦係数が4分1となり、良好なアブレシブ摩耗と
なり、耐摩耗性にすぐれていることがわかる。この理由
も前述のごとく、Fe3O4を主成分とする多孔質と緻密
質との2層構造の酸化鉄層が効果的に作用しているもの
である。 【0032】さらに、鋳鉄同志のローラ材とシャフト材
の組合せにおける場合においても前述した内容と同様な
効果が得られる。即ち、実施例3に示すごとく、従来例
3のシャフト材共晶黒鉛鋳鉄FCE20リン酸マンガン
処理とローラ材共晶黒鉛鋳鉄FCC25調質材の組合せ
では軟質のシャフト材(Hv220)の方が摩耗するのに
対して、このシャフト材に本発明の酸化鉄被膜を施すこ
とにより表面硬度がHv480に上昇させて、耐荷重性、
耐焼付性を改善し、摩耗量で100分の1以下に低減で
き、摺動部の摩滅を大巾に改善できることを示すもので
ある。この場合においても酸化鉄被膜の多孔質性、保油
性、摺動表面の硬質化、非凝着性化などの効果が現われ
たことを示すものである。 【0033】以上述べた実施例に示すごとく、鋼又は鋳
鉄の溶製材からなる鉄系摺動部品の摺動表面の一方に多
孔質と緻密質との2層構造のFe3O4を主成分とする酸
化鉄被膜を形成させることが、フロン溶解冷凍機油の中
での摩擦摩耗特性改善に極めて有効であることが確認で
きた。また、この効果は相対する摺動材の双方に前述の
被膜があっても、有効に作用するものである。 【0034】〈実施例4〉 次にフロン溶解冷凍機油が摺動面にどのように作用する
かについて、表2に示す実施例4を従来例4と対比して
説明する。冷媒の代表的なものであるフロン12と一般
的な冷凍機油であるナフテン系鉱油の混合物の中に、触
媒として純鉄を入れて、シールドチューブ中で175
℃、20日間の熱安定性試験を実施すると従来例4に示
すごとく、油の色相変化およびフロンの分解が進む。こ
れは鉄の触媒作用により、油を劣化させ、腐食性ガスの
塩酸を生成することを示すもので、フロン圧縮機の運転
環境でみれば、摺動面で軟質の塩化鉄を生成して腐食摩
耗を促進させることを示すものである。 【0035】これに対して、触媒として本発明の方法
で、Fe3O4の被膜を形成させた実施例4のものは同一
試験条件において、油の色相変化、フロンの分解を抑制
する効果が大であり、摺動表面においても不活性で摩擦
界面における腐食摩耗をおこしにくいことが容易に推定
できる。以上のごとく、化学的にも安定なことが更に腐
食摩耗というフロンを冷媒ガスとした圧縮機特有の摩滅
作用をも防止できる効果の大きいことを証明するもので
ある。 【0036】また、冷凍機油の劣化を抑制する作用があ
るので、潤滑油としての性能を恒久維持する効果があ
る。 【0037】 【表2】 【0038】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明により所期
の目的を達成することができた。すなわち、回転式冷媒
ガス圧縮機を構成する摺動部品の摩擦摺動面に形成した
Fe3O4を主成分とする多孔質と緻密質との2層構造か
らなる酸化鉄被膜は、摩擦係数および摩耗量の軽減作用
があり、耐摩耗性向上による信頼性の高い回転式冷媒ガ
ス圧縮機を実現可能とする。特に、フロンを冷媒ガスと
した場合、冷媒ガスおよび冷凍機油の分解抑制作用がで
きるので、回転式フロン圧縮機の長期間の運転において
も摩耗を防止し、性能と信頼性を著るしく改善する効果
が得られる。 【0039】また、本発明に係る2層構造の酸化鉄被膜
は従来の鉄系溶製材の素地表面に直に容易に形成できる
ので、軟窒化処理や浸炭処理に比べて、無公害で安価な
方法であり、経済的効果が大きい。さらに他のフロンを
使用するレシプロ式圧縮機、スクロール式圧縮機、斜板
式圧縮機などの全ての冷媒ガス圧縮機において上記と同
様な効果が期待できる。
およびその製造方法に係り、特にその摺動部を構成する
摺動構成部品の耐摩耗性を改善した回転式冷媒ガス圧縮
機およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】回転式冷媒ガス圧縮機は、上ベアリング
と下ベアリングに摺動支持されるクランクシャフトによ
り偏心回転するローラを収納するシリンダと、このシリ
ンダに形成されたベーン溝に先端部を上記ローラの外周
面に摺接させたベーンが摺動自在に設けられており、こ
れらの摺動構成部品がフロンガス等の冷媒ガスを溶解し
た冷凍機油の潤滑により、冷媒ガスの圧縮動作をする。 【0003】このような摺動構成部品では適正な潤滑条
件および耐摩耗性が必要とされることから、従来、上ベ
アリング、下ベアリングに普通鋳鉄、シャフトに共晶黒
鉛鋳鉄、ローラに調質した共晶黒鉛鋳鉄、ベーンにばね
鋼(SUP9)もしくは高速度鋼(SKH51)の調質
材、シリンダには共晶黒鉛鋳鉄などの溶製材を用いた鉄
系構成部品を用いるのが一般的である。 【0004】しかしながら、インバータ制御方式の回転
式冷媒ガス圧縮機においては、溶製材を用いた鉄系構成
部品は高速高負荷運転や急速始動運転などの過酷な摺動
条件下では、互いの摺動面において十分な潤滑条件で運
転することは未だ不充分であり、金属接触が発生し易い
と共に長時間運転の間に摩耗が増大して圧縮機の性能と
信頼性とを著しく低下させるという欠点があった。 【0005】また、これらの摩耗の問題を改善する部品
の表面処理法として、塩浴やアンモニアガスを使用する
軟窒化法、炭化水素の分解ガスを使用するガス浸炭法な
どが知られているが、いずれも公害や爆発危険性を伴
い、処理コストが高く、経済性にも劣るという欠点があ
った。 【0006】また、例えば特開昭61−157871号
公報のように、鉄を主成分とする金属粉末を焼結した多
孔率10%を超えるカム(鉄系焼結体)をシャフト(鋼
管)に拡散接合してカムシャフトを作成し、さらにカム
の外表面に水蒸気処理によって酸化物層を形成して表面
を封孔することにより耐摩耗性を改善することが知られ
ている。 【0007】また、特開昭62−32293号公報のよ
うに、鉄系焼結体から成る仕切りベーンの表面処理とし
て、多孔質の焼結体をCr2O3溶液に含浸し、熱処理す
ることによりCr2O3を形成した後、さらに水蒸気処理
により鉄酸化物(Fe3O4)を形成して焼結体表面の空
孔を封孔して耐摩耗性をもたせることも知られている。 【0008】しかし、これらいずれの表面処理も鉄系焼
結体(多孔質)の表面に酸化物層を形成して空孔を封孔
することによって耐摩耗性を改善するものであるが、基
材が焼結体であることから保油性については優れている
ものの、高速回転による過酷な運転に耐えるためには、
さらに強度を向上させる必要があった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、
構成部品のうち特にシャフト、ローラ、ベーン、シリン
ダ、上ベアリング、下ベアリング等の摩擦摺動部品の全
般にわたり、それ自身が優れた耐摩耗性を有し、かつ厳
しい境界潤滑条件に耐え得るようにした回転式冷媒ガス
圧縮機と、その製造方法とを提供することにある。すな
わち、油膜保持性を改善して耐摩耗性を向上させ、摺動
部の摩耗を低減して、凝着摩耗による焼き付き事故の発
生を防止し信頼性の高い回転式冷媒ガス圧縮機と、その
製造方法とを提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的は、鋳鉄や鋼の
ごとく空孔の存在しない鉄系溶製材からなる摺動構成部
品の摺動面を形成する素地上に、直にFe3O4を主成分
とする多孔質の第1の層と、その下地に緻密質の第2の
層とからなる2層構造の酸化鉄被膜を形成した摺動構成
部品を備える回転式冷媒ガス圧縮機によって達成され
る。 【0011】そして、この目的とする回転式冷媒ガス圧
縮機(以下、回転式圧縮機と略称する)は、鉄系溶製材
からなる摺動構成部品の摺動面を、ガス組成域H2/
(H2+H2O)が0〜80%、処理温度が400℃以
上、Fe、FeO及びFe 3 O 4 の共析温度以下の水蒸気
雰囲気に晒し、この摺動面を形成する素地上に直に緻密
質のFe 3 O 4 を主成分とする第2の層を形成した後、そ
の上層に表面に開口部を有 する多孔質のFe 3 O 4 を主成
分とする第1の層を順次形成し、Fe 3 O 4 を主成分とす
る酸化鉄被膜の2層構造を摺動面素地上に形成する工程
を有して成る製造方法によって得られる。このガス組成
H2/(H2+H2O)の調整は、加熱された摺動構成部
品に供給する水分と、部品の加熱温度とを管理すること
により容易に行なえる。 【0012】すなわち、この表面酸化処理工程は、一般
には水蒸気処理工程として知られた工程ではあるが、上
記のように特定のガス組成域と処理温度との関係によっ
て、鉄系溶製材からなる摺動構成部品の素地面に直に、
本発明の目的とする多孔質の第1の層と、その下地に緻
密質の第2の層とからなる2層構造のFe 3 O 4 を主成分
とする酸化鉄被膜が形成されることは知られておらず、
本発明者等の詳細な実験検討の結果に基づいて初めて得
られたものである。 【0013】そして、Fe3O4を主成分とする酸化鉄被
膜は、後述する図3の状態図から明らかなように、処理
条件をFe、FeOおよびFe3O4の共析点以下の矢印
で示した温度域にすれば酸化物はFe3O4 が主体となっ
て生成し好ましい。 【0014】 【作用】このFe3O4を主成分とする2層構造の酸化鉄
被膜は、図7に断面図で部品の摺動面を示すように、鋳
鉄や鋼のごとく空孔の存在しない鉄系溶製材からなる摺
動構成部品の鉄系基材14の素地上に、第2の層13と
なる緻密質の酸化鉄層と、その表層に第1の層12とな
る多孔質の酸化鉄層とを順次形成し、この多孔質の第1
の層12が油膜保持性改善し、緻密質の第2の層13が
耐食性を改善し、これらの相互作用により潤滑性、耐腐
食摩耗性を大幅に改善することができるものである。 【0015】このFe3O4の成分組成は、図3に示すよ
うに温度条件を管理することにより容易に制御でき、F
e、FeOおよびFe3O4の共析点以下の矢印で示した
温度域、すなわち400℃〜共析点温度にすれば、酸化
物は高純度のFe3O4とすることができる。処理温度が
400℃より低くなるとFe3O4が生成しにくくなり、
また、共析点温度を超えるとFeOの生成が増大し、F
e3O4が激減するので、実用的な処理温度は上述のよう
に400℃以上、共析点以下の温度となる。これによ
り、鉄系溶製材の表面を酸化して、薄く均一なFe3O4
を主成分とする2層構造の酸化鉄被膜を形成することが
できる。 【0016】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面にしたがって
説明する。 〈実施例1〜3〉 図1は回転式圧縮機の縦断面図、図2は図1のA−A線
横断面図である。 【0017】先ず、圧縮機の構成を説明すると、図中1
は密閉容器、2はクランクシャフト、3は電動機部、3
aはロータ、4は圧縮機部である。圧縮機部4は、図2
に示すごとく、シリンダ5、上ベアリング6(図1参
照)、下ベアリング7(図1参照)、ローラ8、クラン
クピン部9およびベーン10より構成される。上記クラ
ンクシャフト2は上ベアリング6と下ベアリング7によ
り、軸受支持され、クランクピン部9は摺動してローラ
8に偏心回転を与える。ローラ8を収納するシリンダ5
に形成されたベーン溝11と、先端部が上記ローラ8の
外周面とにそれぞれ摺接されたベーン10が摺動自在に
設けられている。 【0018】これらの摺動を伴う構成部品のうち、低速
から高速運転の広範囲の領域において、高負荷運転や高
速始動運転によって、給油遅れや高荷重運転により最も
過酷な潤滑条件となり、この場合の主に金属接触を生じ
易い、境界潤滑を伴う摺動部分は、クランクピン部9と
ローラ8、シリンダ5のベーンスロット部(ベーン溝)
11とベーン10、ベーンの先端10aとローラ8との
組合せが主である。前項で述べた従来の構成部品の材質
では、以下に表1で説明するように十分な耐摩耗性を保
持しているとは云えない状況である。 【0019】本発明の特徴である摺動構成部品の摺動面
素地に直に生成させるFe3O4を主体とする多孔質と緻
密質との2層構造を有する酸化鉄被膜は、従来の鉄系溶
製材の素地面に図3に示すガス組成域H2/(H2+H
2O):0〜80%、温度:400〜1000℃、特に
400℃〜FeOの析出しないFe、FeOおよびFe
3 O 4 の共析温度以下(矢印で表示した領域)の水蒸気雰
囲気に晒すことにより、容易に形成できる。すなわち、
上記ガス組成域および温度条件のもとで所定時間処理す
ることにより、図7に示すごとく摺動面(鉄系基材)1
4の素地に直にFe 3 O 4 を主体とする緻密質層(第2の
層)13を形成してから、その上にFe 3 O 4 を主体とす
る多孔質層(第1の層)12を容易に形成することがで
きる。 【0020】なお、図3から明らかなように、上記F
e、FeOおよびFe3O4の共析温度を超えると、Fe
Oの生成量が増大し、H2/(H2+H2O)の範囲を小さ
く抑制管理する必要を生じ、1000℃に至っては10
%以下に管理する必要があり、作業性に難点が生じてく
ると共に、Fe3O4の生成量が著しく低下するので、好
ましい処理温度の上限は上記のように共析温度以下にす
ることである。また、400℃より低くなるとFe3O4
の生成量が不十分であることと、被膜の強度が低下する
ことから、実用的に使用可能な下限の処理温度は上述の
通り400℃である。 【0021】図4は、このようにして得られた酸化鉄被
膜の表面組織を示す電子顕微鏡写真であり、表面が均一
な多孔質層で被覆されている様子が理解できよう。この
多孔質層は先に図7に示した断面図の第1の層12に該
当し、厚さが均一で開孔部が外部に拡張された構造を有
していることがわかる。 【0022】また、この酸化鉄被膜のX線回折像では図
5および図6に示すごとく、鋼の代表例の高速度鋼SK
H51および鋳鉄の代表例である片状黒鉛の普通鋳FC
20においても、耐食性および高硬度の特性をもつ、F
e3O4が主体であることを証明するものである。 【0023】すなわち、この酸化鉄被膜は既に図7に示
したように、鋳鉄や鋼の溶製材のごとく空孔の存在しな
い鉄系基材14の素地上に、緻密なFe3O4を主体とす
る酸化鉄層(第2の層13)と、その表層にFe3O4を
主体とする多孔質層(第1の層12)との2層構造を有
する酸化鉄被膜を順次形成し、この多孔質層12が油膜
保持性を改善し、緻密質層13が耐食性を改善し、これ
らの相互作用により潤滑性、耐腐食摩耗性を著しく改善
することができた。 【0024】以下、多孔質層12と緻密質層13との2
層構造を有するFe 3 O 4 を主体とする酸化鉄被膜を形成
した圧縮機構成部品の摺動面の摩耗特性について、表1
に実施例1〜3の測定結果を従来例1〜3と対比して示
し、フロンと冷凍機油の存在する境界潤滑条件における
油膜保特性、焼付性、擬着性、摩耗量および摩擦係数な
らびに耐食性が如何に改善されたか、すなわち耐摩耗性
が如何に向上したかについて具体的に説明する。 【0025】なお、ここでの耐摩耗性評価は回転式冷媒
ガス圧縮機の実用条件に近似させるために冷媒ガスとし
てのフロン12やフロン22と同様な特性を持つフロン
113を溶解したナフテン系冷凍機油中で、周速5.7
m/s、荷重75kgf/cm2の条件で、鈴木式円筒状試験片
の摩耗量、摩擦係数および摩擦面の形態により判定し
た。 【0026】 【表1】 【0027】先ず、従来のベーン材の高速度鋼SKH5
1調質材とシリンダ材の共晶黒鉛鋳鉄FCE20の組合
せにおいては、従来例1に示すごとく、硬質(Hv80
0)のベーン材が軟質(Hv220)のシリンダ材を摩耗
させ、初期のアブレシブ摩耗から凝着摩耗に進行し、摩
耗量および摩擦係数とも大きく耐摩耗性が充分でないこ
とを示している。 【0028】なお、表中に示したアブレシブ摩耗とは、
表面は互いにヤスリで擦ったように摩耗しているが、金
属接触は起こさず、摺動部が焼き付くことのない、ごく
自然な摩耗状態を指しており、摺動部がロックすること
はない。それに対して凝着摩耗とは、摺動部品同志が摩
耗によって金属接触を起こし、摺動部が焼き付いてロッ
クしてしまう最悪の状態を指している。 【0029】これに対して本発明のベーン材の高速度鋼
SKH51調質材上にFe3O4を主体とする酸化鉄被膜
を生成させたものでは、実施例1に示すごとく、軟質の
シリンダ材共晶黒鉛鋳鉄FCE20に対して、摩耗量が
未処理品の100分の1以下、摩擦係数が4分の1、凝
着摩耗を全くおこさない良好な摺動面を示した。 【0030】これは、ベーン材の表面の多孔質と緻密質
との2層構造の酸化鉄膜が油膜保持性と相手材に対する
なじみ性を、相手材表面に酸化鉄の薄膜を形成させるた
めの凝着性の面でも改善する効果も示すものである。こ
のように、硬さ比が3以上のものであっても、軟質材側
を摩耗させない優れた効果がある。 【0031】次にベーン材とローラ材の組合せにおける
摩耗特性について実施例2を用いて説明する。この場合
においても従来例2に示すベーン材高速度鋼SKH51
調質材が硬さの低い相手のローラ材共晶黒鉛鋳鉄FCC
25調質材を摩耗させ、凝着摩耗に至る傾向があるのに
対して、前述した処理で酸化鉄被膜を形成したベーンに
すると実施例2に示すごとく、摩耗量が100分の1以
下、摩擦係数が4分1となり、良好なアブレシブ摩耗と
なり、耐摩耗性にすぐれていることがわかる。この理由
も前述のごとく、Fe3O4を主成分とする多孔質と緻密
質との2層構造の酸化鉄層が効果的に作用しているもの
である。 【0032】さらに、鋳鉄同志のローラ材とシャフト材
の組合せにおける場合においても前述した内容と同様な
効果が得られる。即ち、実施例3に示すごとく、従来例
3のシャフト材共晶黒鉛鋳鉄FCE20リン酸マンガン
処理とローラ材共晶黒鉛鋳鉄FCC25調質材の組合せ
では軟質のシャフト材(Hv220)の方が摩耗するのに
対して、このシャフト材に本発明の酸化鉄被膜を施すこ
とにより表面硬度がHv480に上昇させて、耐荷重性、
耐焼付性を改善し、摩耗量で100分の1以下に低減で
き、摺動部の摩滅を大巾に改善できることを示すもので
ある。この場合においても酸化鉄被膜の多孔質性、保油
性、摺動表面の硬質化、非凝着性化などの効果が現われ
たことを示すものである。 【0033】以上述べた実施例に示すごとく、鋼又は鋳
鉄の溶製材からなる鉄系摺動部品の摺動表面の一方に多
孔質と緻密質との2層構造のFe3O4を主成分とする酸
化鉄被膜を形成させることが、フロン溶解冷凍機油の中
での摩擦摩耗特性改善に極めて有効であることが確認で
きた。また、この効果は相対する摺動材の双方に前述の
被膜があっても、有効に作用するものである。 【0034】〈実施例4〉 次にフロン溶解冷凍機油が摺動面にどのように作用する
かについて、表2に示す実施例4を従来例4と対比して
説明する。冷媒の代表的なものであるフロン12と一般
的な冷凍機油であるナフテン系鉱油の混合物の中に、触
媒として純鉄を入れて、シールドチューブ中で175
℃、20日間の熱安定性試験を実施すると従来例4に示
すごとく、油の色相変化およびフロンの分解が進む。こ
れは鉄の触媒作用により、油を劣化させ、腐食性ガスの
塩酸を生成することを示すもので、フロン圧縮機の運転
環境でみれば、摺動面で軟質の塩化鉄を生成して腐食摩
耗を促進させることを示すものである。 【0035】これに対して、触媒として本発明の方法
で、Fe3O4の被膜を形成させた実施例4のものは同一
試験条件において、油の色相変化、フロンの分解を抑制
する効果が大であり、摺動表面においても不活性で摩擦
界面における腐食摩耗をおこしにくいことが容易に推定
できる。以上のごとく、化学的にも安定なことが更に腐
食摩耗というフロンを冷媒ガスとした圧縮機特有の摩滅
作用をも防止できる効果の大きいことを証明するもので
ある。 【0036】また、冷凍機油の劣化を抑制する作用があ
るので、潤滑油としての性能を恒久維持する効果があ
る。 【0037】 【表2】 【0038】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明により所期
の目的を達成することができた。すなわち、回転式冷媒
ガス圧縮機を構成する摺動部品の摩擦摺動面に形成した
Fe3O4を主成分とする多孔質と緻密質との2層構造か
らなる酸化鉄被膜は、摩擦係数および摩耗量の軽減作用
があり、耐摩耗性向上による信頼性の高い回転式冷媒ガ
ス圧縮機を実現可能とする。特に、フロンを冷媒ガスと
した場合、冷媒ガスおよび冷凍機油の分解抑制作用がで
きるので、回転式フロン圧縮機の長期間の運転において
も摩耗を防止し、性能と信頼性を著るしく改善する効果
が得られる。 【0039】また、本発明に係る2層構造の酸化鉄被膜
は従来の鉄系溶製材の素地表面に直に容易に形成できる
ので、軟窒化処理や浸炭処理に比べて、無公害で安価な
方法であり、経済的効果が大きい。さらに他のフロンを
使用するレシプロ式圧縮機、スクロール式圧縮機、斜板
式圧縮機などの全ての冷媒ガス圧縮機において上記と同
様な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となる回転式圧縮機の縦断面
図。 【図2】同じく圧縮機の横断面図を示したもので図1の
A−A線断面図。 【図3】本発明による酸化鉄被膜を形成するH2/(H2
+H2O)と温度との関係を示す平衡状態図。 【図4】本発明による酸化鉄被膜の表面組織を示す電子
顕微鏡写真。 【図5】本発明による酸化鉄被膜の表面部のX線回折ス
ペクトル。 【図6】同じく酸化鉄被膜の表面部のX線回折スペクト
ル。 【図7】多孔質と緻密質との2層構造を有する本発明の
酸化鉄被膜の断面図。 【符号の説明】 1…密閉容器、2…クランクシャフト、3…電動機部、
4…圧縮機部、5…シリンダ、6…上ベアリング、7…
下ベアリング、8…ローラ、9…クランクピン部、10
…ベーン、11…ベーン溝、12…多孔質層、13…緻
密質層、14…鉄系基材。
図。 【図2】同じく圧縮機の横断面図を示したもので図1の
A−A線断面図。 【図3】本発明による酸化鉄被膜を形成するH2/(H2
+H2O)と温度との関係を示す平衡状態図。 【図4】本発明による酸化鉄被膜の表面組織を示す電子
顕微鏡写真。 【図5】本発明による酸化鉄被膜の表面部のX線回折ス
ペクトル。 【図6】同じく酸化鉄被膜の表面部のX線回折スペクト
ル。 【図7】多孔質と緻密質との2層構造を有する本発明の
酸化鉄被膜の断面図。 【符号の説明】 1…密閉容器、2…クランクシャフト、3…電動機部、
4…圧縮機部、5…シリンダ、6…上ベアリング、7…
下ベアリング、8…ローラ、9…クランクピン部、10
…ベーン、11…ベーン溝、12…多孔質層、13…緻
密質層、14…鉄系基材。
フロントページの続き
(72)発明者 上妻 康夫
茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社
日立製作所日立研究所内
(56)参考文献 特開 昭58−3901(JP,A)
特開 昭60−150462(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.鉄系溶製材からなる摺動構成部品の摺動面を形成す
る素地上に直に、Fe3O4を主成分とし、表面に開口部
を有する多孔質の第1の層と、その下地に緻密質の第2
の層とからなる2層構造の酸化鉄被膜を形成した摺動構
成部品を備えて成る回転式冷媒ガス圧縮機。 2.多孔質の第1の層の開口部が外部に拡張された構造
を有する請求項1記載の回転式冷媒ガス圧縮機。 3.鉄系溶製材からなる摺動構成部品の摺動面を、ガス
組成域H2/(H2+H2O)が0〜80%、処理温度が
400℃以上、Fe、FeO及びFe 3 O 4 の共析温度以
下の水蒸気雰囲気に晒し、前記摺動面を形成する素地上
に直に緻密質のFe 3 O 4 を主成分とする第2の層を形成
した後、その上層に表面に開口部を有する多孔質のFe 3
O 4 を主成分とする第1の層を順次形成し、Fe 3 O 4 を主
成分とする酸化鉄被膜の2層構造を摺動面素地上に形成
する工程を有して成る回転式冷媒ガス圧縮機の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7170424A JP2686244B2 (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 回転式冷媒ガス圧縮機およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7170424A JP2686244B2 (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 回転式冷媒ガス圧縮機およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07317678A JPH07317678A (ja) | 1995-12-05 |
JP2686244B2 true JP2686244B2 (ja) | 1997-12-08 |
Family
ID=15904667
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7170424A Expired - Fee Related JP2686244B2 (ja) | 1995-06-14 | 1995-06-14 | 回転式冷媒ガス圧縮機およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2686244B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3176436B1 (en) * | 2012-02-20 | 2018-05-16 | Panasonic Corporation | Slide member, refrigerant compressor incorporating slide member, refrigerator and air conditioner |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS583901A (ja) * | 1981-07-01 | 1983-01-10 | Toyota Motor Corp | 摺動部材の製法 |
JPS60150462A (ja) * | 1984-01-17 | 1985-08-08 | Riken Corp | 内燃機関用ピストンリングとその製造方法 |
-
1995
- 1995-06-14 JP JP7170424A patent/JP2686244B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07317678A (ja) | 1995-12-05 |
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---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |