JP2683326B2 - 移植機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、移植機に関し、さらに
詳細には、クローラ等により走行する自走機体と、該自
走機体に装着された昇降装置と、該昇降装置によって昇
降動され、前方へ延出された一対の支持アームを有する
枠体と、前記支持アームの各々に、立木を根こそぎ掬い
取って移植可能に、開閉動自在に装着されたバケット
と、前記枠体に装着され、前記バケットを開閉動させる
駆動機構とを備える移植機に関する。

【０００２】

【従来の技術】立木を移植機を用いて移植する作業で
は、移植機が、立木を根こそぎ掬い取る作業、掬い取っ
た立木を所定の場所まで移動させる作業、移動した立木
を所定の場所に位置させる作業を行う。このように移植
機を使用すれば、立木を効率良く移植することができ、
人手では対応しきれなかった大型の立木でも移植するこ
とが可能になる。また、立木の周囲を、従来の人手で行
う場合よりも広い範囲で且つ土が付着した状態で掘り取
ることが可能であり、移植後の定着率を飛躍的に向上さ
せることができる。

【０００３】従来の移植機の具体的な構成を、図３に基
づいて説明する。５２は自走機体であり、クローラ５０
により走行する。１４はブームであり、後端が自走機体
５２上に回動可能に軸着され、該ブーム１４の先端に装
着される枠体１０を昇降動する昇降装置として作用す
る。５４は昇降用の油圧シリンダ装置であり、ブーム１
４の先端を上下動（回動）させて枠体１０を昇降動させ
る駆動装置として作動する。枠体１０には、上方に向か
って延出してブーム１４に回動可能に軸着された垂直ア
ーム部１６が一体に備えられていると共に、前方へ延出
された一対の支持アーム１２、１２が設けられている。
５６は姿勢制御用の油圧シリンダ装置であり、垂直アー
ム部１６の上端部にロッドの先端が軸着されており、枠
体１０を回動させる駆動装置として作動し、枠体１０の
水平を維持することなど姿勢制御のために作動する。ま
た、６８は補強材であり、一端が支柱部２２、２２の頂
部に他端が垂直アーム部１６の中途部に固定され、枠体
１０を補強している。１８はバケットであり、支持アー
ム１２、１２の各々に、立木を根こそぎ掬い取って移植
可能に、開閉動自在に装着されている。２０はバケット
開閉用の油圧シリンダ装置であり、枠体１０の支持アー
ム１２の中途部から上方に向かって延出された支柱部２
２の上端にシリンダの後端が軸着され、ロッド２０ａの
先端がバケット１８の上端側に突起して設けられた取付
部２６に軸着されており、バケット１８を開閉させる駆
動機構として作動する。

【０００４】７０は上側リンクであり、一端が支持アー
ム１２に軸着されると共に他端がバケット１８に軸着さ
れている。７２は下側リンクであり、上側リンク７０の
取付位置よりもよりも下方で、一端が支持アーム１２に
軸着されると共に他端がバケット１８に軸着されてい
る。この上側リンク７０と下側リンク７２からなる一対
のリンク７２が、各支持アーム１２の前後に並列して配
されている。なお、図３に示す移植機は、パワーショベ
ルを改造したものであり、パワーショベルのブームを短
く切断して上記のブーム１４とし、そのブーム１４の先
端に一対のバケット１８、１８を備える枠体１０が装着
された構造に形成されている。このようにブーム１４を
短くすることによって装置のバランスをとり、重量のか
かる立木の移植作業をバランス良く行うことができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の移植機では、上側リンク７０と下側リンク７２から
なる一対のリンク７５が支持アーム１２の前後に配設さ
れているため、バケット１８に偏荷重を受けた際のよう
に、バケット１８を開閉可能に吊り下げているバランス
が崩れた場合、各リンク同士でリンク運動を妨げる作用
力が作用し易く、スムースなリンク運動を阻害し易い。
これにより、駆動装置による動力が効率よく作用でき
ず、リンク軸着部の摩擦抵抗を増大させ、さらには摺動
部の損傷を発生し易い。これにより、駆動装置への負担
が増大し、ひいては保守管理の負担の増大、さらには作
業効率の低下を招くという課題があった。また、装置の
重量低減および保守管理の負担の軽減のために装置の簡
略化が要請されていた。

【０００６】そこで、本発明の目的は、装置を簡略化す
ると共に、バケットがバランスよくスムースに開閉で
き、作業効率の向上および保守管理の負担の軽減を実現
できる移植機を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は次の構成を備える。すなわち、本発明は、クロ
ーラ等により走行する自走機体と、該自走機体に装着さ
れた昇降装置と、該昇降装置によって昇降動され、前方
へ延出された一対の支持アームを有する枠体と、前記支
持アームの各々に、立木を根こそぎ掬い取って移植可能
に、開閉動自在に装着されたバケットと、前記枠体に装
着され、前記バケットを開閉動させる駆動機構とを備え
る移植機において、各支持アームの前側に配され、一端
が前記支持アームに軸着されると共に他端が前記バケッ
トに軸着された前側リンクと、各支持アームの後側に前
記前側リンクと並列して配され、一端が前記支持アーム
に軸着されると共に他端が前記バケットに軸着された後
側リンクと、前側リンクと後側リンクの間に配され、前
側リンクと後側リンクの取付位置よりも上方で一端が前
記支持アームに軸着されると共に他端が前記バケットに
軸着された中間リンクとを具備する。また、前記前側リ
ンクと前記後側リンクが一体に形成されていることを特
徴とする上記の移植機にもある。

【０００８】

【作用】本発明にかかる移植機によれば、前側リンク、
外側リンク、前側リンクと後側リンクの取付位置よりも
上方に設けられた中間リンクの三つのリンクが、バケッ
トを開閉可能にバランス良く吊り下げている。すなわ
ち、三つのリンクが三角形の頂点にそれぞれ配された状
態となり、バケット重量を支えるバランスがとりやすい
構造に構成されている。この構成によれば、各リンク同
士でリンク運動を妨げる作用力がかかりにくいため、偏
荷重がかかった際にもバケットがスムースに開閉でき
る。また、装置の構成を簡略化することもできる。従っ
て、移植作業の作業効率の向上および保守管理の負担の
軽減を実現できる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の好適な実施例について添付図
面ととも詳細に説明する。図１は本発明に係る移植機の
一実施例の主要部であるバケットの開閉機構を示す斜視
図である。なお、本発明に係る移植機の他の構成は従来
の移植機（従来技術の欄参照）と同様であり、詳細な説
明は省略する。１０は枠体であり、自走機体に装着され
た昇降装置によって昇降動される。この枠体１０は、図
３に示すように前方へ平行に延出された一対の支持アー
ム１２、１２を有し、立木を一方から囲むように平面コ
の字の枠状をなし、昇降装置であるブーム１４に連結す
る垂直アーム部１６等を備えている。なお、図１には一
方の支持アーム１２側のみを図示しており、他方の支持
アーム１２側と同一の構成を備えている。また、本実施
例では支持アーム１２は角柱状であるが、円柱状であっ
てもよい。

【００１０】１８はバケットであり、支持アーム１２
に、立木を根こそぎ掬い取って移植能に、開閉動（複数
の回動運動が合成されたリンク運動）自在に、後述する
ように三つのリンクによって装着されている。バケット
１８の形状は、立木を好適に掬い取ることができるよう
に、先端側が内側へ湾曲しており、先端に土中にくい込
み易いように爪部１９が設けられている。２０はバケッ
ト開閉用の油圧シリンダ装置であり、枠体１０の支持ア
ーム１２の中途部から上方に向かって延出された支柱部
２２の上端にシリンダの後端が軸２４によって軸着さ
れ、ロッド２０ａの先端がバケット１８の上端側に上方
斜め外方に延出して設けられた取付部２６の軸２８に軸
着されており、バケット１８を開閉させる駆動機構とし
て作動する。

【００１１】３０は前側リンクであり、支持アーム１２
の前側に配され、一端が支持アーム１２の軸３２に軸着
されると共に、他端がバケット１８の軸３４に軸着され
ている。３６は後側リンクであり、支持アーム１２の後
側に前側リンク３０と並列して配され、一端が支持アー
ム１２の軸３８に軸着されると共に、他端がバケット１
８の軸４０に軸着されている。また、本実施例では、軸
３２、３８は支持アーム１２の下面に設けられ、軸３
４、４０はバケット１８の上面に設けられているが、こ
れに限らず、製作上の制限、或いはバケット１８の開閉
動の軌跡を作業条件に合わせる等の制限によって、その
取付位置を選択的に設定してもよい。

【００１２】４２は中間リンクであり、前側リンク３０
と後側リンク３６の間に配され、前側リンク３０と後側
リンク３６の取付位置よりも上方で、一端が支持アーム
１２の軸４６に軸着されると共に他端がバケット１８の
軸４８に軸着されている。本実施例では、軸４６は支持
アーム１２の側面に斜め下方を面するよう傾斜して突設
された傾斜面４７に取り付けられており、軸４８はバケ
ット１８の上端側に延出して設けられた取付部２６ａに
設けられている。これらの軸４６、４８の取付位置も種
々の条件に対応して選択的に設定すればよい。なお、こ
の中間リンク４２の長さを調整可能にしておけば、バケ
ット１８の開閉動の軌跡を使用条件等に対応させて選択
的に変更できる。長さの調整機構としては例えばターン
バックルの構成を利用できる。また、前側リンク３０と
後側リンク３６も長さ調整可能に設けることは可能であ
るが、その場合は両者を同時に調整する必要があるのに
対して、中間リンク４２はそれ一つの調整でよい点で利
点がある。

【００１３】次に、上述するように構成された移植機の
使用方法について図１および図３に基づいて説明する。
先ず、あらかじめ移植しようとする立木の根元の周辺を
パワーショベル等を用いて掘削して根を切断する。オペ
レータは運転席において、クローラ５０を駆動させて自
走機体５２を走行させ、平面コ字状の枠体１０内の中央
部に立木が位置するように、立木へ接近する。バケット
１８は、油圧シリンダ装置２０をロッド２０ａが収縮し
た状態に駆動させて開いた状態としておく。

【００１４】続いて、昇降用の油圧シリンダ装置５４を
駆動させてブーム１４を下動させるとともに、姿勢制御
用の油圧シリンダ装置５６を伸縮させて一対の支持アー
ム１２、１２（枠体１０）を水平状態に保持する。この
ようにして、バケット１８、１８を予め立木の根元の周
囲に掘削した穴へ入れる。次に、開閉用の油圧シリンダ
装置２０、２０を駆動させてバケット１８、１８閉じ
る。

【００１５】図１に示す本発明の移植機によれば、前側
リンク３０、後側リンク３６、中間リンク４２の三つの
リンクが、バケット１８を開閉可能にバランス良く吊り
下げている。このようにバケット重量を支えるバランス
がとりやすい構造に構成されているため、各リンク同士
でリンク運動を妨げる作用力がかかりにくい。従って、
バケット１８、１８をスムースに開閉できる。このよう
にバケット１８、１８を閉じることで、バケット１８、
１８によって土と共に立木の根こそぎ掬い取って、根元
を抱持した状態で立木を好適に保持できる。

【００１６】なお、バケット１８の開閉動は、前側リン
ク３０および後側リンク３６によって規制されるリンク
運動と、中間リンク４２のリンク運動による複数の回動
運動の合成されたものになる。従って、一つの軸を中心
に回動させた円弧運動軌跡に比べ、例えばバケット１８
の先端の移動軌跡を曲率半径の大きな滑らかなものに設
定することが可能であり、根切りをスムースにすること
ができる。また、一つの軸を中心に回動させた円弧運動
軌跡に比べ、油圧シリンダ装置２０の伸縮のスパンを広
くとれるように、各リンクの長さおよび取り付け位置を
設定するなど、使用条件に適用させてバケット１８の開
閉動を種々に設定することも可能である。

【００１７】そのままの状態で昇降用の油圧シリンダ装
置５４、姿勢制御用の油圧シリンダ装置５６を駆動し
て、枠体１０の姿勢を水平に保ちつつブーム１４を上動
させて立木を地中から抜き上げる。そして、クローラ５
０および自走機体に設けられた回転機構等を駆動し、そ
の立木を移植場所まで運搬する。その運搬の際にも立木
が傾いて倒れないように、昇降用の油圧シリンダ装置５
４および姿勢制御用の油圧シリンダ装置５６を伸縮させ
て、枠体１０の姿勢をなるべく水平に維持する。

【００１８】移植場所へ到着したら、あらかじめ掘削さ
れ、水や肥料等が投入されている移植用の穴の中へブー
ム１４を下動させることにより立木を保持した一対のバ
ケット１８、１８を入れる。そして、バケット１８、１
８を開くことで、立木をスムースに移植用の穴に位置さ
せる。そして、穴内に土を埋め戻し、立木の移植が完了
する。

【００１９】次に、本発明にかかる他の実施例について
図２に基づいて説明する。図１の実施例と異なるところ
は、前側リンク３０と後側リンク３６が一体に形成され
た状態に設けられているところである。他の構成は図１
の実施例の構成と同一であるので説明を省略する。５８
は前側の軸受部、５９は後側の軸受部であり、支持アー
ム１２の下面に設けられている。この一対の軸受部５
８、５９の間に長尺の軸６０が軸着されている。また、
６２は前側の軸受部、６３は後側の軸受部であり、バケ
ット１８の上面に設けられている。この一対の軸受部６
２、６３の間に長尺の軸６４が軸着されている。そし
て、軸６０と軸６４が連結板材６６で一体化されてい
る。この構成によっても、前側の軸受部と後側の軸受部
とのスパンが長く、軸６０、６４或いは連結板材６６ス
パンが長いため、バケット１８をバランス良く作動させ
ることができる。また、従来よりも部品点数を減らすこ
とができ、装置を簡略化できる。以上、本発明の好適な
実施例について種々述べて来たが、本発明は上述の実施
例に限定されるのではなく、発明の精神を逸脱しない範
囲で多くの改変を施し得るのはもちろんである。

【００２０】

【発明の効果】本発明にかかる移植機によれば、前側リ
ンク、外側リンク、中間リンクの三つのリンクが、三角
形の頂点にそれぞれ配された状態となり、バケットの重
量を支えるバランスがとりやすい構造に構成されてい
る。この構成によれば、装置を簡略化出来ると共に、各
リンク同士でリンク運動を妨げる作用力がかかりにくい
ため、駆動装置による動力が効率よく作用でき、リンク
軸着部の摩擦抵抗を低減できる。従って、移植作業の作
業効率の向上および保守管理の負担の軽減を実現できる
という著効を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る移植機の一実施例の主要部を示す
斜視図である。

【図２】本発明に係る移植機の他の実施例の主要部を示
す斜視図である。

【図３】従来の移植機を示す斜視図である。

【符号の説明】

１０ 枠体 １２ 支持アーム １４ ブーム １６ 垂直アーム部 １８ バケット ２０ 油圧シリンダ装置 ３０ 前側リンク ３６ 後側リンク ４２ 中間リンク ５０ クローラ ５２ 自走機体 ５４ 油圧シリンダ装置

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クローラ等により走行する自走機体と、 該自走機体に装着された昇降装置と、 該昇降装置によって昇降動され、前方へ延出された一対
   の支持アームを有する枠体と、 前記支持アームの各々に、立木を根こそぎ掬い取って移
   植可能に、開閉動自在に装着されたバケットと、 前記枠体に装着され、前記バケットを開閉動させる駆動
   機構とを備える移植機において、 各支持アームの前側に配され、一端が前記支持アームに
   軸着されると共に他端が前記バケットに軸着された前側
   リンクと、 各支持アームの後側に前記前側リンクと並列して配さ
   れ、一端が前記支持アームに軸着されると共に他端が前
   記バケットに軸着された後側リンクと、 前側リンクと後側リンクの間に配され、前側リンクと後
   側リンクの取付位置よりも上方で一端が前記支持アーム
   に軸着されると共に他端が前記バケットに軸着された中
   間リンクとを具備することを特徴とする移植機。
2. 【請求項２】 前記前側リンクと前記後側リンクが一体
   に形成されていることを特徴とする請求項１記載の移植
   機。