JP2673409B2 - 射出成形における成形条件制御方法および装置 - Google Patents

射出成形における成形条件制御方法および装置

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JP2673409B2
JP2673409B2 JP17263393A JP17263393A JP2673409B2 JP 2673409 B2 JP2673409 B2 JP 2673409B2 JP 17263393 A JP17263393 A JP 17263393A JP 17263393 A JP17263393 A JP 17263393A JP 2673409 B2 JP2673409 B2 JP 2673409B2
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mold temperature
molding
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数利 焼本
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Japan Steel Works Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形において現れ
る成形品のひけの改善および収縮率のコントロールを効
果的に行なうため、金型温度や加熱シリンダ温度などの
温度制御の対象を、それぞれ個別に制御するのではなく
包括的に制御する射出成形における成形条件制御方法お
よび装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】射出成形において、溶融樹脂が金型のキ
ャビティに充填されると、樹脂が金型壁面から熱をうば
われて冷却される。この際、樹脂の熱膨張特性により必
然的に体積収縮を生じ、成形品の形状寸法は金型キャビ
ティの体積に比べて5〜10%小さくなる。さらに、こ
の収縮が、成形品の特定部位で顕著になると、成形品表
面に陥没状のひけが生じ、形状寸法と合せて外観を損ね
る一因となっている。そこで、成形品の収縮率を所定の
範囲に抑制し、なおかつひけを防止することが重要な課
題となっている。
【0003】通常ひけおよび過大な収縮を防止する上で
は、冷却によって生ずる収縮を補うために溶融樹脂を金
型キャビティ内へ追加補給する方法が採られており、こ
の過程は保圧冷却過程と呼ばれている。保圧冷却過程に
おいては、金型キャビティ内の樹脂の温度が急激に低下
し、その結果、樹脂の流動性も急速に低下する。そうす
ると、金型キャビティへの樹脂の供給ができなくなり、
保圧の効果が無くなり、場合によってはいくら保圧をか
けても、ひけおよび収縮率を充分に改善できなくなる。
すなわち、過大な収縮やひけは、保圧冷却過程におい
て、金型キャビティに補充する溶融樹脂の流動性や、保
圧力が不充分であること等に起因すると考えられてい
る。
【0004】従来、ひけおよび収縮率を改善するために
は、次に記載する(イ)乃至(ハ)等の方法が採られて
きた。
【0005】(イ)保圧過程において、キャビティへの
溶融樹脂の供給能力を高めるために、スクリュの押圧力
すなわち保圧力を増加させる。
【0006】(ロ)加熱シリンダの設定温度を高くする
ことにより、キャビティに充填される溶融樹脂の流動性
を高くする。
【0007】(ハ)金型温度の設定値を低くしてキャビ
ティ内の樹脂温度を低くすることで、キャビティ内の樹
脂の流動性が消失してキャビティへの溶融樹脂供給が無
くなる時点におけるキャビティ内の樹脂温度と、成形品
取出し後の常温との温度差を小さくすることにより、常
温に冷却されるまでの熱収縮量を小さくする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の技
術には次に説明するような問題点がある。
【0009】前記(イ)の方法は、最も容易で迅速な方
法である。しかしながら、樹脂の流動性が不充分であれ
ば、いくら保圧を増加させても金型のキャビティに供給
する樹脂補給量を増加させることはできない。複雑な形
状を有する成形品では、局部的な薄肉部分などで過大な
冷却が生じ、流動性が低下することによってひけを生じ
る場合が多い。こうした場合には、保圧力を増加するこ
とによっては、ひけおよび過大な収縮を解消することは
できない。
【0010】前記(ロ)の方法は、直接的に流動性を高
める上で有効である。ところが、加熱シリンダの設定温
度を高くすると、キャビティ内の樹脂温度が高くなり、
樹脂の流動性が消失してキャビティへの樹脂供給が停止
した時点でのキャビティ内の樹脂温度も高くなる。そう
すると、該樹脂温度と大気温度との差も大きくなり、常
温に到るまでの樹脂の体積収縮量も増加する。このた
め、樹脂の熱的特性、流動特性、収縮特性、さらに金型
形状によっては、加熱シリンダの設定温度を上昇させて
も必ずしも成形品のひけおよび収縮率を改善することは
できない。このことは、加熱シリンダ内の樹脂温度を上
昇させることが、ひけおよび収縮率を増加させる作用と
減少させる作用との双方をあわせもつことに起因する。
【0011】前記(ハ)の方法は、加熱シリンダの設定
温度を上げることが樹脂の流動性を高くするのに有効で
あるのと相対的な関係にあり、成形品を取り出すまでの
熱収縮量を減少させることによるひけや体積収縮の改善
を図る方法である。しかしこの方法も、(ロ)の場合と
同じく、ひけおよび体積収縮を改善する作用と促進する
作用とをあわせ持っているので、必ずしも改善が図れる
とは限らない。すなわち、成形品取出しまでの熱収縮
は、金型温度を低くすることによって減少するが、金型
温度を低くすると、樹脂の流動性がキャビティ内の各部
で低下する。この結果、キャビティへの溶融樹脂の追加
補給が不充分となり、結果的には、成形品の収縮量を増
加させる可能性がある。逆に、金型温度を高くしてキャ
ビティ内の樹脂の流動性を高くした場合には、キャビテ
ィ内の樹脂の温度が高くなり、常温との温度差も大きく
なる。このため、キャビティへの樹脂の流動性が途絶え
た時点から、成形品を取出すまでの間に発生する熱収縮
量が大きくなり、ひけや収縮量も増大することとなる。
【0012】このように、金型温度を単独で増減するこ
とには、ひけおよび収縮量を増大させる作用と減少させ
る作用とが共存し、加熱シリンダ温度と金型温度とをそ
れぞれに単独に制御あるいは変更する場合においても、
ひけおよび収縮量を増大させる作用と減少させる作用と
が共存するため、必ずしもひけおよび収縮量を効果的に
改善することは出来なかった。参考までに従来の方法と
本発明の方法との関係を図2に示す。
【0013】本発明は、上記従来の技術の有する問題点
に鑑みてなされたものであり、ひけおよび収縮量を効果
的かつ迅速に改善することができる射出成形における成
形条件制御方法および装置を提供することを目的として
いる。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の射出成形における成形条件制御方法のうち
の第1の方法は、溶融・混練された溶融樹脂を型締した
金型のキャビティに射出充填する射出段階と、前記射出
段階の後、前記キャビティに前記溶融樹脂を追加補充す
る保圧冷却段階とからなる射出成形方法において、成形
サイクルを繰り返し実行中に、最新の成形サイクルの加
熱シリンダ温度TR および金型温度TW に対し、それに
引続く成形サイクルを実行するにあたり、加熱シリンダ
温度を所定の加熱シリンダ温度増分ΔTR だけ上昇させ
ると同時に前記加熱シリンダ温度増分に関連して金型温
度を所定の金型温度増分ΔTW だけ下降させることによ
り、ひけおよび収縮量を改善することを特徴とするもの
である。
【0015】また、第1の方法において、金型温度増分
ΔTW を次式により演算した演算値とする。
【0016】ΔTW =−{(Tnf−TW )/(TR −T
nf)}・ΔTR ただし、Tnfは樹脂の種類によって定まる流動停止温度 さらに、本発明の第2の方法は、請求項1記載の射出成
形における成形条件制御方法において、金型温度のかわ
りに金型温度を調節するための金型温度調節器の金型温
度設定値TWSを用いるとともに、金型温度増分ΔTW
かわりに前記金型温度調節器の金型温度設定値増分ΔT
WSを用い、かつ該金型温度設定値増分ΔTWSを次式 ΔTWS=−{(Tnf−TWS)/(TR −Tnf)}・ΔT
R により演算した演算値とすることもできる。
【0017】加えて、本発明の射出成形における成形条
件制御装置は、金型を型締めする型締装置と、型締めさ
れた前記金型のキャビティに溶融・混練した溶融樹脂を
射出充填したのち、前記キャビティに前記溶融樹脂を補
充するための保圧を行う射出装置を備えた射出成形機に
おいて、前記金型の金型温度TW を検出する金型温度セ
ンサと、前記射出装置の加熱シリンダの加熱シリンダ温
度TR を検出する加熱シリンダ温度センサと、前記金型
の温度を調節する金型温度調節器と、前記加熱シリンダ
の温度を調節する加熱シリンダ温度調節器と、前記金型
温度TW および前記加熱シリンダ温度TR を同時に制御
する制御装置を備え、前記制御装置は、成形サイクルを
繰り返し実行中に最新の成形サイクルの前記加熱シリン
ダ温度TR および前記金型温度TW に対し、それに引続
く成形サイクルを実行するにあたり、所定の加熱シリン
ダ温度増分ΔTR に関連して所定の金型温度増分ΔTW
を演算する制御演算部と、前記制御演算部から送られた
前記加熱シリンダ温度増分ΔTR および金型温度増分Δ
W に基いて前記金型温度調節器および加熱シリンダ温
度調節器を制御して前記加熱シリンダ温度TR を所定の
加熱シリンダ温度増分ΔTR だけ上昇させると同時にこ
れに関連して前記金型温度TW を所定の金型温度増分Δ
W だけ下降させる制御部とからなることを特徴とする
ものである。
【0018】
【作用】成形サイクルを繰り返し実行中に、最新の成形
サイクルの加熱シリンダ温度TR および金型温度TW
対し、それに引続く成形サイクルを実行するにあたり、
加熱シリンダ温度を所定の加熱シリンダ温度増分ΔTR
だけ上昇させると同時に、これに関連して金型温度を所
定の金型温度増分ΔTW だけ下降させることによって、
キャビティ内の樹脂温度が満たすべき条件を確実に達成
して効果的かつ迅速に成形品のひけおよび収縮量を改善
する。
【0019】
【実施例】本発明の実施例を図面に基いて説明する。
【0020】先ず、本発明の射出成形機における成形条
件制御装置について説明する。
【0021】図1は、射出成形機における成形条件制御
装置の一実施例の説明図である。
【0022】射出装置Mは、図示しない型締機構によっ
て型締めされた金型1のキャビティ1aに溶融・混練し
た溶融樹脂を射出充填したのち、前記キャビテイ1aに
前記溶融樹脂を補充するための保圧を行うように構成さ
れている。
【0023】制御装置10は、設定モニタ部10a、制
御演算部10bおよび制御部10cを備えている。
【0024】設定モニタ部10aは、金型温度調節器8
の設定値(以下、「金型温度設定値」という。)TWS
加熱シリンダ温度調節器9の設定値(以下、「加熱シリ
ンダ温度設定値」という。)TRS、樹脂の流動停止温度
nfおよび加熱シリンダ温度設定値増分ΔTRSの各設定
値、並びに指令設定スイッチの制御開始指令等を入力す
るとともに、制御演算部10bからの金型温度TW 、加
熱シリンダ温度TR を受けてモニタ表示およびデータロ
ギングを行う。
【0025】制御演算部10bは、金型温度センサ2で
計測された金型温度TW および加熱シリンダ温度センサ
4で計測された加熱シリンダ温度TR を受けてこれらを
設定モニタ部10aに転送するとともに、なおかつ後述
する(8)式または(12)式を用いて演算を行ってそ
の演算値を制御部10cへ送る。
【0026】制御部10cは前記制御演算部10bから
送られた演算値に基いて金型温度調節器8および加熱シ
リンダ温度調節器9を制御する。
【0027】上述した制御装置10は、シーケンス制御
装置11から射出開始信号を受けたとき、各成形サイク
ル毎に、金型温度TW および加熱シリンダ温度TR を演
算制御部10bを経て設定モニタ部10aに転送し、設
定モニタ部10aは、これらを数乃至数100ショット
にわたってロギングし、オペレータが指令設定スイッチ
から制御開始の指令を入力したときには、最新の成形シ
ョットの金型温度TWおよび加熱シリンダ温度TR にて
制御演算を行えるように、制御演算部10bに指令を出
し、また、制御の開始と終了は、設定モニタ部10aを
介してオペレータとの対話形式で選択できるように構成
されている。
【0028】他方、金型温度調節器8は、制御部10c
からの指令に基いて、その冷却水6の温度を所定の温度
に調節できるように構成されており、前記冷却水6をキ
ャビティ1aを備えた金型1に循環供給して金型温度を
制御する。
【0029】また、加熱シリンダ温度調節器9は、制御
部10cからの指令に基いて、加熱シリンダ3を加熱す
る加熱ヒータ5に送られるヒータ制御量7を調節するこ
とにより、加熱シリンダ温度を所定の温度に調節できる
ように構成されている。
【0030】本実施例において、金型温度センサ2は、
金型1の内部の適宜部位に取付けられており、加熱シリ
ンダ温度センサ4は加熱シリンダ3の内部の適宜部位に
取付けられている。
【0031】次に、本発明の射出成形における成形条件
制御方法の実施例について説明する。
【0032】先ず、本発明のひけおよび収縮量改善の原
理について説明する。
【0033】金型内の樹脂の流動性が消失し、キャビテ
ィへの樹脂供給が停止する時刻をtnf とおき、時刻tnf
におけるキャビティ内の樹脂圧力をPC(tnf)、同じく時
刻tnf のキャビティ内の樹脂温度をTC(tnf)とおく。そ
うして、時刻tnf において確定するキャビティ内の質量
(=成形品重量)をmoとおく。また、金型のキャビテ
ィ内の体積をVとおく。
【0034】これらの関係は、次のSPENCER&G
ILMOREの状態方程式で近似できる[Spencer,R.
S.,Gilmore,G.D.;Journal of Applied Physics,Vol.20,
p.502(1949) ]。
【0035】 (PC(tnf)+πi)・(V/mo−ω)=R′・(TC(tnf)+273)・・(1) ただし、πi,ω,R′は材料によって定まる定数。
【0036】成形品が金型より取出されて後、常温To
、大気圧Po となったときの成形品体積をVCOとおく
と、これらの間の関係は次式で表わされる。
【0037】 (Po +πi)・(VCO/mo−ω)=R′・(To +273 )・・・・(2) (1)式と(2)式から、キャビティの体積Vと、最終
的な成形品体積VCOとの関係は次式で表わされる。
【0038】 VCO/V={ω+R′・(To +273 )/(Po +πi)}/ {ω+R′・(TC(tnf)+273 )/(PC(tnf)+πi)} ・・・・・(3) 成形品のひけおよび収縮が大きいということは、(3)
式において、VCO/Vが小さいということである。この
ため、ひけおよび収縮量を改善するということは、VCO
を極力大きくして、Vに近づけること、すなわち、VCO
/Vを大きくすることである。VCO/Vを大きくすると
いうことは、(3)式より、前記TC(tnf)を小さくし
て、前記PC(tnf)を大きくすることである。以上のこと
より、ひけおよび収縮量を改善するということは、キャ
ビテイ内の樹脂流動性が消失してキャビティへの樹脂供
給が無くなる時刻tnf での型内の樹脂圧力PC(tnf)を大
きくし、なおかつ型内の樹脂温度TC(tnf)を低くするこ
とと等価である(図3参照)。
【0039】樹脂圧力PC は、樹脂の流動性に強く影響
されることが知られている。特に、充填初期の樹脂温度
は、充填後期の樹脂温度に比べて樹脂圧力PC に及ぼす
影響が大である。時刻tnf においては、樹脂の流動性は
消失するわけであるから、時刻tnf より以前の、特に充
填初期のキャビティ内の樹脂温度を高くすることが前記
C(tnf)を大きくする上で有効である。
【0040】金型温度TW 、加熱シリンダ温度TR の条
件下で、時刻tnf のキャビティ内の樹脂温度をTC(tnf)
とする。別の条件にて、前記TW がTW ′に、前記TR
がTR ′に変化したとすると、前記TC(tnf)がTC(tn
f)′に変化する量は非定常熱伝導解析の結果より、次式
で表わされる。
【0041】 TC(tnf)′−TC(tnf)={(TR −TC(tnf))/(TR −TW )}・ΔTW + {(TC(tnf)−TW )/(TR −TW )}・ΔTR ・・・・・(4) ただし、ΔTW =TW ′−TW ΔTR =TR ′−TRR ,TW ,TC(t)と、TR ′,TW ′,TC(t)′との
関係を図4に示す。
【0042】キャビティ内の樹脂温度TC(t)を下降させ
る上では、加熱シリンダ温度TR または金型温度TW
下降させる方法がある。時刻tnf のキャビティ内の樹脂
温度TC(tnf)を樹脂によって定まる流動停止温度Tnf
仮定すると、このTnfは比較的低温度の領域である。低
温度の領域において、TC(t)を低くする上では、図4に
示すように、金型温度TW を低くするのが有効である。
nfは比較的低温であるので、時刻tnf のキャビティ内
の樹脂温度TC(tnf)を下降させる上で、時刻tnf のキャ
ビティ内の樹脂圧力PC(tnf)を高くするためには、極力
充填初期のキャビティ内の樹脂温度を高くして時刻tnf
までの流動性および温度を向上するのが効果的である
が、図4に示したように、充填初期の温度を高くする上
では、加熱シリンダ温度TR を高くすることが効果的で
ある。
【0043】以上述べたように、ひけおよび収縮量を改
善するためには、キャビティ内の樹脂の流動性が消失す
る時刻tnf におけるキャビティの樹脂圧力PC(tnf)を高
くし、かつ、時刻tnf におけるキャビティの樹脂温度T
C(tnf)を低くすることが必要である。この条件を効果的
に満足させる上では、上述したように、加熱シリンダ温
度TR を上昇させ、なおかつ同時に、金型温度TW を下
降させる方法が有効である。本発明は、以上の方法によ
ってひけおよび収縮量を改善するものである。
【0044】以下、具体的に、キャビティ内の樹脂の流
動性が消失してキャビティへの樹脂供給が無くなる時刻
tnf におけるキャビティ内の樹脂温度TC(tnf)を下降さ
せ、なおかつ時刻t=0〜tnf の間のTC(t)を上昇させ
て、時刻tnf におけるキャビティの樹脂圧力PC(tnf)を
増加する上で、金型温度TW の変化量と加熱シリンダ温
度TR の変化量の間に成立すべき条件を求め、TW とT
R との関係を制御すべき関係式を求める。
【0045】キャビティ内において、成形品厚さ方向
(x=0〜S,S;肉厚)の樹脂温度分布は任意の時刻
tで図5に示すようになる。時刻t=0では、キャビテ
ィ内の樹脂温度TC(t)は加熱シリンダ温度TR とほぼ等
しいとみなせる。このTC(t)は、金型壁面から熱をうば
われるので、断面中心部が高く、壁面部が低い放物状の
温度分布となる。前記TC(t)を断面方向に平均した温度
すなわち断面平均温度Tcave(t) を、次式で表わす。
【0046】
【数1】 この中で、樹脂の流動に関与するのは、流動停止温度T
nfより高い温度の部分である。厚さ方向に少しでも流動
停止温度Tnfより高い温度の樹脂が存在すれば、樹脂が
この部分に補給される。このため、樹脂の流動性を議論
するに際して、その対象を断面中心部の温度TCO(t) と
仮定する。
【0047】一方、樹脂の熱収縮には、その流動性の有
無にかかわらず、厚さ方向の全ての樹脂が関与する。そ
こで、樹脂の収縮を議論するに際して、その対象を断面
平均温度Tcave(t) とする。
【0048】金型温度TW 、加熱シリンダ温度TR の条
件下で、時刻tnf に中心部温度TCO(t) が流動停止温度
nfに達すると仮定する。前述したように、ひけと収縮
量を改善する条件として、時刻t=0からt=tnf まで
の流動性を高くするには、t=0〜tnf の中心部温度T
CO(t) を高くすることであり、時刻tnf における温度を
低くするとは、断面平均温度Tcave(tnf) を低くするこ
とである。
【0049】金型温度TW 、加熱シリンダ温度TR をそ
れぞれTR ′,TR ′に変化させた場合、中心部温度T
CO(t) がTCO(t) ′に変化したとする。これらの関係は
(4)式と同様に次式で表わされる。
【0050】 ΔTCO(t) ={(TR −TCO(t) )/(TR −TW )}・ΔTW + {(TCO(t) −TW )/(TR −TW )}・ΔTR ・・・(5) ただし、ΔTCO(t) =TCO(t) −TCO(t) ′ 断面平均温度Tcave(t) もTcave(t) ′に変化するが、
これは次式で表わされる。
【0051】 ΔTcave(t) ={(TR −Tcave(t) )/(TR −TW )}・ΔTW + {(Tcave(t) −TW )/(TR −TW )}・ΔTR ・・・(6) ただし、ΔTcave(t) =Tcave(t) ′−Tcave(t) ここで、加熱シリンダ温度だけを上昇させる(ΔTR
0,ΔTW =0)と、図6に示すように、t=0〜tnf
までのTCOは上昇するが、これと同時に、Tcave(tnf)
も上昇してしまう。一方、金型温度だけを下降させる
(ΔTR =0,ΔTW <0)と、図6に示すように、前
記断面平均温度も下降するが、これとともに、t=0〜
tnf までのTCOも下降してしまう。このため、図6の
(a),(b)の場合には、ひけと収縮量とを改善でき
る保証は得られない。
【0052】ここで、時刻tnf における断面中心部温度
CO(tnf) が、前記TR ,TW の条件下と、前記T
R ′,TW ′の条件下で一致させる次式の場合を考え
る。
【0053】 TCO(tnf) =TCO′(tnf) =Tnf ・・・・・(7) この式を(5)式に代入すると、(7)式が成り立つた
めの前記ΔTR とΔTW との関係が次式で表わされる。
【0054】 ΔTW =−{(Tnf−TW )/(TR −Tnf)}・ΔTR ・・・・・(8) ΔTR >0ならば、Tnf>TW ,TR >Tnfであるか
ら、ΔTW <0であり、(8)式は加熱シリンダ温度の
上昇と、金型温度の下降を意味する。(8)式が成り立
つと仮定した場合、これを(5)式に代入すると次のよ
うになる。
【0055】
【数2】 ここで、TR >TCO(t) >Tnf(t=0〜tnf の時間)
であり、ΔTR >0であるから、ΔTCO(t) >0とな
る。すなわち、(8)式を満たせば、t=0〜tnf の中
心部温度TCO(t) ′はTCO(t) よりも大きくなる。
【0056】次に、(8)式を(6)式に代入すると、
(9)式を導いたと同様にして(10)式を得る。
【0057】 ΔTcave(tnf) ={(Tcave(tnf) −Tnf)/(TR −Tnf)}・ΔTR ・・・・(10) 明らかに、任意の時刻でTCO(t) >Tcave(t) であり、
(7)式よりTCO(tnf) =Tnfである。このため、Tnf
>Tcave(tnf) であり、TR >TnfとあわせてΔTcave
(tnf) <0となる。従って、(8)式を満たせば、断面
平均温度ΔTcave(tnf) ′はTcave(tnf) より小さくな
る。
【0058】以上の結果、ΔTR >0であり、かつ
(8)式を満たすようにすれば図6の(c)に示すよう
に、t=0〜tnf までのTCO(t) が上昇し、なおかつ断
面平均温度Tcave(tnf) が下降する。すなわち、ひけと
収縮量を改善するための(3)式を用いて説明した条件
が確実に満足されることとなる。
【0059】前記金型温度TW および前記加熱シリンダ
温度TR として、それぞれ金型温度実測値および加熱シ
リンダ温度実測値を用いる場合には、(8)式を直接満
足するように金型温度と加熱シリンダ温度を制御すれば
よい。しかし、金型温度設定値TWSおよび加熱シリンダ
設定温度TRSを用いる場合には、これら金型温度設定値
WSおよび加熱シリンダ設定温度TRSと、金型温度TW
および加熱シリンダ温度TR とをそれぞれ対応付ける必
要がある。例えば、TWSは金型に供給される冷却水温度
の設定値を示し、TRSは加熱シリンダに装置されるヒー
タの設定温度の場合などである。加熱シリンダ温度につ
いては経験的にほぼTR =TRSとみなせる。
【0060】加熱シリンダ温度TR 、金型温度設定値T
WSの下で、金型温度がTW になったとする。次に、それ
ぞれがTR ′,TWS′に変化したとする。これらの関係
は、次式で表わされる。
【0061】 ΔTW ={(TR −TW )/(TR −TWS)}・ΔTWS+ {(TW −TWS)/(TR −TWS)}・ΔTR ・・・・(11) 上式に(8)式を代入すると、変化させるべき金型温度
設定値増分ΔTWSは次式で表わされる。
【0062】
【数3】 一方、前記TR とTRSとの間では、近似的に次式を仮定
する。
【0063】 ΔTR =ΔTRS ・・・・(13) 金型温度設定値TWS、加熱シリンダ温度設定値TRSの条
件から、それぞれを変化させて、ひけおよび収縮量を改
善する場合、まず、予め定められたTRSの変化量ΔTR
を(13)式のΔTRSとして設定してTRSを変化させ、
これと同時に、(12)式に従って金型温度設定値をΔ
WS変化させれば、(8)式が満足され、成形品のひけ
と収縮量とを確実に改善するための、加熱シリンダ温度
と金型温度との同時制御が可能となる。
【0064】ここで、本発明の射出成形における成形条
件制御方法の一実施例について説明する。
【0065】図7は、本実施例の工程を示すフローチャ
ートである。
【0066】先ず、成形サイクルの繰り返し実行中にお
いて、制御装置10の設定モニタ部10aを介してオペ
レータがひけおよび収縮量の改善のため、制御開始の指
令を出すと(ステップS1)、制御演算部10bはこの
指令を受けて最新(現状)の各設定温度TWS,TRSを確
認し(ステップS2)、最新の実測温度TR ,TW を確
認し(ステップS3)、予め与えられた加熱シリンダ温
度設定値増分ΔTR および流動停止温度Tnfを用いて、
金型温度増分ΔTW を(8)式より算出する(ステップ
S4)。ただし、初期の時点では、(8)式のΔTRS
ΔTR として与える。次に、(12)式を用いて、金型
温度設定値増分ΔTWSを算出し(ステップS5)、ΔT
RS=ΔTR として新しい設定値TWS′,TRS′をそれぞ
れ求めて制御部10cに送り出し、制御部10cから金
型温度調節器8、金型シリンダ温度調節器9にそれぞれ
新しい設定値TWS′,TRS′を出力する(ステップS
6)。ただし、 TWS′=TWS+ΔTWS, TRS′=TRS+ΔTRS 以後、設定モニタ部10aは、変化した後のTR ′,T
W ′を各ショットで比較し、これらがショット間で安定
したと判断された時点で、(8)式を満たすか否かを検
討し、設定値の訂正を行う(ステップS7)。その後、
設定モニタ部10aはオペレータに判断を求め、満足で
あれば終了し、そうでなければ再びステップS2に戻っ
てさらにΔTR の増加を加熱シリンダ温度に対して与え
るべく、ステップS3〜ステップS8を実行する。制御
の途中で中断の場合は、オペレータの指示で行なう。
【0067】図8および図9は、上記の手順に従って、
成形品厚さの改善をそれぞれ異なるゲート寸法の金型に
対して試みたものである。〇印で示した基準状態に対し
て、加熱シリンダ温度および金型温度を単独で変更した
場合には(△、□の場合)、特に、ゲート3□×2Lの
場合に改善が見られなかったが、本発明の制御方法(●
の場合)によれば、どのゲートでも成形品の厚さを改善
できた。さらに、流動末端部に生ずるひけも、同様に改
善された。
【0068】
【発明の効果】本発明は、上述のように構成されている
ので、次に記載するような効果を奏する。
【0069】成形サイクルを繰り返し実行中に、最新の
成形サイクルの加熱シリンダ温度および金型温度に対
し、それに引続く成形サイクルを実行するにあたり、加
熱シリンダ温度を所定の加熱シリンダ温度増分だけ上昇
させると同時に、これに関連して金型温度を所定の金型
温度増分だけ下降させるので、キャビティ内の樹脂温度
変化が満たすべき条件を確実に達成して、効果的かつ迅
速にひけおよび収縮量の改善が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形機における成形条件制御装置
の一実施例の説明図である。
【図2】本発明の方法と従来の方法との関連を示す説明
図である。
【図3】キャビティ内の樹脂圧力および樹脂温度の時間
変化の一例を示すグラフである。
【図4】金型温度および加熱シリンダ温度と型内の樹脂
温度との関連を示す説明図である。
【図5】キャビティ内の樹脂温度分布を示す説明図であ
る。
【図6】本発明の温度制御を適用した場合(C)、加熱
シリンダ温度を単独で制御した場合(A)、金型温度を
単独で制御した場合(B)それぞれの型内の樹脂温度変
化の説明図である。
【図7】本発明の制御方法の一実施例の工程を示すフロ
ーチャートである。
【図8】本発明によって成形された成形品肉厚の改善実
例1を示す。
【図9】本発明によって成形された成形品肉厚の改善実
例2を示すグラフである。
【符号の説明】 1 金型 1a キャビティ 2 金型温度センサ 3 加熱シリンダ 4 加熱シリンダ温度センサ 5 加熱ヒータ 6 冷却水 7 ヒータ制御量 8 金型温度調節器 9 加熱シリンダ温度調節器 10 制御装置 10a 設定モニタ部 10b 制御演算部 10c 制御部 11 シーケンス制御装置

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶融・混練された溶融樹脂を型締した金
    型のキャビティに射出充填する射出段階と、前記射出段
    階の後、前記キャビティに前記溶融樹脂を追加補充する
    保圧冷却段階とからなる射出成形方法において、 成形サイクルを繰り返し実行中に、最新の成形サイクル
    の加熱シリンダ温度TR および金型温度TW に対し、そ
    れに引続く成形サイクルを実行するにあたり、加熱シリ
    ンダ温度を所定の加熱シリンダ温度増分ΔTR だけ上昇
    させると同時に前記加熱シリンダ温度増分に関連して金
    型温度を所定の金型温度増分ΔTW だけ下降させること
    により、ひけおよび収縮量を改善することを特徴とする
    射出成形における成形条件制御方法。
  2. 【請求項2】 金型温度増分ΔTW を次式により演算し
    た値とすることを特徴とする請求項1記載の射出成形に
    おける成形条件制御方法。 ΔTW =−{(Tnf−TW )/(TR −Tnf)}・ΔT
    R ただし、Tnfは樹脂の種類によって定まる流動停止温度
  3. 【請求項3】 請求項1記載の射出成形における成形条
    件制御方法において、 金型温度のかわりに金型温度を調節するための金型温度
    調節器の金型温度設定値TWSを用いるとともに、金型温
    度増分ΔTW のかわりに前記金型温度調節器の金型温度
    設定値増分ΔTWSを用い、かつ該金型温度設定値増分Δ
    WSを次式 ΔTWS=−{(Tnf−TWS)/(TR −Tnf)}・ΔT
    R により演算した演算値とすることを特徴とする射出成形
    における成形条件制御方法。
  4. 【請求項4】 金型を型締めする型締装置と、型締めさ
    れた前記金型のキャビティに溶融・混練した溶融樹脂を
    射出充填したのち、前記キャビティに前記溶融樹脂を補
    充するための保圧を行う射出装置を備えた射出成形機に
    おいて、 前記金型の金型温度TW を検出する金型温度センサと、
    前記射出装置の加熱シリンダの加熱シリンダ温度TR
    検出する加熱シリンダ温度センサと、前記金型の温度を
    調節する金型温度調節器と、前記加熱シリンダの温度を
    調節する加熱シリンダ温度調節器と、前記金型温度TW
    および前記加熱シリンダ温度TR を同時に制御する制御
    装置を備え、 前記制御装置は、成形サイクルを繰り返し実行中に最新
    の成形サイクルの前記加熱シリンダ温度TR および前記
    金型温度TW に対し、それに引続く成形サイクルを実行
    するにあたり、所定の加熱シリンダ温度増分ΔTR に関
    連して所定の金型温度増分ΔTW を演算する制御演算部
    と、前記制御演算部から送られた前記加熱シリンダ温度
    増分ΔTR および金型温度増分ΔTW に基いて前記金型
    温度調節器および加熱シリンダ温度調節器を制御して前
    記加熱シリンダ温度TR を所定の加熱シリンダ温度増分
    ΔTR だけ上昇させると同時にこれに関連して前記金型
    温度TW を所定の金型温度増分ΔTW だけ下降させる制
    御部とからなることを特徴とする射出成形における成形
    条件制御装置。
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