JP2669527B2 - 電気化学式センサ - Google Patents

電気化学式センサ

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、電気化学式センサに関し、詳しくは、電
解反応を利用して特定のガス成分等を検出したり定量し
たりする電解型の電気化学式センサに関する。
〔従来の技術〕
電解型ガスセンサの一般的な基本構造は、電解質内に
作用極、対極および参照極の3個の電極が設けられてな
るものであり、その一般的な作用機構は、作用極に一定
の電圧をかけると、検出対象とするガス成分が作用極で
酸化または還元反応を起こし、このとき生成されたイオ
ンは電解質内を移動して、対極で還元または酸化反応を
起こすと言うものである。この酸化還元反応に伴い作用
極と対極との間を流れる電流を測定することによって、
対象ガスの検出および定量を行うことができる。
なお、反応を起こさせるために必要な作用極の電位
は、検出ガスの成分によって異なるので、検出ガスに応
じて作用極の電位を一定に保つ必要があり、そのため、
参照極を基準にして、作用極に加える電流を制御してい
る。
ところで、従来の電解型ガスセンサは、電解質とし
て、例えばH2SO4等の液体電解質を使用しているため、
電解質の経時変化、液漏れ、材料腐食等の問題があり、
厳重な密封構造にしなければならず、小型化が困難であ
り、また、感度や出力が経時的に低下するので、長期的
な安定性に乏しく、寿命が短いこと、さらに、取扱いや
管理が難しいこと等の欠点があった。
そこで、液体電解質のかわりに、スルホン化パーフル
オロカーボン等の高分子固体電解質を用いたガスセンサ
が開発され、例えば、米国特許第4227984号明細書、同
第4265714号明細書あるいは特開昭53−115293号公報等
に開示された技術がある。このガスセンサは、固体電解
質膜の片面に関知電極(作用極)と参照電極(参照極)
が設けられ、反対面に逆電極(対極)が設けられてお
り、液体電解質型のものに比べてコンパクト化され、経
時的安定性等の性能の点でも優れており、取り扱いも容
易になっている。
しかし、このガスセンサは、Pt,Au等とポリテトラフ
ロオロエチレンとの微粒子混合体が担持されたガス透過
性膜からなる電極を、軟質の固体電解質膜に接着するよ
うにしているため、製造が面倒であるとともに、超小型
化,センサアレイ化が困難であるという問題があった。
また、近年、半導体等の電子回路素子が、プレーナ技
術等のマイクロ加工技術を利用して超小型化されてきて
おり、このような素子と組み合わせて使用するガスセン
サとしても、一層の小型化、高性能化が要求されてい
る。
そこで、本件出願人は、上記した従来技術の問題点を
解消し、半導体素子等と同様のマイクロ加工技術で製造
できるプレーナ型のガスセンサを開発した。このような
プレーナ型のガスセンサの構造例を説明する。絶縁基板
の上に、白金を電極材料とする作用極,対極および参照
極が設けられる。各極はそれぞれ、電気化学作用を行う
反応部と外部回路へ接続される端子部からなる。各極の
反応部およびその間を覆って、固体電解質層が設けられ
る。固体電解質層は、絶縁基板の上に設けられた絶縁物
製の枠の内部に充填される。検出ガス等は、固体電解質
槽を通過して作用極の反応部の上に拡散し、電気化学反
応を起こすことになる。
作用極反応部と対極反応部が、細長い線状をなし、こ
の線状反応部が複数本並べられて一端を連結された、い
わゆる櫛形構造に構成されていて、このような櫛形構造
の反応部が互いに入り組んだ状態で対向するように配置
されていれば、作用極反応部と対極反応部とが対向する
反応面積を極めて増大でき、センサの感度が向上する。
各反応部は、絶縁枠の外に設けられた各々の端子部と一
体に形成される。参照極は、全体が矩形状をなし、その
一辺側を反応部、他辺側を端子部となす。
第7図には、従来のガスセンサにおける参照極、作用
極および対極の配置関係の一例を表しており、参照極反
応部40は、一対の線状をなす作用極反応部20と対極反応
部30が先端を突き合わせた状態で配置されている箇所の
側方に設けられている。
上記ガスセンサは、絶縁基板の同一面に全ての電極が
設けられているので、電極や固体電解質層の形成を、プ
レーナ技術等のマイクロ加工技術を利用して、極めて能
率良く加工でき、センサの小型化、高性能化を図れる
等、多くの優れた特徴を有している。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、上記したプレーナ型センサは、作用極反応
部20と参照極反応部40とが同一面上に設けられているた
め、固体電解質内に拡散してきた検出器成分は、作用極
反応部20で検出反応を起こすだけでなく、参照極反応部
40においても電気化学反応を起こしたり、吸着によって
界面電位が変化してしまい、参照電極反応部40が作用極
反応部20の電位設定の基準として機能しなくなる。その
ため、センサに流れる検出電流が異常になって、正確な
検出電流が得られない欠点があり、センサの信頼性を著
しく低下させる原因になっていた。
また、上記した従来の固体電解質型のセンサの場合、
参照極反応部40が作用極反応部20と対極反応部30の側方
に少し離れて配置されているために、作用極反応部20の
電位設定が正確に行い難いという問題もあった。
これは、固体電解質の電気伝導率が、従来の液体電解
質に比べて4〜6桁程度も小さく、導電性が非常に悪い
ため、固体電解質層内での電位分布が大きくなり、参照
極反応部40が作用極反応20と対極反応部30との間に形成
される電場系と離れた位置にある場合には、参照極反応
部40で作用極反応部20の電位設定の基準を正確には果た
せなくなるのである。
第7図の電極配置では、図のABCDで囲まれた空間が、
作用極反応部20と対極反応部30との間で強い電気力線が
存在するところであり、参照極反応部40がこの空間から
離れるほど、作用極の電位設定が困難になる。すなわ
ち、参照極反応部40に対して作用極反応部20を一定の電
位に保つ、いわゆるポテンシオスタット機能が十分には
機能しなくなるのである。このように、作用極反応部40
の電位設定が正確にできなければ、検出結果も不正確に
なり、センサの信頼性が低下する原因になる。
そこで、この発明の課題は、参照極反応部が作用極反
応部の電位設定基準として確実に機能するようにして、
センサの信頼性を向上っせることにある。
なお、上記説明はすべて、ガスセンサについて行った
が、上記ガスセンサの構造は、作用極で反応を起こさせ
る検出対象を液体中のイオンにすればイオンセンサに適
応できる等、種々の用途における電気化学式検知にも同
様に適用できるものであるので、この発明は、ガスセン
サを含めたセンサ一般を対象とする。
〔課題を解決するための手段〕
上記課題を解決するため、この発明は、絶縁基板の同
一面上に作用極、対極および参照極が設けられ、少なく
とも各極の反応部の間を覆って水素イオン伝導性の固体
電解質層が設けられ、CO検出に用いられる電気化化学式
センサであって、作用極がCOに対して反応性を有する材
料からなり、参照極の材料が金であり、参照極反応部が
作用極反応部と対極反応部との対向空間の一部のみを遮
って配置されている。
なお、以下の説明では、水素イオン伝導性固体電解質
層のことを固体電解質層と略称する。
〔作用〕
このように、参照極の材料として金を用いると、検出
成分であるCOに対して電気化学反応を起こし難いととも
に、吸着もほとんどなく、不感になるので、参照極反応
部を作用極反応部の電位設定基準にして、十分に機能さ
せることができる。
また、参照極反応部を、作用極反応部と対極反応部と
の対向空間の一部のみを遮って配置しておくと、参照極
反応部が作用極反応部と対極反応部間の、電気力線の強
い空間内に配置されることによって、参照極反応部を作
用極反応部の電位設定基準として、十分に機能させるこ
とができる。
しかも、参照極反応部が作用極反応部と対極反応部と
の対向空間の全体を遮らないので、作用極反応部と対極
反応部とによる検出作用を参照極反応部が邪魔すること
が防げる。
〔実施例〕
つぎに、この発明を、実施例を示す図面を参照しなが
ら、以下に詳しく説明する。
第1図および第2図は、この発明にかかるガスセンサ
の模式的な構造を示しており、矩形の絶縁基板1の上
に、作用極2,対極3および参照極4が設けられ、各極2,
3,4は、それぞれ電気化学作用を行う反応部20,30,40の
外周を囲む絶縁枠5の内部が固体電解質層6で覆われて
いる。このような基本構成については、通常のガスセン
サと同様である。
各極2,3,4はそれぞれ、電気化学作用を行う反応部20,
30,40と、外部回路へ接続される端子部21,31,41からな
る。各極2〜4の反応部20〜40およびその間を覆って、
固体電解質層6が設けられる。固体電解質層6は、絶縁
基板1の上に設けられた絶縁物製の枠5の内部に充填さ
れる。検出ガス等は、固体電解質層6を通過して作用極
2の反応部20の上に拡散し、電気化学反応を起こすこと
になる。
作用極反応部20と対極反応部30は、細長い線状をな
し、この線状反応部が複数本並べられて一端を連結され
た、いわゆる櫛形構造に構成されていて、このような櫛
形構造の反応部20、30が互いに入り組んだ状態で対向す
るように配置されている。
矩形状の参照極4本体は、従来と同様に、一対の対向
する作用極反応部20と対極反応部30の突き合わされた先
端部分の側方に配置されているが、参照極反応部は矩形
状の参照極4本体の一辺から突出形成された突片状をな
し、この突片状の反応部40の先端が、作用極反応部20の
先端と対極反応部30の先端を結ぶ空間(図中ABCDで囲ま
れた空間)、すなわち作用極反応部20と対極反応部30の
対向空間の一部のみを遮って配置されるようになってい
る。
作用極反応部20と対極反応部30との対向空間は、図示
した実施例のように、両反応部20,30の先端が狭い間隔
で対向している個所で、両反応部20,30の先端を幾何学
的に結んだ空間として具体的に規定されるが、両反応部
20,30の形状や構造によって、対向空間の形状や位置は
変更される。
上記のようなガスセンサにおいて、絶縁基板1は、ア
ルミノ珪酸塩ガラス等、通常のガスセンサあるいは電子
回路素子用の絶縁基板材料が使用される。
作用極2および対極3の材料には、従来と同様に白金
が使用されるが、参照極4の材料には金が使用される。
なお、作用極2と対極3については、白金以外にもイリ
ジウム等の適宜電極材料に変更することができる。各電
極はスパッタリング法などの通常の電極形成手段で形成
でき、例えば5000Å程度の厚みで実施される。反応部20
等には、白金黒を着けたり、酸化処理等の活性化処理を
施してもよい。
反応部間の間隔は、出来るだけ狭いほうがイオン伝導
が容易になり、反応部間の電気抵抗も低下するので好ま
しく、通常は50μm以下で実施する。すなわち、この発
明のセンサの場合には、液体電解質に比べて導電性の低
い固体電解質を用いるので、作用極反応部20と対極反応
部30の間隔が広いと、その間のIRドロップが大きくな
り、作用極反応部20の電位が所定の電位から変化して、
対象とする検出成分の電気化学反応が起こり難くなり、
十分な検出電流が得られなくなるのである。
固体電解質層6は、例えばスルホン化パーフルオロカ
ーボン(商品名Nafion:デュポン社製)等のガス透過性
高分子固体電解質が使用されるので、その他、通常のガ
スセンサ等に用いられている各種の固体電解質が使用で
き、例えば、Sb2O5・4H2O、Zr(HPO4)2・4H2O等も使用で
きる。何れにしても、CO検知のために必要なイオン伝導
を果たす水素イオン伝導製の固体電解質が用いられる。
固体電解質6の膜厚は、大きい程、固体電解質内での
イオン伝導は良好で、作用極反応部20と対極反応部30と
の間のIRドロップも小さくなるが、膜厚が大き過ぎると
検出成分が固体電解質層6を通過して反応部20…へ到達
し難くなるので、通常は膜厚10μm以下で実施する。
つぎに、上記した実施例のセンサと従来構造のセンサ
との性能比較試験の結果を、第3図以下にグラフで表し
ており、順次説明を加える。
第3図は、白金電極と金電極とのCOガスに対する反応
性を比較するものであり、第3図(a)は白金電極、第
3図(b)は金電極の場合を示している。
試験方法は、通常の電気化学測定と同様に、電位差計
等を用い、COガスを供給したときの、各電極SCE(飽和
甘コウ電極)に対する電位変化を測定して、レコーダに
記録した。試験槽の電解液としてはH2SO4水溶液を入
れ、SCEと試験槽をKCl塩橋で連絡した。COガスとして、
空気中にCOを20%含有するガスを試験槽に導入した。
その結果、白金電極の場合、SCEに対する電位は、0.5
5V/SCEから0.32V/SCEに低下するのに対し、金電極の場
合には、0.04V/SCEから0.00V/SCEに変化しただけであ
る。したがって、金電極は白金電極に比べて、COガスに
対する感受性が小さいことが判る。なお、COガスのほ
か、H2ガス等でも同様の結果が得られる。したがって、
金を参照極4に用いれば、検出成分が反応を起こさない
ことが推定できる。
次に、第4図は、参照極4に金を用いたこの発明の実
施品であるセンサと、白金を用いた従来品のセンサに、
それぞれCOガスを供給したときの検出電流を比較してい
る。第4図(a)は実施品の場合、第4図(b)は従来
品の場合を示している。試験方法は、COガス1000ppmを
供給し、作用極4に0.20Vの電圧を印加して測定した。
その結果、この発明の実施品の場合には、COガスの供
給量に応じて一定の検出電流が流れているのに対し、従
来品の場合には、検出電流が異常な応答性を示してい
る。したがって、参照極4に金を用いることによって、
正確な検出電流が得られ、センサの信頼性を向上させ得
ることが実証された。なお、COガスのほか、H2ガス、NO
2ガスに対しても同様の結果が得られる。
つぎに、第5図および第6図は、参照極反応部40の一
部が作用極反応部20と対極反応部30の対向空間内に配置
されたこの発明の実施品と、参照極反応部40が上記対向
空間の外にある従来品との、同じ検出成分に対する反
応、すなわち検出電流値を比較したものである。検出成
分としては、COガスとエタノールガス(EtOH)を使用し
た。第5図はこの発明の実施品の場合、第6図は従来品
の場合を示している。
その結果、この発明の実施品は、従来品に比べてはる
かに大きな検出電流が得られ、極めて感度が高く信頼性
の高いセンサとなることが実証できた。
さらに、上記した各実施例において、固体電解質層6
の上に、ガス選択透過性フィルタを設けておけば、目的
の検出ガスを選択的に固体電解層6あるいは作用極2側
に送り込め、検出精度を一層高めることができる。さら
に、固体電解質層6の上に水溜層を設けることによっ
て、感度を向上させることができる。
その他、この発明の要旨を変更しない限り、通常のガ
スセンサに採用されている各種の構造あるいは形状を組
み合わせて実施できる。
さらに、上記した各実施例は、何れもガスセンサに関
して説明したが、同様の構成で液体中のイオン成分に反
応するイオンセンサ、バイオセンサ等の各種電気化学式
センサに適用することもできる。なお、液体中で使用す
る場合には、固体電解質はガス透過性でなくてもよい
等、用途に応じて適宜構造に変更して実施する。
〔発明の効果〕
この発明は、参照極の材料が金であることによって、
検出成分であるCOに対して不感となり、参照極の目的で
ある、作用極の電位設定基準としての機能を確実に果た
すことができ、センサの信頼性を向上させることができ
る。
また、参照極反応部が作用極反応部と対極反応部との
対向空間の一部のみを遮って配置されていることによっ
て、作用極反応部と対極反応部の間の電気力線の強い場
所に参照極反応部を配置することになるので、参照極反
応部による作用電極の電位設定基準としての機能が一層
確実に果たせることになり、上記した参照極の材料選定
による効果とあいまって、センサの信頼性を向上させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明にかかるガスセンサの模式的構造斜視
図、第2図は参照極反応部付近の拡大平面図、第3図は
電極材料による性能比較試験の結果を示すグラフ図、第
4図はセンサの性能比較試験の結果を示すグラフ図、第
5図および第6図は別の性能比較試験の結果を示すグラ
フ図であり、第5図はこの発明の実施例、第6図は従来
の場合を示しており、第7図は従来例の参照極反応部付
近を示す拡大平面図である。 1……絶縁基板、2……作用極、20……作用極反応部、
3……対極、30……対極反応部、4……参照極、40……
参照極反応部、6……固体電解質層

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁基板の同一面上に作用極、対極および
    参照極が設けられ、少なくとも各極の反応部の間を覆っ
    て水素イオン伝導性固体電解質層が設けられ、CO検出に
    用いられる電気化学式センサであって、 作用極がCOに対して反応性を有する材料からなり、 参照極の材料が金であり、 参照極反応部が作用極反応部と対極反応部との対向空間
    の一部のみを遮って配置されている 電気化学式センサ。
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