JP2658234B2 - インク組成物 - Google Patents

インク組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、インクジェット記録装置に用いられるイン
ク組成物に関する。さらに詳しくは、常温より高温の状
態の下でインクジェット記録が行われるインク組成物に
関する。
[従来の技術] インクジェット記録は、記録時における静粛性と高速
印字性に優れている。従来よりインクジェット記録用の
インク組成物として、水等を基剤とした液体のインク組
成物が使われている。しかしながら、紙にしみこむこと
によって記録されることから、インクのしみこみ易い紙
への記録ではにじみを生じてしまい、記録ドットの周辺
が不鮮明で印字品質が低下するという欠点を有してい
る。この為、紙質に関係無く良好な印字品質を提供する
インク組成物として、米国特許4390369、4484948、4659
383号公報、特開昭55−54368、特開昭58−108271公報に
示す、常温で固体のホットメルト型インク組成物を用い
高温下で固体状インクを加熱溶融させて飛翔させ、記録
紙上で冷却固化し記録ドットを形成する方法が提案され
ている。
[発明が解決しようとする課題] 水等を基剤としたインク組成物においては、記憶紙の
紙質により良好な印字品質を得られるものから、甚だし
く劣悪な印字品質を示すものまで印字品質の紙質依存性
が大きく、また印字後のインク乾燥時間がかかる為、実
際に両者を満足するインク組成物は実現できていない。
また、従来からのホットメルトインク組成物において
は、記録紙への対応性、印字後の乾燥性について良好な
ものの、記録時にインク滴が記録紙紙面上において急冷
固化するため記録紙表面からインクドットが盛り上がっ
ており、また記録紙との定着強度が低く、外部からの摩
擦、熱、圧力等によるはがれ落ち、インク像の汚れ等を
起こしてしまうという課題を抱えている。
本発明は、これら上記の問題点を解決するものであ
り、その目的とするところは、記録紙の紙質に関係なく
インクドット高さが低く、定着強度が良好で高い印字品
質が得られるインク組成物を提供することである。
[課題を解決するための手段] 本発明のインク組成物は、常温(摂氏15〜30℃の温度
を言う)より高い温度でインクジェット記録装置より吐
出されるベヒクルと色材からなるインク組成物におい
て、ポリオールベンゾエート類から選ばれた過冷却剤を
0.1〜50重量%含有したことを特徴とする。
また、前記ポリオールベンゾエート類が、グリセリル
トリベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエ
ート、トリメチロールエタントリベンゾエート、ペンタ
エリスリトールテトラベンゾエートであることを特徴と
する。
また、前記ベヒクルが、常温より高い融点又は流動点
を示す固体又は半固体であることを特徴とする。さら
に、前記ベヒクルが、常温で液体との混合物であること
を特徴とする。
本発明のインク組成物における過冷却剤の割合は、0.
1〜50.0重量パーセントの間で含まれていることが好ま
しく、更には高応答性等に適応したインクの粘度適性を
考慮すると、3.0〜22.0重量パーセントの間で含まれて
いることが好ましい。仮に、過冷却剤の含有量が50.0重
量パーセントを越えた場合、記録紙表面に形成されたイ
ンクドットは固化が遅れ耐擦性に非常に乏しくなってし
まい、更には印字後のインク像のにじみをも引き起こし
てしまう。また、過冷却剤の含有量が0.1重量パーセン
トより少ない場合は、印字後の記録紙とインクとの定着
強度を向上させることはできずに、従来からの課題を誘
発してしまうことになる。
[作用] 本発明のインク組成物は、均一溶液状態でインクジェ
ット記録装置により吐出され記録紙上に印字された後、
インク組成物の一部であるポリオールベンゾエート類に
より、記録紙表面でのインクの固化時間にわずかな遅れ
が生じ、その表面上でインク滴が平たくつぶれ、形成さ
れたドットの一部が記録紙表面近傍の繊維中に浸透した
状態で固化するため、耐擦過性があり、且つ高密着性、
高印字品質を得ることができる。これは、ポリオールベ
ンゾエート類が、記録紙表面でインクが過冷却となるよ
う過冷却剤として作用しているからである。またこれと
同時に、インク組成物の一部であるポリオールベンゾエ
ート類により、色材のベヒクル中への溶解度を上げるこ
とができ、記録物の印字濃度を高くすることができる。
[実施例] 以下に実施例をあげて本発明を説明する。
本発明のインク組成物は、既知の方法により調製する
ことができ、ベヒクル成分、色材及び過冷却剤とを混合
し、ベヒクル成分の融点以上、好ましくは80℃以上に加
熱溶融後、その温度で加熱撹はんした後均一溶解組成物
とし、必要に応じて高温溶融状態の下でフィルターを通
して濾過した後冷却して得ることができる。インク物性
としては動作時の温度をおよそ80℃から120℃に設定し
た場合の温度におけるインク粘度は、ヘッドの高速応答
下におけるインク供給安定性及びインク滴形成飛翔安定
性より15.0ミリパスカルセカンド(mPa,s)以下が必要
であり、更により高応答性実現の為(2〜3KHz以上の応
答性実現の為)には7.0mPa,sから2.0mPa,sがより好まし
い。表面張力はノズル近傍でのメニスカス形成に影響し
50ミリニュウトンパアメートル(mN/m)以下が好まし
く、更にまた、印字後の記録紙上におけるインクの過冷
却状態におけるドット平坦化、浸透性促進の為に、35mN
/m以下がより好ましい。
常温より高い融点又は流動点を示す固体又は半固体の
ベヒクルとして、例えば、カルナバワックス、パラフィ
ン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワック
ス、合成ワックス、脂肪酸、脂肪酸アミド、芳香族アミ
ド、芳香族スルホンアミド等から選ばれた固体状のワッ
クス、半固体状のペトロラタム、ワセリン、ラノリンワ
ックスがあり、又常温で液体のベヒクルとしては、液体
の流動パラフィンが選ばれる。
具体的には、 (パラフィン) 炭素数が23から32までのn−パラフィン及びイソ型パ
ラフィン (パラフィンワックス) No,115,120,125,130,135,140,150,155 エイチエヌピー(HNP)−3,10,11 エスピー(SP)−0145,1035,3040,3035,0110 (マイクロクリスタリンワックス、その他) ハイ−ミック−2045,1045 カートワックス−3025,3735,3640(以上、日本精蝋
(株)製) (合成ワックス) ステアロン,デカンジオール,モノステアリン,ドデカ
ンジオール (脂肪酸) ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、
ブラシジン酸 (脂肪酸アミド) エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミ
ド、パルチミン酸アミド、ベヘン酸アミドブラシジン酸
アミド、オレイン酸アミド、アマイドHT−P,C(ライオ
ン(株)製)脂肪酸アマイド−S,T,P,O(花王(株)
製) (芳香族アミド、芳香族スルホンアミド) パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホン
アミド (流動パラフィン) ハイホワイト−70,350(日本石油(株)製) シルコールP−55((株)松村石油研究所製)等であ
る。また、これらは場合によっては二種類以上を混合し
ても良い。
また、過冷却剤としてのポリオールベンゾエート類
は、印字物としての車中等の高温環境下におけるブロッ
キング現象(インクのにじみ、積層物とのはりつき等)
を避けるための保存性等を考慮すると、最低50℃以上の
融点を有する物から選択され、具体的にはグリセリルト
リベンゾエート(融点(mp)約71℃、トリメチロールエ
タントリベンゾエート(mp:約81℃)、ペンタエリスリ
トールテトラベンゾエート(mp:約99℃)が選ばれる。
また、色材としては耐熱性、耐水性を有した油溶染料
が選ばれる。
具体的には、 [ブラック染料] C.I.ソルベントブラック3,22,23 C.I.アシッドブラック123 ニグロシン スミプラストブラック−G(BKG),3BA (Sumiplast BlackG(BKG),3BA)(住友化学工業
(株)製) スミゾールブラック−ARゾル (Sumisol Black AR sol.)(同上) ジェイアイブラック DT (J.I.Black DT)(同上) [イエロー染料] C.I.ソルベントイエロー19,21,61,80 アイゼンスピロンイエローGRHスペシャル (Aizen Spilon Yellow GRH special)(保土谷化学工
業(株)製) スミプラストイエローGG,FC (Sumiplast Yellow GG,FC)(住友化学工業(株)製) [レッド,マゼンタ染料] C.I.ソルベントレッド8,49,81,82,83,84,100,109,121 C.I.デイスパースレッド9 スミプラストレッド−AS,3B,FB (Sumiplast Red AS,3B,FB)(住友化学工業(株)製) アイゼンスピロンレッド−GEHスペシャル (Aizen Spilon Red GEH special)(保土谷化学工業
(株)製) [ブルー,シアン染料] C.I.ソルベントブルー11,12,25,36,55,73 スミプラストブルー3R,BG (Sumiplast Blue 3R,BG)(住友化学工業(株)製) スミプラストターコイズブルーB (Sumiplast Turquoise Blue B)(同上) [補色用染料] アイゼンスピロンバイオレットC−RH (Aizen Spilon Violet C−RH)(保土谷化学工業
(株)製) アイゼンスピロンイエローC−GNHニュー (Aizen spilon Yellow C−GNHnew)(同上) アイゼンメチルバイオレットベース (Aizen Methyl Violet Base)(同上) アイゼンクリスタルバイオレットパウダー (Aizen Crystal Violet powder)(同上) アイゼンメチルバイレットピュアスペシャル (Aizen Methyl Violet pure special)(同上) アイゼンビクトリアピュアブルーBOHコンク (Aizen Victoria pure Blue BOH conc.)(同上) アイゼングリーンC−GH (Aizen Green C−GH)(同上) アイゼンエスピーテーオレンジ6 (Aizen S,P,T Orange 6)(同上) 等である。
色材の添加量は10.0重量パーセント以下が好ましく、
ヘッドの高応答下における飛翔安定性及び粘度適正等を
考えると、より好ましくは5.0重量パーセント以下であ
る。また、色合いの調整等で二種以上の染料を適宜混合
して用いることができる。
また、本発明のインク組成物は常温より高温の状態で
印字される為、熱等による組成物の酸化を防ぐ為に酸化
防止剤を適宜必要に応じて添加することができる。具体
的には、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、イルガ
ノックス1010,1035,1035FF,1076(日本チバガイギー
(株)製)等である。
次に上記構成物からの具体例を示す。
実施例 1 組成 重量パーセント 色材:C,I,ソルベントブラック23 2.0 ベヒクル:エイチエヌピー3 77.2 :ステアリン酸アミド 9.7 過冷却剤:グリセリルトリベンゾエー ト 11.0 酸化防止剤:ジブチルヒドロキシトル エン 0.1 上記成分の混合物を120℃で融解し、3時間加熱撹は
ん混合後、高温溶融状態のままポアサイズ5ミクロンの
テフロン製メンブレンフィルターを用いて加圧濾過し、
温度110℃に於ける粘度が6.0mPa,s、表面張力が30.0mN/
mのインク組成物を得た。
次に、加熱溶融インク対応の公知のインクオンデマン
ド型インクジェットヘッドを100℃に保ち、これに実施
例1において示したインク組成物を充填し、一般上質
紙、ボンド紙、PPC紙等に対してビットイメージ印字、
文字印字等を行った後、A1〜A3の評価を行ったところ良
好な結果を得た。
(A1)印字耐擦性:各種記録紙に対しての印字後、印字
面をティッシュペーパーで擦ることによる汚れの発生の
有無を印字後の時間経過によって評価し、 ・10秒後発生無し...好適(◎) ・20〜30秒後発生無し...適(○) ・30秒以上経過後発生有り...不適(×) によって分類し評価したところ、紙質による差は若干あ
るものの全て「適」以上であった。
(A2)印字物ブロッキング性:50℃高温下において記録
紙面上に白紙の記録紙を重ね、その上から加圧した状態
で24時間放置した後、記録紙面におけるインクのにじ
み、重ねた記録紙へのインク転写の有無を調べ、 ・インクにじみ、インク転写無し...適(○) ・インクにじみ、インク転写有り...不適(×) によって分類評価したところ、放置前のドット径はその
ままでインクにじみの発生は無く、またインクの転写も
確認されなかった。
(A3)インクドット平坦性:記録紙上のインクドットの
高さ測定と記録紙との密着性を評価し、 ・ドット高さが10ミクロン以下で密着性も十分にある・
・・好適(◎) ・ドット高さが10ミクロンから20ミクロンで密着性も十
分にある・・・適(○) ・ドット高さが20ミクロンより高く密着性も不十分・・
・不適(×) によって分類し評価したところ、全て「適」以上であっ
た。3つの評価結果からドットの再現性、耐擦性の良好
な印字物が得られた。
実施例2 実施例1と同様の方法で第1表:2−1から2−10に示
す組成でインク組成物を得た。これらは、上記ベヒクル
の具体例を示した物による様々な組合せについて過冷却
剤の添加量、種類を変えて示した物である。このなかで
実施例2−3、2−7、2−11においては用いたベヒク
ルの主成分が常温下で半固体或は液体の為、過冷却剤と
の相乗効果で色材成分を記録紙表面に残して選択的に紙
中に浸透する効果を示した。
実施例2についても実施例1と同様にA1〜A3の評価を
行ったところ第2表に示す結果が得られた。
比較例 実施例1と同様の方法で比較例として第1表:C−1か
らC−3に示す組成のインク組成物を調製した。
これら比較例についても実施例1と同様にA1〜A3につ
いての評価を行ったところ第2表並びに以下に示す結果
が得られた。
C−1:ベヒクルの殆どを過冷却剤にした後、インク溶融
後の冷却固化が著しく悪化し、印字耐擦性(評価A1)に
おいて、ドットの固化が殆ど認められず、印字面にニジ
ミの発生がみられた。
C−2:過冷却財を60wt%添加したため印字耐擦性(評価
A1)において、印字ドットの記録紙表面での固化が120
秒以上かかり、またブロッキング性(評価A2)の評価で
は不適であった。
C−3:過冷却剤添加量が0.05wt%のため印字時のインク
ドットの平坦化が起こらず、インク平坦性(評価A3)に
おいて、印字ドットはすべて記録紙表面でのみ固化して
おり紙との定着性が不完全で、印字表面を擦ることによ
り印字ドットははがれ落ち不適であった。
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
[発明の効果] 以上述べたように、常温より高温の状態の下でインク
ジェット記録装置から吐出される、ベヒクルと色材から
成るインク組成物において、ポリオールベンゾエート類
から選ばれた過冷却剤を0.1〜50.5重量パーセントの間
で含むことを特徴とすることにより記録紙の紙質に関係
無く定着強度が高く耐擦性、ドット再現性の良い良好な
印字が得られるという効果を有している。また、本発明
に使用の過冷却剤を用いることにより色材のベヒクル中
への溶解度を上げることができ記録物の印字濃度を高く
することができるという格別な効果を有している。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】常温より高い温度でインクジェット記録装
    置より吐出されるベヒクルと色材からなるインク組成物
    において、ポリオールベンゾエート類を0.1〜50重量%
    含有したことを特徴とするインク組成物。
  2. 【請求項2】前記ポリオールベンゾエート類が、グリセ
    リルトリベンゾエート、トリメチロールエタントリベン
    ゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、ペ
    ンタエリスリトールテトラベンゾエートであることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項記載のインク組成物。
  3. 【請求項3】前記ベヒクルが、常温より高い融点又は流
    動点を示す固体又は半固体であることを特徴とする特許
    請求の範囲第1項記載のインク組成物。
  4. 【請求項4】前記ベヒクルが、常温で液体との混合物で
    あることを特徴とする特許請求の範囲第3項記載のイン
    ク組成物。
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