JP2652709B2 - センターディファレンシャル装置付4輪駆動車 - Google Patents

センターディファレンシャル装置付4輪駆動車

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、複合プラネタリギヤ式センターディファレ
ンシャル装置を備えた4輪駆動車に関し、詳しくは、セ
ンターディファレンシャル装置のピニオンの等配置構
造,油圧多板クラッチとの結合構造に関する。
〔従来の技術〕
一般に4輪駆動車の前後輪の基準トルク配分は、駆動
力が最大に発揮されるように加速時の重心移動を加味し
た動的重量配分により比例して設定される。このため、
フロントエンジン・フロントドライブ(FF)ベースでは
前輪トルクTFと後輪トルクTRとが、TF:TR≒50:50に設定
され、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)ベースで
はTF:TR≒40:60に設定される。またセンターディファレ
ンシャル装置は、これらの基準トルク配分の状態により
等分の場合はベベルギヤ式が、不等分の場合はシンプル
プラネタリギヤ式等が選択される。
ここでトルク配分が等分なセンターディファレンシャ
ル付4輪駆動車では、悪路での走破性が最大に発揮され
る。しかし、低μ路等の悪路で容易にスリップが発生
し、このスリップ発生時にセンターディファレンシャル
装置に差動制限機能を追加すると、駆動力は確かに向上
するが、操縦性は特に向上するわけでなく、4輪のスリ
ップ発生条件が同一のため、高速旋回時等において4輪
が同時にスリップして操縦困難になる場合もある。そこ
でかかるスリップ状態でも操縦安定性を確保するには、
シンプルプラネタリギヤ式センターディファレンシャル
装置を使用し、後輪偏重に基準トルク配分を設定する。
これにより、常に後輪を先にスリップさせ、ドライバの
アクセル操作で後輪にパワースライドを発生させ、車両
のテールを流しながら操縦する。
そこで従来、上記プラネタリギヤ式センターディファ
レンシャル装置を備えた4輪駆動車に関しては、例えば
特開昭63−176728号公報の先行技術がある。ここで、シ
ンプルプラネタリギヤのセンターディファレンシャル装
置を有し、変速出力をキャリヤに入力し、サンギヤとリ
ングギヤの一方から前輪に、他方から後輪にそれぞれト
ルクを、サンギヤとリングギヤのピッチ円径の違いに応
じ不等配分して分配する。また、サンギヤ,リングギヤ
およびキャリヤのいずれかの2つの要素の間に差動制限
用油圧多板クラッチを配設することが示されている。
また、ダブルピニオン式プラネタリギヤのセンターデ
ィファレンシャル装置として、例えばU.S.PAT.4,523,49
5号の先行技術がある。ここで、ファイナルギヤをキャ
リヤとして利用して側面のリム部の穴にピニオン軸を挿
入して取付け、このピニオン軸で一体的に2つのピニオ
ンを支持する。そして一方のピニオンにフロントディフ
ァレンシャル装置のディファレンシャルケースのサンギ
ヤを噛合わせ、他方のピニオンにリヤ側のギヤのサンギ
ヤを噛合わせて伝動構成することが示されている。
〔発明が解決しようとする課題〕 ところで、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)や
フロントエンジン・フロントドライブ(FF)の4輪駆動
車は、変速機の後方にセンターディファレンシャル装置
が配置されていて、車室内の居住性,周辺の艤装設計の
自由度に影響を与える。このため、センターディファレ
ンシャル装置のプラネタリギヤは極力コンパクト化する
必要があり、この実現にはピニオンを複数個(例えば3
〜4個)配置して歯面の荷重を分散するのが一般的であ
る。
ここで、複数個のピニオンを有するプラネタリギヤの
噛合い条件,歯数設定について述べる。先行技術のシン
プルプラネタリギヤ式において、ピニオン個数をn,リン
グギヤ歯数をZR,サンギヤ歯数をZsとすると、 m=(ZR+Zs)/n (mは任意の整数) を満足しないとピニオンの等配置の組立は不可能にな
る。
また先行技術のダブルピニオン式では、ピニオン組数
をn,2つのサンギヤの歯数をZs1,Zs2とすると、 m=(Zs1+Zs2)/n (mは任意の整数) を満足しないとダブルピニオンの等配置の組立は不可能
になる。
ところで、上述の噛合い条件式を満足したとしても、
先行技術の場合はいずれも歯車要素をすべて隣り合わせ
に噛合わせることになるから、モジュール,圧力角,捩
れ角等の基本諸元を一致させる必要があり、歯車諸元設
定の自由度がない。
また、シンプルプラネタリギヤ式では、センターディ
ファレンシャル装置による前後輪基準トルク配分比が、
サンギヤとリングギヤとの噛合いピッチ円径比で決定さ
れ、ダブルピニオン式では、2つのサンギヤの噛合いピ
ッチ円径比で決定される。従って、基準トルク配分比を
広い範囲に設定するには、サンギヤのサイズ減少,リン
グギヤのサイズ増大をする必要があり、またダブルピニ
オン式では2つのサンギヤのサイズを一方は減少,他方
は増大する必要があるが、複数軸構造,小型化による車
室内スペース確保等の制約を受ける。このため、上述の
噛合い条件を満足して基準トルク配分を広範囲に設定す
ることは難しい。
更に、上述の噛合い条件を無視し基準トルク配分比を
重視して歯数を設定すると、必然的にピニオンは不等配
置になって各ピニオンの位相がずれ、歯車製作,組立作
業性が著しく悪化する。また、プラネタリギヤ全体の平
衡が崩れ、高速回転中にアンバランスマスによる軸受の
耐久性の低下,駆動系の振動騒音を招く。
続いて、先行技術のダブルピニオン式の構造は、ファ
イナルギヤの部分の片側にセンターディファレンシャル
装置を組合わせることで小型化されるが、ディファレン
シャルロック装置はそれから離れた場所に各別に配置さ
れるため、全体として小型化されているとは言えない。
また、ファイナルギヤはセンターディファレンシャル装
置の組合わせにより片持軸支の構造により、このため変
速機のギヤ比で増大されたトルクが伝達する際にファイ
ナルギヤの倒れが生じ易い。そこで、ファイナルギヤの
強度,寿命,騒音,軸受の耐久性の点で不利になる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目
的とするところは、前後輪の基準トルク配分を広範囲に
設定することが可能な複合プラネタリギヤ式センターデ
ィファレンシャル装置において、複数個のピニオンの等
配置組立が可能に歯数,歯車諸元を設定する。
また、複合プラネタリギヤ式センターディファレンシ
ャル装置とその差動制限用トルク配分装置の全体の小型
化を図り、耐久性,信頼性を向上することが可能なセン
ターディファレンシャル装置付4輪駆動車を提供するこ
とにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明のセンターディファ
レンシャル装置付4輪駆動車は、変速機出力軸に前輪側
伝達要素,後輪側伝達要素が同軸上に配置され、これら
3者の間にセンターディファレンシャル装置が配置され
るセンターディファレンシャル付4輪駆動車において、
上記センターディファレンシャル装置を、第1,第2のサ
ンギヤと、歯数が同一で歯車諸元のうち少なくともモジ
ュールが異なる第1,第2のピニオンとキャリヤとで構成
し、上記第1のサンギヤまたはキャリヤを上記変速機出
力軸に連結し、上記第2のサンギヤとキャリヤまたは上
記第1のサンギヤと第2のサンギヤとを上記前,後輪側
伝達要素のいずれかに連結し、上記第1,第2のサンギヤ
の歯数の差が、一体形成された上記第1,第2のピニオン
の個数の整数倍になるように定められ、上記第1,第2の
ピニオンが上記第1,第2のサンギヤの周囲に等配分で配
置して噛合い構成することを特徴とする。
〔作用〕
上記構成に基づき、4輪駆動車のセンターディファレ
ンシャル装置は、第1,第2のサンギヤとキャリヤとに支
持されてこれらのサンギヤに噛合う基準円半径の異なる
第1,第2のピニオンの4つの歯車要素の噛合いピッチ円
半径によりトルク配分が決定され、前後輪の基準トルク
配分をコンパクトな構造で、比較的広範囲に定めること
が可能となる。
また、歯数が同一で歯車諸元のうち少なくともモジュ
ールが異なる第1,第2のピニオンからなり、第1,第2の
サンギヤの歯数の差が、一体形成された上記第1,第2の
ピニオンの個数の整数倍になるように定めることによっ
て、モジュールの違いによって第1,第2のピニオンの基
準円半径を異ならしめ、前後輪の基準トルク配分を設定
でき、しかも、第1,第2のピニオンは複数個、第1,第2
のサンギヤの周囲に等配置できることで、回転バランス
のよいセンターディファレンシャル装置とすることがで
きる。
〔実 施 例〕
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図において、本発明が適用される縦置きトランス
アクスル型の駆動系について述べると、トルクコンバー
タケース1,ディファレンシャルケース2の後部にトラン
スミッションケース3が接合し、トランスミッションケ
ース3の後部にトランスファーケース4が接合し、トラ
ンスミッションケース3の下部にはオイルパン5が取付
けれれる。符号10はエンジンであり、このエンジン10の
クランク軸11がトルクコンバータケース1内部のロック
アップクラッチ12を備えたトルクコンバータ13に連結
し、トルクコンバータ13からの入力軸14がトランスミッ
ションケース3内部の自動変速機30に入力する。自動変
速機30からの出力軸15は入力軸14と同軸上に出力し、こ
の出力軸15がトランスファーケース4内部のセンターデ
ィファレンシャル装置50に同軸上に連結する。トランス
ミッションケース3内部において入,出力軸14,15に対
しフロントドライブ軸16が平行配置され、このフロント
ドライブ軸16の後端はセンターディファレンシャル装置
50に一対のリダクションギヤ17,18を介して連結し、フ
ロントドライブ軸16の前端はディファレンシャルケース
2内部のフロントディファレンシャル装置19を介して前
輪に伝動構成される。
一方、センターディファレンシャル装置50からはリヤ
ドライブ軸20が入力し、このリヤドライブ軸20はプロペ
ラ軸21,リヤディファレンシャル装置22等を介して後輪
に伝動構成される。そしてセンターディファレンシャル
装置50には、湿式多板の油圧多板クラッチ60が設けられ
る。
自動変速機30は、フロントプラネタリギヤ31,リヤプ
ラネタリギヤ32を有し、これらのフロントプラネタリギ
ヤ31,リヤプラネタリギヤ32に対し、ハイクラッチ33,リ
バースクラッチ34,ブレーキバンド35,フォワードクラッ
チ36,オーバランニングクラッチ37,ローアンドリバース
クラッチ38,ワンウエイクラッチ39,40が設けられ、これ
らを選択的に係合することで前進4段後進1段の変速段
を得る。また自動変速機30の前方には、オイルポンプ41
がトルクコンバータのインペラスリーブ13aとドライブ
軸42とを連結して常に駆動するように設けられ、オイル
パン5にはコントロールバルブボデー43が収容される。
そしてコントロールバルブボデー43により上述の各摩擦
要素に給排油し、選択的に係合するようになっている。
第2図において、センターディファレンシャル装置50
の部分について述べる。
先ず、変速機出力軸15とリヤドライブ軸20は、ブッシ
ュ23,スラストベアリング24を介して同軸上に回転自在
に嵌合し、リダクションギヤ17も、出力軸15にブッシュ
23とスラストベアリング24とを介して同軸上に嵌合して
おり、これら3者の間にセンターディファレンシャル装
置50が同軸上に設けられる。センターディファレンシャ
ル装置50は複合プラネタリギヤ式であり、出力軸15に形
成される第1のサンギヤ51,それに噛合う第1のピニオ
ン52,リヤドライブ軸20に形成される第2のサンギヤ53,
それに噛合う第2のピニオン54を有する。第1,第2のピ
ニオン52,54は一体化しており、リダクションギヤ17に
一体形成されるキャリヤ55のピニオン軸56にニードルベ
アリング26を介して軸支される。そしてリダクションギ
ヤ17を備えたキャリヤ55の前後がボールベアリング25で
軸支されている。
こうして、変速機出力軸15の動力が第1のサンギヤ51
に入力し、第1,第2のピニオン52,54を介してキャリヤ5
5と第2のサンギヤ53とに所定の配分比でトルクが伝達
される。そしてかかるトルクの伝達時に、第1,第2のピ
ニオン52,54の自転と公転とにより、キャリヤ55と第2
のサンギヤ53との回転差を吸収するものである。
ここで、第4図(a)の略図を用いてセンターディフ
ァレンシャル装置50のトルク配分について詳記する。
第1のサンギヤ51の入力トルクをTi、その噛合いピッ
チ半径をrs1、キャリヤ55のフロント側トルクをTF、第
1,第2のピニオン52,54の噛合いピッチ半径をrp1,rp2
第2のサンギヤ53のリヤ側トルクをTR、その噛合いピッ
チ半径をrp2とすると、 Ti=TF+TR (1) rs1+rp1=rs2+rp2 (2) が成立する。また第1のサンギヤ51と第1のピニオン52
との噛合点に作用する接線方向荷重Pは、キャリヤ55に
作用する接線方向荷重P1と、第2のサンギヤ53と第2の
ピニオン54との噛合点に作用する接線方向荷重P2との和
に等しい。
P=Ti/rs1 P1=TF/(rs1+rp1) P2=TR/rs2 Ti/rs1={(TF/(rs1+rp1)}+TR/sr2 (3) (1),(2)式を(3)式に代入して整理すると、 TF=(1−rp1・rs2/rs1・rp2)・Ti (4a) TR=(rp1・rs2/rs1・rp2)・Ti (4b) となる。このことから、第1,第2のサンギヤ51,53と第
1,第2のピニオン52,54との噛合いピッチ半径により、
フロント側トルクTFおよびリヤ側トルクTRの基準トルク
配分を自由に設定し得ることがわかる。
次いで、第4図(b),(c)の略図を用いて複数個
のピニオンを等配置組立可能な噛合い条件について詳記
する。
第4図(b)において、第1のサンギヤ51を固定し、
第1,第2のピニオン52,54を時計方向にθだけ回転した
場合に、第2のサンギヤ53が反時計方向にα回転したと
すると、次式が成立する。
θ=rs2・rp1・α/(rs1・rp1−rs2・rp1) (5) また第1のサンギヤ51の歯数をZs1,第2のサンギヤ53
の歯数をZs2,第1のピニオン52の歯数をZp1,第2のピニ
オン54の歯数をZp2とすると、上式は次のように歯数で
置換えられる。
θ=Zs2・Zp1・α/(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1) (6) 今、第2のサンギヤ53が円ピッチ角度360/Zs2だけ基
準線から回転したとすると、 θ=Zp1・360/(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1) (7) が成立する。
第4図(c)において、今度は第2のサンギヤ53を固
定し、同様に第1,第2のピニオン52,54をθだけ回転し
た場合に、第1のサンギヤ51が時計方向にβ回転したと
すると、次式が成立する。
θ=−Zs1・Zp2・β/(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1) (8) β=360/Zs1を上式に代入すると、 θ=−Zp2・360/(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1) (9) が成立する。
ここで、第1,第2のピニオン52,54の相互位置関係と
同一したN個の一体的なものを等配置する場合の噛合い
条件について述べると、1番目の1体ピニオンと2番目
のピニオンとの相互角度は、360/Nである。従って、上
述の(7),(9)式の整数倍がこの相互角度に等しけ
ればよく、次式が成立する。
m=(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1)/Zp1・N =−(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1)/Zp2・N (10) (mは任意の整数) 従って、各歯数を上述式を満すように定めればよい
が、Zp1=Zp2とすると、次のように簡素化される。
m=|(Zs1−Zs2)/N| (11) つまり、第1,第2のサンギヤ51,53の歯数差、1体式
の第1,第2のピニオン52,54の個数の整数倍であればよ
い。従って第1のピニオン52のモジュールmと第2のピ
ニオン54のモジュールm′とを、m′>mの関係にすれ
ば、Zp1=Zp2でもrp1<rp2となる。
ここで、Zs1=24,Zp1=Zp2=18,Zs2=15,N=3とす
る。また、Zs1とZp1のモジュール=1.5,Zp2とZs2のモジ
ュール=1.75の転位はすば歯車で、rs1=22.8mm,rp1=1
7.1mm,rp2=21.8mm,rs2=18.1mmとすると、(11)式は
次のようになる。
m=(24−15)/3=3 従って、同一位相の第1,第2のピニオン52,54は、3
個等配置可能となる。
また、(4a),(4b)式にも数値を代入して前後輪基
準トルク配分を算出すると、 TF=0.377Ti,TR=0.623Ti となり、TF:TR≒38:63で充分に後輪偏重の基準トルク配
分に設定し得る。
第2図と第3図(a)ないし(d)において、油圧多
板クラッチ60およびセンターデァファレンシャル装置50
との結合構造について述べる。
先ず、センターデァファレンシャル装置50のキャリヤ
55は、リダクションギヤ17から弯曲した3つのアーム55
aが円周上等間隔で突出して成り、アーム55aの先端には
位置決め用の突当て面55bが段付きに形成される。ま
た、リダクションギヤ17においてアーム55aと略同一円
周上には、3つのピニオン軸孔17aが等間隔でアーム55a
と交互に貫通して配置される。
一方、油圧多板クラッチ60は、ドラム61が外周部61a
の一方に側壁61bを有する椀形を成し、側壁61bの中心の
内側にボス部61cが形成される。そして外周部61aと側壁
61bの部分の軸方向に、複数のドリブンプレート嵌合溝6
1dが等間隔で設けられ、側壁61bに長孔61eとピニオン軸
孔61fとが3個ずつ交互に等間隔で配置される。
そこで、リダクションギヤ17と油圧多板クラッチ60の
ドラム61とを芯合わせした状態で、キャリヤ55の各アー
ム55aをドラム側壁61bの長孔61eに突当て面55bを当接し
て挿入し、アーム55aと側壁61bとを例えば電子ビーム溶
接(符号Aで示す)して、一体結合される。また、リダ
クションギヤ17と側壁61bの各ピニオン軸孔17a,61fには
3本のピニオン軸56が等配置で挿入され、側壁61bのロ
ックピン圧入孔61gでピニオン軸56にロックピン57が圧
入されて抜け止めされる。そしてこのピニオン軸56に一
体的な3個の第1,第2のピニオン52,54が、ニードルベ
アリング26を介して取付けられ、第1,第2のピニオン5
2,54とリダクションギヤ17,側壁61bとの間にはワッシャ
58,58が介設される。
こうして、センターディファレンシャル装置50の3個
の第1,第2のピニオン52,54は、リダクションギヤ17と
油圧多板クラッチ60のドラム61とを利用してその間に等
配置で組付けられている。
油圧多板クラッチ60においてドラム61は、ボス部61c
をリヤドライブ軸20のベアリング25に嵌合して回転自在
に取付けられ、ハブ62はリヤドライブ軸20に一体的にス
プライン結合する。ここで、ドラム61側のリテーニング
プレート63,ドリブンプレート64は、外周に嵌合突起63
a,64aを有し、これら嵌合突起63a,64aをドラム61の嵌合
溝61dに嵌合して取付けられる。また、ドライブプレー
ト65は、内周にスプライン65aを有し、このスプライン6
5aでハブ62に結合して上記リテーニングプレート63,ド
リブンプレート64と交互に配置され、ドラム61の外周の
クリップ66により抜け止めされる。
一方、ハブ62の直後にはトランスファケース4のボス
部4aが設けられ、このボス部4aの内側のベアリング27に
よりリヤドライブ軸20が軸支され、トランスファケース
4とボス部4aとの間にピストン67が油圧室68を有して嵌
合される。ピストン67には、レリーズベアリング69を介
してリテーナ70がドブリンプレート64と対向するように
連結され、このリテーナ70も外周突起70aをドラム嵌合
溝61dに嵌合して案内される。更にトランスファケース
4のボス部4aには、スナップリング71によりリテーナ72
が取付けられ、このリテーナ72とピストン67との間にリ
ターンスプリング73が付勢される。
こうして油圧多板クラッチ60は、センターディファレ
ンシャル装置50の一方の出力要素のキャリヤ55と他方の
出力要素の第2のサンギヤ53との間に両持支持でバイパ
スして設けられる。そして油圧室68の油圧が零の場合
は、リターンスプリング73によりピストン67等が後退し
て各プレート63ないし65を分離し、クラッチトルクは生
じない。一方、油圧室68に油圧が生じると、ピストン6
7,ベアリング69と共にリテーナ70が移動して各プレート
63ないし65を押圧接触し、所定のクラッチトルクが生じ
てトルク移動および差動制限作用をする。
なお、変速機出力軸15,リヤドライブ軸20の中心の油
路80から小孔81を介してブッシュ23、スラストベアリン
グ24、第1,第2のサンギヤ51,53と第1,第2のピニオン5
2,54との噛合部、更には油圧他板クラッチ60のプレート
側に潤滑系路が設けられる。ここでキャリヤ55,ドラム6
1は、径方向外側に連通した構造であるから、オイルの
抜けがよくて良好に各部を潤滑する。
更に、リヤドライブ軸20にパルスギヤ82が取付けら
れ、パルスギヤ82に後輪回転数センサ83が近接対向して
設置され、後輪回転数を検出するようになっている。リ
ヤドライブ軸20の後端にはスリーブヨーク84がスプライ
ン結合し、スリーブヨーク84の部分でトランスファケー
ス4に対しブッシュ23を介して支持され、トランスファ
ケース4とスリーブヨーク84との間にオイルシール85が
介設されている。
次いで、このように構成された4輪駆動車の作用につ
いて述べる。
先ず、エンジン10の動力はトルクコンバータ13,入力
軸14を介して自動変速機30に入力し、この自動変速機30
で自動的に変速された変速動力が出力軸15からセンター
ディファレンシャル装置50の第1のサンギヤ51に入力す
る。ここで、センターディファレンシャル装置50の各歯
車要素の諸元により例えばTF:TR≒38:62に設定されてい
ることで、変速動力の38%のトルクがキャリヤ55と一体
になったリダクションギヤ17に、その62%のトルクが第
2のサンギヤ53に分配して出力される。
一方このとき、前,後輪回転数NF,NRおよび舵角に
よりスリップ率Sが算出されている。そこで乾燥路面で
S≧1のノンスリップ状態では、クラッチ圧が零に設定
され、油圧多板クラッチ60のオイルをドレンするように
動作するのであり、これにより油圧多板クラッチ60は解
放されてクラッチトルクが零になり、上述のセンターデ
ィファレンシャル装置50をフリーにする。
従って、キャリヤ55と一体になったリダクションギヤ
17に出力した38%のトルクは、そのままリダクションギ
ヤ18,フロントドライブ軸16,フロントディファレンシャ
ル装置19を介して前輪に伝達する。また、第2のサンギ
ヤ23に出力した62%のトルクは、リヤドライブ軸20,プ
ロペラ軸21,リヤディファレンシャル装置22を介して後
輪に伝達し、後輪偏重の4輪駆動走行となる。そしてこ
のトルク配分ではアンダーステア気味になることで、操
縦性が良好に確保される。また旋回時には、センターデ
ィファレンシャル装置50が前後輪の回転数差に応じて第
1,第2のピニオン52,54を自転,公転させて回転数等を
完全に吸収することになり、自由に旋回することが可能
になる。
次いで、滑り易い路面走行時には、後輪偏重のトルク
配分により常に後輪が先にスリップし、スリップ状態に
応じたスリップ率S1(S<1)が算出される。そしてこ
のスリップ率S1に応じたクラッチ圧が設定されて、油圧
多板クラッチ60に油圧が作用し、所定のクラッチトルク
Tcを生じる。そこでセンターディファレンシャル装置50
で、2つの出力要素のキャリヤ55と第2のサンギヤ53と
の間に油圧多板クラッチ60を経由した伝動系路がバイパ
スして形成されることになり、トルク配分の多い第2の
サンギヤ53からクラッチトルクTcの分だけキャリヤ55に
トルクがバイパスして伝達される。これによりトルク配
分は前輪寄りに変化し、後輪トルクは減じてスリップを
生じなくなり、走破性を増大すると共に操縦性も良好に
保つ。
そして上述のスリップ率Sが設定値SI以下になると、
油圧多板クラッチ60の油圧と共に差動制限トルクが最大
になって、センターディファレンシャル装置50のキャリ
ヤ55と第2のサンギヤ53とを直結する。このためセンタ
ーディファレンシャル装置50はデァファレンシャルロッ
クされ、前後輪の軸重配分に相当したトルク配分の直結
式4輪駆動走行になり、走破性が最大に発揮される。こ
うしてスリップ状態に応じ、それを回避すべく幅広く前
後輪へトルク配分制御されるのである。
以上、本発明の実施例について述べたが、自動変速機
に限定されない。また、フロントドライブ軸,フロント
ディファレンシャル装置を変速機ケースの外に出したパ
ワートレーン,フロント側への伝達機構がチェーンとス
プロケットの場合にも適用できる。
〔発明の効果〕
以上述べてきたように、本発明によれば、 センターディファレンシャル装置付4輪駆動車におい
て、複合プラネタリギヤ式センターディファレンシャル
装置の2つのピニオンから成る一体型ピニオンが複数
個、等配置で組立てられるので、回転中のアンバランス
マスが軽減し、ベアリングの耐久性,振動騒音が改善さ
れる。
さらに、2つのピニオンは同一位相であり、歯数と歯
車諸元とを設定することで、等配置に組立てられるの
で、プラネタギヤの組立性が向上し、歯車製作の容易
化,ピニオンの種類の減少が可能になる。
さらにまた、第1のサンギヤとピニオン,第2のサン
ギヤとピニオンの歯車諸元設定の自由度の増大により、
前後輪基準トルク配分を広い範囲に設定でき、操縦性,
走行性に最も適したトルク配分制御を行い得る。特に、
歯数が同一で歯車諸元のうち少なくともモジュールが異
なる第1,第2のピニオンからなり、第1,第2のサンギヤ
の歯数の差が、一体形成された上記第1,第2のピニオン
の個数の整数倍になるように定めることによって、モジ
ュールの違いによって第1,第2のピニオンの基準円半径
を異ならしめ、前後輪の基準トルク配分を設定でき、し
かも、第1,第2のピニオンは複数個、第1,第2のサンギ
ヤの周囲に等配置できることで、回転バランスのよいセ
ンターディファレンシャル装置とすることができる。
また、センターディファレンシャル装置のキャリヤ,
ピニオン軸は2つの出力要素のギヤとクラッチドラムと
の間に両持支持で結合されるので、強度的に有利で、耐
久性,信頼性が向上する。
またさらに、差動制限用油圧多板クラッチがセンター
ディファレンシャル装置の構成要素の一部を成して一体
的に結合されるので、軸方向の長大化を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のセンターディファレンシャル装置付4
輪駆動車の実施例の概略を示すスケルトン図、 第2図はセンターディファレンシャル装置と油圧多板ク
ラッチの部分の断面図、 第3図(a)はギヤ,キャリヤおよひクラッチドラムの
係合状態を示す断面図,第3図(b)は同右側面図,第
3図(c)はギヤ側の斜視図,第3図(d)はクラッチ
の各プレートの斜視図、 第4図(a)はセンターディファレンシャル装置による
トルク配分を説明する略図,第4図(b),(c)は複
数個のピニオンの等配置組立の噛合い条件を説明する略
図である。 15……出力軸、17……前輪伝達用リダクションギヤ、20
……後輪伝達用リヤドライブ軸、30……自動変速機、50
……センターディファレンシャル装置、51……第1のサ
ンギヤ、52……第1のピニオン、53……第2のサンギ
ヤ、54……第2のピニオン

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】変速機出力軸に前輪側伝達要素,後輪側伝
    達要素が同軸上に配置され、これら3者の間にセンター
    ディファレンシャル装置が配置されるセンターディファ
    レンシャル付4輪駆動車において、 上記センターディファレンシャル装置を、第1,第2のサ
    ンギヤと、歯数が同一で歯車諸元のうち少なくともモジ
    ュールが異なる第1,第2のピニオンとキャリヤとで構成
    し、 上記第1のサンギヤまたはキャリヤを上記変速機出力軸
    に連結し、上記第2のサンギヤとキャリヤまたは上記第
    1のサンギヤと第2のサンギヤとを上記前,後輪側伝達
    要素のいずれかに連結し、 上記第1,第2のサンギヤの歯数の差が、一体形成された
    上記第1,第2のピニオンの個数の整数倍になるように定
    められ、上記第1,第2のピニオンが上記第1,第2のサン
    ギヤの周囲に等配分で配置して噛合い構成することを特
    徴とするセンターディファレンシャル装置付4輪駆動
    車。
  2. 【請求項2】上記センターディファレンシャル装置は、
    トルク移動および差動制限する油圧多板クラッチを隣接
    して同軸上に有し、 上記油圧多板クラッチは、ドラムをキャリヤ側に、ハブ
    を第2のサンギヤ側に連結して設け、 上記センターディファレンシャル装置のキャリヤ,ピニ
    オンを支持するピニオン軸を、回転自在に支持される伝
    動部材とクラッチドラムとの間に一体結合して取付ける
    請求項1記載のセンターディファレンシャル装置付4輪
    駆動車。
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