JP2528005B2 - センタ―デイファレンシャル装置付4輪駆動車 - Google Patents

センタ―デイファレンシャル装置付4輪駆動車

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JP2528005B2 JP27459789A JP27459789A JP2528005B2 JP 2528005 B2 JP2528005 B2 JP 2528005B2 JP 27459789 A JP27459789 A JP 27459789A JP 27459789 A JP27459789 A JP 27459789A JP 2528005 B2 JP2528005 B2 JP 2528005B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、複合プラネタリギヤ式センターディファレ
ンシャル装置を備えた4輪駆動車に関し、詳しくは、複
数の基準トルク配分比を切換可能に構成したセンターデ
ィファレンシャル装置のピニオンの等配置構造,油圧多
板クラッチとの結合構造に関する。
〔従来の技術〕
一般に4駆動車の前後輪の基準トルク配分は、駆動力
が最大に発揮されるように加速時の重心移動を加味した
動的重量配分により比例して設定される。このため、フ
ロントエンジン・フロントドライブ(FF)ベースでは前
輪トルクTFと後輪トルクTRとが、TF:TR≒50:50に設
定され、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)ベース
ではTF:TR≒40:60に設定される。またセンターディフ
ァレンシャル装置は、これらの基準トルク配分の状態に
より等分の場合はベベルギヤ式が、不等分の場合はシン
プルプラネタリウム式等が選択される。
ここでトルク配分が等分なセンターディファレンシャ
ル付4輪駆動車では、悪路での走破性が最大に発揮され
る。しかし、低μ路等の悪路で容易にスリップが発生
し、このスリップ発生時にセンターディファレンシャル
装置に差動制限機能を追加すると、駆動力は確かに向上
するが、操縦性は特に向上するわけでなく、4輪のスリ
ップ発生条件が同一のため、高速旋回時において4輪が
同時にスリップして操縦困難になる場合もある。そこで
かかるスリップ状態でも操縦安定性を確保するには、シ
ンプルプラネタリギヤ式センターディファレンシャル装
置を使用し、後輪偏重に基準トルク配分を設定する。こ
れにより、常に後輪を先にスリップさせ、ドライバのア
クセル操作で後輪にパワースライドを発生させ、車両の
テールを流しながら操縦する。
そこで従来、上記プラネタリギヤ式センターディファ
レンシャル装置を備えた4輪駆動車に関しては、例えば
特開昭63−176728号公報の先行技術がある。ここで、シ
ンプルプラネタリギヤのセンターディファレンシャル装
置を有し、変速出力をキャリヤに入力し、サンギヤとリ
ングギヤの一方から前輪に、他方から後輪にそれぞれト
ルクを、サンギヤとリングギヤのピッチ円径の違いに応
じ不等配分して分配する。また、サンギヤ,リングギヤ
およびキャリヤのいずれかの2つの要素の間に差動制限
用油圧多板クラッチを配設することが示されている。
また、ダブルピニオン式プラネタリギヤのセンターデ
ィファレンシャル装置として、例えばU.S.PAT.4,523,49
5号の先行技術がある。ここで、ファイナルギヤをキャ
リヤとして利用して側面のリム部の穴にピニオン軸を挿
入して取付け、このピニオン軸で一体的に2つのピニオ
ンを支持する。そして一方のピニオンにフロントディフ
ァレンシャル装置のディファレンシャルケースのサンギ
ヤを噛合わせ、他方のピニオンにリヤ側のギヤのサンギ
ヤを噛合わせて伝動構成することが示されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)や
フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式をベー
スとする4輪駆動車は、変速機の後方にセンターディフ
ァレンシャル装置が配置されていて、車室内の居住性,
周辺の艤装設計の自由度に影響を与える。このため、セ
ンターディファレンシャル装置のプラネタリギヤは極力
コンパクト化する必要があり、この実現にはピニオンを
複数個(例えば3〜4個)配置して歯面の荷重を分散す
るのが一般的である。
ここで、複数個のピニオンを有するプラネタリギヤの
噛合い条件,歯数設定について述べる。先行技術のシン
プルプラネタリギヤ式において、ピニオン個数をn,リン
グギヤ歯数をZR,サンギヤ歯数をZsとすると、 m=(ZR+Zs)/n (mは任意の整数) を満足しないとピニオンの等配置の組立は不可能にな
る。
また先行技術のダブルピニオン式では、ピニオン組数
をn,2つのサンギヤの歯数をZs1,Zs2とすると、 m=(Zs1+Zs2)/n (mは任意の整数) を満足しないとダブルピニオの等配置の組立は不可能に
なる。
ところで、上述の噛合い条件式を満足したとしても、
先行技術の場合はいずれも歯車要素をすべて隣り合わせ
に噛合わせることになるから、モジュール,圧力角,捩
れ角等の基本諸元を一致させる必要があり、歯車諸元設
定の自由度がない。
また、シンプルプラネタリギヤ式では、センターディ
ファレンシャル装置による前後輪基準トルク配分比が、
サンギヤとリングギヤとの噛合いピッチ円径比で決定さ
れ、ダブルピニオン式では、2つのサンギヤの噛合いピ
ッチ円径比で決定される。従って、基準トルク配分比を
広い範囲に設定するには、サンギヤのサイズ減少,リン
グギヤのサイズ増大をする必要があり、またダブルピニ
オン式では2つのサンギヤのサイズを一方は減少,他方
は増大する必要があるが、複数軸構造,小型化による車
室内スペース確保等の制約を受ける。このため、上述の
噛合い条件を満足して基準トルク配分を広範囲に設定す
ることは難しい。
更に、上述の噛合い条件を無視し基準トルク配分比を
重視して歯数を設定すると、必然的にピニオンは不等配
置になって各ピニオンの位相がずれ、歯車製作,組立作
業が著しく悪化する。また、プラネタリギヤ全体の平衡
が崩れ、高速回転中にアンバランスマスによる軸受の耐
久性の低下,駆動性の振動騒音を招く。
一方、基準トルク配分比を少なくとも2つ有して必要
に応じて切換可能なものにするには、少なくとも2組の
シンプルプラネタリギヤ,少なくとも2組の切換用油圧
多板クラッチが必要になる。従って、トランスファ全体
が複雑かつ大型化し、車室内スペース確保の制約を大き
く受ける。
続いて、先行技術のダブルピニオン式の構造は、ファ
イナルギヤの部分の片側にセンターディファレンシャル
装置を組合わせることで小型化されるが、ディファレン
シャルロック装置はそれから離れた場所に各別に配置さ
れるため、全体として小型化されているとは言えない。
また、ファイナルギヤはセンターディファレンシャル装
置の組合わせにより片持軸支の構造になり、このため変
速機のギヤ比で増大されたトルクが伝達する際にファイ
ナルギヤの倒れが生じやすい。そこで、ファイナルギヤ
の強度,寿命,騒音,軸受の耐久性の点で不利になる。
また、このダブルピニオン式でも2つ以上の基準トル
ク配分比を得るには、シンプルプラネタリギヤ式を採用
するよりもギヤ構造,切換用油圧多板クラッチの配置が
複雑化し、トランスファの大型化が著しくなる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目
的とするところは、前後輪の基準トルク配分比を2つ以
上有して切換可能なセンターディファレンシャル装置,
油圧クラッチ装置をコンパクトに構成し、耐久性,信頼
性を向上する。
また、複数個のピニオンの等配置組立が可能に歯数,
歯車諸元を設定して、組立性等の向上を図ることが可能
なセンターディファレンシャル装置付4輪駆動車を提供
することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明のセンターディファ
レンシャル装置付4輪駆動車は、変速機出力軸に前輪側
伝達要素,後輪側伝達要素が同軸上に配置され、これら
3者の間にセンターディファレンシャル装置が配置され
る4輪駆動車において、上記センターディファレンシャ
ル装置を、少なくとも第1,第2,第3のサンギヤと、一体
形成される少なくとも第1,第2,第3のピニオンと、キャ
リヤとで構成し、上記第1のサンギヤを上記変速機出力
軸に連結し、上記第2,第3のサンギヤとキャリヤを上記
前,後輪側伝達要素のいずれかに連結し、上記第1,第2,
第3のピニオンを同一位相で複数個、上記第1,第2,第3
のサンギヤの周囲に等配分で配置して噛合い構成するも
のである。
〔作用〕
上記構成に基づき、4輪駆動車のセンターディファレ
ンシャル装置は、少なくとも第1,第2,第3のサンギヤと
キャリヤとに支持されてこれらのサンギヤに噛合う第1,
第2,第3のピニオンの6つの歯車要素の噛合いピッチ円
半径によりトルク配分が決定され、前後輪の基準トルク
配分比をコンパクトな構造で、2つ以上定めることが可
能となる。
また、歯数,歯車諸元の設定により第1,第2,第3のピ
ニオンは複数個、第1,第2,第3のサンギヤの周囲に等配
置されることで、バランスよく回転するようになる。
〔実 施 例〕
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図において、本発明が適用される縦置きトランス
アクスル型の駆動系について述べると、トルクコンバー
タケース1,ディファレンシャルケース2の後部にトラン
スミッションケース3が接合し、トランスミッションケ
ース3の後部にトランスファケース4,インタミディエー
トケース6およびエクステンションケース7が順次接合
し、トランスミッションケース3の下部にはオイルパン
5が取付けられる。符号10はエンジンであり、このエン
ジン10のクランク軸11がトルクコンバータケース1内部
のロックアップクラッチ12を備えたトルクコンバータ13
に連結し、トルクコンバータ13からの入力軸14がトラン
スミッションケース3内部の自動変速機30に入力する。
自動変速機30からの出力軸15は入力軸14と同軸上に出力
し、この出力軸15がトランスファケース4内部のセンタ
ーディファレンシャル装置50に同軸上に連結する。トラ
ンスミッションケース3内部において入,出力軸14,15
に対しフロントドライブ軸16が平行配置され、このフロ
ントドライブ軸16の後端はセンターディファレンシャル
装置50に一対のリダクションギヤ17,18を介して連結
し、フロントドライブ軸16の前端はディファレンシャル
ケース2内部のフロントディファレンシャル装置19を介
して前輪に伝動構成される。
一方、センターディファレンシャル装置50の後部のイ
ンタミディエートケース6の内部には油圧クラッチ装置
70が設けられて、センターディファレンシャル装置50の
動作を切換制御して動力を出力し、更に差動制限作用す
るようになっている。そしてこの油圧クラッチ装置70か
らはリヤドライブ軸20が出力し、このリヤドライブ軸20
はプロペラ軸21,リヤディファレンシャル装置22等を介
して後輪に伝動構成される。
自動変速機30は、フロントプラネタリギヤ31,リヤプ
ラネラリギヤ32を有し、これらのフロントプラネタリギ
ヤ31,リヤプラネタリギヤ32に対し、ハイクラッチ33,リ
バースクラッチ34,ブレーキバンド35,フォワードクラッ
チ36,オーバランニングクラッチ37,ローアンドリバース
クラッチ38,ワンウエイクラッチ39,40が設けられ、これ
らを選択的に係合することで前進4段後進1段の変速段
を得る。また自動変速機30の前方には、オイルポンプ41
がトルクコンバータのインペラスリーブ13aとドライブ
軸42とを連結して常に駆動するように設けられ、オイル
パン5にはコントロールバルブボデー43が収容される。
そしてコントロールバルブボデー43により上述の各摩擦
要素に給排油し、選択的に係合するようになっている。
第2図において、センターディファレンシャル装置50
と油圧クラッチ装置70の部分について述べる。
センターディファレンシャル装置50は、変速機出力軸
15の端部の内側に第1の中間軸51がブッシュ23,スラス
トワッシャ24を介して同軸上に嵌合し、第1の中間軸51
の後部の外側に第2の中間軸52がブッシュ23を介して同
軸上に嵌合して配置される。そして出力軸15には入力サ
ンギヤ53が、第1,第2の中間軸51,52には第1,第2のリ
ヤサンギヤ54,55が形成され、これら入力サンギヤ53と
第1,第2のリヤサンギヤ54,55とが一直線上に近接して
配列される。また、ピニオン部材56には第1ないし第3
のピニオン57ないし59が形成され、第1のピニオン57は
入力サンギヤ53に、第2のピニオン58は第1のリヤサン
ギヤ54に、第3のピニオン59は第2のリヤサンギヤ55に
それぞれ噛合い、3列噛合い構造になっている。
一方、リダクションギヤ17は、変速機出力軸15の入力
サンギヤ53の直前方にブッシュ23,スラストベアリング2
5を介して回転自在に嵌合し、これらリダクションギヤ1
7,変速機出力軸15が、トランスミッションケース3に対
しボールベアリング26で支持される。そこでキャリヤ60
が、このリダクションギヤ17に一体化してピニオン領域
に装架され、キャリヤ60の後端の支持プレート61は、ベ
アリング27を介して第2の中間軸52に嵌合すると共に、
トランスファケース4に対しボールベアリング26で支持
されている。そしてキャリヤ60と一体のリダクションギ
ヤ17と支持プレート61との間に、ピニオン軸62が両持ち
で取付けられ、このピニオン軸62にピニオン部材56がニ
ードルベアリング28を介して回転自在に嵌合する。こう
してリングギヤが無く、リヤ側に2組のギヤ列を有する
複合プラネタリギヤを成す。
次いで、油圧クラッチ装置70について述べると、イン
タミディエートケース6の内部に基準トルク配分比切換
用の2組の第1,第2の油圧多板クラッチ71,72と差動制
限用の第3の油圧多板クラッチ73とが収容設置されてい
る。第1の油圧多板クラッチ71は、第1中間軸51とそれ
に同軸上に回転自在に嵌合するリヤドライブ軸20との間
に介設されるものであり、ドラム71aがインタミディエ
ートケース6の中心のボス部6aに回転自在に嵌合し、リ
ヤドライブ軸20のフランジ部20aにスプライン結合して
設置され、ハブ71bが第1中間軸51にスプライン結合さ
れ、これらドラム71aとハブ71bとの間にドライブプレー
トとドリブンプレートからなる摩擦係合プレート71cが
設置される。ドラム71aの内部には油圧室71dとピストン
71eとが設けられ、このピストン71eにより上記摩擦係合
プレート71cを一体的にする係合することで、2列目の
第2ピニオン58,第2のリヤサンギヤ54から分割動力を
出力するようになっている。
第2の油圧多板クラッチ72は、第2の中間軸52とリヤ
ドライブ軸20との間に介設されており、上述の第1の油
圧多板クラッチ71の前方でドラム72aが第2の中間軸52
に一体結合され、ハブ72bがリヤドライブ軸20と一体の
上記第1の油圧多板クラッチ71のドラム71aに連結さ
れ、両者の間にドライブプレートとドリブンプレートか
らなる摩擦係合プレート72cが配置される。そしてドラ
ム72a内部に設けられる油圧室72dのピストン72eで上記
摩擦係合プレート72cを一体的に係合し、3列目の第3
のピニオン59,第2のリヤサンギヤ55から分割動力を出
力するようになっている。
第3の油圧多板クラッチ73は、キャリヤ60とリヤドラ
イブ軸20との間に介設されており、ドラム73aがキャリ
ヤ60の支持プレート61に結合し、上記第1の油圧多板ク
ラッチ71のドラム71aの外側に延設されている。ここ
で、ドラム71aはハブを兼ねており、これらドラム73aと
71aとの間にドライブプレートとドリブンプレートから
なる摩擦係合プレート73cが配置される。また、インタ
ミディエートケース6の段部6bに油圧室73dとピストン7
3eとが設けられ、ピストン73eにはレリーズベアリング7
3fを介して押圧プレート73gが取付けられ、押圧プレー
ト73gで上記摩擦係合プレート73cを所定量係合して差動
制限トルクが生じ、この差動制限トルクをバイパスして
タイヤのグリップ限界を越えた駆動側からスリップの生
じていない駆動側に移動するようになっている。
なお、第2の中間軸52の両側,ハブ71b,リヤドライブ
軸20のフランジ部20a,ボス部6aの間にはスラストベアリ
ング25が設けられて、構成部材を回転自在に軸承してい
る。
潤滑系として、変速機出力軸15,第1の中間軸51の途
中に油路15a,51aが連通して設けられ、トランスミッシ
ョンケース3の油路3aに孔15bを介して連通している。
そこで油路51aから孔15bを介してスラストベアリング2
5,1列目のギヤ噛合部に給油し、孔51cを介してブッシュ
23およびスラストベアリング25,2列目および3列目のギ
ヤ噛合部等に給油している。
油圧制御系として、第1の油圧多板クラッチ71の油圧
室71dへの油路78がインタミディエートケース6のボス
部6aに設けられる。また、第2の油圧多板クラッチ72の
油圧室72dへの油路79がインタミディエートケース6か
らリヤドライブ軸20,第1の中間軸51の内部を通って設
けられ、第3の油圧多板クラッチ73の油圧室73dへの油
路82がインタミディエートケース6に連設されている。
ここで、第3図の略図を用いてセンターディファレン
シャル装置50のトルク配分について述べる。
先ず、入力サンギヤ53の入力トルクTi、その噛合いピ
ッチ半径rs1,キャリヤ60の前輪トルクTF1,TF、第1,
第2,第3のピニオン57,58,59の噛合いピッチ半径rp1,rp
2,rp3、第1のリヤサンギヤ54の後輪トルクTR1,その噛
合いピッチ半径rs2、第2のリヤサンギヤ55の後輪トル
クTR、その噛合いピッチ半径rs3とすると、 Ti=TF+TR (1) Ti=TF+TR (2) rs1+rp1=rs2+rp2=rs3+rp3 (3) が成立する。
また1列目の入力サンギヤ53と第1のピニオン57との
噛合い点に作用する接線荷重Pは、キャリヤ60に作用す
る前輪トルクTFの接線荷重P1と2列目の第1のリヤ
サンギヤ54と第2のピニオン58との噛合い点に作用する
接線荷重P2との和に等しい。更に、接線荷重Pは、キャ
リヤ60に作用する前輪トルクTFの接線荷重P3と3列
目の第2のリヤサンギヤ55と第3のピニオン59との噛合
い点に作用する接線荷重P4との和に等しい。従って、次
式が成立する。
P=Ti/rs1 P1=TF1/(rs1+rp1) P2=TR1/rs2 P3=TF2/(rs1+rp1) P4=TR2/rs3 Ti/rs1={TF1/(rs1+rp1)}+TR1/rs2 (4) Ti/rs1={TF2/(rs1+rp1)}+TR2/rs3 (5) (1)〜(3)式を(4),(5)式に代入して整理
すると、以下のようになる。
TF=(1−rp1・rs2/rs1・rp2)×Ti TR=(rp1・rs2/rs1・rp2)×Ti TF=(1−rp1・rs3/rs1・rp3)×Ti TR=(rp1・rs3/rs1・rp3)×Ti このことから、2種類の基準トルク配分TF1:TR1,T
F2:TRが得られる。そして入力サンギヤ53,第1,第2の
リヤサンギヤ54,55と第1ないし第3のピニオン57ない
し59との噛合いピッチ半径を選択することで、2つの基
準トルク配分比を自由に設定し得ることがわかる。
ここで、例えばrs1=22.8mm,rp1=17.1mm,rp2=21.8m
m,rs2=18.1mm,rp3=19.95mm,rs3=19.95mmにすると、 TF≒0.38Ti,TR≒0.62Ti TF=0.25Ti,TR=0.75Ti になる。従って前後輪の2つの基準トルク配分比は、T
F1:TTF≒38:62.TF2:TR=25:75になり、2つ共に充
分に後輪偏重で、第2のトルク配分比の場合はFRに非常
に近いトルク配分である。
次いで、第4図(a),(b),(c)の略図を用い
て複数個のピニオンを等配置組立可能な噛合い条件につ
いて詳記する。
第4図(a)において、入力サンギヤ53を固定し、第
1,第2,第3のピニオン57,58,58を時計方向にθだけ回転
した場合に、第1のリヤサンギヤ54が反時計方向にα
回転し、第2のリヤサンギヤ55が反時計方向にβ回転
したとすると、次式が成立する。
θ=rs2・rp1・α1/(rs1・rp3−rs3・rp1) (1) θ=rs3・rp1・β1/(rs1・rp2−rs2・rp1) (2) また入力サンギヤ53の歯数をZs1,第1のリヤサンギヤ
54の歯数をZs2,第2のリヤサンギヤ55の歯数をZs3,第1
のピニオン57の歯数をZp1,第2のピニオン57の歯数をZp
2,第3のピニオン59の歯数をZp3すると、上式は次のよ
うに歯数で置換えられる。
θ=Zs2・Zp1・α1/(Zs1・Zp3−Zs3×Zp1) (3) θ=Zs3・Zp1・β1/(Zs1・Zp2−Zs2×Zp1) (4) 今、第1のリヤサンギヤ54が円形ピッチ角度360/Zs2,
および第2のリヤサンギヤ55が円ピッチ角度360/Zs3
け基準線から回転したとすると、 θ=Zp1・360/(Zs1・Zp3−Zs3・Zp1) (5) θ=Zp1・360/(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1) (6) が成立する。
第4図において、今度は第1のリヤサンギヤ54を固定
し、同様に第1,第2,第3のピニオン57,58,59を時計方向
にθだけ回転した場合に、入力サンギヤ53が時計方向に
β回転し、第2のリヤサンギヤ55が時計方向にα
転したとすると、次式が成立する。
θ=−Zs3・Zp2・β2/(Zs2・Zp1−Zs1×Zp2) (7) θ=−Zs1・Zp2・α2/(Zs3・Zp2−Zs2×Zp3) (8) β=360/Zs3=360/Zs1を上式に代入すると、 θ=−Zp2・360/(Zs2・Zp1−Zs1・Zp2) (9) θ=−Zp2・360/(Zs3・Zp2−Zs2・Zp3) (10) が成立する。
第4図(c)において、今度は第2のリヤサンギヤ55
を固定し、同様に第1,第2,第3のピニオン57,58,59を時
計方向にθだけ回転した場合に、入力サンギヤ53が時計
方向にβ回転し、第1のリヤサンギヤ54が時計方向に
α回転したとすると、次式が成立する。
θ=Zp3・Zs2・α3/(Zs3・Zs2−Zp2×Zs3) (11) θ=−Zp3・Zs1・β3/(Zp1・Zs3−Zs1×Zp3) (12) α=360/Zs2=360/Zs3を上式に代入すると、 θ=Zp3・360/(Zp3・Zs2−Zp2・Za3) (13) θ=−Zp3・360/(Zp1・Zs3−Zs1・Zp3) (14) が成立する。
ここで、第1,第2,第3のピニオン57,58,59の相互位置
関係を同一としたN個の一体的なものを等配置する場合
の噛合い条件について述べると、1個目の一体ピニオン
と2個目の一体ピニオンの相互角度は、360/Nである。
従って、上述の(5),(6),(9),(10),(1
3),(14)式の整数倍がこの相互角度に等しければよ
く、次式が成立する。
m1=(Zs1・Zp3−Zs3・Zp1)/Zp1・N =(Zs1・Zp2−Zs2・Zp1)/Zp1・N (15) m2=−(Zs2・Zp1−Zs1・Zp2)/Zp2・N =−(Zs3・Zp2−Zs2・Zp3)/Zp2・N (16) m3=(Zs2・Zp3−Zs3・Zp2)/Zp3・N =−(Zs3・Zp1−Zs1・Zp3)/Zp3・N (17) (m1,m2,m3は任意の整数) 従って、各歯数を上述式を満すように定めればよい
が、Zp1=Zp2=Zp3とすると、次のように簡素化され
る。
m1=|(Zs1−Zs2)|/N m2=|(Zs3−Zs2)|/N (18) m3=|(Zs1−Zs3)|/N つまり、第1,第2,第3のサンギヤ53,54,55の歯数差
が、1体式の第1,第2,第3のピニオン57,58,59の個数の
整数倍であればよい。従って第1のピニオン57のモジュ
ールm′,第2のピニオン58のモジュールm″,第3の
ピニオン59のモジュールmを、m″>m>m′の関
係にすれば、Zp1=Zp2=Zp3でもrp1<rp3<rp2となる。
ここでZs1=24,Zp1=Zp2=Zp3=18.Zs2=15,Zs3=18,
N=3とする。またZs1とZp1のモジュール=1.5,Zp2とZs
2のモジュール=1.75,Zp3とZs3のモジュール=1.72の転
移はすば歯車で、rs1=22.8mm,rp1=17.1mm,rp2=21.8m
m,rs2=18.1mm,rs3=19.95mm,rp3=19.95mmとすると、
(18)式は次のようになる。
m1=(24−15)/3=3 m2=(18−15)/3=1 m3=(24−15)/3=2 従って、同一位相の第1,第2,第3のピニオン57,58,59
は、3個等配置可能となる。
次いで、かかる構成の4輪駆動車の作用について述べ
る。
先ず、エンジン10の動力はトルクコンバータ13,入力
軸14を介して自動変速機30に入力し、自動変速された動
力が変速機出力軸15からセンターディファレンシャル装
置50の入力サンギヤ53に入力する。
ここで、市街地等で安定した走行性能を得る場合は、
第1の油圧多板クラッチ71に給油して一体的に係合す
る。すると、センターディファレンシャル装置50の第1
のリヤサンギヤ54が第1の中間軸51,第1の油圧多板ク
ラッチ71を介してリヤドライブ軸20に連結し、第1のリ
ヤサンギヤ54からの動力が後輪側に取出されて、第1の
基準トルク配分比をもつモードになる。この第1モード
では、センターディファレンシャル装置50の1列目と2
列目の第1,第2のリヤサンギヤ54,55と第1,第2のピニ
オン57,58との歯車諸元により基準トルク配分がTF1:TR
≒38:62に設定されていることで、変速動力の38%が
キャリヤ60に、その62%が第1のリヤサンギヤ54に分配
して出力される。そしてキャリヤ60の動力は、リダクシ
ョンギヤ17,18,フロントドライブ軸16,フロントディフ
ァレンシャル装置19等を介して前輪に伝達し、第1のリ
ヤサンギヤ54の動力は、第1の中間軸51,第1の油圧多
板クラッチ71,リヤドライブ軸20,プロペラ軸21,リヤデ
ィファレンシャル装置22等を介して後輪に伝達して、4
輪駆動走行する。
一方このとき、前,後輪回転数NF,NRおよび舵角等
によりスリップ率Sが算出されている。そこで乾燥路面
でS≧のノンスリップ状態では、差動制限トルクが零に
設定され、第3の油圧多板クラッチ73のオイルをドレン
するように動作するのであり、これにより第3の油圧多
板クラッチ73は解放されて差動制限トルクが零になり、
上述のセンターディファレンシャル装置50をフリーにす
る。
従って前後輪のトルク配分は、上述の基準トルク配分
TF1,TRと同一になる。このトルク配分比では後輪偏
重であるが、前輪寄りであり、アンダーテスア気味にな
って安定姓を備えた操縦性等を有する。また旋回時に
は、センターディファレンシャル装置50が前後輪の回転
数差に応じてピニオン部材56を自転,公転させて回転数
差を完全に吸収することになり、自由に旋回することが
可能になる。
次いで、滑り易い路面走行時には、後輪偏重のトルク
配分比により常に後輪が先にスリップし、スリップ状態
に応じたスリップ率S1(S<1)が算出される。そして
このスリップ率S1に応じた差動制限トルクTc1が算出さ
れて、第3の油圧多板クラッチ73に差動制限トルクTc1
が生じる。そこで、センターディファレンシャル装置50
で、2つの出力要素のキャリヤ60と第1のリヤサンギヤ
54と一体のリヤドライブ軸20との間に第3の油圧多板ク
ラッチ73を経由した伝動系路がバイパスして形成される
ことになり、高回転側のリヤドライブ軸20から差動制限
トルクTc1分だけ低回転側のキャリヤ60にトルクがバイ
パスして伝達される。これにより、トルク配分は前輪寄
りに変化し、後輪トルクは減じてスリップを生じなくな
り、走破性を増大すると共に操縦性も良好に保つ。
そして上述のスリップ率Sが設定値以上SI以下にな
ると、第3の油圧多板クラッチ73の油圧と共に差動制限
トルクが最大になって、センターディファレンシャル装
置50のキャリヤ60と第1のリヤサンギヤ54側とを連結す
る。このためセンターディファレンシャル装置50はディ
ファレンシャルロックされ、前後輪の軸重配分に相当し
たトルク配分の直結式4輪駆動走行になり、走破性が最
大に発揮される。こうしてスリップ状態に応じ、後輪偏
重のトルク配分と直結式の4輪駆動との間でトルク配分
が可変に制御されるのである。
次いで、山谷部等で回頭性,操縦性,操舵感を重視し
た性能を得る場合は、第2の油圧多板クラッチ72を給油
して係合するように切換える。すると今度は、センター
ディファレンシャル装置50の第2のリヤサンギヤ55が第
2の中間軸52,第2の油圧多板クラッチ72,ドラム71aを
介してリヤドライブ軸20に連結して、第2の基準トルク
配分比をもつモードになる。この第2のモードでは、セ
ンターディファレンシャル装置50の3列目の第2のリヤ
サンギヤ55と第3のピニオン59との歯車諸元により基準
トルク配分がTF2:TR=25:75に設定されることで、後
輪偏重で更にFRに近いものになる。従ってこの場合は、
オーバステア気味になり、回頭性,操縦性,操舵感が良
好なスポーティな性能を発揮する。
一方、かかる第2のモードでは後輪スリップが生じ易
くなるが、上述と同様にスリップ状態に応じて電子的に
第3の油圧多板クラッチ73で差動制限トルクTcが生じ
る。そしてこの差動制限トルクTcが前輪にトルクバイパ
スし、直結式4輪駆動の間でトルク配分制御され、同様
に後輪スリップを防止して走破性を確保する。
以上、本発明の実施例について述べたが、自動変速機
に限定されない。また、フロントドライブ軸,フロント
ディファレンシャル装置を変速機ケースの外に出したパ
ワートレーン,フロント側への伝動機構がチェーンとス
プロケットの場合に適用できる。
〔発明の効果〕
以上述べてきたように、本発明によれば、 センターディファレンシャル装置付4輪駆動車におい
て、複合プラネタリギヤ式センターディファレンシャル
装置の少なくとも3つのピニオンから成る一体型ピニオ
ンが複数個、等配置で組立てられるので、回転中のアン
バランスマスが軽減し、ベアリングの耐久性,振動騒音
が改善される。
さらに、少なくとも3つのピニオンは同一位相であ
り、歯数と歯車諸元とを設定することで、等配置に組立
てられるので、プラネタリギヤの組立性が向上し、歯車
製作の容易化,ピニオンの種類の減少が可能になる。
さらにまた、第1のサンギヤとピニオン,第2のサン
ギヤとピニオン,第3のサンギヤとピニオンの歯車諸元
設定の自由度の増大により、前後輪基準トルク配分比を
2つのそれぞれ任意に設定でき、操縦性,走行性に最も
適したトルク配分制御を行い得る。
また、n組のサンギヤとピニオンとの噛合いに対し、
本発明の歯数条件にすれば、n−1の前後輪基準トルク
配分比を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の4輪駆動車のの実施例を示すスケルト
ン図、 第2図はセンターディファレンシャル装置と油圧クラッ
チ装置の部分の拡大断面図、 第3図はトルク配分状態を説明する略図、 第4図(a),(b),(c)は3個のピニオンの等配
置組立可能な噛合い条件を説明する略図である。 15……変速機出力軸、17……リダクションギヤ、20……
リヤドライブ軸、50……センターディファレンシャル装
置、53……入力サンギヤ、54,55……第1,第2のリヤサ
ンギヤ、57〜59……第1〜第3のピニオン、60……キャ
リヤ、70……油圧クラッチ装置、71〜73……第1〜第3
の油圧多板クラッチ

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】変速機出力軸に前輪側伝達要素,後輪側伝
    達要素が同軸上に配置され、これら3種の間にセンター
    ディファレンシャル装置が配置される4輪駆動車におい
    て、 センターディファレンシャル装置を、少なくとも第1,第
    2,第3のサンギヤと、一体形成される少なくとも第1,第
    2,第3のピニオンと、キャリヤとで構成し、 上記第1のサンギヤを上記変速機出力軸に連結し、上記
    第2,第3のサンギヤとキャリヤを上記前,後輪側伝達要
    素のいずれかに連結し、 上記第1,第2,第3のピニオンを同一位相で複数個、上記
    第1,第2,第3のサンギヤの周囲に等配分で配置して噛合
    い構成することを特徴とするセンターディファレンシャ
    ル付4輪駆動車。
  2. 【請求項2】上記第1,第2,第3のピニオンは、歯数が同
    一で歯車諸元のうち少なくともモジュールが異なるよう
    に設定し、 少なくともモジュールが異なる上記第1,第2のサンギヤ
    と上記第1,第3のサンギヤおよび第2,第3のサンギヤと
    の歯数の差が、一体形成された上記第1,第2,第3のピニ
    オンの個数の整数倍になるように定めることを特徴とす
    る請求項(1)記載のセンターディファレンシャル装置
    付4輪駆動車。
  3. 【請求項3】上記センターディファレンシャル装置は、
    差動制限用の第3の油圧多板クラッチと、基準トルク配
    分比を切換えると共にトルク伝達する少なくとも第1,第
    2の油圧多板クラッチとを、隣接して同軸上に具備し、 上記第1,第2の油圧多板クラッチは、上記第2,第3のサ
    ンギヤと後輪側伝動要素との間に介設し、上記第3の油
    圧多板クラッチは、上記キャリヤと後輪側伝動要素との
    間に介設して伝動構成することを特徴とする請求項
    (1)記載のセンターディファレンシャル装置付4輪駆
    動車。
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