JP2650258B2 - 封止構造を有するエレクトロクロミック素子 - Google Patents

封止構造を有するエレクトロクロミック素子

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JP2650258B2
JP2650258B2 JP62130828A JP13082887A JP2650258B2 JP 2650258 B2 JP2650258 B2 JP 2650258B2 JP 62130828 A JP62130828 A JP 62130828A JP 13082887 A JP13082887 A JP 13082887A JP 2650258 B2 JP2650258 B2 JP 2650258B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、エレクトロクロミック素子の改良に関す
る。
〔従来の技術〕
電圧を印加すると可逆的に電解酸化または還元反応が
起こり可逆的に着色する現象をエレクトロクロミズムと
言う。このような現象を示すエレクトロクロミック(以
下、ECと略称する)物質を用いて、電圧操作により着消
色するEC素子(以下、ECDと略す)を作り、このECDを光
量制御素子(例えば、防眩ミラー)や7セグメントを利
用した数字表示素子に利用しようとする試みは、20年以
上前から行われている。例えば、ガラス基板の上に下部
電極層、EC物質としての三酸化タングステン薄膜又は二
酸化ケイ素のような絶縁膜の何れか一方、次に他方、最
後に上部電極層を順次積層してなるECD(特公昭52−609
8参照)が全固体型ECDとして知られている。
ECDの各層はいずれも非常に薄いことから、真空薄膜
形成技術例えば反応又は非反応真空蒸着、反応又は非反
応イオンプレーティング、反応又は非反応スパッタリン
グ、CVDで成膜される。
このECDに電池から得られる程度の電圧を印加すると
三酸化タングステン(WO3)薄膜が青色に着色する。そ
の後、このECDに同程度の逆電圧を印加すると、WO3薄膜
の青色が消えて無色になる。この着色・消色する機構は
詳しくは解明されていないが、WO3薄膜及び/又は絶縁
膜(イオン導電層)中に含まれる少量の水分がWO3の着
色・消色を支配していると理解されている。着色の反応
式は下記のように推定されている。
陰極側: H2O→H++OH- WO3+nH++ne-→HnWO3 (無色透明) (青色) 陽極側: OH-→1/2H2O+1/4O2↑+1/2e- その後、WO3層の還元反応を補償する酸化反応する層
を追加した対象型ECDが発明された。例えば、特開昭50
−50892、同52−73749、同56−4679参照のこと。このよ
うなECDの断面構造を第1図に示す。
EC層を直接又は間接的に挟む一対の電極層は、EC層の
着消色を外部に見せるために少なくとも一方は透明でな
ければならない。特に透過型のECDの場合には両方とも
透明でなければならない。透明な電極材料としては、現
在のところSnO2、In2O3、ITO(SnO2とIn2O3との混合
物)、ZnOなどが知られているが、これらの材料は比較
的透明度が悪いために薄くせねばならず、この理由及び
その他の理由からECDは基板例えばガラス板やプラスチ
ック板の上に形成するのが普通である。
第1図に於いて、(A)は下部電極層、(B)は可逆
的電解酸化層又は酸化着色性EC層例えば酸化又は水酸化
イリジウム、(C)はイオン導電層、(D)は還元着色
性EC層例えばWO3、(E)は上記電極層をそれぞれ示
し、基本的にはこの(A)〜(E)の積層構造だけでEC
Dが構成されるが、前述のとおり、これらのECDは基板
(S)上に形成される。
そして、最後にECDの耐久性を高めるため、上部電極
層(E)の封止樹脂(R)を塗布した後、封止基板
(G)例えばガラス板で封止する。この場合、封止樹脂
としては熱硬化性樹脂の1種であるエポキシ樹脂が使用
される(例えば、特開昭57−158622号)。
ECDの電極(A)、(E)に外部電源を供給するため
には、各々、取出し電極部が必要で、ここに外部配線
(LA)、(LE)が各々接続される。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来のECDは、高温耐久性に劣るという問題点があっ
た。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、鋭意研究の結果、従来のエポキシ樹脂
は硬化後のガラス転移温度(Tg)が80℃以下であり、こ
れを硬化後のTgが90℃以上のエポキシ樹脂を使用して、
しかも100℃以下の温度にて硬化させてECDを封止するこ
とにより、ECDの高温耐久性を向上させることができる
ことを見い出し、本発明を成すに至った。
従って、本発明は、硬化後のTgが90℃以上のエポキシ
樹脂を用いて100℃以下の温度にて硬化させることによ
り封止したことを特徴とするECDを提供する。
〔作用〕
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の1種であり、一般に
主剤と硬化剤の2成分からなり、これを使用にあたって
混合する。混合物は常温又は加熱下に放置すると硬化
し、硬化物は熱可塑性を示さない。
主剤は、既に知られているように分子中に2個以上の
エポキシ基一般にはグリシジル基を有する。代表的な主
剤は、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリ
シジルエーテル及びその同族体である。以下に主剤の分
子式を例示する。
他方、硬化剤としては、アミン系、酸無水物系その他
がある。
アミン系としては、例えばジエチレントリアミン、ト
リエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジ
エチルアミノプロピルアミン、ペンタンジアミン、アミ
ノエチルピペラジン、ピペリジン、ベンジルジメチルア
ミン、ジシンジアミドジアミノジフェニルメタン、メタ
フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンなど
が挙げられる。
酸無水物系としては、例えば無水フタル酸、テトラハ
イドロフタリック・アンハイドライド、ヘキサハイドロ
フタリック・アンハイドライド、メチルナジック・アン
ハイドライド、ドデシニルサクシニック・アンハイドラ
イド、クロデンディッツ・アンハイドライド、パイロメ
リチック・ジアンハイドライドなどが挙げられる。
その他としては、例えばアセチルアセトン・Al錯体が
挙げられる。
本発明で重要なことは、硬化物のTgであり、これは上
に例示した主剤と硬化剤とを適当に組み合わせて予備実
験すれば、適当な組み合わせは容易に知れよう。
尚、硬化時の温度は、100℃以下が好ましく、また100
℃以下で硬化する組み合わせを選択することが好まし
い。
次に、ECDの各層について説明すると、ECDは基本的に
は一対の電極層とその層間に挟まれたEC層とからなる。
しかし、EC層に加えて電極層間にイオン導電層を挿入
したタイプのECDが好ましい(例えば、特公昭52−46098
参照)。更に、EC物質として代表的なWO3の如き還元着
色性EC物質を使用したときには、可逆的電解酸化層又は
酸化着色性EC層を付加することが好ましい(例えば、特
開昭50−50892、同52−73749、同56−4679参照)。
基板上に形成される下部電極層(A)としては、ECD
のタイプが透過型か反射型かで変わるが、透明である必
要があれば、上記透明電極材料例えば、SnO2、In2O3、I
TOで構成される。膜厚は、一般に0.04〜0.4μmであ
る。透明である必要がなければ、金属材料又は炭素で下
部電極層(A)が形成される。金属材料としては、例え
ば金、銀、アルミニウム、クロム、スズ、亜鉛、ニッケ
ル、ルテニウム、ロジウム、ステンレスなどが使用され
る。金属電極層は、上記の如き透明電極層を仮に低抵抗
なものにしても、それより遥かに低抵抗である。金属電
極層の膜厚としては、一般に0.04〜10μmである。膜厚
が厚ければ、金属電極層は光を反射し透過させない。従
って、反射型のECDにおいては上部電極層か下部電極層
のいずれかを金属で構成する。
還元着色性EC層(D)としては、酸化タングステン、
酸化モリブデンなどが使用される。場合によっては、他
の有機又は無機物質でもよい。膜厚は、一般に0.3〜1
μmである。
必要に応じて設けられるイオン導電層(C)として
は、例えば、無機誘電体薄膜例えば酸化タンタル(Ta
2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化ジルコニウム(Zr
O2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、
酸化イツトリウム(Y2O3)、酸化ランタン(La2O3)、
酸化珪素(SiO2)、フツ化マグネシウム、リン酸ジルコ
ニウムあるいはこれらの混合物質の薄膜(これらの薄膜
は、製法により、電子に対しては絶縁性であるが、プロ
トン(H+)及びヒドロキシイオン(OH-)に対しては良
導性となり、製造時に積極的に水を含ませるか、薄膜製
造後又はECD製造後に大気中にさらすことによって大気
中からの水分を自然に吸着させることにより、あるいは
系内のいずれからかのH2O,H+,OH-を含むことにより、イ
オン導電性となり、しかも電子は透過させない);塩
化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カ
リウム、Na3Zr2Si2PO12、Na1+XZrSiXP3-XO12、Na5YSi4O
12、RbAg4I5等の固体電解質が挙げられる。イオン導電
層(C)の膜厚は、一般に0.1〜2μmである。
可逆的電解酸化層又は酸化着色性EC層(B)として使
用される物質としては、スチリル類似化合物、アリルピ
ラゾリン、アリルピリリウム、アリルピリジウム、メト
キシフルオレン、プルシアンブルー錯体、ルテニウムパ
ープル錯体、ペンタシアノカルボニル鉄酸鉄などの有機
物質のほか、イリジウム、ニッケル、クロム、バナジウ
ム、ルテニウム、ロジウムなどの遷移金属の酸化又は水
酸化物が使用される。特にイリジウムの酸化又は水酸化
物を不活性分散媒で希釈してそのIr金属含有率を1〜20
at.%特に3〜10at.%としたものは、好ましいものであ
る。透明な不活性分散媒としては、例えば酸化ケイ素、
酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化チ
タン、酸化ハフニウム、酸化イツトリウム、酸化ランタ
ン、フツ化マグネシウム、酸化スズ、酸化インジウム、
ITOなどが使用される。層(B)は常態(安定状態)で
は無色又は淡色の透明な膜であり、膜厚は、一般に0.04
〜1μmである。
上部電極層(E)は、上述の如く下部電極層と同一の
材料から選択される透明又は反射性電極である。
そして、上記電極層(E)の上にエポキシ樹脂を塗布
して封止基板(G)を重ね合わせるか、封止基板(G)
にエポキシ樹脂を塗布し、それを上部電極層(E)の上
に重ね合わせた後、常温又は昇温下で放置して樹脂を硬
化させる。
こうして、基板(S)と封止基板(G)との間にエポ
キシ樹脂で封止されたECDが得られる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発
明はこれに限定されるものではない。
〔実施例〕
第1図は、本実施例のECDの概略断面図である。図
は、一部デホルメしてあり正確な寸法比を有しない。
(1)先ず、縦200mm×横100mm×厚さ1mmの大面積ガラ
ス基板(S)を用意し、この上に真空蒸着(基板温度:3
50℃)により、膜厚0.15μm、抵抗8Ω/□のITO膜か
らなる下部電極層(A)を形成した。
(2)次に膜厚0.12μmの酸化イリジウム−酸化スズ混
合膜からなる酸化着色性EC層(B)を反応真空蒸着によ
り形成した。
(3)その上に膜厚0.7μmの五酸化タンタル膜からな
る透明イオン導電層(C)を蒸着により形成した。
(4)更に蒸着により膜厚0.5μmの三酸化タングステ
ン膜からなる還元着色性EC層(D)を形成した。
(5)その上に更に真空蒸着により、膜厚0.15μmのア
ルミニウム薄膜からなる上部電極層(E)を形成した。
(6)最後に、主剤がビスフェノールAのジグリシジル
エーテル系、硬化剤がアミン系の2液型エポキシ樹脂
で、硬化後のTgが90℃のものを入手し、主剤10重量部と
硬化剤1重量部とを混合し、混合液を上部電極層(E)
の上に塗布し、その上に封止基板(G)としてガラス板
を重ね合わせ、これを80℃乾燥雰囲気中に30分、その後
90℃乾燥雰囲気中に30分放置することにより、エポキシ
樹脂を硬化させ、封止構造を有するECDを完成させた。
(7)そして、上部電極層(E)及び下部電極層(A)
の端の方に外部配線(LE)、(LA)をそれぞれ接続し
た。
(8)こうして製作した反射型ECDに外部配線(LA)、
(LE)を通じて駆動電源から着色電圧(+1.35V)を印
加すると、基板(S)側から入射させた波長633nmの光
(L)に対し反射率が15%に減少するのに要した時間が
4秒であった。この反射率は電圧印加を止めても、しば
らく保たれた。
次に消色電圧(−1.35V)を印加すると、同じく反射
率が元の55%に回復するのに要した時間が2秒であっ
た。
これらの着色・消色の変化は均一に濃度が変化して着
色・消色ムラは見られなかった。
〔比較例1〕 実施例と同様に封止構造を有するECDを製造したが、
但し、封止樹脂として、主剤がビスフェノールAグリシ
ジルエーテル系、硬化剤がアミン系の2液型エポキシ樹
脂で、硬化後のTgが80℃のものを使用し、硬化条件とし
て、80℃乾燥雰囲気中で30分の条件だけにした。
〔比較例2〕 実施例と同様に封止構造を有するECDを製造したが、
但し、封止樹脂として、比較例1と同じものを使用し
た。尚、硬化条件は実施例と同じである。
〔高温耐久性試験1〕 実施例及び比較例1〜2のECDについて、先ず、着色
電圧(+1.35V)を印加して着色させ、着色濃度に比例
する注入電荷量〔単位:C(クーロン)〕を測定した。こ
の値を初期値という。
次に各ECDを90℃の乾燥雰囲気中に1000時間放置し、1
00時間、500時間、1000時間経過の3時点で、ECDを取出
し、同様に注入電荷量を測定した。この結果を初期値か
らの変化量として第2図に示す。第2図中、実線は実施
例、点線は比較例1、一点鎖線は比較例2のECDのデー
タである。
〔高温耐久性試験2〕 実施例及び比較例1〜2のECDを80℃の乾燥雰囲気に
入れ、ECDが同一温度に昇温したのを確認した後、着
色電圧(+1.2V)を印加して10秒間着色させ、次に消
色電圧(−1.2V)を印加して10秒間消色するサイクル
を、106サイクル繰り返した。
その後、ECDを同様に着色させて、その着色状態を肉
眼で観察した。その結果、実施例のECDは着色ムラが発
生せず、着色濃度及び応答速度とも試験前とほとんど差
がなかったが、比較例1、2のものは着色ムラが発生
し、また着色濃度及び応答速度が試験前に比べ低下して
いた。
〔発明の効果〕
以上のとおり、本発明によれば、硬化後のTgが90℃以
上のエポキシ樹脂を用いて、100℃以下の温度にて硬化
させることによりECDを封止したので、ECDの高温耐久性
が向上した。
【図面の簡単な説明】
第1図は、1つのECDの垂直断面構造を示す概念図であ
る。 第2図は、ECDの高温耐久性試験の結果を示すグラフで
ある。 〔主要部分の符号の説明〕 S……基板 A……下部電極層 B……可逆的電解酸化層又は酸化着色性EC層 C……イオン導電層 D……還元着色性EC層 E……上部電極層 G……封止用基板(ガラス板) R……封止用エポキシ樹脂 LA,LE……外部配線

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硬化後のガラス転移温度(Tg)が90℃以上
    のエポキシ樹脂を用いて、100℃以下の温度にて硬化さ
    せることにより封止したことを特徴とする封止構造を有
    するエレクトロクロミック素子。
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