JP2633891C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、モータやトランス等の電気機器の磁心や、コア付きスロットレスモ
ータの基板、防振材、スピーカのポールピース等に使用可能な圧粉磁心に関する
。 (従来の技術) 従来より、鉄や鉄合金若しくはフェライト等の強磁性粉をエポキシ樹脂等のバ
インダー樹脂を用いて結合させ所定形状 に成形した圧粉磁心が良く知られている(例えば、特公昭47−22514号、
特公昭50−14207号、特開昭49−4197号等)。 この種の圧粉磁心は、通常、鉄や鉄合金若しくはフェライト等の強磁性粉と、
エポキシ樹脂等のバインダー樹脂とを混合した後、金型内に充填し圧縮成形して
形成されるか、若しくは、強磁性粉にエポキシ樹脂等のバインダー樹脂を被覆し
た後、金型内に充填し圧縮成形して形成されている。 ところで、この種の圧粉磁心では、その磁気特性は成形体中における強磁性粉
の密度に依存し、強磁性粉とバインダー樹脂との配合比が磁気特性を大きく左右
する。このため、従来技術では、強磁性粉とバインダー樹脂とを混合し圧縮成形
して形成される圧粉磁心について、その組成物の含有比率(配合比)を、成形体
中に占めるバインダー樹脂及び強磁性粉の体積%若しくは重量%として規定して
いた。 (発明が解決しようとする課題) ところで、成形後の圧粉磁心内のバインダー樹脂間には、通常、バインダー樹
脂の溶媒等が揮発した後の空隙が形成されるが、成形体中における、この空隙率
の高低によって、成形体全体の密度が変化し、成形体中の強磁性粉密度が変わっ
てしまうことがある。このため、空隙率の高低によって圧粉磁心の磁気特性が当
初の予定より変化してしまい問題となる。しかるに、従来技術による圧粉磁心で
は、空隙率に対する配慮がなされておらず、配合比がバインダー樹脂と強磁性粉
の成形体中における含有率のみで規定されているため、バイン ダー樹脂量及び強磁性粉量が一定であったとしても成形時の圧力等の違いにより
空隙率が変化してしまい圧粉磁心の磁気特性に大きな影響を及ぼすことがあり問
題となる。 例えば、バインダー樹脂の体積%を30vol%(体積%)とし、成形圧力を
変えて圧粉磁心を形成した場合に、成形圧によって表1に示すように空隙率が変
化してしまい、結果として、成形体中における強磁性粉密度が変化し、磁気特性
が変化してしまう。 したがって、従来技術のように、バインダー樹脂と強磁性粉との配合比にのみ
着目して製造された圧粉磁心では、同配合比で形成された圧粉磁心でも空隙率の
違いにより磁気特性にばらつきが生じ、製品としての信頼性が乏しくなるという
欠点を有する。 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、圧粉磁心の成形体中におけ
る強磁性粉、バインダー樹脂、及び空隙の占有率を規定することにより、圧粉磁
心の磁気特性を明確化し、目的にかなった磁気特性を有する圧粉磁心を常に安定
して提供することを目的とする。 (課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて成
形圧2.0トン/cm2以上2.6トン /cm2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉の粒径を50
0μm以下として、成形体中における上記バインダー樹脂の占めるバインダー樹
脂体積率(体積%)と、該バインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積
率(体積%)との和が、7体積%以上で且つ50体積%以下となるように成形さ
れたことを特徴とする。 また、上記圧粉磁心において、成形体中のバインダー樹脂間に形成される空隙
に硬化剤を含んだ樹脂を含浸したことを特徴とする。 (作用) 本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて成形圧2.0トン/cm2以
上2.6トン/cm2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉
の粒径を500μm以下として、成形体中における上記バインダー樹脂の占める
バインダー樹脂体積率(体積%)と、該バインダー樹脂間に形成される空隙の占
める空隙体積率(体積%)との和を、7体積%以上で且つ50体積%以下となる
ように規定したことにより、全体積(強磁性粉+バインダー樹脂+空隙)に占め
る強磁性粉の割合(密度)が明確化され、目的にかなった磁気特性を得ることが
可能となる。 (実施例) 以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。 本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて結合させ成形した圧粉磁心に
おいて、成形体中における組成物の含有比率を、強磁性粉とバインダー樹脂のみ
ならずバインダー樹 脂間に形成される空隙をも考慮して、第2図に示す如く規定する。即ち、本発明
では、圧粉磁心成形体中の組成比率を、強磁性粉a(vol%)、バインダー樹
脂b(vol%)、空隙率c(vol%)とした時、 a+b+c=100(vol%) と考え、空隙率c(vol%)をも考慮して圧粉磁心を形成する。 第1図に圧粉磁心の製造工程の一例を示す。 尚、同図においては、強磁性粉としての粒径500μm以下の還元鉄粉、バイ
ンダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いた例を示し、配合比は、カップリング剤を
含めてエポキシ樹脂を3重量%とし、残部を還元鉄粉とする。 所定の配合比で秤量された還元鉄粉とエポキシ樹脂(カップリング剤含む)は
、撹拌器内で約1時間混合・撹拌され(S2)、その後、金型内に充填され、所
定の圧力(例えば2.6トン/cm2)で圧縮成形される(S3)。圧縮成形後
、成形体は150°Cの温度下で1時間加熱硬化された後(S4)、自然冷却さ
れ、圧粉磁心が形成される(S5)。 さて、このようにして製作された圧粉磁心について、バインダー樹脂量と成形
圧力と空隙率の関係を調査すると、第3図に示す結果が得られた。同図より明ら
かなように、バインダー樹脂(エポキシ樹脂+カップリング剤)の量を一定とし
ても、成形圧力により空隙率が異なることは明らかである。 ところで、磁気的性質についてみると、バインダー樹脂と空隙とは共に非磁性
であるから、成形体中におけるバインダ ー樹脂と空隙との和が占める割合が非磁性部分の割合と考えられる。そこで、バ
インダー樹脂量と空隙率との和を1つの非磁性要因の占める割合とし、この成形
体中におけるバインダー樹脂と空隙率が占める割合(体積%)を種々変えて圧粉
磁心を形成し、磁気特性を測定したところ、第4図に示すようになった。 尚、第4図に示す磁気特性は、本願出願人が先に提出した特願昭62−245
385号「電磁駆動装置」に記載されたリニアモータの内ヨークとして圧粉磁心
を適用した時のモータ特性を持って、磁気特性の代用とした。 ここで、測定に適用されたリニアモータは第6図に示すごとく構成されており
、図中符号1は駆動コイル、符号2は圧粉磁心からなるヨーク、符号3は外ヨー
ク、符号4は永久磁石を夫々示しており、ホビンに巻かれた駆動コイル1が内ヨ
ーク2を囲繞してその軸方向に移動自在に設けられ、内ヨーク2の両端部がその
ヨーク3に結合されて閉磁路が形成されている。そして、永久磁石4が外ヨーク
3の内面に固定されて駆動コイル2の外周面と対向し、駆動コイル1は通電され
ることによって内ヨーク2に沿って移動する。 さて、磁気特性の測定に当たって、第4図に示す磁気ギャップ磁束密度は、第
6図中の内ヨーク2と永久磁石4間での磁気ギャップdにおける磁束密度を示し
、永久磁石4には、残留磁束密度Br2600[G]、保持力Hc2450[O
e]、寸法L58.5mm×W19mm×t6mmのものを使用した。また、内
ヨーク2の寸法はL75mm×W19m m×t6.4mmとし、磁気ギャップdは2.54mmとした。 また、駆動コイル1の伝達特性として、カットオフ周波数fc、 fc=[(Rc+Rs)・l]/(2πμSN2) の測定を行った。 ここで、上記カットオフ周波数について、第7図を参照して簡単に説明する。 先ず、駆動コイルの伝達特性について考察する。 駆動コイルの直流抵抗をRc、自己インダクタンスLとすると、駆動コイルの
インピーダンスZcは であるので、第7図(a)、(b)に示すように、ドライブ電圧Vin(S)と
電流検出抵抗Rs部の出力電圧Vout(S)の伝達関数は、 となり、また、Rc》Rsよりゲインは、 また、カットオフ周波数fcは、 fc=(Rc+Rs)/2πL [Hz] ・・・・(3) となる。 ここで、第7図(d)のように、コイルが空心のような理想的状態にあれば、
LとRcは常数として考えられ、伝達特性は、(1)式の示すLの1次遅れ(位相
回り90°)となる。 しかしながら、駆動コイルの空心部には、第6図に示したように、磁気回路の
内ヨーク2が磁心として入っているので、実際の等価回路は第7図(c)のよう
になり、0.85次(78°)とか0.6次(54°)となってしまう。すなわ
ち、コイルの伝達特性が理想系とならないのは、コイル内に内ヨークが磁心とし
て入っているためである。 そこで、第7図(e)に示すように、コイル内に断面積S、透磁率μの磁心が
入っている場合を考察すると、コイルの巻巾1、巻数N、そして通電電流Iとし
て、コイルの自己インダクタンスLは、 L=NΦ/I=μSN2/l ・・・・(4) ;(Φ=μHS、H=NI/l) となる。 ここで、カットオフ周波数fcに注目して考えると、(4)式を上記(3)式に代入
して、 fc={(Rc+Rs)・l}/(2πμSN2)・・・・(4) となる。すなわち、カットオフ周波数fcは、コイルの直流抵抗+電流検出抵抗
(Rc+Rs)とコイルの巻巾lに比例し、ヨークの透磁率μ、断面積S、コイ
ルの巻数Nの2乗に反比例する。 ここで、(Rc+Rs)、l、Sは第6図に示すリニアモータの仕様(電流、
体格、推力特性等)で決定されるもので、設計上の自由度が小さいため固定して
考えられる。また、巻数Nについても固定して考える。したがってカットオフ周
波数fcはヨークの透磁率μの設計で決定される。なお、μを 小さくするとカットオフ周波数fcが大きくなり、S/N比が向上される。 さて、以上説明したように、カットオフ周波数fcはヨーク(磁心)の透磁率
μによって変化する。そこで、カットオフ周波数fcの測定によって、ヨークの
磁気特性の代用とする。 なお、カットオフ周波数fcの測定に当たっては、駆動コイルの巻数Nを64
0ターン、巻巾l=0.022m、Rc+Rs=33.6Ω(Rc・・・コイル
の直流抵抗、Rs・・電流検出抵抗)、S=0.0064×0.019=1.2
×10-4m(内ヨーク断面積)とした。 さて、第6図に示した構成からなるリニアモータの内ヨークを圧粉磁心で形成
した場合、先に述べたように、圧粉磁心2のバインダー樹脂と空隙の和と、カッ
トオフ周波数及び磁気ギャップ磁束密度との関係は第4図に示すようになる。 第4図から明らかなように、ギャップ磁束密度は、圧粉磁心(内ヨーク)中に
おけるバインダー樹脂と空隙との和の割合が30vol%当りから急速に減少し
、50vol%を超えると半分以下の0.5kG以下となってしまい実質的に使
用不可となる。したがって、モータの磁心としての機能を果たすためには圧粉磁
心(内ヨーク)中におけるバインダー樹脂と空隙との和の割合は50vol%以
下である必要がある。 次にカットオフ周波数について見ると、圧粉磁心(内ヨーク)中におけるバイ
ンダー樹脂と空隙との和の割合が7vol%以下では周波数特性が悪化してしま
い、実質的に使用不 可能となる。 従って、本発明においては、圧粉磁心の成形体中におけるバインダー樹脂の占
めるバインダー樹脂体積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める
空隙体積率との和が、7vol%以上で且つ50vol%以下となるように圧粉
磁心を成形する。 ところで、本発明による圧粉磁心において使用される強磁性粉としては、鉄、
鉄合金及びフェライト等が使用されるが、これら強磁性粉には、粒径が500μ
m以下のものを使用する。これは、粒径が500μm以上になると、渦電流が発
生しやすくなり、周波数特性が悪化するからであり、また、モータの磁心として
使用した際に、万一磁粉が脱落した場合に、粒径が大きいと、機器の可動部に磁
粉がかみ込んでロックの原因となることがあるからである。 また、圧粉磁心の成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバインダー樹脂体
積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積率との和が、
7vol%以上で且つ50vol%以下と規定したが、バインダー樹脂量が2v
ol以下では、磁粉間の絶縁性が悪くなり、周波数特性が悪化するため、バイン
ダー樹脂量は2vol%以上とする。また、バインダー樹脂量が30vol%で
も使用可能であるが、望ましくは30vol%以下に規定した方がギャップ磁束
密度の低下を抑えられる。 さらにまた、空隙率の成形体に占める割合は、30vol%以上だと、成形体
強度が不足するため、30vol%以下 にする。尚、通常の圧縮成形(熱間等方性プレス(HIP)、冷間等方性プレス
(CIP))による成形方法では、空隙率は5%以下のものは作れない。 従って、本発明による圧粉磁心においては、バインダー樹脂の成形体に占める
割合が2〜30vol%の範囲内にあり、空隙の成形体に占める割合が5〜30
vol%の範囲内にあり、且つ、成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバイ
ンダー樹脂体積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積
率との和が、7vol%以上で且つ50vol%以下となるように規定する。 このように、本発明においては、圧粉磁心の成形体を構成する非磁性要素(バ
インダー樹脂及び空隙)と磁性要素(強磁性粉)の比率を明確化したので、使用
上必要な磁気特性を持った圧粉磁心を意図的に製作することができる。 また、非磁性要素のバインダー樹脂と空隙率の組合せを選択することにより磁
気特性を自由に設定することも可能となる。 ところで、本発明による圧粉磁心において、成形体中の空隙率が上限値(30
Vol%)側にある場合には、成形体強度が低下するという問題が生じる。 そこで、本発明では、圧縮成形後の成形体中のバインダー樹脂間に形成される
空隙に樹脂含浸を施し、成形体の強度を大きくする。 ここで、上記含浸用の樹脂としては、例えば、液状エポキシ樹脂が使用され、
その作成方法としては、 ・エポキシ樹脂(エピコート828) 100phr、 ・硬化剤 (エピキュアT) 20phr、 ・希釈剤(アセトン、トルエン等の溶剤)を適量、混合して作成する。 第5図は上記成形体への樹脂含浸を含めた圧粉磁心の製造工程の一例を示し、
同図においては、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂、強磁性粉として粒径50
0μmの還元鉄粉をを用いた例を示す。尚、配合比はエポキシ樹脂(カップリン
グ剤を含む)3重量%、還元鉄粉を97重量%とした。 第5図において、所定の配合比で秤量された還元鉄粉とエポキシ樹脂(カップ
リング剤を含む)は、撹拌機内で約1時間撹拌・混合され(S2)、混合後、金
型内に充填され所定の圧縮圧(例えば、2トン/cm2)で圧縮成形される(S
3)。圧縮成形後、成形体は真空容器内で5×10-2Torrの真空度の下でガ
ス抜きされた後、その真空容器内に充填された粘度8000cps(センチポイ
ズ)のエポキシ樹脂溶液中に10分間浸漬され、成形体の空隙内にエポキシ樹脂
が含浸される(S4)。エポキシ樹脂含浸後の成形体は真空容器内から取り出さ
れた後、1500°Cの温度で約1時間加熱処理され硬化され(S5)、圧粉磁
心が形成される(S6)。 さて、このようにして形成された本発明による圧粉磁心と、上記エポキシ樹脂
溶液中に常温、常圧のもと30分間浸漬されて形成された圧粉磁心と、含浸処理
を全く施さない圧粉磁心との強度を第8図に示す抗折試験法(3点曲げ試験)を
用 いて測定したところ、次の結果が得られた。 尚、第8図において、圧粉磁心の試験片2としては、全長a=75mm、巾b
=19mm、厚さh≒6.5mmのものを使用し、また、支点6の直径5mm、
支点6間距離はL=54mmとした。 また、破壊荷重をF(kg)とすると、曲げ破壊強度(抗折強度)σは σ=3FL/2bh(kg/mm2) より求められる。 さて、上記試験結果から明らかなように、抗折強度σは真空浸漬処理品が最も
強く、JIS K 7203プラスチックにほぼ準ずる強度が得られた。 このように、本発明による圧粉磁心では、成形体の形成後に真空含浸処理が施
されるため、成形体中の空隙が減少し、成形体強度が大きくなる。尚、真空含浸
処理では、成形体中の全空隙の約90%に含浸樹脂が行き渡るが、単に浸漬処理
しただけのものでは、全空隙の約30%程度にしか樹脂が含浸されないため、上
記結果に示す如く、抗折強度が真空含浸処理品と比べて弱くなる。 ここで、成形体への真空含浸に使用される含浸樹脂としては、上記エポキシ樹
脂の他、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。 以上、説明したように、本発明による圧粉磁心では、成形体中の空隙に樹脂を
真空含浸したことにより、バインダー樹脂と含浸樹脂とを強固に結合することが
でき、圧粉磁心の抗折強度を大幅に向上することができる。 また、本発明による圧粉磁心では樹脂含浸が施されているため、モータの巻線
コアとして使用する場合に、巻線との絶縁性が保たれ、インシュレータや絶縁塗
装等を廃止することができる。 尚、本発明による圧粉磁心は、上記モータのコアの他、コァ付スロットレスモ
ータの基盤(その上に回路を形成することも可)、ロータリートランスのコア(
先端に高透磁率材を蒸着する)、防振材、磁気遮蔽材としての応用(CDプレー
ヤのシャーシ等)、スピーカのポールピースなど、種々の電気機器に使用可能で
ある。 (発明の効果) 以上実施例に基づいて説明したように、本発明による圧粉磁心においては、強
磁性粉をバインダー樹脂を用いて成形圧2.0トン/cm2以上2.6トン/c
m2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉の粒径を500μ
m以下として、成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバインダー樹脂体積率
と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積率との和が7vo
l%以上で且つ50vol以下となるように規定し、圧粉磁心の成形体を構成す
る非磁性要素(バインダー樹脂及び空隙)と磁性要素(強磁性粉)の比率を明確
化したので、使用上必要な磁気特性を持っ た圧粉磁心を意図的に製作することができる。 また、非磁性要素のバインダー樹脂と空隙率の組合せを選択することにより磁
気特性を自由に設定することも可能となる。 さらにまた、成形体中の空隙に硬化剤を含んだ樹脂を真空含浸したことにより
、バインダー樹脂と含浸樹脂とを強固に結合することができ、圧粉磁心の抗折強
度を磁気特性を変えることなく大幅に向上することができ、且つ、電気絶縁性を
も大幅に向上することができる。 したがって、本発明によれば、所望の磁気特性を有し、且つ、強度特性、絶縁
性をも大幅に向上された圧粉磁心を提供することができる。
ータの基板、防振材、スピーカのポールピース等に使用可能な圧粉磁心に関する
。 (従来の技術) 従来より、鉄や鉄合金若しくはフェライト等の強磁性粉をエポキシ樹脂等のバ
インダー樹脂を用いて結合させ所定形状 に成形した圧粉磁心が良く知られている(例えば、特公昭47−22514号、
特公昭50−14207号、特開昭49−4197号等)。 この種の圧粉磁心は、通常、鉄や鉄合金若しくはフェライト等の強磁性粉と、
エポキシ樹脂等のバインダー樹脂とを混合した後、金型内に充填し圧縮成形して
形成されるか、若しくは、強磁性粉にエポキシ樹脂等のバインダー樹脂を被覆し
た後、金型内に充填し圧縮成形して形成されている。 ところで、この種の圧粉磁心では、その磁気特性は成形体中における強磁性粉
の密度に依存し、強磁性粉とバインダー樹脂との配合比が磁気特性を大きく左右
する。このため、従来技術では、強磁性粉とバインダー樹脂とを混合し圧縮成形
して形成される圧粉磁心について、その組成物の含有比率(配合比)を、成形体
中に占めるバインダー樹脂及び強磁性粉の体積%若しくは重量%として規定して
いた。 (発明が解決しようとする課題) ところで、成形後の圧粉磁心内のバインダー樹脂間には、通常、バインダー樹
脂の溶媒等が揮発した後の空隙が形成されるが、成形体中における、この空隙率
の高低によって、成形体全体の密度が変化し、成形体中の強磁性粉密度が変わっ
てしまうことがある。このため、空隙率の高低によって圧粉磁心の磁気特性が当
初の予定より変化してしまい問題となる。しかるに、従来技術による圧粉磁心で
は、空隙率に対する配慮がなされておらず、配合比がバインダー樹脂と強磁性粉
の成形体中における含有率のみで規定されているため、バイン ダー樹脂量及び強磁性粉量が一定であったとしても成形時の圧力等の違いにより
空隙率が変化してしまい圧粉磁心の磁気特性に大きな影響を及ぼすことがあり問
題となる。 例えば、バインダー樹脂の体積%を30vol%(体積%)とし、成形圧力を
変えて圧粉磁心を形成した場合に、成形圧によって表1に示すように空隙率が変
化してしまい、結果として、成形体中における強磁性粉密度が変化し、磁気特性
が変化してしまう。 したがって、従来技術のように、バインダー樹脂と強磁性粉との配合比にのみ
着目して製造された圧粉磁心では、同配合比で形成された圧粉磁心でも空隙率の
違いにより磁気特性にばらつきが生じ、製品としての信頼性が乏しくなるという
欠点を有する。 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、圧粉磁心の成形体中におけ
る強磁性粉、バインダー樹脂、及び空隙の占有率を規定することにより、圧粉磁
心の磁気特性を明確化し、目的にかなった磁気特性を有する圧粉磁心を常に安定
して提供することを目的とする。 (課題を解決するための手段) 上記目的を達成するため、本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて成
形圧2.0トン/cm2以上2.6トン /cm2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉の粒径を50
0μm以下として、成形体中における上記バインダー樹脂の占めるバインダー樹
脂体積率(体積%)と、該バインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積
率(体積%)との和が、7体積%以上で且つ50体積%以下となるように成形さ
れたことを特徴とする。 また、上記圧粉磁心において、成形体中のバインダー樹脂間に形成される空隙
に硬化剤を含んだ樹脂を含浸したことを特徴とする。 (作用) 本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて成形圧2.0トン/cm2以
上2.6トン/cm2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉
の粒径を500μm以下として、成形体中における上記バインダー樹脂の占める
バインダー樹脂体積率(体積%)と、該バインダー樹脂間に形成される空隙の占
める空隙体積率(体積%)との和を、7体積%以上で且つ50体積%以下となる
ように規定したことにより、全体積(強磁性粉+バインダー樹脂+空隙)に占め
る強磁性粉の割合(密度)が明確化され、目的にかなった磁気特性を得ることが
可能となる。 (実施例) 以下、本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。 本発明では、強磁性粉をバインダー樹脂を用いて結合させ成形した圧粉磁心に
おいて、成形体中における組成物の含有比率を、強磁性粉とバインダー樹脂のみ
ならずバインダー樹 脂間に形成される空隙をも考慮して、第2図に示す如く規定する。即ち、本発明
では、圧粉磁心成形体中の組成比率を、強磁性粉a(vol%)、バインダー樹
脂b(vol%)、空隙率c(vol%)とした時、 a+b+c=100(vol%) と考え、空隙率c(vol%)をも考慮して圧粉磁心を形成する。 第1図に圧粉磁心の製造工程の一例を示す。 尚、同図においては、強磁性粉としての粒径500μm以下の還元鉄粉、バイ
ンダー樹脂としてエポキシ樹脂を用いた例を示し、配合比は、カップリング剤を
含めてエポキシ樹脂を3重量%とし、残部を還元鉄粉とする。 所定の配合比で秤量された還元鉄粉とエポキシ樹脂(カップリング剤含む)は
、撹拌器内で約1時間混合・撹拌され(S2)、その後、金型内に充填され、所
定の圧力(例えば2.6トン/cm2)で圧縮成形される(S3)。圧縮成形後
、成形体は150°Cの温度下で1時間加熱硬化された後(S4)、自然冷却さ
れ、圧粉磁心が形成される(S5)。 さて、このようにして製作された圧粉磁心について、バインダー樹脂量と成形
圧力と空隙率の関係を調査すると、第3図に示す結果が得られた。同図より明ら
かなように、バインダー樹脂(エポキシ樹脂+カップリング剤)の量を一定とし
ても、成形圧力により空隙率が異なることは明らかである。 ところで、磁気的性質についてみると、バインダー樹脂と空隙とは共に非磁性
であるから、成形体中におけるバインダ ー樹脂と空隙との和が占める割合が非磁性部分の割合と考えられる。そこで、バ
インダー樹脂量と空隙率との和を1つの非磁性要因の占める割合とし、この成形
体中におけるバインダー樹脂と空隙率が占める割合(体積%)を種々変えて圧粉
磁心を形成し、磁気特性を測定したところ、第4図に示すようになった。 尚、第4図に示す磁気特性は、本願出願人が先に提出した特願昭62−245
385号「電磁駆動装置」に記載されたリニアモータの内ヨークとして圧粉磁心
を適用した時のモータ特性を持って、磁気特性の代用とした。 ここで、測定に適用されたリニアモータは第6図に示すごとく構成されており
、図中符号1は駆動コイル、符号2は圧粉磁心からなるヨーク、符号3は外ヨー
ク、符号4は永久磁石を夫々示しており、ホビンに巻かれた駆動コイル1が内ヨ
ーク2を囲繞してその軸方向に移動自在に設けられ、内ヨーク2の両端部がその
ヨーク3に結合されて閉磁路が形成されている。そして、永久磁石4が外ヨーク
3の内面に固定されて駆動コイル2の外周面と対向し、駆動コイル1は通電され
ることによって内ヨーク2に沿って移動する。 さて、磁気特性の測定に当たって、第4図に示す磁気ギャップ磁束密度は、第
6図中の内ヨーク2と永久磁石4間での磁気ギャップdにおける磁束密度を示し
、永久磁石4には、残留磁束密度Br2600[G]、保持力Hc2450[O
e]、寸法L58.5mm×W19mm×t6mmのものを使用した。また、内
ヨーク2の寸法はL75mm×W19m m×t6.4mmとし、磁気ギャップdは2.54mmとした。 また、駆動コイル1の伝達特性として、カットオフ周波数fc、 fc=[(Rc+Rs)・l]/(2πμSN2) の測定を行った。 ここで、上記カットオフ周波数について、第7図を参照して簡単に説明する。 先ず、駆動コイルの伝達特性について考察する。 駆動コイルの直流抵抗をRc、自己インダクタンスLとすると、駆動コイルの
インピーダンスZcは であるので、第7図(a)、(b)に示すように、ドライブ電圧Vin(S)と
電流検出抵抗Rs部の出力電圧Vout(S)の伝達関数は、 となり、また、Rc》Rsよりゲインは、 また、カットオフ周波数fcは、 fc=(Rc+Rs)/2πL [Hz] ・・・・(3) となる。 ここで、第7図(d)のように、コイルが空心のような理想的状態にあれば、
LとRcは常数として考えられ、伝達特性は、(1)式の示すLの1次遅れ(位相
回り90°)となる。 しかしながら、駆動コイルの空心部には、第6図に示したように、磁気回路の
内ヨーク2が磁心として入っているので、実際の等価回路は第7図(c)のよう
になり、0.85次(78°)とか0.6次(54°)となってしまう。すなわ
ち、コイルの伝達特性が理想系とならないのは、コイル内に内ヨークが磁心とし
て入っているためである。 そこで、第7図(e)に示すように、コイル内に断面積S、透磁率μの磁心が
入っている場合を考察すると、コイルの巻巾1、巻数N、そして通電電流Iとし
て、コイルの自己インダクタンスLは、 L=NΦ/I=μSN2/l ・・・・(4) ;(Φ=μHS、H=NI/l) となる。 ここで、カットオフ周波数fcに注目して考えると、(4)式を上記(3)式に代入
して、 fc={(Rc+Rs)・l}/(2πμSN2)・・・・(4) となる。すなわち、カットオフ周波数fcは、コイルの直流抵抗+電流検出抵抗
(Rc+Rs)とコイルの巻巾lに比例し、ヨークの透磁率μ、断面積S、コイ
ルの巻数Nの2乗に反比例する。 ここで、(Rc+Rs)、l、Sは第6図に示すリニアモータの仕様(電流、
体格、推力特性等)で決定されるもので、設計上の自由度が小さいため固定して
考えられる。また、巻数Nについても固定して考える。したがってカットオフ周
波数fcはヨークの透磁率μの設計で決定される。なお、μを 小さくするとカットオフ周波数fcが大きくなり、S/N比が向上される。 さて、以上説明したように、カットオフ周波数fcはヨーク(磁心)の透磁率
μによって変化する。そこで、カットオフ周波数fcの測定によって、ヨークの
磁気特性の代用とする。 なお、カットオフ周波数fcの測定に当たっては、駆動コイルの巻数Nを64
0ターン、巻巾l=0.022m、Rc+Rs=33.6Ω(Rc・・・コイル
の直流抵抗、Rs・・電流検出抵抗)、S=0.0064×0.019=1.2
×10-4m(内ヨーク断面積)とした。 さて、第6図に示した構成からなるリニアモータの内ヨークを圧粉磁心で形成
した場合、先に述べたように、圧粉磁心2のバインダー樹脂と空隙の和と、カッ
トオフ周波数及び磁気ギャップ磁束密度との関係は第4図に示すようになる。 第4図から明らかなように、ギャップ磁束密度は、圧粉磁心(内ヨーク)中に
おけるバインダー樹脂と空隙との和の割合が30vol%当りから急速に減少し
、50vol%を超えると半分以下の0.5kG以下となってしまい実質的に使
用不可となる。したがって、モータの磁心としての機能を果たすためには圧粉磁
心(内ヨーク)中におけるバインダー樹脂と空隙との和の割合は50vol%以
下である必要がある。 次にカットオフ周波数について見ると、圧粉磁心(内ヨーク)中におけるバイ
ンダー樹脂と空隙との和の割合が7vol%以下では周波数特性が悪化してしま
い、実質的に使用不 可能となる。 従って、本発明においては、圧粉磁心の成形体中におけるバインダー樹脂の占
めるバインダー樹脂体積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める
空隙体積率との和が、7vol%以上で且つ50vol%以下となるように圧粉
磁心を成形する。 ところで、本発明による圧粉磁心において使用される強磁性粉としては、鉄、
鉄合金及びフェライト等が使用されるが、これら強磁性粉には、粒径が500μ
m以下のものを使用する。これは、粒径が500μm以上になると、渦電流が発
生しやすくなり、周波数特性が悪化するからであり、また、モータの磁心として
使用した際に、万一磁粉が脱落した場合に、粒径が大きいと、機器の可動部に磁
粉がかみ込んでロックの原因となることがあるからである。 また、圧粉磁心の成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバインダー樹脂体
積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積率との和が、
7vol%以上で且つ50vol%以下と規定したが、バインダー樹脂量が2v
ol以下では、磁粉間の絶縁性が悪くなり、周波数特性が悪化するため、バイン
ダー樹脂量は2vol%以上とする。また、バインダー樹脂量が30vol%で
も使用可能であるが、望ましくは30vol%以下に規定した方がギャップ磁束
密度の低下を抑えられる。 さらにまた、空隙率の成形体に占める割合は、30vol%以上だと、成形体
強度が不足するため、30vol%以下 にする。尚、通常の圧縮成形(熱間等方性プレス(HIP)、冷間等方性プレス
(CIP))による成形方法では、空隙率は5%以下のものは作れない。 従って、本発明による圧粉磁心においては、バインダー樹脂の成形体に占める
割合が2〜30vol%の範囲内にあり、空隙の成形体に占める割合が5〜30
vol%の範囲内にあり、且つ、成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバイ
ンダー樹脂体積率と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積
率との和が、7vol%以上で且つ50vol%以下となるように規定する。 このように、本発明においては、圧粉磁心の成形体を構成する非磁性要素(バ
インダー樹脂及び空隙)と磁性要素(強磁性粉)の比率を明確化したので、使用
上必要な磁気特性を持った圧粉磁心を意図的に製作することができる。 また、非磁性要素のバインダー樹脂と空隙率の組合せを選択することにより磁
気特性を自由に設定することも可能となる。 ところで、本発明による圧粉磁心において、成形体中の空隙率が上限値(30
Vol%)側にある場合には、成形体強度が低下するという問題が生じる。 そこで、本発明では、圧縮成形後の成形体中のバインダー樹脂間に形成される
空隙に樹脂含浸を施し、成形体の強度を大きくする。 ここで、上記含浸用の樹脂としては、例えば、液状エポキシ樹脂が使用され、
その作成方法としては、 ・エポキシ樹脂(エピコート828) 100phr、 ・硬化剤 (エピキュアT) 20phr、 ・希釈剤(アセトン、トルエン等の溶剤)を適量、混合して作成する。 第5図は上記成形体への樹脂含浸を含めた圧粉磁心の製造工程の一例を示し、
同図においては、バインダー樹脂としてエポキシ樹脂、強磁性粉として粒径50
0μmの還元鉄粉をを用いた例を示す。尚、配合比はエポキシ樹脂(カップリン
グ剤を含む)3重量%、還元鉄粉を97重量%とした。 第5図において、所定の配合比で秤量された還元鉄粉とエポキシ樹脂(カップ
リング剤を含む)は、撹拌機内で約1時間撹拌・混合され(S2)、混合後、金
型内に充填され所定の圧縮圧(例えば、2トン/cm2)で圧縮成形される(S
3)。圧縮成形後、成形体は真空容器内で5×10-2Torrの真空度の下でガ
ス抜きされた後、その真空容器内に充填された粘度8000cps(センチポイ
ズ)のエポキシ樹脂溶液中に10分間浸漬され、成形体の空隙内にエポキシ樹脂
が含浸される(S4)。エポキシ樹脂含浸後の成形体は真空容器内から取り出さ
れた後、1500°Cの温度で約1時間加熱処理され硬化され(S5)、圧粉磁
心が形成される(S6)。 さて、このようにして形成された本発明による圧粉磁心と、上記エポキシ樹脂
溶液中に常温、常圧のもと30分間浸漬されて形成された圧粉磁心と、含浸処理
を全く施さない圧粉磁心との強度を第8図に示す抗折試験法(3点曲げ試験)を
用 いて測定したところ、次の結果が得られた。 尚、第8図において、圧粉磁心の試験片2としては、全長a=75mm、巾b
=19mm、厚さh≒6.5mmのものを使用し、また、支点6の直径5mm、
支点6間距離はL=54mmとした。 また、破壊荷重をF(kg)とすると、曲げ破壊強度(抗折強度)σは σ=3FL/2bh(kg/mm2) より求められる。 さて、上記試験結果から明らかなように、抗折強度σは真空浸漬処理品が最も
強く、JIS K 7203プラスチックにほぼ準ずる強度が得られた。 このように、本発明による圧粉磁心では、成形体の形成後に真空含浸処理が施
されるため、成形体中の空隙が減少し、成形体強度が大きくなる。尚、真空含浸
処理では、成形体中の全空隙の約90%に含浸樹脂が行き渡るが、単に浸漬処理
しただけのものでは、全空隙の約30%程度にしか樹脂が含浸されないため、上
記結果に示す如く、抗折強度が真空含浸処理品と比べて弱くなる。 ここで、成形体への真空含浸に使用される含浸樹脂としては、上記エポキシ樹
脂の他、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。 以上、説明したように、本発明による圧粉磁心では、成形体中の空隙に樹脂を
真空含浸したことにより、バインダー樹脂と含浸樹脂とを強固に結合することが
でき、圧粉磁心の抗折強度を大幅に向上することができる。 また、本発明による圧粉磁心では樹脂含浸が施されているため、モータの巻線
コアとして使用する場合に、巻線との絶縁性が保たれ、インシュレータや絶縁塗
装等を廃止することができる。 尚、本発明による圧粉磁心は、上記モータのコアの他、コァ付スロットレスモ
ータの基盤(その上に回路を形成することも可)、ロータリートランスのコア(
先端に高透磁率材を蒸着する)、防振材、磁気遮蔽材としての応用(CDプレー
ヤのシャーシ等)、スピーカのポールピースなど、種々の電気機器に使用可能で
ある。 (発明の効果) 以上実施例に基づいて説明したように、本発明による圧粉磁心においては、強
磁性粉をバインダー樹脂を用いて成形圧2.0トン/cm2以上2.6トン/c
m2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉の粒径を500μ
m以下として、成形体中におけるバインダー樹脂の占めるバインダー樹脂体積率
と、そのバインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積率との和が7vo
l%以上で且つ50vol以下となるように規定し、圧粉磁心の成形体を構成す
る非磁性要素(バインダー樹脂及び空隙)と磁性要素(強磁性粉)の比率を明確
化したので、使用上必要な磁気特性を持っ た圧粉磁心を意図的に製作することができる。 また、非磁性要素のバインダー樹脂と空隙率の組合せを選択することにより磁
気特性を自由に設定することも可能となる。 さらにまた、成形体中の空隙に硬化剤を含んだ樹脂を真空含浸したことにより
、バインダー樹脂と含浸樹脂とを強固に結合することができ、圧粉磁心の抗折強
度を磁気特性を変えることなく大幅に向上することができ、且つ、電気絶縁性を
も大幅に向上することができる。 したがって、本発明によれば、所望の磁気特性を有し、且つ、強度特性、絶縁
性をも大幅に向上された圧粉磁心を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による圧粉磁心の製造工程の一例を示す工程図、第2図は本発
明による圧粉磁心の組成比率を示す図、第3図は本発明による圧粉磁心の成形時
における圧縮圧力を一定としたときのバインダー樹脂量と空隙率との関係を示す
グラフ、第4図は本発明による圧粉磁心のバインダー樹脂量+空隙率と磁気特性
との関係を示すグラフ、第5図は本発明による圧粉磁心の別の製造工程の一例を
示す工程図、第6図は本発明による圧粉磁心の磁気特性の測定に用いられるリニ
アモータの正面図、第7図(a)〜(e)は第6図に示すリニアモータの駆動コ
イルにおけるカットオフ周波数の説明に用いられる説明図、第8図は圧粉磁心の
抗折強度試験の一例を示す図である。 1・・・・駆動コイル、2・・・圧粉磁心、3・・・・外ヨーク、4・・・・
永久磁石、5・・・・荷重、6・・・・支点。
明による圧粉磁心の組成比率を示す図、第3図は本発明による圧粉磁心の成形時
における圧縮圧力を一定としたときのバインダー樹脂量と空隙率との関係を示す
グラフ、第4図は本発明による圧粉磁心のバインダー樹脂量+空隙率と磁気特性
との関係を示すグラフ、第5図は本発明による圧粉磁心の別の製造工程の一例を
示す工程図、第6図は本発明による圧粉磁心の磁気特性の測定に用いられるリニ
アモータの正面図、第7図(a)〜(e)は第6図に示すリニアモータの駆動コ
イルにおけるカットオフ周波数の説明に用いられる説明図、第8図は圧粉磁心の
抗折強度試験の一例を示す図である。 1・・・・駆動コイル、2・・・圧粉磁心、3・・・・外ヨーク、4・・・・
永久磁石、5・・・・荷重、6・・・・支点。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 強磁性粉をバインダー樹脂を用いて成形圧2.0トン/cm2以上2.6トン
/cm2以下で結合させ成形した圧粉磁心において、上記強磁性粉の粒径を50
0μm以下として、成形体中における上記バインダー樹脂の占めるバインダー樹
脂体積率(体積%)と、該バインダー樹脂間に形成される空隙の占める空隙体積
率(体積%)との和が、7体積%以上で且つ50体積%以下となるように成形さ
れたことを特徴とする圧粉磁心。 【請求項2】 請求項1記載の圧粉磁心において、成形体中のバインダー樹脂間に形成される
空隙に硬化剤を含んだ樹脂を含浸したことを特徴とする圧粉磁心。
Family
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