JP2629119B2 - 壁パネル下部の取付金具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、壁パネルを梁に取り付
ける壁パネル下部の取付金具に関し、特に壁パネルの下
部を簡易かつ正確に取り付けるものである。

【０００２】

【従来の技術】壁パネルを躯体（梁等）に取り付ける場
合、壁パネル側に固定した取付金具を、梁側に固定した
支持部材へ係止させ、壁パネルを躯体側に取り付けるの
が一般的である。このような取付金具と支持部材とに
は、施工誤差を調整して解消する目的で、壁パネルの取
り付けレベルや、躯体からの出入りを調整する機構が設
けられる。調整機構では、取付精度が容易に出せるよう
にするため、一般的にボルト、及び金具自体を利用して
位置決め調整ができるようになっている。

【０００３】例えば、実公昭６２−２７６０１号公報に
開示されている如く取付金具に水平方向の前後または左
右の位置を調節し、前後の場合は前後の両端から、また
左右の場合は左右の両端から位置固定するためにそれぞ
れ前後または左右にネジ式位置調節具が設けられている
ものがある。このような取付金具によれば、ネジ式位置
調節具を前後または左右の両側から位置固定するため、
位置安定性が良好で、レベル、出入りとも極めて精度よ
く壁パネルを躯体側に取り付けることができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複数の
ネジ式位置調節具が設けられる従来の取付金具では、ネ
ジ式位置調節具による調整をそれぞれ一つのパネルに対
して複数回行わなければならず、作業が煩雑であり、構
築する建物が大きい場合には調整作業に多大な時間を要
することになり、施工コストが増大する欠点があった。
また、従来の取付金具では、壁パネルと取付金物との位
置関係からネジ式位置調節具が長くなることがあり、数
百ｋｇのパネル荷重を負担する場合では、ボルトに強度
的な不安が生じた。

【０００５】本発明は上記状況に鑑みてなされたもの
で、壁パネル取り付け時の調整が容易であるとともに、
十分な強度が得られる壁パネル下部の取付金具を提供
し、もって、施工性、信頼性の向上を図ることを目的と
する。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係る壁パネル下部の取付金具の構成は、梁の
上面に固定され立片を有する係止部材と、壁パネルの下
部裏面に取り付けられこの裏面から突出する突出片を有
する壁パネル側部材と、突出片の下辺を含んで欠切され
係止部材の立片に係止する溝と、対向する一対の立片で
突出片を挟むとともにこの立片及び突出片に挿通された
締め付けボルトにより突出片に固定され且つ係止部材に
固定される梁側部材と、締め付けボルトを挿通するため
に突出片又は梁側部材立片の何方か一方に形成さる縦長
のボルト穴とからなることを特徴とするものである。そ
して、壁パネル側部材の突出片を挟む二分割された梁側
部材の一方は、突出片のほか、係止部材の立片にも突き
当てて溶接固定されるものであってもよい。また、ボル
ト挿入方向が上下方向となるナットを突出片に固定し、
ナットに調整ボルトを螺合し、梁側部材を突出片に固定
した際この調整ボルトの下端が当接する受止片を梁側部
材の立片上端に設けるものであってもよい。また、調整
ボルトの螺合部は、突出片の上縁を折曲し且つねじ孔を
形成したものであってもよい。更に、受止片も梁側部材
の立片上縁を折曲したものであってもよい。

【０００７】

【作用】梁の上面に係止部材が溶接固定される一方、壁
パネルの裏面に壁パネル側部材が固定され、この壁パネ
ルが吊り下げられて突出片の溝が係止部材の立片に挿入
される。溝が立片に挿入されることで、壁パネルと梁と
が位置決めされ、締め付けボルトにより立片を介して突
出片に固定された梁側部材が係止部材に固定され、壁パ
ネルが壁パネル側部材、梁側部材、係止部材を介して所
定位置で梁に取り付けられる。二分割された梁側部材の
少なくとも一方が係止部材の立片に溶接固定され、壁パ
ネル側部材、梁側部材、係止部材間の連結強度が向上す
るとともに、壁パネル側部材（壁パネル）の出入り方向
の位置決め固定が容易となる。梁側部材が係止部材に載
置された際、調整ボルトが回動され、壁パネルが壁パネ
ル側部材を介して縦方向に位置調整され、その後締め付
けボルトが本締めされることで、梁と壁パネルとの上下
位置関係が自在に調整される。螺合部、受止片が、突出
片の上縁、梁側部材の立片上縁を折曲して形成され、別
部材を接合する作業がなくなるとともに、接合強度のば
らつきがなくなる。

【０００８】

【実施例】以下、本発明に係る壁パネル下部の取付金具
の好適な実施例を図面を参照して詳細に説明する。図１
は本発明に係る壁パネル下部の取付金具の分解斜視図、
図２は壁パネル下部の取付金具の側面図、図３は壁パネ
ル下部の取付金具の正面図、図４は壁パネル下部の取付
金具の平面図である。図１に示すように、本実施例に係
る壁パネル下部の取付金具１は、壁パネル側部材３と梁
側部材５、及びこれらに縦方向位置調整具７と係止部材
９が付属して構成されたものである。壁パネル側部材３
は、壁パネル１１の裏面に固定される取付片１３と、取
付片１３の中央部から躯体側に突出する突出片１５とか
ら形成されている。壁パネル側部材３は、例えば山形鋼
材を背合わせに固着することで製作される。取付片１３
には縦長のボルト穴１７が穿設され、壁パネル１１の下
部に植設されたアンカナット１９（図２参照）へ固定さ
れる。

【０００９】Ｈ鋼材等からなる梁２１の上面には山形鋼
材からなる係止部材９の一方の片（水平片）９ａが溶接
固定され、係止部材９の他方の片（立片）９ｂは梁２１
の上面に立設された状態となっている。突出片１５には
下辺を含んで縦長に欠切された溝２７が形成され、溝２
７は係止部材９の立片９ｂに係止するようになってい
る。梁側部材５は二分割された一組の支持部材で構成さ
れ、支持部材はそれぞれが山形鋼材からなっている。支
持部材のそれぞれの立片２９ａ、３１ａには縦長のボル
ト穴３３が穿設され、ボルト穴３３と突出片１５に穿設
された穴３５には締め付けボルト３７が挿通されるよう
になっている。つまり、梁側部材５は立片２９ａ、３１
ａが突出片１５を挟むとともに、ボルト穴３３と穴３５
に締め付けボルト３７が挿通され、壁パネル側部材３に
固定されるようになっているのである。尚、ボルト穴３
３が縦長であることにより、突出片１５は縦方向に位置
調整可能となっているが、これはボルト穴３３を丸穴と
し、穴３５を縦長の穴とすることであってもよい。この
ようにして固定された梁側部材５は、水平辺２９ｂ、３
１ｂが係止部材９の水平片９ａ上に溶接固定されること
となる。

【００１０】ところで、壁パネル側部材３の突出片１５
と梁側部材５の立片２９ａには、両者に亘って縦方向位
置調整具７が設けられている。縦方向位置調整具７は縦
方向が挿入方向となるナット３９を突出片１５の側面に
溶接固定するとともに、このナット３９に調整ボルト４
１を螺合し、螺合された調整ボルト４１の下端が当接す
る受止片４３を立片２９ａの上端に取り付けたものであ
る。縦方向位置調整具７は、調整ボルト４１が回動され
ると、調整ボルト４１の下端が昇降してナット３９が受
止片４３に対して離反動し、壁パネル１１が壁パネル側
部材３を介して縦方向に位置調整されるものである。

【００１１】次に、このように構成された壁パネル下部
の取付金具１を用いて壁パネル１１の下部を梁２１へ取
り付ける際の手順を説明する。先ず、梁２１の上面に係
止部材９を載置し、所定位置に位置決めした後溶接固定
する。一方、壁パネル１１の裏面に壁パネル側部材３を
当て、ボルト穴１７に挿入した取付ボルト４５をアンカ
ナット１９へ螺合することで、壁パネル側部材３を壁パ
ネル１１に固定する。

【００１２】壁パネル側部材３が固定された壁パネル１
１を吊り下げ、突出片１５に形成された溝２７を係止部
材９の立片９ｂに挿入する。このとき、梁側部材５の立
片２９ａ、３１ａを突出片１５に締め付けボルト３７で
仮固定し、水平辺２９ｂ、３１ｂを係止部材９の水平片
９ａ上に載置する。また、溝２７を立片９ｂに挿入する
際、ライナ４７を挟入することで、溝２７と立片２９ａ
とのガタつきを防止し、係止状態をより確実にすること
ができる。梁側部材５が係止部材９に載置された状態
で、縦方向位置調整具７の調整ボルト４１を回動し、壁
パネル１１を壁パネル側部材３を介して縦方向に位置調
整し、その後締め付けボルト３７を本締めする。これに
より、梁２１と壁パネル１１との位置関係は自在に調整
され、壁パネル１１の位置決めが容易且つ正確に行われ
ることとなる。位置決め調整完了後、壁パネル側部材３
と梁側部材５、壁パネル側部材３と係止部材９の主要接
触部を溶接し、更に、締め付けボルト３７、ナット、ワ
ッシャと梁側部材５との間を点溶接により緩み止めし、
取り付け強度を向上させる。尚、縦方向位置調整具７の
調整ボルト４１は、壁パネル１１の取り付け後、撤去し
てもよい。

【００１３】上述の壁パネル下部の取付金具１は、構成
される各部材が左右対象であり、これらを一体化するこ
とで製作できるため合理的であるととも、強度、剛性が
高く、壁パネル１１を高精度で取り付けることができ
る。また、壁パネル１１のレベル出しも調整ボルト４１
の回動で行えるため、取付施工が迅速且つ容易にでき、
施工時間を短縮することができる。

【００１４】次に、図５〜図９に基づいて本発明に係る
壁パネル下部の取付金具の他の実施例を説明する。図５
は壁パネル下部の他の取付金具の正面図、図６は図５の
平面図である。この実施例では、梁側部材５の一方５ａ
が、係止部材９の立片９ｂに当接され、この当接部ａ、
及び壁パネル側部材３の突出片１５との当接部ｂが溶接
固定されている。このような固定構造とすることで、第
１実施例で示したライナ４７を利用することなく、壁パ
ネル側部材３（壁パネル）の出入りの位置決め固定を容
易にすることができる。すなわち上記梁側部材５の位置
調整は、ボルト穴３３の幅方向径に余裕をもたせること
で可能となる。また、受止片４３は立片２９ａの上端面
に接合されることで（図５参照）、接合部に剪断荷重が
作用しなくなり、受止片４３の取付強度を向上させるこ
とができる。

【００１５】図７は他の縦方向位置調整具を表す正面
図、図８は図７の平面図である。突出片１５の上部には
上縁が水平に折曲された螺合部５１が形成され、螺合部
５１には調整ボルト４１が螺合されるねじ穴５１ａが形
成されている。一方、立片２９ａの上部には上縁が水平
に折曲された折曲片５３が形成され、折曲片５３には螺
合部５１に螺合された調整ボルト４１の下端が当接され
るようになっている。このように、螺合部５１、折曲片
５３をそれぞれ突出片１５、立片２９ａの上縁を折曲し
た構造とすることで、製造コストの低減が図れるととも
に、溶接による強度のばらつきがなくなり、高い信頼性
を有した縦方向位置調整具７を得ることができる。ま
た、梁側部材５の一方を断面コ字上のチャンネル材５５
（図９参照）で製作することにより、受止片４３の製作
の手間が更に省けるとともに、十分な強度も得ることが
できる。

【００１６】

【発明の効果】本発明に係る壁パネル下部の取付金具
は、上述のように構成されているので、以下に記す効果
を奏する。即ち、壁パネルの取付施工時の位置決めが非
常に行いやすいとともに、迅速にでき、しかも総合強度
と剛性を高くできるので、壁パネル下部が確実に取り付
けられ、施工性、信頼性を著しく向上させることができ
る。また、梁側部材の一方を係止部材の立片に当接さ
せ、突出片共々溶接固定することにより、連結強度を向
上させることができるとともに、壁パネル側部材（壁パ
ネル）の出入りの位置決め固定を一層容易にすることが
できる。更に、調整ボルトの回動により、壁パネルが壁
パネル側部材を介して縦方向に位置調整され、その後締
め付けボルトが本締めされるので、梁と壁パネルとの上
下位置関係が自在に調整でき、施工性を著しく向上させ
ることができる。また、螺合部、受止片が、突出片の上
縁、梁側部材の立片上縁を折曲して形成されるので、別
部材を接合した場合に比べ強度にばらつきがなくなると
ともに、調整ボルトの長さを短くすることもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る壁パネル下部の取付金具の分解斜
視図である。

【図２】本発明に係る壁パネル下部の取付金具の側面図
である。

【図３】本発明に係る壁パネル下部の取付金具の正面図
である。

【図４】本発明に係る壁パネル下部の取付金具の平面図
である。

【図５】他の壁パネル下部の取付金具の正面図である。

【図６】図５の平面図である。

【図７】他の縦方向位置調整具を表す正面図である。

【図８】図７の平面図である。

【図９】チャンネル材を用いた梁側部材の正面図であ
る。

【符号の説明】

１ 壁パネル下部の取付金具 ３ 壁パネル側部材 ５ 梁側部材 ９ 係止部材 ９ｂ 立片 １１ 壁パネル １５ 突出片 ２１ 梁 ２７ 溝 ２９ａ、３１ａ 立片 ３３ 縦長のボルト穴 ３７ 締め付けボルト ３９ ナット ４１ 調整ボルト ４３、５３ 受止片 ５１ 螺合部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−97743（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−56215（ＪＰ，Ｕ) 実開 平３−76915（ＪＰ，Ｕ)

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 梁の上面に固定され立片を有する係止部
   材と、 壁パネルの下部裏面に取り付けられ該裏面から突出する
   突出片を有する壁パネル側部材と、 前記突出片の下辺を含んで欠切され前記係止部材の立片
   に係止する溝と、 対向する一対の立片で前記突出片を挟むとともに該立片
   及び前記突出片に挿通された締め付けボルトにより前記
   突出片に固定され且つ前記係止部材に固定される梁側部
   材と、 前記締め付けボルトを挿通するために前記突出片又は前
   記梁側部材立片の何方か一方に形成さる縦長のボルト穴
   とからなることを特徴とする壁パネル下部の取付金具。
2. 【請求項２】 壁パネル側部材の突出片を挟む二分割さ
   れた梁側部材の一方は、突出片との当接部及び係止部材
   の立片との当接部で溶接固定されたことを特徴とする請
   求項１記載の壁パネル下部の取付金具。
3. 【請求項３】 ボルト挿入方向が上下方向となるナット
   を突出片に固定し、該ナットに調整ボルトを螺合し、梁
   側部材を突出片に固定した際該調整ボルトの下端が当接
   する受止片を該梁側部材の立片上端に設けたことを特徴
   とする請求項１記載の壁パネル下部の取付金具。
4. 【請求項４】 調整ボルトの螺合部は突出片の上縁を折
   曲し且つねじ孔を形成したことを特徴とする請求項３記
   載の壁パネル下部の取付金具。
5. 【請求項５】 受止片は梁側部材の立片上縁を折曲して
   形成したことを特徴とする請求項３記載の壁パネル下部
   の取付金具。