JP2627471B2 - 接地型の連続鉢苗移植機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の技術分野】この発明は、連結片で連結された
連続鉢苗を一端から連続して引き出して順次植え付ける
移植機に係り、特に株間の間隔が１０cm以下となる小間
隔で連続鉢苗を一個一個に分離することなく連続状態の
まま植え付ける接地型の鉢苗移植機に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、紙で作られた四角あるいは六
角柱状の鉢体を用いて植物を栽培する鉢体による育苗移
植栽培が広く実用されている。この栽培法は紙のような
薄膜で作られた四角あるいは六角柱状の鉢体に培養土を
詰め、播種し、灌水管理下にて苗を育て、育苗の完了し
た苗を鉢を付けたままの状態の苗、すなわち鉢苗で圃場
に植え付けて栽培するものであり、これに用いる鉢体と
しては例えば、特公昭３８−２５７１５号公報の開示に
代表される育苗後個々の鉢苗に分離する分離型の集合鉢
と特公昭５５−３０８０５号公報の開示に代表される育
苗後一端から連続して列状に引出しできる連続型の集合
鉢の２系統が知られ、近年の農作業就労人口の減少ある
いは就労年令の高齢化に伴い営農の省力、省人化が不可
欠となっていることから、前記鉢体による育苗移植栽培
にあっても、機械による全自動移植が可能な、連続型の
集合鉢による育苗移植が注目されており、これに対応し
た移植機として例えば、特公昭５５−３０８０５号公報
は、先行する鉢苗と続く鉢苗をそれぞれ別個に設ける各
一対の回転体により挟み持ち、先行する鉢苗を挟み持つ
回転体の周辺速度を続く鉢苗を挟み持つ回転体の周辺速
度よりも大きくして、先行する鉢苗と続く鉢苗との間の
切り込みを付与した連結片に瞬間的な引っ張り力を作用
させてこれを裂断し、一個一個の鉢苗に分離して移植す
る移植機の機構を開示し、また特公昭６３−６１８６６
号公報は、回転円板に放射状に取り付けた移植杆が先行
する鉢苗を挟み持って回転することにより鉢苗を列状に
引き出す間に、続く鉢苗に進行を停止する停止体を作用
させて、先行する鉢苗と続く鉢苗間の切り込みを付与し
た連結片に引っ張り力を作用させてこれを裂断し、一個
一個の鉢苗に分離して移植する移植機の機構を開示す
る。

【０００３】さらに、上記のように切り込みを付与した
連結片によらないで連結した連続鉢として、特公昭５４
−２８３２１号公報は、連続する耐腐敗性の糸状体を植
え付けの株間間隔の遊び長さを有する如くして、隣接す
る鉢の中央部に耐水性の糊で固着して連結し、これを多
列に配列し各配列間を水溶性糊で接着した連続型の集合
鉢を開示し、同公報にはこの連続鉢を植え付ける移植機
として、機台上に載せた苗群の一端を上記遊び長さが伸
長した植え付けの株間間隔で引き出し、機台後部に設け
るオ−プナを介して、一個一個の鉢苗に分離することな
く連結状態で植え付け面に誘導して植え付ける、接地輪
により移動する牽引型の移植機を開示する。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記特公昭５５−３０
８０５号公報に開示する移植機は、鉢の口径が比較的小
で株間間隔を２３〜２５cmとする例えば甜菜の鉢苗の分
離移植に適合する構造のものであり、また特公昭５５−
６１８６６号公報に開示する移植機は、鉢の口径が比較
的大で株間間隔を３０〜４５cmとする例えばレタス、キ
ャベツ等の野菜の鉢苗の分離移植に適合する構造のもの
であって、例えば株間間隔を通常４〜８cmとする、ほう
れんそう、しゅんぎく等の野菜の鉢苗を移植しようとす
る場合には、分離、植え付け機構上の制限から株間間隔
が高々１０cmが限界で、適用できない。また、ハウス栽
培等の小規模面積に鉢苗を移植するには、可能な限り小
型化、簡単化された移植機が望まれる。

【０００５】また、特公昭５４−２８３２１公報に開示
する移植機は接地輪により植え付け面を移動させるため
に、苗載せ台の位置が高くなり、上記糸状体により連結
された遊び長さを有し、かつフレキシブルな連結体で連
結された連続鉢苗の移植には適するが、特公昭５５−３
０８０５号公報が開示するように、鉢と一体化した遊び
もなくそしてフレキシブルでもない連結片で連結した連
続鉢苗の場合には、移植機の鉢苗載置部位置から植え付
け位置のレベルまで列状に引き出すには、その引き出し
仰角に制限があり、制限を越えた仰角で無理に引き出そ
うとすれば、鉢苗が横倒しになるか、さもなくば連結片
が切断して以後の引き出しが停止し移植作業が中断する
ことになる。また高い位置の苗載せ台から、引き出し仰
角の制限内で連結片が切断しないようにして列状に引き
出そうとすれば、引き出し距離を相当に長くする必要が
あり、この場合には鉢苗の引き出し抵抗が大きくなり連
結片の切断が生じ実用性に欠けることになる。

【０００６】かかる事情から、ハウス栽培にも適用で
き、株間間隔を10cm以下の小間隔としても植え付け可能
な移植機の開発が望まれていた。

【０００７】

【課題を解決するための手段】 この発明は、上記事情
に鑑みてなされたものであり、連結片で連結された連続
鉢苗を一端から連続して引き出し、その連結状態を維持
したまま植え付ける移植機であって、少なくとも進行方
向後側の下面を接地面とした板状の機体の上面に、その
進行方向前側から順に、前記連続鉢苗を載置する鉢苗載
置部と、該鉢苗載置部から引き出した鉢苗を一列に整列
して案内する鉢苗案内部と、該鉢苗案内部から畑面に鉢
苗を連続に繰り出す鉢苗繰出し部とを設け、前記機体の
接地面には、前記畑面に植え付け溝を形成するオープナ
ーを取付け、該機体にはさらに、その後端側に一対の土
寄せ板を取付け、前記鉢苗繰出し部は、鉢苗の通過を許
容する幅で機体の接地面部分を切欠いた切り欠き部とし
て構成し、連続鉢苗の一端を前記植え付け溝に固定した
状態で機体を、その接地面を接地させて滑走させること
により、鉢苗を前記切り欠き部を通して連結状態で繰り
出し可能としたことを特徴とする。

【０００８】

【実施例】 図１〜図４はこの発明の移植機の一例を説
明するためのもので、１は底板（機体）で、進行方向の
矢印Ｆ方向前方部を湾曲状２となるように上向きに反ら
せる。底板１は、こゝでは前記湾曲部２を除く下面の全
体を接地面として提供しており、湾曲部２により植え付
け面上を容易に滑走できるようになっている。３ａ、３
ｂは底板１の形状に対応して該底板１の上面に立設固定
された左右一対の側枠で、この側枠３ａ，３ｂで囲まれ
た、進行方向Ｆの前側に位置する底板１の上面部分は、
後述する鉢苗群（連続鉢苗）Ｐを載置するための鉢苗載
置部として構成されている。側枠３ａ，３ｂは、底板１
の進行方向Ｆの後側部分で互いに逆ハ字様に直線状ある
いは緩やかな湾曲状に内側に絞られて、絞り部４ａ、４
ｂを形成している。絞り部４ａ、４ｂの終端５ａ、５ｂ
の間隔Ｄは鉢苗の一つを通過させるに足る必要最小限の
間隔に設定されており、絞り部４ａ、４ｂは、前記鉢苗
載置部から引き出した鉢苗を一列に整列して案内する鉢
苗案内部として構成されている。底板１は、図３に一点
鎖線で示すように鉢苗案内部の終端５ａ、５ｂから進行
方向Ｆの後側に続く区分１ａが、終端５ａ、５ｂとほゞ
同じ間隔で切り欠かれている。この切り欠き部は前記鉢
苗案内部から後述する畑面（植え付け面）Ｅに鉢苗を繰
り出す鉢苗繰出し部を構成している。しかして、この切
り欠き部には、図４に示すような先端部を掘り進み容易
に鋭角に加工し後部を開放した２枚の側板６ａ、６ｂか
らなる箱形のオープナー６が嵌合固定されており、この
オープナー６の両側板６ａ、６ｂ間には、鉢苗の植え付
け面への移動を容易とする鉢苗誘導体７が配設されてい
る。なお、この鉢苗誘導体７は、一側が上記絞り部４
ａ、４ｂの終端５ａ、５ｂ間の切り欠き縁に近接した高
さ位置となり、他側が上下に変位自在となるように適宜
の手段で位置固定されている。

【０００９】８ａ、８ｂは土寄せ体で上記オ−プナ６を
挟むようにして底板１の矢印Ｆ方向後部に設けられてい
て、土寄せ効果を良好とするために互いに捩り９ａ、９
ｂを与えている。土寄せ体８ａ、８ｂは底板１の矢印Ｆ
方向後部に独立して固定されてもよく、底板１の後部の
一部を上記土寄せ体８ａ、８ｂの形状に形成することに
より構成してもよい。１０ａ、１０ｂは、鉢苗を常時直
立姿勢に規制してオ−プナ−６内に移動、供給させるた
めの鉢苗規制体で、上記絞り部４ａ、４ｂの内側に、絞
り部４ａ、４ｂに沿い終端５ａ、５ｂに向かうにつれて
傾斜度が次第に急勾配となる傾斜板からなり、上縁部１
０ｃ、１０ｄは絞り部４ａ、４ｂの上縁部にほぼ一致
し、下縁部１０ｅ、１０ｆは底板１上面に固定する。１
１は把手を示す。

【００１０】次に、上記移植機による連続鉢苗の植え付
けの例を図５、図６を用いて説明する。図５は平面視
を、図６はＡ−Ａ線断面視で、上記構成の移植機を平坦
な畑面Ｅ上に置き、底板１上に前記特公昭５５−３０８
０５号公報に開示する構造の、口部の長径が３０mm高さ
が５０mmの六角柱状の鉢が幅５０mmの切り込みのない連
結片で一体的に列状に連結され、１列内の鉢数を６個、
４４列配列として各列間を水溶性糊で貼着した２６４個
の鉢が集合化した連続鉢で育苗した鉢苗群Ｐを載置し、
初めに移植機の把手１１を人手で持って矢印Ｆ方向に数
１０cm進行させて停止し、植え付け溝を形成しておき、
鉢苗群Ｐの最後列に位置する最終端の鉢苗Ｐ１をオ−プ
ナ６内を経由して植え付け溝に引き出して周辺の土で固
定する。

【００１１】この時の状態を図６で説明すると、植え付
け溝の深さＬ₁ は鉢の高さ相当とし６０mmで、鉢苗の傾
斜始点（オ−プナ６入口部で、絞り部４ａ、４ｂの終端
５ａ、５ｂ位置に当たる）から植え付け溝着地点までの
水平距離Ｌ₂ が３４０mmとなり、水平面に対する傾斜角
θが１０°で、別に実験的に求めた制限傾斜角１５°の
範囲内となる。

【００１２】上記状態で、再度、把手１１を持って移植
機を進行すると、鉢苗は連結片の裂断がなく連結された
列状で順次引き出され、鉢苗誘導体７の上面に摺接して
先行するオ−プナ６にて開けられた植え付け溝に着地
し、直ちに土寄せ体８ａ、８ｂが溝両側に盛り上った土
を埋め戻して鉢苗を植え付け固定する。この植え付けに
おいて、連続的に引き出される鉢苗が中途において横倒
れになった場合でもオ−プナ６の入口部に向けて次第に
急勾配となるようにして設ける鉢苗規制体１０ａ、１０
ｂの立て直し作用により、傾斜した鉢苗がこれに接触す
ると立姿勢に修正されてオ−プナ６に進行するので、常
時安定した植え付けを可能とする。

【００１３】図７、図８は、この発明の移植機の他の例
を示し、上記例の移植機のオ−プナ−６の進行方向前方
に当たる底板１下面両側に、図８に２点鎖線で例示する
高畦１２の形状に対応した翼１３ａ、１３ｂを付加し、
その前方部を互いに外側に向けた湾曲部１４ａ、１４ｂ
として高畦に沿った進行を容易としたもので、この構成
の移植機により高畦を外れることなく、上記と同様に連
続鉢苗を植え付けることを可能とする。

【００１４】上記実施例で、この発明の態様を具体的に
説明したが、この発明は上記例に制限されるものではな
く、この発明の範疇において各種の変形が可能でり、例
えば図９に示すように底板１上面に円板１５を回転自在
に載置することにより、連結片で列状に連結されて渦巻
き状に巻かれた連続鉢苗を、上記同様に、一個一個の鉢
苗に分離することなく連続的に植え付ける移植機とする
こともでき、この場合に円板１５と底板１との間の引き
出し段差は、円板１５の周辺を傾斜面にするか、あるい
は前方部を円板１５のほぼ半周に対応した形状として近
接させ、外周辺を側枠３ａ、３ｂと鉢苗規制体１０ａ、
１０ｂに内接させ、円板１５の高さとした板体１６を底
板１上に固定することにより解消できる。

【００１５】

【発明の効果】 この発明の移植機によれば、連続鉢苗
を、その連結状態を維持したまま連続に繰出して植え付
けることができ、従来の鉢苗移植機では植え付け困難で
あった、植え付け株間の狭い特に株間が１０ｃｍ以下の
場合でも植え付けも可能となって、適用範囲が拡大す
る。また、板状の機体上に鉢苗載置部と、鉢苗案内部と
鉢苗繰り出し部とを順に設けるという簡単な構造に加
え、鉢苗の繰り出しに特別の駆動手段を必要としないの
で、全体は小型軽量となり、操作が簡単になるばかり
か、ハウス内等の狭い領域での作業も可能になり、営農
の省人化、省力化に大きく貢献する。また、育苗移植に
用いる連続鉢苗も前記した特公昭５５−３０８０５号公
報に開示するように、隣接する鉢苗を連結する連結片に
切り込みを付与する必要がないので、連続鉢苗の構造も
簡単化する副次的効果により、連続鉢苗の製造コストの
低減をもたらす。

【図面の簡単な説明】

図１ この発明の移植機の一例をを示す平面図。 図２ 図１の側面図。 図３ 底板の切り欠き区分を説明する部分図。 図４ オ−プナの斜視図。 図５ 図１の例に示す移植機による植え付けの例を模式
図的に示す平面図。 図６ 図５のＡ−Ａ視断面図。 図７ この発明の移植機の他の例を示す平面図。 図８ 図７のＢ−Ｂ視断面図。 図９ この発明の移植機の他の変形例を示す平面図。

【符号の説明】

１ 底板 ２ 湾曲状 ３ａ、３ｂ 一対の側枠
４ａ、４ｂ 絞り部 ５ａ、５ｂ 終端 ６ オ−プナ ７ 鉢苗誘導体
８ａ、８ｂ 土寄せ体 １０ａ、１０ｂ 鉢苗規
制体 １３ 翼 １５ 円板

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 連結片で連結された連続鉢苗を一端から
   連続して引き出し、その連結状態を維持したまま植え付
   ける移植機であって、少なくとも進行方向後側の下面を
   接地面とした板状の機体の上面に、その進行方向前側か
   ら順に、前記連続鉢苗を載置する鉢苗載置部と、該鉢苗
   載置部から引き出した鉢苗を一列に整列して案内する鉢
   苗案内部と、該鉢苗案内部から畑面に鉢苗を連続に繰り
   出す鉢苗繰出し部とを設け、前記機体の接地面には、前
   記畑面に植え付け溝を形成するオープナーを取付け、該
   機体にはさらに、その後端側に一対の土寄せ板を取付
   け、前記鉢苗繰出し部は、鉢苗の通過を許容する幅で機
   体の接地面部分を切欠いた切り欠き部として構成し、連
   続鉢苗の一端を前記植え付け溝に固定した状態で機体
   を、その接地面を接地させて滑走させることにより、鉢
   苗を前記切り欠き部を通して連結状態で繰り出し可能と
   したことを特徴とする接地型の連続鉢苗移植機。
2. 【請求項２】 鉢苗案内部が、鉢苗載置部側から鉢苗繰
   出し部にかけて次第に狭幅となる絞り部を備えているこ
   とを特徴とする請求項１記載の接地型の連続鉢苗移植
   機。
3. 【請求項３】 オープナーが、先端部を鋭角に閉じかつ
   後端を開放した箱形をなし、該オープナーの左右側板
   が、鉢苗繰出し部の切り欠き部から繰り出された鉢苗を
   案内するガイドとして用いられることを特徴とする請求
   項１または２記載の接地型の連続鉢苗移植機。
4. 【請求項４】 オープナーの箱形内部に、機体の後方へ
   向かうにしたがって下方傾斜する鉢苗誘導体を配置した
   ことを特徴とする請求項３記載の接地型の連続鉢苗移植
   機。