JP2617962B2 - ポリプロピレンフィブリル化繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレンフィブリル化繊維及びその製造方法

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JP2617962B2 JP63001175A JP117588A JP2617962B2 JP 2617962 B2 JP2617962 B2 JP 2617962B2 JP 63001175 A JP63001175 A JP 63001175A JP 117588 A JP117588 A JP 117588A JP 2617962 B2 JP2617962 B2 JP 2617962B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高度にフィブリル化したポリプロピレン繊
維及びその繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、
加熱寸法安定性の高い三次元網状ポリプロピレン繊維及
びその繊維の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
三次元に網状にフィブリル化している繊維として、フ
ラッシュ紡糸法によって製造される繊維が公知である。
フラッシュ紡糸法とは、繊維形成性のポリマーと溶媒の
均一溶液を溶媒の沸点以上の温度、蒸気圧以上の圧力の
条件下から1個以上の孔を有する紡糸口金を通して低圧
域に瞬間的に押出す方法である。その繊維の特徴は、US
P3,081,519号公報及び特公昭40−28125号公報に開示さ
れている。
即ち、前記USP3,081,519号公報に開示された三次元網
状繊維は、フィブリルが三次元に網状に広がっている構
造を有する、表面積2m2/g以上の有機合成結晶性ポリマ
ーの繊維である。フィブリルは、平均厚み4μ以下であ
り、配向した構造を有し、電子線回折による平均配向角
が90゜以下であることを特徴とする。更に繊維のX線回
折による平均配向角が55゜より小さいこと、自由フィブ
リル数が50本/1000d/0.1mm以上あるいは25本/1000d/0.1
mm以上であること等を特徴としている。
この三次元網状繊維は、断面が異形断面をしており、
比表面積が大きく、光散乱性に優れ、嵩高性に富み、強
度が高い。したがってこの繊維の形態や性能の特徴を生
かして、カバーリング性の高い、高強度の不織布を作る
ことができる。その一例として直鎖状ポリエチレンの繊
維から作られた「Tyvek 」(イー、アイ、デュポン、
ニモアース、エンド、コンパニー製)という商品名の不
織布が市販されている。
次に従来のPPの三次元網状繊維の製造方法について説
明する。
トリクロルフルオルメタン(以後フロン−11と略
す。)を溶媒とし用いてフラッシュ紡糸を行う方法がUS
P3,564,088号公報、USP3,756,411号公報、これに対応す
る特開昭49−42917号公報及び本出願人出願の特開昭62
−33816号公報に開示されている。
USP3,564,088号公報に開示された複数の紡糸孔を有す
る紡糸口金を用いて一体化された繊維凝集ウェブを得る
プロセスにおいて、アイソタクチックポリプロピレン
(以下、i−ppと称す)の網状繊維を得るために下記の
ステップから成る製造方法を用いている。
190〜220℃の間の臨界温度を持つ1,1,2−トリクロ
ル−1,2,2−トリフルオルメタン、(以後フロン−113と
略す)、フロン−11、及びそれらの混合物から選ばれた
フッ化塩化炭化水素形の溶媒で、0.09〜10の間のMFRを
持つi−ppの4〜20wt%の均一な単一溶液を作り、その
溶液に、溶媒中最も低い沸点を持つ成分の臨界温度以上
で2液相境界圧力以上の圧力を持たせる。
溶液の圧力を2液相境界圧力下10〜400psiに減圧す
るために、減圧領域に溶液を通す。
紡口オリフィスを通して、実質的に大気圧、雰囲気
温度下に溶液を放出して、連続した高度にフィブリル化
した繊維を得る。
特開昭49−42917号公報に開示されている方法は、溶
媒中2〜20重量%のi−ppを蒸気圧以上の圧力下に加熱
して溶液を生成し、この溶液をそれよりも低温及び低圧
域へ押出すことによって、i−ppのフィラメント状材料
を製造する方法であり、用いられる温度が200〜240℃で
あり、圧力が63.3kg/cm2G以上であり、及び押出し直前
のi−ppの溶融流速(MFR)が関係式 〔上式中、CはPPの重量%による濃度であり、Tは℃表
示の溶液温度〕を満し、かつMFRが2〜30の範囲にある
ことを特徴とする。
特開昭62−33816号公報に開示された方法は、i−pp
溶液を、溶媒の臨界温度未満の紡糸温度(溶媒がフロン
−11のとき、198℃未満)で、0.75〜1.5mmのノズル径を
有する最終ノズルを通過させてフラッシュ紡糸を行う方
法であって、押出し直前のポリマーのMFRが15以下であ
ることを特徴とする。
また、たとえば、溶媒としてフロン−113を用いる方
法がUSP3,564,088号公報、USP3,467,744号公報及び特開
昭62−33816号公報に開示されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
直鎖状ポリエチレンより高い耐熱性を必要とする要求
に答える素材として、融点が25〜35℃高いポリプロピレ
ン(以後PPと略す。)を用いることが考えられるが、公
知のPP製の三次元網状繊維の問題点は、熱安定性、即ち
加熱雰囲気における寸法安定性が低いことである。即
ち、加熱雰囲気中で伸長あるいは収縮が非常に大きい。
そのため繊維及び繊維を積層して作られたウェブを熱固
定あるいは熱接合等の加熱加工を行う際に、変形しやす
く、また熱収縮しやすい問題点を有していた。
又USP3,081,519号公報及び特公昭40−28125号公報に
は、フィブリル及び繊維の分子配向性に関して電子線回
折及びX線回折で測定する配向角によって主として結晶
の配向の存在とその程度が開示されている。しかしこれ
らの公報には、加熱寸法安定性、すなわち加熱雰囲気中
での伸長あるいは収縮に影響する三次元網状繊維の微細
構造は開示されていない。
本発明の第1の目的は有用なポリプロピレンの新規な
三次元網状繊維、詳しくは、極めて高い加熱寸法安定性
を有する三次元に網状の形態を成した繊維を提供するこ
とにある。
次に、従来のPP三次元網状繊維の製造方法の問題点を
説明する。
前記USP3,564,088号公報に開示された方法で作られた
PP網状繊維の加熱寸法安定性はなお満足する値を示さな
い。特にスクリュー押出機を用いて、PP樹脂を溶融し、
溶媒に溶解させる連続紡糸方法を用いた場合には、溶液
形成領域での溶液の滞留時間が短いこともあり、樹脂の
溶解性が低いためかUSP3,564,088号公報記載の条件に基
づいても、安定して加熱寸法安定性の高い繊維を得るこ
とができなかった。
前記特開昭49−49217号公報に開示されている方法か
ら得られる三次元網状繊維も又充分は加熱安定性を有し
ない。また、衝突による開繊を行うと、繊維が繊維軸方
向に裂けたり、そのため開繊糸に穴があいたり、極端な
場合、繊維が破断することがあることが分かった。更に
溶液温度として比較的高温を使用するため、繊維が着色
しやすい欠点も有している。ここにいう開繊とは、単一
紡糸口金ノズルから紡出した繊維がより細かい単位に、
たとえば網状組織を構成する1本1本の繊維(フィブリ
ルと称す。)に分離することを言う。開繊性は、三次元
網状繊維の重要な用途である不織布を製造するために必
要な特性である。
特開昭62−33816号公報に開示された方法は、溶液温
度が溶媒の臨界温度未満であって低温であるために、フ
ラッシュ力が低いことが欠点である。そのため紡出糸の
配向性が低く、加熱寸法安定性特に加熱伸長に対する安
定性が不満足であった。また、溶液温度が低温であるた
め、開繊性が劣っていた。
溶媒としてフロン−113を用いるUSP3,564,088号公
報、USP3,467,744号公報及び特開昭62−33816号公報に
開示されている方法で作られるPP三次元網状繊維も、そ
の加熱寸法安定性は、USP3,756,441号公報の方法による
繊維とほとんど変らず、また開繊性が低かった。
以上の問題点に鑑みて、本発明の第2の目的は、前記
加熱寸法安定性の高い三次元網状繊維の新規な製造方法
を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の第1の目的はマイクロ波複屈折が0.07以上で
あることを特徴とするフィブリル化されたポリプロピレ
ン三次元網状繊維によって達成される。前記マイクロ波
複屈折が0.10以上であるとより好ましい。
前記フィブリル化されたポリプロピレンの三次元網状
繊維が0.07以上のマイクロ波複屈折を有すると共に、そ
の長周期散乱強度比が10以上であると好ましい。この場
合において前記長周期散乱強度比が30以上であるとより
好ましい。
本発明者らは、PP三次元網状繊維において、0.07以上
のマイクロ波複屈折を有する繊維であれば加熱寸法安定
性、特に加熱伸長安定性に優れ、加熱加工を行う際に寸
法変化によって持たらされる問題が解消すること、更に
10以上の長周期散乱強度比を有する繊維であれば、熱収
縮率も低く、加熱加工の際の収縮に伴なう問題点が解消
することを見いだし、本発明に到達した。
PP三次元網状繊維が0.07以上のマイクロ波複屈折を有
する本発明の網状繊維は、加熱伸長率が100℃で8%以
下であり、130℃で12%以下である。0.10以上のマイク
ロ波複屈折を有する本発明の網状繊維は、加熱伸長率が
100℃で4%以下、130℃で6%以下である。マイクロ波
複屈折が0.07以上であり、且つ長周期散乱強度比が10以
上である本発明の網状繊維は、加熱伸長率が100℃で8
%以下、130℃で12%以下であり、かつ熱収縮率が11%
以下である。マイクロ波複屈折が0.10以上であり、且つ
長周期散乱強度比が10以上である本発明の網状繊維は、
加熱伸長率が100℃で4%以下、130℃で6%以下であ
り、かつ熱収縮率が11%以下である。マイクロ波複屈折
が0.07以上であり、且つ長周期散乱強度比が30以上であ
る本発明の網状繊維は、加熱伸長率が100℃で8%以
下、130℃で12%以下であり、かつ熱収縮率が6%以下
である。マイクロ波複屈折が0.10以上であり且つ長周期
散乱強度比が30以上である本発明の網状繊維は、加熱伸
長率が100℃で4%以下、130℃で6%以下であり、かつ
熱収縮率が6%以下である。
マイクロ波複屈折(Δn)とはマイクロ波領域(周波
数0.3GHz〜30GHz)の電磁波によって測定される繊維軸
方向の屈折率(nMD)と繊維軸と直角方向の屈折率
(nTD)の差(Δn=nMD−nTD)である。可視波で偏光
顕微鏡を用いて測定される複屈折と同様に、マイクロ波
複屈折によって分子の配向性、即ち結晶及び非晶領域の
分子の配向を評価することができる。特に異形断面を有
る本発明の繊維に対しては、フィブリルの厚みがまちま
ちであること等から偏光顕微鏡を用いる方法では測定し
にくく、マイクロ波による方法が有効である。
長周期散乱強度比はX線小角散乱から求めた長周期の
散乱強度を散乱強度曲線のベースラインの散乱強度で除
した値である。マイクロ波複屈折、長周期散乱強度比と
ともに、開繊糸は開繊した状態でなく、繊維軸に収束さ
せて測定した(測定法は後述する)。
加熱寸法安定性は加熱伸長率と熱収縮率で評価するこ
とができる。加熱伸張率は熱機械分析装置で測定でき
る。それは、繊維にわずかな引張荷重(デニール単位の
繊度をgf単位化し、その10%の荷重)をかけて昇音しな
がら(5℃/min)観測される伸長率である。繊維にかけ
る引張荷重は、寸法を正確に測定するためにかける程度
の小さな荷重であり、この程度の荷重で伸びが発生する
ことは、加熱加工、たとえば熱固定、熱接合等で、ロー
ルとの摩擦、あるいは折れ曲り、しわ等直線性、平面性
不良防止用にかけるテンション等のわずかな荷重により
寸法変化が発生することを意味する。繊維だけでなく、
繊維積層ウェブも損われることも示している。経験的
に、繊維の加熱伸長率で、100℃で約8%以下、130℃で
約12%以下であれば、このような加熱加工で問題を起す
懸念は少ない。
熱収縮率は、熱風の循環するオーブン中、温度145℃
で、無拘束で20分間放置して測定する。
耐熱性を示す尺度として、動的弾性率5.0×109dyne/c
m2を保持する最高温度をみると、マイクロ波複屈折が0.
07以上の場合に約60℃以上、好ましい0.10以上の場合に
は100℃以上を示す。マイクロ波複屈折が0.07でこの温
度は急激に上昇する。
動的弾性率の測定は、周波数110kHz、昇温速度2℃/m
inで行った。
このように加熱寸法安定性の高い、特に、加熱伸長率
が低い繊維とするためには、マイクロ波複屈折の特定値
を満足させることが重要である。また熱収縮率を低下さ
せるためには、長周期構造の発現が重要である。更に加
熱伸長率と熱収縮率を満足させるためには、非晶部も含
めた分子配向性が高く、かつ繊維周期の整った構造にす
べきことが認められる。溶融紡糸で作られた繊維を熱処
理すると、長周期構造が整い、長周期は大きくなること
は文献で見うけられることであるが、紡糸速度5000m/mi
n〜14000m/minでの溶液からの高速の紡糸で、熱処理し
ない紡出したままの繊維にこのように長周期構造が明瞭
に現われ、しかもX線散乱強度比が高いことは驚くべき
ことである。
本発明の他の目的である製造方法は、アイソタクチッ
クポリプロピレンとトリクロルフルオルメタンから成る
高圧の均一溶液を減圧室、紡糸口金を通して低温低圧域
に放出し、フィブリル化されたポリプロピレンの三次元
網状繊維を製造する方法であって溶液を減圧室に導入す
る以前において溶液の圧力が減光開始圧力以上であり、
減圧室内の温度が198℃以上220℃未満であり、減圧室内
の圧力が減光終了圧力以下であり、押出し直前のアイソ
タクチックポリプロピレンの溶融流速(MFR)が、 〔TPFは℃で表わした減圧室の溶液温度、Cは重量%で
表わしたポリプロピレンの濃度である。〕を満すことを
特徴とする。
前記減光開始圧力及び減光終了圧力について以下説明
する。測定装置の略図を第1図に示す。すなわち覗窓付
きのオートクレーブ1を用いて、中の溶液の状態を温
度、圧力を変化させて、光(タングステン光)の透過量
で観測する。通常ポリマーを高温高圧下で溶解した後、
溶液を除々にバルブ(11及び12をあける)から排出し、
圧力を減少させて調べる。光の透過量が減少し始めた時
の温度、圧力が、減光開始温度(TIEと表示する)、減
光開始圧力(PIEと表示する。)であり、光の透過量が
0になった、すなわち、覗窓が暗視野になった時の温度
及び圧力が減光終了温度(TEE)及び減光終了圧力
(PEE)である。必要に応じて、液用増圧器(アルプス
高圧(株)製)10を用いて、ポリマー濃度の大きく変ら
ない範囲で溶媒のフロン−11を圧入して溶液を高圧化す
る。溶液の温度を変えることと、溶液の高圧化、低圧化
を繰り返すことによって、減光の開始する点と終了する
点を調べる。加熱時間等をオートクレーブを用いる紡糸
と同じにしてポリマーの熱分解による分子量の差異をな
くすようにした。必要に応じて、相図に変化を与えない
範囲で熱安定剤を添加した。オートクレーブは容積250c
m3のものを用いた。減光開始温度・圧力は2液相化が開
始する温度・圧力であり、減光終了温度は2液相化が完
了する温度であると考えられる。
本発明者らは、種々の製造会社のi−ppに対して、フ
ロン−11溶液が、このような減光終了点(該温度と該圧
力の交点)がかなりの幅(溶液圧力でみれば、10〜40kg
/cm2)を持って存在することを見出した。光がレーザー
光(He−Neレーザー、波長6328Å)の時は、幅はタング
ステン光より狭くなるものの、幅を有する。この減光開
始点と終了点の間の光の透過光量は、温度、圧力が一定
値であれば、観測中の数分の間、変化は認められなかっ
た。温度または圧力を変化させると、瞬時に透過光量は
変化する。従って溶液の状態(相)の転移による過渡的
現象とは考えにくい。分布を持つポリマーの分子量に対
応して減光開始点と終了点がずれて現われているとも考
えられるが、明らかでない。MFR(メルトフローレイ
ト)の異なるi−ppを用いて測定した濃度10wt%におけ
るLIEで表わす減光開始線LEEで表わす終了線(減光開始
点を結んだ曲線を減光開始線と称する。終了線について
も同様である。)を第2図に示す。ポリマーのMFRの広
い範囲で減光開始点と終了点があり、本発明に使用され
るi−ppはすべてに観測されると考えてよい。本発明の
範囲から外れるPPワックス(数平均分子量4000)程度に
なると減光開始点と終了点の差はほとんどなくなる。MF
R 0.7のi−ppを用いて測定した濃度9wt%、13wt%及び
15wt%における減光開始点と終了線を第3図、第4図及
び第5図に示す。
本発明者らは、高密度ポリエチレンのフロン−11溶液
系では、ある種のポリマーグレードを除いてほとんどの
ポリマーが減光開始点と終了点の差がないのに対して
(あったとしても溶液圧力で1〜4kg/cm2以内)、i−p
pのフロン−11溶液系では減光開始点と終了点が現われ
ることに着目して、繊維の加熱寸法安定化研究を進めた
結果、溶液の温度、圧力条件を適正な条件にするととも
に、ポリマーのMFRと濃度、押出し直前の溶液温度から
成る関係を特定な範囲にすることにより、繊維の分子配
向性を極めて高く、また長周期構造をより高度に形成さ
せ得ること、その結果、加熱寸法安定性の高い繊維が安
定に得られることが判明し、本発明の繊維が製造できる
ことを見出すに至った。
まず、i−ppとフロン−11を蒸気圧以上の圧力がかか
るようにオートクレーブに仕込み、加熱して溶液を生成
する。該溶液を減圧室通過以前において減光開始点以上
に圧力条件にすることが、繊維の加熱寸法安定性と開繊
性を上げるのに重要である。
特にスクリュー押出機を用いて、PP樹脂を溶融し溶媒
と混合して溶解させる連続紡糸装置を用いる方法におい
ては、溶液形成領域での溶液の滞留時間が短いこともあ
り、特に溶液の圧力を高めることが重要である。たとえ
ば溶液温度204〜215℃で、好ましい溶液圧力はPIE+50k
g/cm2G以上で、更に好ましい溶液圧力はPIE+120kg/cm2
G以上である。
減圧室の溶液を導く以前において、溶液は減光開始線
以上にすることが重要であるが、減圧室に溶液を導く際
には(直前においては)溶液は減光終了線(第2図ある
いは第3図第4図第5図参照)以上であればよく、必ず
しも減光開始線以上の温度、圧力の条件にする必要はな
い。
溶液温度は、上述のように、減圧室導入以前において
減光開始線以上、減圧室導入直前では減光終了線以上で
あれば(溶液温度の絶対値では減光終了温度より低温側
の領域)、特に限定されないが、より高温では、ポリマ
ーの熱劣化、溶媒の熱分解が起り易く、ポリマーの劣化
が加速され、紡糸した繊維が黄変するので好ましくな
く、220℃未満が好ましい。
次に溶液を減圧室に導く。減圧室は、高圧の溶液滞留
部との間にオリフィスを設けて作ることができる。減圧
室の数は1つに限定されない。
紡糸口金直前の減圧室では、 198≦TPF<220 PPF≦PEE 〔PPFは減圧室内の圧力〕 を満す条件にすることが、長周期散乱強度比及びマイク
ロ波複屈折を、特に長周期散乱強度比を高くするのに重
要である。即ち、減圧室内の条件、温度と圧力、特に圧
力を厳密にコントロールすることが極めて重要であるこ
とが分った。極端な場合、適正な圧力範囲は、一定温度
下で6kg/cm2以内であることもまれではない。減圧室内
の圧力(PPF)がPPF>PEE、即ち減光終了圧力より大き
い条件では、特に長周期散乱強度比は高くならない。そ
の結果、熱収縮率は高くなり、加熱伸長率も高くなる傾
向である。しかも紡糸された繊維はフィブリル化してい
ない粒子状物の発生が認められる繊維形態となり、伸度
は高いが強度の低い繊維となる。
好ましくは PPF≧PEE−30 PPF≧43.6 である。PPF<PEE−30、即ち減光終了圧力下30kg/cm2G
より低い圧力、及びPPF<43.6、即ちフロン−11の臨界
圧力43.6kg/cm2Gより低い圧力の条件では、フィブリル
の分断があり、マイクロ波複屈折は低くなり、加熱伸長
率は高くなる。長周期散乱強度波も低くなる傾向である
が、この繊維の場合、分子配向性の低さ、フィブリルの
分断が作用して、熱収縮率は高くならない。
減圧室内の溶液の温度は198℃〜220℃にするのが好ま
しい。198℃未満では溶液の流動性が低く、フラッシュ
力も小さいので、紡糸口金から吐出した繊維の延伸性が
低下し、マイクロ波複屈折を高くしにくい。また、220
℃より高い温度では、フィブリル間の密着が起りやす
く、開繊しにくくなる。また紡糸口金から吐出した吐出
流の温度が高く、ポリマーが結晶化しにくいので、得ら
れた網状繊維の配向性が低下し、加熱伸長率が低くなら
ない。好ましくは204℃〜212℃である。
減圧室の温度は、減圧室壁からの伝熱の影響を受けな
いように熱電対型の温度検出端をセットすることで、計
測することができる。その際に特に温度検出端を小さ
く、熱容量が小さくなるように設計することが重要であ
る。
押出し直前のi−ppのMFRと濃度C、溶液温度TPFの関
係が、 を満すことがマイクロ波複屈折を高めるのに重要であ
る。好ましくは、上限が を満す条件にする。第6図に示すように、溶液は高粘性
領域に入る。しかも溶液温度は198〜220℃で比較的低
い。溶液がより高粘性であるためポリマー分子が配向し
やすく、マイクロ波複屈折の高い繊維が与えられると考
えられる。
の領域では、溶液の流動性が低過ぎてポリマーの分子配
向がかかりにくく、マイクロ波複屈折の高い繊維は得に
くい。また、ポリマーが溶解しにくく、形態の良い繊維
にしにくい。
押出し直前のポリマーのMFRは20以下にすることが好
ましい。この値が20を越えると、熱的な安定性が低い、
すなわち融解し易い傾向となる。好ましくは、10以下で
ある。押出し直前のポリマーのMFRは、紡出した繊維のM
FRを用いた。MFRは、JIS K 7210に従って、温度230℃、
荷重2.16kgにより東洋精機製作所製メルトインデクサー
で測定した。
溶液中のi−pp濃度は、7〜17wt%であればよい。7w
t%未満ではマイクロ波複屈折を適正値にしにくい。ポ
リマー濃度は高いほど好ましく、好ましくは9wt%以上
である。しかし、ポリマー濃度が高くなるに従い、繊維
の開繊性は低下する。17wt%より上では、ポリマーのMF
Rが20であっても、減圧室内溶液温度198℃以上220℃未
満での溶液の流動性を満足させにくい。また、微細なフ
ィブリルから成る高開繊の繊維を得にくい。
使用するi−ppは、約85wt%以上のi−ppを含有する
ものであり、約15wt%未満はi−pp以外のpp、あるい
は、エチレン、n−ブチレン、イソブチレン、酢酸ビニ
ル、メタクリル酸メチル等の重合体成分を含んでいても
よい。また、i−ppの特性を損わない範囲で、酸化防止
剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、核剤、帯電防止剤、
着色剤等の添加剤を添加しても差しつかえない。
ポリマーの溶解、溶液押出はオートクレーブ等を用い
るバッチ方式だけでなく、スクリュー押出機等を用いる
連続方式でも実施できる。
本発明の方法によって製造される繊維は、既に述べて
きたように、少なくともマイクロ波複屈折、長周期散乱
強度比について特性値を有しているが、他のX線回折に
よる配向角、110面からの回折ピークの半価幅、長周
期、見かけの密度、比表面積等について特定の値を有す
る。以下それら特定の数値を説明する。ただし本発明の
ポリプロピレン三次元網状繊維がこれらの数値によって
限定されるものではない。
X線回折による配向角は約36゜以下であり、好ましく
は30゜以下である。X線回折による110面からの回折ピ
ークの半価幅は約2.6゜以下である。長周期は75Å以上1
40Å以下である。見かけの密度は、0.895g/cm3以上であ
り、多くは0.900g/cm3以上である。比表面積は約2m2/g
〜30m2/gである。
〔実施例〕
以下実施例により本発明を詳述する。ただし実施例に
より本発明が限定されるものではない。
実施例の説明に先立ち、既に説明したもの以外の各種
物性値の測定方法を一括して以下に説明する。
加熱伸長率は、熱機械分析装置TMA−40(島津製作所
(株)製)を用いて、昇温速度5℃/min.で30℃〜170℃
の間で測定した。
サンプルの繊度を測定し、デニール単位をgf単位と
し、その10%の引張荷重(約810gf/mm2の荷重)をかけ
てチャック間2〜4mmで測定した。
マイクロ波複屈折はマイクロ波分子配向計MOA−2001A
(神崎製紙(株)製)を用いて、周波数4GHzで測定し
た。測定用の試料は、ホルダーに繊維を幅10mm、長さは
必要長さで75mm、実質厚さ約100μmになるように引き
そろえて作った。マイクロ波複屈折算出用に必要な実質
厚みは、繊維本数、繊度、密度から算出した。
X線小角散乱は、回転対陰極式強力X線発生装置ロー
タフレックスRU−200Aを用いた小角散乱装置に位置敏感
型比例計数管(PSPC)及びマルチチャンネルパルスアナ
ライザー(理学電機(株)製)を付加して用いて、CuK
α線で子午線方向の散乱強度を測定した。
管電圧は50kV、管電流は200mA、スリットは第1、第
2スリットとも0.2mm幅で3mm長さである。試料からPSPC
の距離は約1170mmである。
長周期は、散乱強度曲線のピーク又はショルダーの位
置から求めた。(極大散乱強度を示す位置)長周期散乱
強度は長周期を示す散乱強度曲線と、長周期散乱をはさ
む曲線の共通接線との間の散乱強度から求め、それを曲
線のベースライン(回折角2θ=2.1〜2.4゜の位置)の
散乱強度で除して長周期散乱強度比とした。X線小角散
乱は、空気散乱の補正を行った。空気散乱の補正を行わ
ない場合は長周期散乱強度比が小さく求まるので注意を
要する。
動的粘弾性の測定は、自動動的粘弾性測定器PHEOVIBR
ON DDV−II−EA(東洋ボールドウィン(株)製)を用い
て、周波数110KHz、昇温速度2℃/分で測定した。
繊維の引張強度、伸度は、8回/cmの撚りを与えた試
料でインストロン型の引張試験機で引張速度200mm/分で
測定した。
X線回折による配向角は、結晶面110面からの回折角
(2θ=14.2〜14.8゜、θ=ブラッグ角)において、照
射X線と試料が垂直となる面内で試料を回転させて測定
した回折ピークの半価幅である。X線回折装置は、回転
対陰極形超強力X線装置(理学電機(株)製、RAD−γ
A型 CuKα線)を用いた。また、110面からの回折ピー
クの半価幅は、該ピークが2θ=16.5〜16.8゜の回折ピ
ーク(040面からの回折ピーク)と高回折角側で重なる
ので、110面からの回折ピークから下した垂線と低回折
角側の回折線との間の半価幅を求め、この値を2倍にし
て求めた。
マイクロ波複屈折、長周期散乱強度、熱機械分析、熱
収縮率、動的粘弾性、広角X線回折は、繊維を、繊維軸
と直角方向に広げたままでなく、繊維軸に収束させて測
定した。繊維の繊度及び長さの測定は、繊度(d)をgf
単位化し、その10%の引張荷重を繊維にかけて測定し
た。
見かけの密度は、トルエンとクロルベンゼンから成る
密度勾配管を用いて、25℃で測定した。
比表面積はアムコ(株)販売ソープティ1750を用いて
測定した。
実施例1〜3 MFRが0.7のi−pp(チッソ(株)販売チッソポリプロ
K1011)の79.3g、フロン−11 531gを内容積 534cm3のオ
ートクレーブに仕込んで(ポリマー濃度13wt%)、プロ
ペラ型撹拌機を回転させながらオートクレーブを加熱
し、i−ppを溶解した。(約90℃〜110℃で溶解開始) 溶液温度は、オートクレーブ内に挿入した熱電対温度
計検出端子で検出した。溶液圧力も同様にオートクレー
ブ内に挿入したダイヤフラム式圧力検出端子で検出し
た。
溶液を更に加熱し、溶液圧力を上昇して、250〜300kg
/cm2Gとした。既にこの時点ではポリマーは溶解し終っ
ている。またこの圧力は減光開始圧力より十分高い圧力
である。これ以上圧力が上昇しないように(オートクレ
ーブの耐圧 300kg/cm2G)、オートクレーブ下部の放出
ノズルから溶液を排出し、圧力を一定に保った。約55〜
75分間加熱して所定の溶液温度になった時点で更に溶液
量を減少させ、圧力を所定圧力より約3〜5kg/cm2低い
圧力とした後、再度溶液を所定温度にして、撹拌機を停
止して、オートクレーブ上部のバルブを開けN2ガス導入
による所定圧力での加圧を行い、素早くオートクレーブ
下部の排出バルブを開け、溶液を減圧用オリフィス(径
0.7mmφ、長さ5mm)を通して減圧室(径8mmφ、長さ80m
m)に導き、次に紡糸口金(減圧室からノズル孔への導
入角度60゜、ノズル孔径0.5mmφ、長さ0.5mm、ノズル孔
を中心として外側に3.0mmφ、深さ3.0mmの円形の溝を有
する)を通過させ、大気中に放出した。
減圧室には、オートクレーブで用いたのと同様の温
度、圧力検出端子が挿入されており、温度、圧力を計測
した。温度はチャートに記録された値を読みとった。。
減圧室内の溶液温度は、オートクレーブから減圧室まで
の導管(100mm以上)と減圧室の温度を加熱ヒータで調
節することにより、調節した。
この実施例では、紡出する繊維のマイクロ波複屈折が
0.07以上、長周期散乱強度比が10以上になるように紡糸
条件を調製し、紡糸した。すなわち、減圧室導入以前に
おいて溶液の温度圧力は減光開始線以上、減圧室導入直
前の溶液の温度、圧力が減光終了線以上、減圧室の条件
として、温度が198℃以上220℃未満、圧力が減光終了点
以下という条件を満足させて紡糸した。減圧室の温度、
圧力を第4図の相図中に書き入れた。また、押出し直前
のポリマーのMFRと濃度の関係が次式 を満足するようにした。(第6図に実施例をプロットし
た。) 製造時の主な条件と繊維の物性を第1表に示す。実施
例で得られた繊維は、フィブリルが収束した外観を呈し
ているが、顕微鏡で観察すると三次元に網状の組織を持
った繊維である。マイクロ波複屈折は0.07以上であり、
長周期散乱強度が10以上であった。その結果、加熱伸長
率と熱収縮率が低い、加熱寸法安定性のある繊維となっ
た。また、実施例1の繊維の、動的弾性率5.0×109dyne
/cm2を保持する最高温度は138℃であった。
また、引張強伸度は実施例1が各々4.9g/d、60%、実
施例2が各々4.2g/d、65%であり、強伸度も充分ある繊
維であった。実施例1の紡糸速度を、吐出量、吐出時
間、繊維の繊度から求めると、10400m/minであった。実
施例1の繊維のX線回折による配向角は26.8゜、110面
からの回折ピークの半価幅は1.54゜、長周期は118Å、
見かけの密度は0.904g/cm3、比表面積は12.4m2/gであっ
た。
実施例3は、マイクロ波複屈折が0.103で高く、加熱
伸長率は低かったが、長周期散乱強度比は比較的低く熱
収縮率は比較的高い値を示した。
実施例4〜6、比較例1 i−ppとフロン−11の仕込量をそれぞれ55.0g、555g
とし、ポリマー濃度を9wt%として実施例1〜3で示し
た方法を用いてフラッシュ紡糸をした。i−ppは種々の
タイプを用いた。減圧オリフィスの孔径、紡糸口金の孔
径(外側の円形溝の大きさは孔径に比例させ、深さは同
じ3mmとした)も適切に選択して行った。用いたポリマ
ーにより相図の変るものもあったが、大きな差はなかっ
た。
紡出糸のマイクロ波複屈折が0.07以上に、かつ長周期
散乱強度比が10以上になるように、実施例1〜3と同様
に溶液温度、圧力、減圧室温度、圧力を選び、押出し直
前のポリマーのMFRと濃度、押出し直前の溶液温度の関
係を適性範囲に入れるようにした。(第6図に実施例を
プロットした。)その結果を主要条件とともに第2表に
示す。実施例はマイクロ波複屈折が0.07以上で、長周期
散乱強度比が10以上であり、その結果加熱伸長率、熱収
縮率ともに低かった。実施例4の紡糸速度は、吐出量、
吐出時間、繊度から求め、12800m/minであった。また、
実施例4の繊維は、X線回折による配向角が27.1゜、11
0面からの回折ピークの半価幅が1.92゜、長周期が111
Å、見かけの密度が0.902g/cm3、比表面積が5.6m2/gで
あった。
比較例1は減圧室の温度、圧力ともに適性条件から外
れた例で、マイクロ波複屈折は0.07未満で、長周期散乱
強度比も小さい繊維となった。その結果、加熱伸長率、
熱収縮率とも高い値を示した。また、動的弾性率5.0×1
09dyne/cm2を保持する最高温度は53℃であった。
実施例7 i−ppとフロン−11の仕込量をそれぞれ91.5g、519g
とし、ポリマー濃度を15wt%とした以外は、実施例1〜
3と同じ装置、方法でフラッシュ紡糸をした。
溶液温度、圧力は溶液調整時215℃、260kg/cm2G、押
出時 215℃、123kg/cm2G、減圧室内の溶液温度、圧力
は、210℃、82kg/cm2Gであった。
紡出した繊維は形態が良好で、フィブリル化が高度に
発達しており、マイクロ波複屈折は0.109で、長周期散
乱強度比は26であり、加熱伸長率は100℃で2.5%、145
℃、20分間放置で測定した熱収縮率は7.0%であった。
また、MFRは7.5であった。減圧室内温度、MFR/Cを第6
図に示した。
実施例8,9、比較例2 i−ppとフロン−11の仕込量をそれぞれ67.1g、543g
とし、ポリマー濃度を11wt%とし、実施例1,2に示した
方法を用いてフラッシュ紡糸した。減圧用オリフィスと
して実施例9及び比較例2は孔径0.5mmφ、長さ5mmのも
のを用いた。また比較例2ではノズル孔径は0.5mmφで
あるが、外側に円形の溝のない紡糸口金を用いた。それ
以外は、実施例1,2と同じ装置を用いた。
溶液温度、圧力条件、減圧室内温度、圧力条件と得ら
れた繊維の物性を第3表に示す。実施例8及び9では適
性条件内で紡糸を行うことにより、マイクロ波複屈折及
び長周期散乱強度比が本発明の範囲に入る繊維を得た。
その繊維は加熱伸長率と熱収縮が低く、寸法安定性に優
れていた。また、実施例8の繊維は、強伸度が4.7g/d、
61%、X線回折による配向角が23.7゜、110面からの回
折ピークの半価幅が1.56゜、長周期は113Å、見かけの
密度は0.903g/cm3、比表面積は12.5m2/gであった。比較
例2は減圧室の圧力が適性範囲を低圧側で外れたため、
マイクロ波複屈折、長周期散乱強度比がともに本発明の
範囲から外れた例で、繊維は形態が悪く、脆弱なもの
で、また熱収縮率は小さかったが、加熱伸長率が高かっ
た。
実施例8,9の減圧室内温度、MFR/Cを第6図に示した。
実施例10,11 i−ppとフロン−11のオートクレーブへの仕込量を実
施例10ではそれぞれ67.1g、543gとし、ポリマー濃度を1
1wt%とし、また実施例11ではそれぞれ61.0g、549gと
し、ポリマー濃度を10wt%とし、実施例1,2に示した方
法と同様にしてフラッシュ紡糸をした。
実施例11では、熱安定剤イルガノックス1010を0.1PH
R、フォスファイト168を0.5PHR(ともにチバガイギー
製)添加した。
使用した減圧オリフィス及び紡糸口金の主要サイズを
第4表に示した。この他は、実施例1,2と同じ装置を用
いた。
紡糸条件及び得られた三次元網状繊維の特性を第4表
に示す。
両実施例とも、加熱伸長率100℃で8%以下、130℃で
12%以下、熱収縮率11%以下を満足している。
減圧室内温度とMFR/Cの値を第6図にプロットした。
実施例1,2で記したように、適正範囲内にある。
実施例11で得られた三次元網状繊維のX線配向角は1
6.7゜、110面回折ピークの半価幅は2.60゜、密度 0.902
g/cm3であった。
実施例12 スクリュー押出機、溶媒導入管部、混合管部、減圧
室、紡糸口金が連続しているポリマー溶液調整、紡出装
置を用いて、MFR 2.7のi−ppチップをスクリュー押出
機にかけ、溶融押出しし、一方フロン−11を定量高圧ポ
ンプで溶媒導入管部に導入、混合管部で均一溶液にし
た。この溶液を減圧室、紡糸口金を通して大気中へ放出
し、三次元網状繊維を得た。
減圧室の減圧オリフィス0.5mmφ、長さ5mm、減圧室の
容量約3cm3のものを用いた。紡糸口金は、減圧室からノ
ズル孔への導入角度60゜、ノズル孔径0.7mmφ、長さ0.7
mmであり、ノズル孔を中心として外側に4.3mmφ、深さ
4.0mmの円形の溝が付いているものを用いた。溶液押出
量は1480g/分、ポリマー濃度は11.0wt%であった。溶液
温度・圧力は混合部で211℃、240kg/cm2G、減圧室で206
℃、62kg/cm2Gであった。
その結果、マイクロ波複屈折0.112、長周期散乱強度
比52の三次元網状の繊維を得た。繊維のMFRは6.4であっ
た。また加熱伸長率は100℃で2.3%、130℃で3.6%で、
145℃での収縮率は4.1%であった。
実施例13 スクリュー押出機、溶媒導入管部、混合管部、減圧
室、紡糸口金が連続しているポリマー溶液調整・紡糸装
置を用いて、添加剤1,3,2,4−ジパラメチル−ジベンジ
リデンソルビトール(新日本理化(株)製ゲルオールM
D)0.5PHRを含むMFR 4.9のi−ppチップ(チッソポリプ
ロ K 1014から調整)をスクリュー押出機にかけ、溶融
押出し、一方フロン−11を高圧定量ポンプで溶媒導入管
部に導入、混合管部で均一溶液にした。この溶液を減圧
室、紡糸口金を通して吐出させ、紡糸口金から約20mm離
れた位置で、USP3,456,156号公報に示されている回転分
散板と同種の、3つの畝を持った回転分散板(回転数15
00回転/min)に当て、開繊した三次元網状繊維を得た。
減圧室の減圧オリフィスは、0.5mmφ、長さ5mm、減圧
室の容量は約3cm3のものを用いた。紡糸口金は、減圧室
からノズル孔への導入角度60゜、ノズル孔径0.7mmφ、
長さ0.7mmであり、外側にノズル孔を中心として4.3mm
φ、深さ3.6mmの円形の溝を有する。溶液押出量は1440g
/分、ポリマー濃度は10.0wt%、溶液温度、圧力は混合
部で221℃、226kg/cm2G、減圧室で204℃、68kg/cm2Gで
あった。
開繊三次元網状繊維は繊度211d、マイクロ波複屈折0.
086、MFR 11.6で、加熱伸長率は100℃で4.3%、130℃で
7.5%であった。
減圧室内温度MFR/Cの値を第6図にプロットした。
〔発明の効果〕
本発明によるPPフィブリル化繊維は、加熱雰囲気での
寸法安定性が高い、即ち加熱伸長率、または加熱伸長率
と共に熱収縮率が低い。従って、熱固定、熱接合等加熱
加工における変形の問題が解消する。
この繊維から作られる開繊糸も同様の加熱特性を有す
るので、開繊糸積層ウェブの熱接合が、変形の少ない状
態で可能である。
さらに繊維の強度も高いので、紡糸口金から吐出した
繊維に衝突板を当ててもフィブリルが切断しにくく、衝
突によった開繊糸が安定に得られ、開繊糸を積層、接合
すれば加熱寸法安定性の高い、かつ高強度の不織布とな
る。
本発明の製造方法により上記のような加熱雰囲気での
寸法安定性の高い、即ち加熱伸長率の低い、又は加熱伸
長率と共に熱収縮率の低い、PPフィブリル化繊維が好適
に得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は繊維の原料ポリマーの減光終了温度とその圧
力、減光開始温度とその圧力を測定するための装置の略
図である。 第2図は、製造会社とMFRの異なるアイソタクチックポ
リプロピレンとトリクロルフルオルメタン溶媒系で測定
した減光開始線及び減光終了線を示すグラフである。 第3図第4図及び第5図は、ポリマー濃度を変えた場合
での減光開始線、減光終了線および減圧室内溶液の温度
および圧力の適正範囲を示したグラフであり、第3図は
ポリマー濃度が9wt%、第4図は13wt%、第5図は15wt
%の場合をそれぞれ示す。実施例(oで示す。)の条件
が示されている。 第6図は、押出し直前の(減圧室)溶液温度と押出し直
前のポリマーのMFRと濃度Cとの比MFR/Cとの関係につい
て本発明による適正範囲及び従来技術の範囲を示したグ
ラフであり、実施例の条件(番号で示す)が示されてい
る。 1……覗窓付きオートクレーブ、 2……締め付けボルト、3……撹拌機、 4……バルブ、5……温度検出用端子、 6……ダイヤフラム式圧力検出端子、 7……覗窓、8……光源、 9……受光器、10……液用増圧器、 11〜13……バルブ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D04H 1/42 D04H 1/42 K

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィブリル化されたポリプロピレンの三次
    元網状繊維において、該三次元網状繊維のマイクロ波複
    屈折が0.07以上であることを特徴とする三次元網状繊
    維。
  2. 【請求項2】三次元網状繊維のマイクロ波複屈折が0.10
    以上であることを特徴とする請求項1記載の三次元網状
    繊維。
  3. 【請求項3】三次元網状繊維の長周期散乱強度比が10以
    上であることを特徴とする請求項1または2記載の三次
    元網状繊維。
  4. 【請求項4】三次元網状繊維の長周期散乱強度比が30以
    上であることを特徴とする請求項3記載の三次元網状繊
    維。
  5. 【請求項5】アイソタクチックポリプロピレンとトリク
    ロルフルオルメタンから成る高圧の均一溶液を減圧室、
    紡糸口金を通して低温低圧域に放出して、フィブリル化
    されたポリプロピレンの三次元網状繊維を製造する方法
    において、溶液を減圧室に導入する以前において溶液の
    圧力が減光開始圧力以上であり、減圧室内の温度が198
    ℃以上220℃未満であり、減圧室内の圧力が減光終了圧
    力以下であり、押出し直前のアイソタクチックポリプロ
    ピレンの溶融流速(MFR)が 〔TPFは℃で表わした減圧室の溶液温度、Cは重量%で
    表わしたポリプロピレンの濃度である〕を満すことを特
    徴とするポリプロピレン三次元網状繊維の製造方法。
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