JP2614460B2 - ジ‐d‐フラクトシルフラノース2,6′:6,2′ジアンハイドライドの製造法 - Google Patents

ジ‐d‐フラクトシルフラノース2,6′:6,2′ジアンハイドライドの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、酵素を利用してレバンまたはフレインより
ジ−D−フラクトシルフラノース1,2,6′:6,2′ジアン
ハイドライドを製造する方法に関するものである。
従来の技術 ジ−D−フラクトシルフラノース1,2,6′:6,2′ジア
ンハイドライド(略称DFA IV;構造式下記)は、フラク
トースに似たさわやかな甘味を有し、熱に安定であり、
また微生物により資化されないという特長があるため、
低カロリー且つ難う蝕性の甘味料としての利用が期待さ
れている。
従来、DFA IVを製造する方法としては、アースロバク
ター・ウレアファシエンスが生産するレバンフラクトト
ランスフェラーゼをレバンに作用させる方法があった
(Carbohydrate Research,第99巻,197〜204頁,1982
年)。しかしながら、アースロバクター・ウレアファシ
エンスのレバンフラクトトランスフェラーゼ産生力は弱
く、この菌を用いる方法によってレバンフラクトトラン
スフェラーゼを経済的に得ることは困難である。したが
って、上記公知方法でも、アースロバクター・ウレアフ
ァシエンスを培養する培地中に原料のレバンを添加して
おき、培地中に生産される酵素をその場で利用してDFA
IVを生成させる方法を採用しており、菌培養物から採取
した酵素をレバンに作用させているわけではない。しか
も、アースロバクター・ウレアファシエンスはレバンフ
ラクトトランスフェラーゼと共に著量のβ−フラクトシ
ダーゼを生産するから、粗酵素液を使用するとDFA IVよ
りもフラクトースを大量に生成してしまうという問題が
ある。これらにより、あるいはアースロバクター・ウレ
アファシエンスのレバンフラクトトランスフェラーゼに
固有の特性によるものか、DFA IVの生産性はきわめて低
く、しかも種々の培地成分を含む反応液からDFA IVを単
離するのに多段の精製を必要とするという問題があっ
た。
発明が解決しようとする問題点 したがって本発明の目的は、レバンまたはフレインを
原料として従来よりも効率よくDFA IVを製造する方法を
提供し、DFA IVを安価に利用し得るようにすることにあ
る。
問題点を解決するための手段 上記目的を達成するため、本発明者らは多くの微生物
についてレバンフラクトトランスフェラーゼ産生能と酵
素活性の観点からスクリーニングを行い、シュードモナ
ス属に属する一細菌すなわちシュードモナス・フルオレ
ッセンスMZ No.949(微工研菌寄第9235号)がすぐれた
性質を有することを知った。
本発明は上記知見に基づくものであって、シュードモ
ナス属細菌が生産するレバンフラクトトランスフェラー
ズをレバンに作用させることを特徴とするものである。
上記MZ No.949株は、広島県尾道市の土壌より分離さ
れたものであって、その菌学的性質は次のとおりであ
る。
(a)形態 細胞の形および大きさ 0.5〜0.7×2.0〜3.5μmの桿菌 運動性:あり。1本以上の極鞭毛を有する。
胞子:なし グラム染色性:陰性 抗酸性:なし (b)生育 肉汁寒天斜面培養 中程度の発育;透明;やや赤味を帯びる。
肉汁液体培養:中程度の発育;表面に膜形成。
肉汁ゼラチン穿刺培養:液化しない。
リトマスミルク:変化しない。
BCPミルク:変化しない。
(c)生理的性質 硝酸塩の還元:する。
脱窒:しない。
MRテスト:陰性 VPテスト:陰性 インドールの生成:なし 硫化水素の生成:なし(TSI寒天培地) デン粉の加水分解:なし クエン酸の利用:あり(クリステンセン培地) 無機窒素源の利用 硝酸塩およびアンモニウム塩を利用する。
色素の生成:水溶性、蛍光性の色素を生成する。
オキシダーゼ:陽性 カタラーゼ:陽性 生育の範囲:pH4〜10で生育する。
4℃、27℃で生育する。37℃で生育しない。
酸素に対する態度:好気性 O−Fテスト:グルコースを酸化する。(Hugh Leifs
on法) 炭水化物の利用:D−グルコース、L−アラビノース、
トレハロース、イノシトール、L−バリン、p−ヒドロ
キシ安息香酸を利用する。シュクロース、ゲラニオー
ル、アセトアミド、エタノールを利用しない。
アルギニンの脱炭酸:陽性 プロトカテキン酸の分解:オルト型の開裂 以上の諸性状をバージェイのマニュアル・オブ・デタ
ーミネイティブ・バクテリオロジー,第8版(1974)の
記載と照合することにより、本菌がシュードモナス・フ
ルオレッセンス[ミグラ1895]であることを確認した。
本発明の実施に用いるレバンフラクトトランスフェラ
ーゼは、上記MZ No.949株で代表されるシュードモナス
属レバンフラクトトランスフェラーゼ生産菌を、β−2,
6結合を持つフラクトースポリマー含有培地で培養する
ことにより得られる。フラクトースのポリマーを酵素誘
導基質として含有させることを除けば、培地として特殊
なものは必要としない。シュードモナス属細菌の培養に
通常使用される培地、すなわちグルコース等の炭素源お
よび酵母エキス、ペプトン等の有機窒素源、その他硝酸
ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガンなどの無
機塩類等を基本成分として適宜組合せたpH5〜8程度の
培地を用いることができる。培地に含有させる上記フラ
クトースのポリマーとしては、レバン、フレイン等を用
いることができ、その好適濃度は0.01〜30%、特に好ま
しくは1〜5%である。培養は、シュードモナス属細菌
培養の常法に従って行うことができる。目的とする酵素
は菌体外に生産される。生産は菌の対数増殖期に始ま
り、定常期にほぼ最大生産量に達するので、通常は定常
期に達したあと適当な時期に培養を打切る。培養終了後
は直ちに遠心分離して菌体を除去する。菌体を除いただ
けの培養液でも粗レバンフラクトトランスフェラーゼ液
として利用できるが、これを、硫安塩析、限外ろ過、ゲ
ルろ過等の精製手段を用いる酵素精製の常法に従って精
製すれば、より活性が強く、利用し易いレバンフラクト
トランスフェラーゼを得ることができる。得られるレバ
ンフラクトトランスフェラーゼは安定で、冷蔵庫で数カ
月間保存可能であり、冷蔵庫中ならば、さらに長期間保
存することができる。
上述のようにして得られたレバンフラクトトランスフ
ェラーゼの粗酵素液または精製品をレバンまたはフレイ
ンに作用させる場合、好適反応条件は、レバンまたはフ
レイン濃度1〜20%、反応液pH5〜8(特に好ましくは
5.5〜6.5)、反応温度20〜60℃(特に好ましくは40〜50
℃)である。
反応終了後、100℃に約10分間加熱して酵素を失活さ
せ、生じる沈殿を除去した反応液から、たとえば活性炭
カラムクロマトグラフィー等により、DFA IVを得ること
ができる。さらに高純度のものとする必要がある場合
は、たとえば95%エタノールから結晶化させる。
発明の効果 本発明の製法は、アースロバクター属細菌培養液中で
レバンを分解させる従来の製法と違って酵素液とレバン
またはフレインを反応させるものであること、用いるレ
バンフラクトトランスフェラーゼが分離困難なβ−フラ
クトシダーゼを含有しないこと、などにより、従来法と
比べて生産性および反応収率が著しく高く、反応生成物
からDFA IVを分離するための精製も容易である。
したがって本発明によれば、高品質のDFA IVを従来よ
りもはるかに安価に提供することが可能になる。
実施例 以下、実施例を示して本発明を説明する。
実施例 1 レバン1%、ペプトン1%、K2HPO40.1%、NaNO30.5
%、MgSO4・7H2O0.05%、MnCl2・4H2O0.02%を含むpH7.
0の培地100mlを500ml容坂ロコルベンに入れ、シュード
モナス・フルオレッセンスMZ No.949を植菌して、28℃
で4日間娠とう培養した。培養終了後、遠心分離して培
養液から菌体を除き、粗酵素液を得た。
一方、レバン10gを10mlの温湯に溶解し、冷後pHを6.0
に調整した。この溶液に上記粗酵素液を加え、37℃で5
時間反応させた。次いで100℃に加熱して酵素を失活さ
せた後、減圧下に10mlまで濃縮した。濃縮液は活性炭カ
ラム(直径5cm、高さ50cm;粒状活性炭150gとハイフロス
ーパーセル150gとの混合物を充填)に吸着させ、蒸留水
2を流した後、5%エタノール水溶液で溶出した。溶
出液は、TLCにてDFA IVを検出しながら20mlごとに集
め、DFA IV溶出フラクション(No.10〜50)を集めて濃
縮乾燥し、粗DFA IV3.0gを得た。次いでこれを95%エタ
ノールから結晶化されることにより、精製DFA IV0.5gを
得た。その▲[α]20 D▼は−32゜、融点は177℃で、標
品とよく一致した。
なお、上記カラム溶出液からフラクトースは全く検出
されなかった。
実施例 2 レバンにかえて同量のフレインを含有させた培地を用
いたほかは実施例1と同様にして、粗酵素液を得た。次
いでこれに硫安を60%飽和になるよう加え、生じた沈殿
を遠心分離して集め、pH6.0の0.01M酢酸緩衝液に溶解
し、同緩衝液で2日間透析し、部分精製酵素液15mlを得
た。
一方、風乾したフレウム・プラテウスの根茎の粉砕物
50gに250mlの水を加え、60〜70℃に加温して1時間撹拌
することにより、フレインを抽出した。
得られた抽出液に水酸化カルシウム1gを加え、生じた
沈殿をろ別した。得られたろ液240mlを、そのpHを6.0に
調整してから上記酵素液と混合し、20℃で10時間反応さ
せた。以下、実施例1と同様に処理して、結晶化DFA IV
1.0gを得た。その▲[α]20 D▼は−32゜、融点は177℃
で、標品とよく一致した。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シュードモナス属細菌が生産するレバンフ
    ラクトトランスフェラーゼをレバンまたはフレインに作
    用させることを特徴とするジ−D−フラクトシルフラノ
    ース1,2,6′:6,2′ジアンハイドライドの製造法。
  2. 【請求項2】シュードモナス・フルオレッセンスMZ No.
    949(微工研菌寄第9235号)が生産するレバンフラクト
    トランスフェラーゼを用いる特許請求の範囲第1項記載
    の製造法。
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