JP2611774B2 - 酢酸の精製方法 - Google Patents

酢酸の精製方法

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幸弘 葛谷
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和光純薬工業 株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の利用分野] 本発明は電子工業界に於いて使用可能な高純度酢酸を
得るための酢酸の新規精製方法に関する。
[発明の背景] 酢酸は、溶媒として、或いは繊維加工や染色に、また
酢酸セルロース、酢酸ビニル等の高分子化合物や各種工
業薬品、医薬品、合成酢などの原料として等、写真,繊
維,医薬,食品等の業界に於いて広く使用されている化
学薬品の一つであるが、最近では、電子工業界に於い
て、シリコンウエハー等の洗浄剤への添加物としても重
用されてきている。よく知られているように、この業界
に於いてこの様な目的に使用される際には、高純度であ
ること、(特に、金属イオン類の含量が低いこと)が要
求されることは言うまでもない。
一般に、酢酸は蒸留等により得られた直後に於いては
高純度であるが、貯蔵或は輸送中に貯蔵容器材料より不
純物が溶出したり環境汚染などにより、使用時には各種
の不純物、例えば鉄,ナトリウム等の金属イオン類或は
着色物質等の混入が生じる場合が多々見受けられた。そ
の為、電子工業界に於いて使用する場合には、使用直前
にこれら不純物、特に金属イオン類を簡便に効率よく除
去する必要があった。
酢酸を高純度に精製する方法としては、蒸留法が、工
業的には最も一般的な方法であるが、この方法は大量に
精製する場合にはそのランニングコストが安くなり経済
的であるが、電子工業界で1バッチで使用される程度の
量をその都度精製するために行うにはランニングコスト
がかなり高いものとなって不適当なものである為、より
経済的で簡便に効率よく精製が行える方法の出現が待ち
望まれていた。
[発明の目的] 本発明は上記した如き状況に鑑みなされたもので、酢
酸を簡便に効率よく且つ経済的に高純度に精製する方法
を提供することを目的とする。
[発明の構成] 本発明の目的を達成するために、本発明は次の構成よ
りなる。
H型に洗浄処理され、酢酸浸漬処理によりあらかじめ
酢酸可溶性物質を除去した巨大網状構造型カチオン交換
樹脂を用いて精製することを特徴とする、電子部品洗浄
用酢酸の精製方法。
即ち、本発明者らは、氷酢酸等の高濃度酢酸溶液を簡
便に効率よく且つ経済的に高純度に精製する方法を見い
出すべく鋭意研究の結果、特定のイオン交換樹脂、即ち
H型に洗浄処理された巨大網状構造(Macro Reticula
r)型のカチオン交換樹脂(以下、MRCRと略称する。)
を用いることにより、その目的を達成し得ることを見い
出し本発明を完成させるに至った。イオン交換樹脂によ
る精製は、従来20〜30%程度の酢酸溶液の精製に使用す
ることは可能とされていたが、氷酢酸の如き高濃度有機
物をその凝固点温度以上で接触させた場合には、これが
着色したり或は樹脂から不純物が溶出したりする為非水
溶液用に特別に設計されたイオン交換樹脂を用いない限
り不可能であると考えられていたのでこのことは全く予
想外のことであった。
本発明に使用可能なMRCRとしては、巨大網状構造を有
し、且つカチオン交換能を有しているものでH型に洗浄
処理されたものであれば、市販品であれ、自家調製品で
あれ、特に限定されることなく挙げられるが、その中で
も、スチレン系或はフェノール系の基本骨格を有し、カ
チオン交換基としてスルホン酸基を有しているものが特
に好ましく挙げられる。
本発明に係わるMRCRは、製造された後に常法により洗
浄処理されたものであればそのまま用いてもよいが、使
用時にこれから着色物質やその他の不純物が溶出されて
酢酸を汚染しないように、あらかじめ酢酸溶液中に浸漬
する等して、溶出してくる可能性のある物質を抽出除去
した後使用することが望ましい。この目的のために酢酸
溶液中に浸漬しておく時間としては、室温で一夜以上で
あれば充分であるが、浸漬時の酢酸溶液の温度が高けれ
ば、更に短縮することも可能である。また、この目的で
使用される酢酸溶液としては、氷酢酸が好ましい。
本発明を実施する際には、バッチ法により行ってもよ
いが、時間あたりの処理能力を考えた場合カラム法によ
り行うことが望ましい。
カラム法により本発明を実施する際の操作温度として
は、酢酸の凝固点温度(16.6℃)以上で行えばよいが、
好ましくは20〜60℃で、更に好ましくは20〜40℃で行う
のが望ましい。
また、一般にカラム法により通常のイオン交換処理を
行う際の通液量(通液速度)は、S.V.値(1時間当たり
の通液量をカラム体積で除した数値)として5〜10若し
くはそれ以下が普通であるが、本発明に係わるそれはS.
V.値が50以上、例えば100〜200であっても、充分に精製
が可能であり、この点でも、非常に経済的であると言え
る。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する
が、本発明はこれら実施例により何ら限定されるもので
はない。
[実施例] 実験例1. (充填剤) 各種市販のカチオン交換樹脂100mlを、2N塩酸500mlで
洗浄し、次いで精製水で洗浄液が中性となるまで洗浄し
た後、濾取して充填剤とした。
(操作法) 充填剤100mlを氷酢酸200mlに懸濁させたものを50℃に
加熱した後、1時間室温で放置した。充填剤と氷酢酸を
分離し氷酢酸の蒸発残分を試薬JISK8355特級酢酸の項に
記載の不揮発物の試験方法に従って測定した。
(結果) 結果を表1−1及び1−2に示す。尚、表中でMR型と
は巨大網状構造(Macro Reticuler)型の樹脂であるこ
とを示し、PSはフェノールスルホン酸構造を有する樹脂
であることを示し、SSはスチレンスルホン酸構造を有す
る樹脂であることを示す。
この結果から明らかな如く、ゲル型構造を有する樹脂
を用いた場合には、樹脂成分が氷酢酸により抽出される
ことが判るが、本発明に係わるMR型の樹脂(MRCR)を用
いた場合には、その様な現象が起こらないことが判る。
実施例1. (充填剤) アンバーライト200C(MR型カチオン交換樹脂)100ml
を、2N塩酸500mlで洗浄し、次いで精製水で洗浄液が中
性となるまで洗浄した後、濾取し、更に氷酢酸100ml中
に浸漬し、一夜放置後、濾取、次いで精製水500mlで洗
浄したものを用いた。
(操作法) 上記充填剤を充填したカラム(φ24mm×220mm)に所
定の通液速度(S.V.)で氷酢酸を流し、初流100mlを廃
棄した後、500mlのフラクションを2回採取して、各フ
ラクション中のFe含量を、原子吸光分析法により測定し
た。
(結果) 測定結果を表2に示す。尚、表中の矢印↓は「以下」
の意を表わす。
表2の結果から明らかな如く、本発明の方法により、
氷酢酸中の鉄イオンの除去が可能であることが判る。
実施例2. (充填剤) アンバーライト200C(MR型カチオン交換樹脂)100ml
を、2N塩酸500mlで洗浄し、次いで精製水で洗浄液が中
性となるまで洗浄した後、濾取し、更に氷酢酸100ml中
に浸漬し、一夜放置若しくは4日間放置後、濾取、次い
で精製水500mlで洗浄したものを用いた。
(操作法) 上記充填剤を充填したカラム(φ24mm×110mm)に通
液速度(S.V.)120で氷酢酸を流し、初流50mlを廃棄し
た後、250mlのフラクションを2回採取して、各フラク
ション中の不揮発分、金属イオン等を、試薬JISK8355特
級酢酸の項に記載の各試験方法及び原子吸光分析法によ
り調べた。
(結果) 測定結果を表3−1及び3−2に示す。尚、表中の各
試験項目に於いて、蒸発残分(不揮発分)の項はppm単
位で、各金属の項はppb単位で表示を行い(矢印↓は
「以下」の意を表わす。)また、水溶状及び過マンガン
酸還元物質の項はJISの基準に合格したか否かを表示し
た。
表3−1及び3−2の結果から明らかな如く、本発明
の方法により、氷酢酸中の不揮発成分及び金属類の除去
が可能であり、水溶状試験及び過マンガン酸還元性物質
試験の結果は原料と比較して変化がないことが判る。
[発明の効果] 以上述べた如く、本発明は容易に入手可能なMRCRを用
いて、氷酢酸等の高濃度酢酸溶液を簡便に、効率的且つ
経済的に、高純度に精製することができる方法を提供す
るものであり、斯業に貢献するところ大なる発明であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−209053(JP,A) 特開 平1−110643(JP,A) 特公 昭48−30254(JP,B1)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】H型に洗浄処理され、酢酸浸漬処理により
    あらかじめ酢酸可溶性物質を除去した巨大網状構造型カ
    チオン交換樹脂を用いて精製することを特徴とする、電
    子部品洗浄用酢酸の精製方法。
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