JP2606034B2 - BiSrCaCuO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜、及びその製造方法 - Google Patents

BiSrCaCuO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜、及びその製造方法

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  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
  • Superconductor Devices And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はBiSrCaCuO系超
電導層と絶縁層とからなる多層膜及びその製造方法に係
り、詳しくは、絶縁層が超電導層の極めて有効な保護膜
として作用し、超電導トランジスタ、ジョセフソン接合
デバイス等に極めて有効な材料となる、BiSrCaC
uO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物系超電導薄膜は超電導臨界温度
(Tc)が高く、トランジスタ、ジョセフソン接合デバ
イス等の電子デバイスへの応用が期待されている。
【0003】酸化物高温超電導体をこれらの各種デバイ
スに利用する場合、基板上に超電導体/絶縁体/超電導
体のように順次積層した構造とする必要がある。この場
合、特に、ジョセフソン接合デバイスへの利用には、絶
縁体層の膜厚が薄いほどデバイス性能にとって有利であ
ることから、急峻な超電導体/絶縁体界面及びその形成
方法が望まれていた。
【0004】一方、超電導トランジスタの場合には、超
電導体層の厚さを可能なかぎり薄くすることが、超電導
トランジスタの性能を向上させる上で特に重要である。
しかし、超電導層の厚さを薄くしていくと、超電導層の
経時劣化が激しくなるため、超電導層の経時劣化を防ぐ
ための保護膜及びその製造方法が望まれていた。
【0005】ところで、従来、酸化物系超電導薄膜或い
は酸化物系超電導薄膜と絶縁薄膜との多層膜を製造する
方法としては、スパッタリング法や蒸着法等の物理的気
相成長法(PVD法)や化学的気相成長法(CVD法)
が知られている。これらのうち、PVD法では成膜速度
の下限及び上限が比較的CVD法より狭いという欠点が
ある。一方、CVD法は成膜速度の制御範囲が広いた
め、原子層レベルの膜厚制御から、線材用厚膜作製のた
めの高速成膜まで可能である。更に、CVD法は、PV
D法に比べ、製造装置に要する経費、大型化への容易
性、高いスループット等の多くの利点を備えている。
【0006】このようなことから、酸化物系超電導薄膜
やそれと絶縁薄膜との多層膜は、CVD法により製造す
るのが工業的に有利である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述の如く、酸化物高
温超電導体をこれらの各種デバイス、特にジョセフソン
接合デバイスに利用する場合、基板上に超電導体/絶縁
体/超電導体のように順次積層した構造とする必要があ
るが、そのためには急峻な超電導体/絶縁体界面及びそ
の製造技術が望まれていた。また、超電導トランジスタ
の場合には、その性能を高めるため超電導層の厚さを薄
くする必要があるが、厚さを薄くすると超電導層の劣化
が激しくなるため、上記デバイスを外部環境から保護す
るための保護膜としての高品質の絶縁体層及びその製造
技術が望まれていた。
【0008】従来において、スパッタリング法や蒸着法
等のPVD法やハライド化合物を原料としたハライドC
VD法により、BiSrCaCuO系超電導体とBiS
rCuO半導体を用いた超電導体/半導体/超電導体多
層膜を形成した例がある。この場合、BiSrCaCu
O系超電導体とBiSrCuO半導体の結晶構造や格子
定数が一致しているため急峻な界面を得ることができる
が、半導体層の電気抵抗が十分に高くないため、デバイ
スに適した構造とは言えなかった。
【0009】このようなことから、従来、十分高い電気
抵抗を有する絶縁体であって、しかも急峻な超電導体/
絶縁体界面を持った構造の多層膜及びその製造技術が望
まれていた。また、超電導体層を保護するための保護膜
としての絶縁体薄膜及びその製造技術が望まれていた。
【0010】本発明は上記従来の実情に鑑みてなされた
ものであって、トランジスタ、ジョセフソン接合デバイ
ス等の電子デバイスの作製に極めて好適な、BiSrC
aCuO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜及びその
製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1のBiSrCa
CuO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜は、単結晶
よりなる基板上に、BiSrCaCuO系超電導層と絶
縁層とが順次積層形成されてなる多層膜であって、該超
電導層の厚さが200Å以下であり、絶縁層を表面層と
することを特徴とする。
【0012】請求項2の多層膜は、請求項1の多層膜に
おいて、BiSrCaCuO系超電導層の上に絶縁層が
形成された2層構造であることを特徴とする。
【0013】請求項3の多層膜は、請求項1又は2の多
層膜において、絶縁層が酸化ビスマスであることを特徴
とする。
【0014】請求項のBiSrCaCuO系超電導層
と絶縁層とからなる多層膜の製造方法は、請求項1〜
の多層膜を製造する方法であって、単結晶よりなる基板
上に、化学的気相成長法により、BiSrCaCuO系
薄膜と絶縁層とを連続して順次積層形成して多層膜を製
造するに当り、該BiSrCaCuO系薄膜を300〜
900℃の成膜温度で100〜0.1nm/minの成
膜速度で形成し、該絶縁層を300〜850℃の成膜温
度で10〜0.1nm/minの成膜速度で形成する
とを特徴とする。
【0015】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の
多層膜中のBiSrCaCuO系超電導層を構成するB
iSrCaCuO系超電導体としては、例えば、 Bi2 Sr2 CaCu2 x Bi2 Sr2 Ca2 Cu3 y 等の化学組成を有するものが挙げられる。また、Tc
(臨界温度)を向上させるために、上記組成に更にPb
が一部含まれたものであっても良い。
【0016】一方、多層膜中の絶縁層を構成する絶縁体
としては、Bi2 3 の化学組成からなる酸化ビスマス
が好ましい。
【0017】しかして、このようなBiSrCaCuO
系超電導層と絶縁層とからなる本発明の多層膜は、例え
ば、NaCl型構造酸化物やペロブスカイト型構造酸化
物よりなる単結晶基板上に、該BiSrCaCuO系超
電導層と絶縁層とを絶縁層が表面層となるように化学的
気相成長法(CVD法)により所定の成膜温度及び所定
の成膜速度で連続的に順次成膜することにより製造され
る。
【0018】なお、本発明に好適な単結晶基板のうち、
NaCl型構造酸化物単結晶基板としてはMgO(10
0)単結晶基板が挙げられる。また、ペロブスカイト型
構造酸化物単結晶基板としては、例えば、SrTi
3 、NdGaO3 ,LaAlO3 、YAlO3 などが
挙げられる。
【0019】以下に本発明のBiSrCaCuO系超電
導層と絶縁層とからなる多層膜の製造方法について説明
する。
【0020】本発明のBiSrCaCuO系超電導層と
絶縁層とからなる多層膜のうち、BiSrCaCuO系
超電導層の薄膜は、当該超電導体の化学組成に従った夫
々の原料ガス、キャリアガス、酸化性ガスを用いて、上
記単結晶基板上に薄膜を堆積するCVD法によって製造
する。また、絶縁層、例えば、酸化ビスマス薄膜は、基
板上にBiSrCaCuO系超電導薄膜を形成した後、
連続してBiSrCaCuO系超電導薄膜の場合と同じ
Bi原料ガス、キャリアガス、酸化性ガスを用いて、当
該BiSrCaCuO系超電導薄膜上に形成される。絶
縁層を超電導体層で挟んだ多層膜を形成する場合には、
更に続けて該酸化ビスマス薄膜上に、BiSrCaCu
O系超電導薄膜を形成し、表面層に絶縁層を形成する。
【0021】本発明で用いる原料ガスとしては、Bi,
Sr,Ca,Cu等の各々の有機金属錯体が挙げられ
る。有機金属錯体の有機部分、即ち、錯体の配位子とし
ては、アセチルアセトン(以下、「acac」と略
記)、ジピバロイルメタン(以下、「DPM」と略
記)、シクロペンタジエン、その他下記構造式で示され
る化合物が挙げられる。
【0022】 R−CO−CH2 −CO−C(CH3 3 (式中、Rは炭素数1〜4のフッ素化低級アルキル基を
示す。)これらの配位子を用いた場合には、金属錯体の
合成及び単離が容易となるため、原料ガスの調製に有利
であり、かつ、蒸気圧が比較的高いため、CVD用原料
ガスとして最適である。その他、配位子としては、フェ
ニル基(以下、「ph」と略記)、メチル基(以下、
「Me」と略記)、エチル基(以下、「Et」と略記)
等のアルキル基、アリール基も適用できる。なお、上記
構造式中Rで示されるフッ素化低級アルキル基として
は、具体的にはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロ
エチル基(以下、「PPM」と略記)、ヘプタフルオロ
プロピル基等が挙げられる。
【0023】原料ガスとして用いられる具体的な有機金
属錯体としては、次のものを挙げることができる。 Bi(ph)3 ,Bi(DPM)3 , BiMe3 ,BiEt3 ,Biアルコラート, Sr(DPM)2 ,Sr(PPM)2 , Ca(DPM)2 ,Ca(PPM)2 , Cu(DPM)2 ,Cu(PPM)2 ,Cu(acac)2 本発明で原料ガスを反応器に供給するのに用いられるキ
ャリヤーガスとしては、Ar,He,Ne等の不活性ガ
ス、その他N2 等が挙げられる。
【0024】また、本発明で用いられる酸化性ガスとし
ては、O2 ,O3 ,Air,N2 O,NO2 等が挙げら
れる。更に、酸化力を高めるために、レーザーやランプ
を光源とする可視光や紫外光を酸化性ガスと併用するこ
とや、上記酸化性ガスをプラズマ化することも可能であ
る。これらの酸化性ガスの全ガス中の分圧は、0.01
〜760torr、特に1〜100torrとするのが
好ましい。
【0025】本発明の方法において、BiSrCaCu
O系超電導薄膜の成膜温度は300〜900℃、好まし
くは600〜820℃とする。この成膜温度が300℃
未満では原料ガスの基板上での分解が困難となり、ま
た、900℃を超えると薄膜の溶融が起こるため、薄膜
の品質の劣化を招き好ましくない。成膜速度は100〜
0.1nm/minとする。
【0026】一方、絶縁層である酸化ビスマス薄膜の成
膜温度は300〜850℃、好ましくは500〜800
℃とする。この成膜温度が300℃未満ではBi原料ガ
スの基板上での分解が困難となり、また、850℃を超
えると膜の溶融や界面での化学反応が起こるため、多層
膜の品質の劣化を招き好ましくない。成膜速度は10〜
0.1nm/minとする。
【0027】このような本発明の多層膜は、例えば、基
板上にBiSrCaCuO系超電導層と絶縁層とを積層
形成した2層構造の多層膜として、絶縁層を保護膜とす
る、薄膜のBiSrCaCuO系超電導層を有する高特
性超電導トランジスタ等に、また、基板上にBiSrC
aCuO系超電導層、絶縁層及びBiSrCaCuO系
超電導層を積層形成した3層積層構造の多層膜として、
薄膜の絶縁層を有する高特性ジョセフソン接合デバイス
等に極めて有用である。
【0028】本発明の多層膜において、BiSrCaC
uO系超電導層の膜厚は200Å以下、好ましくは15
〜200Åとする。また、絶縁層の膜厚500Å以上
とし、また、3層積層構造の多層膜の場合には、基板側
のBiSrCaCuO系超電導層の膜厚を15〜200
Å、絶縁層の膜厚を5〜200Å、表層側のBiSrC
aCuO系超電導層の膜厚を15〜200Åとし、表面
層の絶縁層の膜厚を500Å以上とするのが好ましい。
【0029】なお、本発明者らの研究により、BiSr
CaCuO系超電導層の膜厚について次のことが確認さ
れた。即ち、保護層を形成せずに作製した100Å以下
の薄いBiSrCaCuO系超電導層では、その超電導
特性が劣化し、しかも厚さが薄くなるに従い、劣化の程
度は激しくなる。一方、100Åを超える厚さになると
劣化の程度は小さくなる。超電導層の超電導特性や構造
を安定させるため、厚さを100Å以上必要とする場合
もあるが、厚さが200Åを超えて厚くなると、例えば
薄い超電導トランジスタ等の性能上は好ましくない。従
って、BiSrCaCuO系超電導層の膜厚は200Å
以下とすることが重要である。
【0030】
【作用】単結晶よりなる基板に、所定の膜厚のBiSr
CaCuO系超電導層と絶縁層とを絶縁層が表面層とな
るようにCVD法により連続して順次積層形成すること
により、十分に高い電気抵抗を有する絶縁層を備える多
層膜であって、急峻な超電導体/絶縁体界面を有する構
造の多層膜や、超電導体層を保護する良好な保護膜とし
ての絶縁層を有する構造の多層膜が容易かつ効率的に提
供される。
【0031】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を
より具体的に説明する。なお、以下において、ガス流量
はcc/minを1atm,25℃に換算した値scc
mで示す。 実施例1 原料ガスとして下記表1のものを用い、表2に示す基板
及び成膜条件でBiSrCaCuO系超電導層の製造を
行なった。この、該BiSrCaCuO系超電導層の形
成後、連続して該BiSrCaCuO系超電導層で用い
たと同様のBi原料を用いて、表3に示す成膜条件で、
該BiSrCaCuO系超電導層上に酸化ビスマス層を
形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】その結果、厚さが約30ÅのBiSrCa
CuO系超電導層の上に、約200Å厚みの酸化ビスマ
ス層が形成された2層構造の多層膜を作製することがで
きた。
【0036】得られた多層膜の超電導臨界温度Tcは、
図1に示すように60Kであった。また、このようにし
て作製した多層膜を、作製後1日放置した後、再びその
超電導臨界温度を測定したが、その値は変化しなかっ
た。また、作製1カ月後に同様にしてその超電導臨界温
度を測定したが大きな変化は認められなかった。
【0037】比較例1、2 BiSrCaCuO系超電導層の上に酸化ビスマス層を
形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして行なっ
て、厚さが35Å(比較例1)又は55Å(比較例2)
のBiSrCaCuO系超電導膜を製造した。
【0038】得られた超電導膜の超電導臨界温度を作製
後ただちに測定した場合、1日後に測定した場合、42
日後に測定した場合の結果をそれぞれ図2(比較例
1)、図3(比較例2)に示した。図2、3より、酸化
ビスマス層を形成しない場合には、作製後1日経過した
だけでその超電導特性が劣化していることが明らかであ
る。
【0039】
【発明の効果】以上詳述した通り、請求項1のBiSr
CaCuO系超電導層と絶縁層とからなる多層膜によれ
ば、トランジスタ、ジョセフソン接合デバイス材料とし
て極めて有用な、超電導特性及びその安定性に優れた超
電導材料が提供される。
【0040】特に、薄い超電導層と絶縁層との2層構造
の請求項2の多層膜の場合には、絶縁層が超電導層の極
めて有効な保護膜として作用し、高特性超電導トランジ
スタ等に極めて有効な材料となる。
【0041】請求項の多層膜によれば、より一層優れ
た特性を有する材料が提供される。
【0042】請求項の方法によれば、このような高特
性超電導材料の多層膜が容易かつ効率的に製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた多層膜の抵抗−温度特性を
示すグラフである。
【図2】比較例1で得られた超電導膜の抵抗−温度特性
を示すグラフである。
【図3】比較例2で得られた超電導膜の抵抗−温度特性
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 常実 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団 法人国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所内 (72)発明者 藤田 重人 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団 法人国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所内 (72)発明者 中尾 公一 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団 法人国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所内 (72)発明者 塩原 融 東京都江東区東雲1丁目14番3号 財団 法人国際超電導産業技術研究センター 超電導工学研究所内 (56)参考文献 特開 平2−87688(JP,A) 特開 平2−96386(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単結晶よりなる基板上に、BiSrCa
    CuO系超電導層と絶縁層とが順次積層形成されてなる
    多層膜であって、該超電導層の厚さが200Å以下であ
    り、絶縁層を表面層とすることを特徴とするBiSrC
    aCuO系薄膜と絶縁層とからなる多層膜。
  2. 【請求項2】 多層膜が、BiSrCaCuO系超電導
    層の上に絶縁層が形成された2層構造であることを特徴
    とする請求項1に記載の多層膜。
  3. 【請求項3】 絶縁層が酸化ビスマスであることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の多層膜。
  4. 【請求項4】 単結晶よりなる基板上に、化学的気相成
    長法により、BiSrCaCuO系薄膜と絶縁層とを連
    続して順次積層形成して多層膜を製造する方法であっ
    て、該BiSrCaCuO系薄膜を300〜900℃の
    成膜温度で100〜0.1nm/minの成膜速度で形
    成し、該絶縁層を300〜850℃の成膜温度で10〜
    0.1nm/minの成膜速度で形成することを特徴と
    する請求項1ないしのいずれか1項に記載の多層膜の
    製造方法。
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