JP2605361B2 - 車両用実舵角制御装置 - Google Patents

車両用実舵角制御装置

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、車輪の実舵角を調整することで車両の運動
特性を制御する車両用実舵角制御装置に関する。
(従来の技術) 従来、車両用実舵角制御装置としては、例えば特開昭
60−247979号公報に記載されている装置が知られてい
る。
上記従来装置は、規範モデルと自車モデルによりフィ
ードフォワードの後輪舵角制御により操舵入力に対し所
望の応答(ヨーレート)を得、更に、横風等の外乱やタ
イヤのコーナリングパワー変化等による特性変化を、補
助的に付け加えたフィードバック保証により吸収し、常
に良好な応答を得ることを目的としている。
更に、この従来装置には、補助操舵量の絶対値を制限
するリミッタを付加することにより、万が一のフィード
バックセンサの故障に対して、安全性を確保する方法が
示されている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、このような従来の車両用実舵角制御装
置の補助操舵量の制限方法にあっては、車速によらず補
助操舵制限量を一定値により設定するようになっていた
為、リミッタの本来の主旨である万が一のフィードバッ
クセンサの故障に対する安全性確保を達成するために
は、補助操舵制限量を非常に小さく設定しなければなら
ず、この場合には、低・中速域においてフィードバック
補償を加えたことによる効果が十分に発揮されないとい
う問題があった。
即ち、一般に、車両の特性として高速域ほど舵角に対
する車両の挙動は敏感になり、例えば、後輪舵角に対す
る横加速度の定常ゲインは、第6図に示すように、車速
が高くなるに従って高くなるという特性を示す。
本発明は、上述のような問題に着目してなされたもの
で、低速から高速まで外乱等を十分吸収して所望の車両
応答が得られると共に、万が一、車両状態量を検出する
フィードバックセンサが故障した場合においても車両挙
動が著しく乱されることなく安全に走行出来る車両用実
舵角制御装置の開発を課題とする。
(課題を解決するための手段) 上記課題を解説するために本発明の車両用実舵角制御
装置では、車速に応じて補助操舵制限量を変更する手段
とした。
即ち、第1図のクレーム対応図を示すように、運転者
による操舵指令S1を検出する操舵指令検出手段100と、
車速S2を検出する車速検出手段101と、目標とする動特
性を数学モデル化してなる規範モデルに前記操舵指令S1
及び車速の検出値S2を与え、自車で実現しようとする運
動状態量の目標値S3を少なくとも1種類以上求める運動
状態量目標値演算手段102と、前記求められた運動状態
量目標値S3に基づいて、該運動状態量目標値S3を自車で
実現するために必要な前輪または後輪のうち少なくとも
一方に制御対象車輪の舵角の操作量の目標値S4を決定す
る舵角操作量目標値決定手段103と、自車に生じる運動
状態量のうち前記運動状態量目標値S3と同種の運動状態
量S5を検出する運動状態量検出手段104と、前記運動状
態量目標値S3と前記運動状態量検出値S5の差に対応し
て、前記舵角操作量目標値S4に対する補助操作量S6′を
決定する補助操作量決定手段105と、前記補助操作量
S6′の絶対量を、高車速になるに従って小さくなる所定
値S6以内に制限する補助操作量制限手段108と、前記舵
角操作量目標値S4に前記補助操作量制限手段108からの
補助操作制限量S6を加え合せて、舵角操作量目標値S4
修正する目標値修正手段106と、該目標値修正手段106で
修正された後の修正舵角操作量目標値S7に従って前記制
御対象車輪の実舵角を調整する車輪実舵角調整手段107
と、を備えている。
尚、前記補助操作量制限手段108からの補助操作制限
量|Δδ|MAXとすると、この補助操作制限量|Δδ|MAX
は次式の車速Vによる関数、 ここで、 は舵角制御量に対する横加速度αの定常ゲインであり、 制御対象が前輪舵角δの場合、 制御対象が後輪舵角δの場合、 で与えられるようにする。
(作 用) まず、運動状態量目標値演算手段102において、目標
とする動特性を数学モデル化してなる規範モデルに操舵
指令検出手段100からの操舵指令S1及び車速検出手段101
からの車速の検出値S2を与え、自車で実現しようとする
運動状態量の目標値S3が少なくとも1種類以上求められ
る。
そして、舵角操作量目標値決定手段103において、前
記求められた運動状態量目標値S3に基づいて、該運動状
態量目標値S3を自車で実現するために必要な前輪または
後輪のうち少なくとも一方に制御対象車輪の舵角の操作
量の目標値S4が決定される。
一方、補助操作量決定手段105において、前記運動状
態量目標値S3と、運動状態量検出手段104からの運動状
態量S5との差に対応して、前記舵角操作量目標値S4に対
する補助操作量S6′が決定され、次いで、補助操作量制
限手段108では、前記補助操作量S6′の絶対量を、高車
速になるに従って小さくなる所定値S6以内に制限され
る。
そして、目標値修正手段106において、前記舵角操作
量目標値S4に前記補助操作量制限手段108からの補助操
作制限量S6を加え合せて、舵角操作量目標値S4が修正さ
れる。
最後に、前記目標値修正手段106で修正された後の修
正舵角操作量目標値S7に従って車輪実舵角調整手段107
では前記制御対象車輪の実舵角が調整されることにな
る。
(実施例) 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
尚、この実施例は、所望のヨーレート応答モデル(規
範モデル)を設定し、車両の応答がこれに一致するよう
に後輪の舵角を与えるヨーレートモデル適合制御による
車両用後輪舵角制御装置である。
まず、構成を説明する。
第2図は実施例の車両用後輪舵角制御装置が適応され
た車両を示す図であり、1はハンドル、2はステアリン
グシャフト、3はフロントステアリングギヤユニット、
4,5は前輪、6はリヤステアリングシリンダー、7,8は後
輪であり、前記前輪4,5はハンドル1の操作により転舵
され、前記後輪7,8は油圧源9からの供給油圧の制御に
より転舵される。
そして、後輪7,8の転舵角制御を行なう車両用後輪舵
角制御装置は、入力センサとして、操舵角センサ10(操
舵指令検出手段)、車速センサ11(車速検出手段)、ヨ
ーレートセンサ12(運動状態量検出手段)が設けられ、
電子制御回路として、デジタルマイクロコンピュータを
主体とするデジタル演算処理装置13(運動状態量目標値
演算手段,舵角操作量目標値決定手段,補助操作量決定
手段,補助操作量制限手段及び目標値修正手段を含む)
が設けられ、出力部材として、後輪転舵制御バルブ14が
設けられている。
尚、前記リヤステアリングシリンダー6,油圧源9及び
後輪転舵制御バルブ14により、請求の範囲でいう車輪実
舵角調整手段が構成される。
第3図はデジタル演算処理装置13のブロック図であ
り、予め設定された所望の動特性を数学モデル化した規
範モデルを持ち、操舵角θと車速Vを入力して自車で
実現しようとするヨーレート目標値 を出力する運動目標値演算部131と、 自車の動特性をモデル化した自車モデルを持ち、ヨー
レート目標値 と操舵角θと車速Vとを与え、ヨーレート目標値 とヨー角加速度目標値 を自車で実現するために必要な後輪舵角目標値▲
▼を出力する舵角演算部132と、 前記規範モデル131で求められたヨーレート目標値 と、ヨーレートセンサ12で検出されたヨーレートとの
差eに対応して、前記後輪舵角目標値▲▼に対す
る補助舵角▲▼を決定する補助舵角決定部133
と、 車速Vと補助舵角▲▼とを入力して補助舵角
▲▼を車速Vの関数に応じて所定値以内の補助
舵角制限値▲▼に規定するリミッタ134と、前記
後輪舵角目標値▲▼と補助舵角制限値▲▼
とを入力して両者の加算により後輪舵角目標値▲
▼を修正して後輪舵角修正目標値▲▼を出力する目
標値修正部135とを備えている。
次に、作用を説明する。
まず、デジタル演算処理装置13で行なわれる後輪舵角
制御作動の流れを第5図に示すフローチャート図により
説明する。尚、この制御作動は所定の制御周期Δt毎に
繰り返し行なわれる。
ステップaでは、操舵角θと車速Vが読み込まれ
る。
ステップbでは、運動目標値演算部131において、所
望の規範モデルに対し、操舵角θと車速Vを入力して
自車で実現しようとするヨーレート目標値 が演算により求められる。
ステップcでは、舵角演算部132においてヨーレート
目標値 と操舵角θと車速Vとを与え、ヨーレート目標値 とヨー角加速度目標値 を自車で実現するために必要な後輪舵角目標値▲
▼が自車モデルに基づいて求められる。
ステップdでは、ヨーレートセンサ12からヨーレート
が入力される。
ステップe及びステップfでは、補助舵角決定部133
において、前記規範モデル131で求められたヨーレート
目標値 ヨーレートセンサ12で検出されたヨーレートとの差 が求められると共に、この差eに対応して、前記後輪舵
角目標値▲▼に対する補助舵角▲▼(=
H(s)e)が決定される。
ステップg〜ステップjは、リミッタ134で行なわれ
る補助舵角の制限処理動作である。
ステップgでは、車速センサ11からの車速Vと、第4
図に示す補助操舵量最大値マップとに基づいて、補助操
舵量最大値|δR2|MAXが検索により求められる。
ステップhでは、前記補助舵角▲▼と補助操
舵量最大値|δR2|MAXとの大小比較がなされる。
そして、▲▼>|δR2|MAXの時には、ステッ
プiへ進み、補助舵角制限値▲▼として、±|δ
R2|MAXが設定される。
尚、±|δR2|MAXの符号±は、補助舵角▲▼
の符号により決定する。
また、▲▼≦|δR2|MAXの時には、ステップ
jへ進み、補助舵角制限値▲▼として補助舵角▲
▼が設定される。
ステップkでは、目標値修正部135において、前記後
輪舵角目標値▲▼と補助舵角制限値▲▼と
を入力して両者の加算により後輪舵角目標値▲▼
を修正して後輪舵角修正目標値▲▼(=▲▼
+▲▼)が求められる。
ステップlでは、後輪舵角修正目標値▲▼が出力
される。
次に、基本的な後輪舵角制御動作について説明する。
操舵角θs,車速Vを入力し、規範モデルを持つ運動目
標値演算部131と、自車モデルを持つ舵角演算部132によ
り後輪舵角目標値▲▼を計算するフィードフォワ
ード制御系及びヨーレート目標値 とヨーレート検出値の偏差eに応じて補助舵角▲
▼を計算するフィードバック制御系の動作は、従来
出典で示した特開昭62−247979号公報に記載の内容と同
様であり、外乱や環境変化等によりフィードフォワード
制御系が不安定になる場合には、フィ−ドバック制御系
によってフィードフォワード制御の補助を行なうこと
で、常に安定した制御を行なうことが出来る。
本発明の特徴であるリミッタ134の作用について第4
図及び第6図を用いて説明する。
第6図はホイールベース2.5m,スタビリティファクタ
0.002の車両における後輪舵角入力に対する定常横加速
度ゲインと車速の関係を示したものであり、車速の増加
に伴ない定常横加速度ゲインは増加する。
これに対し、万が一、フィードバックセンサが故障し
ても十分安全に走行可能な横加速度|α0|を1m/s2(約
0.1g)とすると、第4図に示すように、車速の関数とし
て第4図に示すように補助操舵量最大値|δR2|MAXを設
定すれば良い。
以上説明したように実施例の車両用後輪舵角制御装置
にあっては、規範モデルで与えた所望の応答を得るため
のフィードフィォワードの後輪舵角制御に加えて外乱や
環境変化等に対応したフィードバックによる補助操舵を
行なう場合、フィードバック補助操舵量を車速Vに対応
して高車速ほど小さな値に制限するようにした為、低速
から高速まで外乱等を十分に吸収し、所望のヨーレート
応答が得られると共に、万が一、ヨーレートセンサ12が
故障した場合においても車両挙動が著しく乱されること
なく安全に走行出来るという効果が得られる。
以上、実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体
的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲における制御の追加や変更等が
あっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、後輪の舵角を制御する装置を示
したが、前後輪共に舵角の制御する4輪操舵車にも適応
出来る。
また、車両の動特性をヨーレイトによりみる制御例を
示したが、車両の動特性を横加速度によりみる例や、ヨ
ーレートと横加速度の線形結合でみる例等であっても勿
論良い。
(発明の効果) 以上説明してきたように、本発明の車両用実舵角制御
装置にあっては、規範モデルで与えた所望の車両動特性
を得るためのフィードフィォワードの舵角制御に加えて
外乱や環境変化等に対応したフィードバックによる補助
操舵を行なう場合、フィードバック補助操舵量を車速に
対応して高車速ほど小さな値に制限するようにした為、
低速から高速まで外乱等を十分に吸収し、所望の車両動
特性が得られると共に、万が一、車両状態量検出手段が
故障した場合においても車両挙動が著しく乱されること
なく安全に走行出来るという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の車両用実舵角制御装置を示すクレーム
対応図、第2図は本発明実施例の車両用後輪舵角制御装
置に適応した車両を示す全体図、第3図は実施例の車両
用後輪舵角制御装置のデジタル演算処理装置を示すブロ
ック図、第4図は車速に対する補助操舵量最大値マップ
図、第5図は実施例のデジタル演算処理装置での後輪舵
角制御処理作動の流れを示すフローチャート図、第6図
は車両における後輪舵角入力に対する定常横加速度ゲイ
ンと車速の関係特性図である。 100……操舵角検出手段 101……車速検出手段 102……運動状態量目標値演算手段 103……舵角操作量目標値決定手段 104……運動状態量検出手段 105……補助操作量決定手段 106……目標値修正手段 107……車輪実舵角調整手段 108……補助操作量制限手段 S1……操舵指令 S2……車速 S3……運動状態量目標値 S4……舵角操作量目標値 S5……運動状態量検出値 S6′……補助操作量 S6……補助操作制限量 S7……修正舵角操作量目標値

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】運転者による操舵指令を検出する操舵指令
    検出手段と、 車速を検出する車速検出手段と、 目標とする動特性を数字モデル化してなる規範モデルに
    前記操舵指令及び車速の検出値を与え、自車で実現しよ
    うとする運動状態量の目標値を少なくとも1種類以上求
    める運動状態量目標値演算手段と、 前記求められた運動状態量目標値に基づいて、該運動状
    態量目標値を自車で実現するために必要な前輪または後
    輪のうち少なくとも一方に制御対象車輪の舵角の操作量
    の目標値を決定する舵角操作量目標値決定手段と、 自車に生じる運動状態量のうち前記運動状態量目標値と
    同種の運動状態量を検出する運動状態量検出手段と、 前記運動状態量目標値と前記運動状態量検出値の差に対
    応して、前記舵角操作量目標値に対する補助操作量を決
    定する補助操作量決定手段と、 前記補助操作量の絶対量を、高車速になるに従って小さ
    くなる所定値以内に制限する補助操作量制限手段と、 前記舵角操作量目標値に前記補助操作量制限手段からの
    補助操作制限量を加え合せて、舵角操作量目標値を修正
    する目標値修正手段と、 該目標値修正手段で修正された後の修正舵角操作量目標
    値に従って前記制御対象車輪の実舵角を調整する車輪実
    舵角調整手段と、 を備えている事を特徴とする車両用実舵角制御装置。
  2. 【請求項2】前記補助操作量制限手段からの補助操作制
    限量|Δδ|MAXとすると、この補助操作制限量|Δδ|
    MAXは次式の車速Vによる関数、 ここで、 は舵角制御量に対する横加速度αの定常ゲインであり、 制御対象が前輪舵角δの場合、 制御対象が後輪舵角δの場合、 で与えられることを特徴とする請求項1記載の車両用実
    舵角制御装置。
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