JP2603555B2 - 寸法安定性の改良された紙 - Google Patents

寸法安定性の改良された紙

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JP2603555B2
JP2603555B2 JP31443190A JP31443190A JP2603555B2 JP 2603555 B2 JP2603555 B2 JP 2603555B2 JP 31443190 A JP31443190 A JP 31443190A JP 31443190 A JP31443190 A JP 31443190A JP 2603555 B2 JP2603555 B2 JP 2603555B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、紙の寸法安定性を著しく向上させる方法を
提供するものである。紙は一般に水分変化や温度変化を
受けると紙を構成しているパルプ繊維の伸縮に伴う寸法
変化を起す。この寸法変化は、例えば印刷時の印字部位
置のズレや間隔の狂いを生じ、特に多色印刷の場合には
色ズレの問題も合せて発生し、商品価値を著しく損なう
こととなる。また、コンピューター入力(光学的読み取
り装置など)に使用されるOCR用紙などでは印字部の位
置ズレは致命的欠陥となる。さらに最近特に需要が急増
している一般フォーム用紙、レーザープリンター用フォ
ーム用紙や、各種用途の感熱紙、インクジェット用紙、
熱転写用紙、PPC用紙、写真印画紙などのいわゆる情報
記録用紙においては、その基材である紙の寸法安定性の
不足に起因する様々な問題、特に紙のカールの問題が記
録装置内での紙の走行性や、ハンドリング性を損なうな
どの重大なトラブルを引き起している。また近年紙と他
の材料(例えば樹脂フィルム、金属箔など)を貼り合せ
たり、あるいは紙に他の材料(例えば液状樹脂など)を
含浸させたような、いわゆる複合材的な特殊用途に利用
される原紙、例えば粘着テープ、粘着ステッカーなどに
貼り合わせられる粘着剥離紙用原紙や、樹脂含浸後に成
形される積層板原紙などにおいても、原紙の寸法安定性
の不足による複合材のカールや、寸法変化が深刻な問題
となっている。
〔従来の技術〕
この様な紙の寸法安定性の不足に起因する様々なトラ
ブルを解決するために、すでにいくつかの提案がなされ
ている。例えば、紙の製造段階において乾燥過程での拘
束を強めることにより寸法安定性を改善する方法とし
て、ヤンキードライヤーを使用したり、紙の内部応力を
解放させて寸法安定性を改善する調湿装置あるいは加湿
装置を使用することなどが知られている。しかしこれら
の方法は紙の製造段階で行なわれる微修正の域を出ずそ
の改善効果は極めて小さく根本的解決策とはなっていな
い。
また、原料パルプとして一度乾燥履歴を受けたパルプ
(いわゆるドライパルプ)を使用することが行なわれて
いるが、この方法はパルプを一度乾燥処理するために、
膨大な熱量を必要とし、製造コストを大幅に上昇させ、
現実問題としては極く限られた分野にしか使用できな
い。さらに悪いことには一度乾燥履歴を受けたパルプ繊
維は、その結合性が極めて悪くなり、紙の重要な特性で
ある強度や、弾性特性を著しく損なう。
その他、ペーパーマシンの操業条件を調整し、紙の異
方性を制御し、寸法安定性の縦横のバランスを取る方法
もあるが、これは単に縦横のバランスを取るだけで根本
的解決とはなっていない。また原料に無機顔料を添加し
寸法安定性を向上させる方法もあるが、これも強度や弾
性特性を著しく損ない、添加量に限界があるため大きな
寸法安定性の改善は望めない。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は従来の技術の成し得なかった紙の寸法安定性
の著しい向上法を提供するものであり、かつ、紙として
の他の特性を何ら損うことなく、安価で効率的な寸法安
定性の極めて良好な紙の製造法を提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、寸法安定性の極めて良好な紙を製造するた
めに、原料パルプに機械的圧縮力を加えることにより、
その原料パルプ単繊維の形態的特性、柔軟性、力学特
性、伸縮特性などを変化させ、そのパルプを用いて紙を
製造することにより、紙の寸法安定性の向上を図るとい
う画期的かつ根本的寸法安定性改善法である。
機械的圧縮処理を施したパルプ中のパルプ繊維は、膨
潤状態において、明らかに偏平化していることが認めら
れる。本特許の発明者らは、このパルプ繊維の形態的変
化に着目し、鋭意研究した結果、パルプ繊維の偏平化は
パルプ繊維そのものの力学的特性および水分に対する伸
縮性を変化させると同時に、紙を形成する際のネットワ
ーク構造をも変化させ、その結果、紙の寸法安定性を向
上させることを突き止めた。即ち、パルプ単繊維の膨潤
状態での偏平度が抄造された紙の寸法安定性と良く相関
することを見い出した。
通常のパルプ単繊維の膨潤状態における偏平度は1.1
〜1.30(定義、測定法は後述)の範囲にあるのに対し、
本発明の機械的圧縮処理を施したパルプ単繊維の膨潤状
態における偏平度は、1.35以上となり、実施例に示す如
く、偏平度が増すに従い寸法安定性向上効果が顕著とな
る。
膨潤状態のパルプ単繊維の偏平度は以下の様にして測
定される。まず試料パルプから篩別試験機により、42メ
ッシュオンパルプ(長繊維パルプ)を分離する。この分
離パルプ懸濁液の水を溶媒置換をくり返し、最終的にエ
ポキシ樹脂に置換する。エポキシ樹脂が完全に硬化する
前に、パルプ繊維が分散しているエポキシ樹脂のかたま
りを若干引き伸ばし、内部のパルプ繊維を配向させる。
これはパルプ繊維断面を切断する際に、切断面が繊維軸
方向と直角になるようにするためである。その後エポキ
シ樹脂を硬化させ、ミクロトームにより繊維断面切片を
切り出す。この切片を顕微鏡下で観察し、パルプ繊維断
面の形状を定量化する。パルプ繊維の偏平度は、繊維断
面積/(繊維最小幅)で定義した。この値は繊維の偏
平度合を示す指標であり、繊維断面が完全な円であれば
0.79、完全な正方形であれば1.00となり、繊維が偏平化
すればする程、値としては大きくなる。たとえば、長軸
と短軸の比が2:1のだ円状に偏平化すれば、偏平度=1.5
7、長軸と短軸の比が2:1の長方形状に偏平化すれば、偏
平度=2.00となる。
なお、繊維の偏平度は繊維固有のバラツキを有するた
め、少なくとも1000本程度の測定が必要である。
原料パルプに機械的圧縮力を加える方法に特に制限は
ないが、ワイヤーメッシュ上で脱水したパルプシートを
プレス成形に用いられる面圧型のプレス装置で加圧圧縮
する方法、あるいはロールプレス装置で連続的に加圧圧
縮する方法などを用いることができる。
本発明に使用するパルプとしては、広葉樹、針葉樹の
何れでも可能であり、パルプ化の方法にも特に制限はな
い。機械的圧縮装置に供給するパルプの乾燥坪量に特に
制限はないが、パルプシートの処理効率の面から200g/m
2以上が通常用いられ、圧縮処理前の脱水処理効率の面
から3000g/m2以下が適している。パルプは未叩解パルプ
を加圧処理した後に再離解し、用途によりそのままある
いは所定のろ水度まで叩解して用いてもよく、また前も
って所定のろ水度まで叩解したパルプを圧縮処理しても
かまわない。
圧縮処理の圧力は通常の面圧タイプの場合、30kg/cm2
程度で寸法安定性効果が認められ、圧力を500kg/cm2
度まで増すにしたがいその効果は増大する。500kg/cm2
以上の圧力を加えた場合、それ以上の効果の増大はほと
んど見られなくなる。ロールプレスタイプの場合、線圧
として30kg/cm程度から寸法安定性効果が認められ、500
kg/cm程度まで圧力を増すにしたがい、その効果は増大
する。500kg/cm以上の圧力を加えてもそれ以上の効果の
増大は見られず、意味はない。
加圧装置の金型あるいはロールの面は平面状、溝付き
タイプ、孔付きタイプのいずれでも、その効果に変わり
はないが、加圧時にパルプマットから水が押し出される
ため、排水をスムーズにするためには溝付きタイプある
いは孔付きタイプが適している。またサクション、フエ
ルトなどを用いて搾水を助ける方法も併用できる。処理
回数は1段で十分であるが、装置に圧力の制約があれ
ば、多段処理を行うことも出来る。
寸法安定性向上効果を最大に生かすには加圧処理パル
プ100%で紙を製造するのが最適であるが、用途によっ
ては30%程度の配合で効果が認められる。
〔実施例〕
実施例−1 濃度約1.5%の未叩解および叩解LBKP懸濁液を25メッ
シュワイヤー上で脱水し、坪量1000g/m2(固形分)、パ
ルプ濃度25%のパルプマットを形成した。このパルプマ
ットを500mm×500mmに切断し、下記第1表の各条件で面
圧型のプレス装置で加圧した後、叩解又は未叩解のまま
で配合し、坪量60g/m2、密度約0.6g/cm3の手抄きシート
を抄造した。
紙の寸法安定性の評価は、水分伸縮率で評価した。水
分伸縮率は水分1%変化あたりの寸法変化率である。第
1表に示す通り、加圧圧縮処理したパルプを用いた紙の
伸縮率は無処理品(比較例)に比較して、極めて優れた
寸法安定性を示し、参考に併記した弾性率(超音波伝播
速度より算出)も上昇していることがわかる。
実施例2 濃度約1.5%の未叩解および叩解LBKP懸濁液を25メッ
シュ丸綱上で脱水し、絶乾坪量1500g/m2、固型分濃度約
25%の連続したパルプマットを作成した。。このパルプ
マットをロールプレス装置(3mmピッチ、山形溝付きロ
ール)に第2表の各条件で通紙した後、必要に応じ、叩
解、配合し、坪量60g/m2、密度約0.6g/cm3のシートを抄
造した。紙の寸法安定性の評価は、水分伸縮率の縦横の
幾何平均で、弾性率の表示も縦横の幾何平均で表わし
た。
第2表に示す通り、加圧圧縮処理したパルプで抄造さ
れた紙の寸法安定性は、無処理品(比較例)に比較して
極めて優れていた。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】湿潤パルプシートに30kg/cm2〜500kg/cm2
    の機械的圧縮力を加えることにより得られたパルプで、
    スラリー中における膨潤パルプ繊維の偏平度が1.35以上
    であるパルプを30%以上配合したことを特徴とする寸法
    安定性の改良された紙。
JP31443190A 1990-11-21 1990-11-21 寸法安定性の改良された紙 Expired - Lifetime JP2603555B2 (ja)

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