JP2602253B2 - 神経毒障害の悪影響を減少させるための組成物 - Google Patents

神経毒障害の悪影響を減少させるための組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は薬理学の分野に関し、具体的には既知のクラ
スの化合物であるモルフィン様オピオイドの鏡像異性体
(光学異性体)の新規な使用であって、神経毒障害から
中枢神経を保護するためのものに関する。
[従来の技術] 脳以外の組織は低酸素においても長期間にわたって生
存し続けることができるが、脳は短時間の低酸素に対し
ても極めて敏感である。近来、低酸素症のような各種脳
障害を有する神経障害の病原論において刺激性の神経伝
達物質であるグルタメートまたは関連化合物の考えられ
る役割が注目されてきている。グルタメートは、哺乳類
の中枢神経系(CNS)に高濃度で存在し、且つ中枢ニュ
ーロンにとって有毒である。低酸素症によるニューロン
障害の媒介にグルタメートがある役割を果たしているこ
とは、ある種のグルタメート拮抗薬が低酸素症、虚血お
よび低血糖によって引き起こされる急性ニューロン障害
を減哀させることができるという事実によって証明され
る。
グルタメート拮抗薬が中枢ニューロンに対して防護効
果を有することが見られたことにより、かかる薬剤を低
酸素脳障害において臨床治療に使用し得る可能性が生じ
てきた。しかしながら、従来知られている薬物は(例え
ば、臨床治験に入っていないというような)臨床的見地
から利用することが出来ず、且つそれらの体系的効果は
ほとんど知られていない。更に、グルタメートは刺激性
アミノ酸リセプターであるカイネート、キスカレートお
よびN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)の3種の
サブタイプでは有効な広スペクトル作用薬であることが
知られている。本発明の以前には、グルタメートの神経
毒性をブロックするには、これらのリセプターサブタイ
プの1つ、2つの組合せまたは3つ総てを遮断すること
が必要であるかどうかは知られていなかった。
したがって、グルタメートリセプターと相互作用して
所望な保護効果を生じることができる薬理学的にも活性
な化合物を同定することが必要とされている。
チャーチ(Church)と共同研究者らは、右旋性モルフ
ィナンオピオイドであるデキストロルファンがNMDAの投
与により誘起される棘状突起ニューロンの奮起を遮断す
るけれども、カイネートまたはキスカレートによるその
ような興奮を遮断しないことを報告した(チャーチ・ジ
ェイ(Church,J.)ら、1985年「アミノ酸によるラット
棘状突起ニューロンの興奮に対するデキストロルファン
とレボルフィンの差別的効果」、Eur.J.Pharmacol.、11
1巻、185〜190頁)。この研究は、NMDAの興奮における
変化がみられたことに就いての間接的説明(例えば、シ
ナプス前効果)を除外しなかった。多くの研究者らが、
低酸素症(ロスマン・エス(Rothman,S.「興奮性アミノ
酸神経伝達物質のシナプス放出による酸素欠乏によるニ
ューロンの死亡の媒介」、J.Neurosci.、4巻、1884〜1
891頁)、虚血(サイモン・アール・ピー(Simon,R.
P.)ら、1984年「N−メチル−B−アスパルテートリセ
プターの遮断による脳の虚血性障害の予防」Science、2
26巻、850〜852頁)および低血糖(ワイロック・ティー
(Weiloch,T.)1985年「N−メチル−D−アスパルテー
ト拮抗薬による低血糖によって誘発されるニューロンの
損傷の防止」Science、230巻、680〜683頁)に対するグ
ルタメートの関係を研究してきた。本発明者の予備研究
を報告している要旨は、チョイ・ディ・ダブリュ(Cho
i,D.W.)ら、1986年「皮質細胞培養物におけるグルタメ
ート神経毒性のN−メチル−D−アスパルテートリセプ
ター拮抗薬による減哀」、Soc.Neurosci.Abs.、12巻、3
81頁である。デキストロルファンとデキストロメトルフ
ァンの薬理学は、イスベル・エイチ(Isbell,H.)とフ
レーザー・エイチ・エフ(Fraser,H.F.)、1953年「ヒ
トにおけるドロモラン誘導体の作用と依存性」J.Pharma
col.Exp.Therap.、107巻、524〜530頁に記載されてい
る。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は、神経障害を受けやすい哺乳類に、鎮痛オピ
オイド作用剤もしくは拮抗剤化合物の光学対掌体、好ま
しくは環系を有する右旋性アヘン誘導体であって、下記
の立体化学を有するもの(但し、環炭素と窒素原子のみ
を示している)を、グルタメートによって引き起こされ
る神経毒性効果を減少させるのに十分な量で投与するこ
とによって、神経毒障害作用を減少させることのできる
組成物を提供しようとするものである。
デキストロルファンとデキストロメトルファンは、本
発明において使用するのに特に好適である。
[問題点を解決するための手段] 本発明は、具体的には、有効量の鎮痛性アヘン誘導体
の光学対掌体と製薬上許容されるキャリヤーとを含む、
グルタメートまたは類似の刺激性アミノ酸による神経毒
障害作用を減少させるための組成物を提供する。
本発明は、古典的なモルフィン様オピオイドの対掌体
は細胞からのグルタメートの放出によって引き起こされ
る神経毒障害作用を防止または減少するのに有用である
ことを見い出したことに基づいている。好ましい化合物
は、環状構造(但し、環の三次元配置はモルフィンの環
の配置の鏡像である)を有するモルフィン様アヘン誘導
体(具体的にはモルフィナン)の右旋性対掌体である。
本明細書に用いられるオピオイドとは、一般的な意味に
おいて、モルフィン様作用を有する天然および合成のあ
らゆる薬物を指す。アヘン誘導体という用語は、アヘン
から誘導される薬物(モルフィン、コデインおよび多数
のモルフィンの半合成同類体)であってモルフィナン環
系を有するものを表わす。モルフィンは、下記に示すよ
うな環とナンバリング系を有する五環性アヘン誘導体で
ある。
モルフィンとデキストロメトルファンの精確な絶対立
体化学に関する科学文献には、かなりの混乱が見られ
る。二次的文献(教科書、データーの総説および解説
書)の多くは、モルフィンを上記のような構造の対掌体
として示している。しかしながら、多くの場合、その出
版物の意図が絶対的または相対的立体化学を示すつもり
であるのかどうかは明らかではない。本明細書に示した
絶対的立体化学は、Chemistry of Carbon Compounds、
イー・エイチ・ロッド(E.H.Rodd)監修、IVC巻、エル
セビーア・パブリッシング・カンパニー(Elsevier Pub
lishing Co.)、ニュー・ヨーク、1960年、2081〜2083
頁のモルフィンアルカロイドの立体化学の総説に基づい
ている。ケシ植物から単離されるモルフィンは特異的な
絶対的立体化学を有することは明らかであり、意図して
いるのはこの立体化学である。同じことは、ラセモルフ
ァンの右旋性対掌体(すなわちデキストロルファンとし
て知られている化合物)およびそのメチルエーテル(デ
キストロメトルファン)についても当てはまる。
従来の技術においては、好ましくない副作用を持たな
いモルフィンの合成またはモルフィンと同じリセプター
と相互作用する拮抗剤の製造に関心が集まっていたの
で、モルフィン様鎮痛および鎮静作用を有する化合物に
就いて膨大な研究が行われてきた。したがって、本発明
の実施に有用な化合物は、既知のオピオイドおよびアヘ
ン誘導体によって容易に定義することができる。本発明
の目的は、モルフィン様活性を有する既知のオピオイド
に対して対掌体(鏡像)の関係を有する化合物の使用で
ある。
オピオイド性とモルフィン型環系を有する化合物は、
モルフィンと同じ環系の立体化学を有する(すなわち、
それらは左旋性である)。例えば、コデインはメチルモ
ルフィンであり、メチル置換基はフェノール性ヒドロキ
シ基上にある。ナロキソンのようなモルフィンの拮抗薬
も同じ環の立体化学を有する。多数のモルフィン様アヘ
ン誘導体およびアヘン誘導体拮抗薬を、表−1に示す。
これらおよびその他のオピオイド鎮痛性作用薬および
拮抗薬の構造および作用はジャフェ(Jaffe)とマルチ
ン(Martin)「オピオイド鎮痛剤と拮抗薬」、グッドマ
ン・アンド・ギルマンズ・ファーマコロジカル・ベイシ
ス・オブ・セラピュティックス(Goodman and Gillma
n′s Pharmacological Basis of Therapeutics)、アル
フレッド・グッドマン・ギルマン(Alfred Goodman Gil
lman)ら監修、第7版、1985年、マクミラン・アンド・
カンパニー(MacMillan and Company)、ニュー・ヨー
ク、491〜531頁に記載されている。
モルフィン様化合物はグルタメートの作用から神経細
胞を保護するのに効果的であるが、悪影響(常用癖、鎮
静、呼吸低下等)が大きく、使用は実際的ではない。し
かしながら、本発明者は既知のオピオイド鎮痛剤の対掌
体であってモルフィン様作用を生じないものはグルタメ
ートの放出によって惹起される毒性作用から中枢神経系
ニューロンを保護することができることを見い出した。
対掌体相互の関係は、物体とその鏡像との関係であ
る。化合物とそのリセプターの結合反応は三次元性を有
するので、生物活性を有する化合物の対掌体は、それが
活性分子のリセプターと結合できないため不活性である
ことがある。
対掌体は、伝統的に偏光を回転させる能力を有するこ
とによって、右旋性もしくは左旋性のいずれかとして表
わされる。しかしながら、同じ立体化学を有する化合物
は典型的には光を同じ方向に回転させるが、基本的な環
構造の立体化学を変えることなく、ある官能基を別のも
のに置換することによって光の回転方向が変わるように
することができる。したがって本明細書では、本発明の
化合物は鎮痛性オピオイド作用薬または拮抗薬の鏡像
(対掌体)であると定義しており、これらの分子が偏光
を特定の方向へ回転させる物理的能力を示すことによる
よりも精確だからである。しかしながら、モルフィンの
立体化学を有する環構造を有する化合物は通常は左旋性
である。したがって、右旋性アヘン誘導体は本発明の方
法に用いるのに好ましい化合物である。ある種のオピオ
イド化合物(これは同じ環構造を持たないこともある)
は、偏光を右旋性または左旋性方向のいずれかへ旋回さ
せ得ることが分かるであろう。
通常の左旋性アヘン誘導体作用薬および拮抗薬と比較
した場合の右旋性アヘン誘導体の主な利点は、次の二点
である。(1)抗神経毒作用が大きく、(2)通常のオ
ピオイドμまたはκリセプターとほとんど相互作用しな
い。この利点により、本発明の化合物をμまたはκモル
フィンリセプターと複雑な相互作用なしに高投与量で用
いることができる。
左旋性アヘン誘導体作用薬および拮抗薬も(余り大き
くはないが)幾分かはグルタメートの神経毒性を遮断す
る能力を有するが、通常のμまたはκリセプターでのこ
れらの左旋性化合物の作用により、極めて制限的な合併
症状、すなわち呼吸抑制のようなモルフィン様麻酔作用
(作用薬の場合)および鎮痛作用の遮断(拮抗薬の場
合)を生じる。
本発明の実施に有用なアヘン誘導体は、典型的にはモ
ルフィナン環系を有する。モルフィンと対掌体の関係に
あるモルフィナン環系の立体化学を、下記に示す。
上記の化合物は、モルフィナン自体である。モルフィ
ナン様環を有する本発明の化合物は、典型的には上記の
表−1に示され且つモルフィン自体にある型の置換基を
有する。
モルフィンの環立体化学とは反対の環立体化学を有す
る最もよく知られているモルフィナンは、(+)−3−
メトキシ−N−メチルモルフィナンという化学名によっ
ても知られているデキストロメトルファンである。その
名前が示すように、デキストロメトルファンは右旋性異
性体であり、下記のような構造および立体化学を有す
る。
モルフィンと反対の立体化学を有するもう一つの周知
のモルフィナンは、デキストロルファン、すなわち
(+)−3−ヒドロキシ−N−メチルモルフィナンであ
る。デキストロルファンの対応する(−)−異性体であ
るレボルファノールは、活性なモルフィン様化合物であ
る。これらの化合物および多数の関連化合物は、それぞ
れ1954年および1956年発行の米国特許第2,676,177号明
細書および第2,744,112号明細書に記載されている。
デキストロメトルファンおよびデキストロルファン
は、鎮咳薬および他の風邪治療薬の形でヒトに経口で臨
床的に使用されていることから分かるように、特に好ま
しい化合物であり、その多くは処方箋なしで店頭品とし
て入手できる。
上記の標準的なギルマン・アンド・グッドマンのテキ
ストによれば、デキストロメトルファンとデキストロル
ファンは、それらの対掌体とは異なり、鎮痛性または習
慣性がない。これらの化合物は、主として咳の閾値を上
昇させる作用をする。鎮咳剤としても有用であるがモル
フィン様習慣性および鎮痛作用を有するコデインと比較
すると、デキストロメトルファンは余り自覚症状のある
胃腸の副作用を生じない。
モルフィン様アヘン誘導体の他に、モルフィン様特性
を有するオピオイドと対掌体の関係を有する他のオピオ
イドも有効である。この様な化合物は、内因性オピオイ
ドペプチド(エンケファリン、エンドルフィンおよびジ
ノルフィン)、フェニルペペラジン鎮痛薬(ネペリジン
および関連化合物)、メサドンおよび類似化合物、作用
薬/拮抗薬および部分作用薬(ペンタゾシンおよび関連
化合物)およびオピオイド拮抗薬(ナロキソンおよび関
連化合物)のようなオピオイドの対掌体である。モルフ
ィン様架橋環系を有する化合物が好ましく、モルフィナ
ン環系を有する化合物が最も好ましい。
分子が脂質親和性を有することによって血液脳関門を
通過することができるので、脂質親和性が高いアヘン誘
導体およびオピオイドの方が脂質親和性が余り高くない
同じ構造を有する化合物よりも好ましい。例えば、ヒド
ロキシル基を有する化合物は、対応する低級アルキルエ
ーテルおよび低級アルカノイルエステルよりも好ましく
ない。この目的には、メチルエーテルおよびアセチルエ
ステルが有用である。
本発明の化合物は、過剰のグルタメートまたは関連化
合物の中枢ニューロンへの作用によって引き起こされる
多くの神経毒性障害を予防するのに用いることができ
る。内因性の興奮作用を有するアミノ酸であるグルタメ
ート(および/または関連化合物、例えばキノリネー
ト、ホモシステエートおよびアスパルテート)の神経毒
性が、虚血、低酸素掌、低血糖、癲癇、ハンチントン症
およびアルツハイマー症のような幾つかの急性および慢
性の神経科の病気の治療において、中枢ニューロンの障
害の病原に決定的役割を果たしていることが、多くの具
体的証拠によって示されている。グルタメートは典型的
には、通常は細胞内のグルタメート濃度を高濃度に維持
するには不十分なエネルギーしか利用できないときに、
細胞から放出される。高い内部グルタメート濃度は、エ
ネルギーを利用する能動輸送系によって維持される。虚
血、低酸素症または低血糖のような低エネルギー条件で
は、グルタメートが細胞から放出される。グルタメート
の放出が更にグルタメートの放出を促進して、神経毒障
害のカスケードを生じる。
本発明者の実験室における実験作業では、ニューロン
細胞の障害に接近することができる皮質細胞培養モデル
系を樹立した。この系を用いて、グルタメートが従来考
えられていたよりも遥かに強力な神経毒素であることが
示された。本発明者の実験室における付随的実験から、
グルタメート神経毒性および低酸素症の障害に対してニ
ューロン抵抗を系統的に伝えるためには、グルタメート
リセプターの3種のサブクラスの一つだけを遮断する必
要があることが示されている。
デキストロルファンは、グルタメートの神経毒性の遮
断においては、左旋性の異性体であるレボルファノール
よりも幾分強力である。レボルファノールは、古典的な
(すなわちモルフィンまたはμ−κ−δ)アヘン誘導体
リセプターでは、デキストロルファンより遥かに強力で
ある。このことは、これらのモルフィンがグルタメート
神経毒性を遮断するには非古典的方式で作用しており、
鎮咳剤としての通常の使用と一致する方式では機能しな
いことの実験的な証拠となっている。
これらの薬物がグルタメートリセプターの一つのサブ
クラスでのみ神経毒性を遮断するように選択的に作用す
るという事実は、グルタメートの作用による神経毒性を
遮断し且つこれから防護するという所望な目的を達成す
ることができ、しかも副作用の数も最低限にすることが
できることを意味する。したがって、本発明の化合物を
利用すれば、グルタメートリセプターの3種のサブクラ
スの総てに広く作用するキヌレネートのような他の型の
グルタメート拮抗薬を用いるときに比較して、正常な脳
の機能の崩壊が少ない。また、デキストロメトルファン
とデキストロルファンは、ヒトでの副作用を比較的有し
ていない。特にこれらの薬物は、呼吸抑制、多幸感、習
慣性および鎮静のような古典的なアヘン誘導体の作用を
ほとんど持たず、提案した使用法を複雑にすることもな
い。
本発明の方法は、神経毒性障害を受ける可能性のある
患者に、神経毒性作用を減少させるのに十分な量の本発
明の化合物を投与することによって行う。所望ならば、
残留するモルフィン様副作用をナロキソンのようなμ−
κリセプター拮抗薬を同時投与することによって遮断す
ることもできる。この方法は、N−メチル−D−アスパ
ルテートリセプターを有する如何なる動物種に使用する
にも好適である。患者という用語は、医薬用および獣医
用の両方を包含する本発明の化合物を上記の目的で投与
する如何なる動物を包含する。哺乳類およびあらゆる型
の鳥類に使用することが好ましく、ヒトに使用するのが
主なる用途である。
投与は、患者の血流に本発明の化合物を導入すること
ができる如何なる技術によって行うこともでき、経口投
与、および静脈内、筋肉内および皮下注射が挙げられ
る。患者、詳細にはヒトに投与するアヘン誘導体の調製
は周知であり、本発明の化合物の投与に直接応用するこ
とができる。
本発明の幾つかの化合物、例えばデキストロメトルフ
ァンは、経口投与可能な形状に処方して、鎮咳薬として
使用されている。かかる処方は本発明の実施に用いるこ
とができるが、好ましいことではない。デキストロメト
ルファンまたはその他の本発明のオピオイドを含む組成
物を経口投与可能な組成物として利用するときには、鎮
咳シロップとして用いる市販の処方品に存在するより高
濃度を有することが好ましい。経口投与可能な製薬キャ
リヤー中の典型的な投与量は、50mg〜2g、好ましくは10
0mg〜1gである。これらの投与量は、典型的な70kgの体
重のヒトに投与するためのものである。相対的投与量を
単位体重に対して調整して、投与を行うことができる。
好ましい処方は、薬理学的に活性に右旋性のアヘン誘
導体と注射可能な溶液または懸濁液として使用するのに
好適な不活性キャリヤーを有している。溶解性を高める
目的で任意には少量の有機溶媒、例えばエタノールを有
している水性溶液が特に好ましい。注射溶液は、好まし
くは50mg〜2g、更に好ましくは100mg〜1gのアヘン誘導
体を含んでいる。特定の患者に利用される量は、体重と
当業者の周知の特定の用法によって変化する。血流中の
典型的な濃度は、1〜1000μM、好ましくは10〜100μ
M程度のものが有用である。
本発明の注射可能な処方は、それらが製薬用に処方さ
れ、それ故典型的な実験室における有機化合物の溶液中
に存在するような発熱因子およびその他の物質を含まな
い点で、単なる水溶液とは異なっている。
本発明の総ての化合物は、オピオイドおよびアヘン誘
導体の製造に利用される標準的な技法によって製造する
ことができる。アヘン誘導体の全合成は報告されてい
る。(特殊な技術、例えば、反応物または接触自体が光
学活性であるものを含む技術がなくとも)キラール性化
合物の合成法によって、両対掌体が生成される。対掌体
は一般的には、これらの対掌体と光学活性化合物との塩
またはその他の誘導体を形成することによって分割され
る。生成するジアステレオマーは異なる物性を有するの
で、分離することができる。したがって、本発明の化合
物は、既知のオピオイドを製造するのに用いる方法と同
じ技法を用いて調製して、モルフィン用作用薬または拮
抗薬を合成するときには通常は廃棄される対掌体を選択
するようにすることができる。
以下の実施例は説明のためのものであり、特に断らな
いかぎり本発明を限定するものとは考えるべきではな
い。
実施例 妊娠14〜17日目の胎児マウスから、既に報告した方法
(チョイ・ディ・ダブリュ(Choi,D.W.)、Neurosci.Le
tt.、1985年、58巻、293〜297頁)にしたがって、ニュ
ーロンおよび神経膠要素を含む皮質細胞の混合培養液を
調製した。分離した皮質細胞を、コラーゲンをコーティ
ングした35mm皿のイーグル最少必須培地(MEM−エール
塩)に10%熱不活性化したウマ血清、10%ウシ胎児血
清、グルタミン(2mM)、グルコース(21mM)および重
炭酸塩(38mM)を補填したものに塗布した(106細胞数
/皿)。培養物は、加湿した9%CO2雰囲気中で37℃に
保持した。試験管中で5〜7日経過後、非ニューロン性
細胞分画を10-5Mシトシン・アラビノシドに1〜3日間
暴露して停止させ、細胞を、胎児血清を欠いていること
を除いて培養媒質と同じ保持媒質に移した。それ以後の
培地の交換は2週間毎に行った。これらの条件下では、
ニューロン(フェーズ・コントラスト顕微鏡下で、イク
ステンシブ・プロセス(extensive processes)を用い
て観察すると明るく見える)は、星状細胞(神経膠−線
維状−酸性タンパクを含有する)単層の最上部に広範囲
のシナプスが活性な網目構造を形成する。
グルタメートへの暴露は、(mMで)NaCl120、KC15.
4、MgCl20.8、CaCl21.8、トリス−Cl(25℃でpH7.4)、
グルコース15から成るトリス緩衝暴露溶液(3回交換に
よって培地を取り替えたもの)で、室温で行った。5分
後に、暴露溶液を培養液(血清を欠いたもの)と完全に
取替え(有効希釈倍率>600)、皿を培地インキュベー
ターへ戻した。それぞれの顕微鏡視野(200x)は、対物
マーカーを用いて視野を再配置し易くしてグルタメート
に暴露する前後の両方を写真に記録した(後者について
はフェーズ・コントラストおよび0.4%トラパン・ブル
ー染料で5分間インキュベーションした後、明視野を用
いた)。
ニューロンの損傷の定量法は、損傷を受けたニューロ
ンによって培地に放出されるサイトソル性酵素であるラ
クテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の細胞外濃度を測定
することによって行った。対照実験では、LDHの自然放
出は低く、細胞外LDHの出現はニューロンの損傷の形態
学的証拠とよく相関しており、神経膠が単独で0.5mMグ
ルタメートに5分間暴露されたときにはLDHは放出され
ないことを示した。
LDHは、ロブルュスキイ(Wroblewski)とラデュ(LaD
ue)、(ロブリュスキイ・エフ(Wroblewski F.)とラ
デュ・ジェイ・エス(LaDue,J.S.)、Proc.Soc.Exp.Bio
l.Med.、1955年、90巻、210〜213頁の方法を用いて、室
温で培養液(血清を欠いており、したがって内在性LDH
を欠いている)中でグルタメートに暴露してから2日目
に測定した。媒質(0.1ml)の試料を2.3マイクロモルの
ピルビン酸ナトリウムおよびNADHを0.1MのKPO4緩衝液
(25℃でpH7.5)に加えたもの0.2mgに加えた(総量3m
l)。NADH濃度の指標である反応混合物の340nmでの吸光
度を、2秒間間隔で分光計を用いて測定し、次いで、LD
H濃度を吸収曲線の傾斜から計算し、曲線の直線(初
期)部分に直線回帰によって調整し、温度および光路に
ついて補正した。測定の精度は、標準LDH酵素溶液(シ
グマ酵素溶液コントロール2−E)を定期的にチェック
することによって確かめた。
皮質細胞の培養物を0.5mMグルタメートに5分間暴露
することによって、翌日にはニューロンの大部分が分解
し、多くの残存ニューロンはトリパンブルー染料を排除
することができなかった。LDHの測定によると、グルタ
メートに暴露しなかった培養物中のLDHの背景と比較す
ると細胞外酵素の実質的な上昇が見られた。
しかしながら、100μMデキストロルファン(アジク
ション・リサーチ・ファウンデーション、パロ・アル
ト、CAから供給された)をグルタメート暴露溶液に加え
ると、グルタメートの神経毒性の形態学的および化学的
徴候は著しく減哀した。デキストロルファンの添加によ
って保護されたニューロンはトリパンブルー染料を排除
し、且つ少なくとも数日間は形態学的に安定なままであ
った。デキストロルファンの濃度を10μMまで減少させ
るとこの保護効果は幾分減少し(部分的グルタメートに
よる神経毒性が見られた)、1μMの濃度ではわずかな
保護効果しか見られなかった(2回実験)。培養物を10
0μMのデキストロルファンのみに5分間暴露しても、
ニューロンの損傷は見られなかった。
100μMでの関連したオピオイドデキストロメトロフ
ァン(シグマ)は、グルタメートの神経毒性に対して同
様な保護効果を示し、形態学的および化学的な神経損傷
の証拠はいずれも減少した。同様な実験はデキストロル
ファンおよびデキストロメトルファンが皮質細胞培養液
中のNMDAの神経毒性を遮断するが、キスカレートまたは
カイネートの神経毒性を遮断することはできないことを
示した。
この結果は、右旋性アヘン誘導体が実質的に混合細胞
培養液中で皮質ニュローンがグルタメートまたはその他
のNMDA作用薬に暴露することによる損傷の可能性を減少
させることを示している。
この明細書に引用した総ての出版物および特許出願明
細書は、本発明が関与している技術分野の技術水準を示
している。総ての出版物および特許出願明細書は参考の
ために引用したものであり、詳細はそれぞれの文献を参
照されたい。
本発明を十分に説明してきたが、当業者には明らかな
ように、多くの変更および改質を特許請求の範囲の精神
から離反することなく行うことができることは明らかで
ある。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有効量の鎮痛性アヘン誘導体の光学対掌体
    と製薬上許容されるキャリヤーとを含む、グルタメート
    または類似の刺激性アミノ酸による神経毒障害作用を減
    少させるための組成物。
  2. 【請求項2】前記光学対掌体がモルフィナン化合物であ
    る、特許請求の範囲第1項記載の組成物。
  3. 【請求項3】前記光学対掌体がN−メチル−3−(ヒド
    ロキシまたはアルコキシ)モルフィナンである、特許請
    求の範囲第2項記載の組成物。
  4. 【請求項4】前記光学対掌体がデキストロルファンであ
    る、特許請求の範囲第1項記載の組成物。
  5. 【請求項5】前記光学対掌体がデキストロメトルファン
    である、特許請求の範囲第1項記載の組成物。
  6. 【請求項6】前記神経毒障害が虚血、低酸素症、低血
    糖、癲癇、ハンチントン症またはアルツハイマー症であ
    る、特許請求の範囲第1項記載の組成物。
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