JP2599450B2 - キャンエンド用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

キャンエンド用アルミニウム合金板の製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、キャンエンド用アルミニウム合金板の製造
方法に関し、さらに詳細には特に強度、開缶性及び耐応
力腐食割れ性を向上し、かつ薄肉化を可能にしたキャン
エンド用アルミニウム合金板の製造方法に関する。
(従来の技術) 飲食缶として広く用いられているイージーオープン缶
は、キャンボディ(缶胴)とキャンエンド(缶蓋)から
なり、キャンボディはしごき加工(DI成形)によりカッ
プ状に加工され、キャンエンドはスコア加工とリベット
成形(多段張出成形)を行ってタブを取付けた後、キャ
ンボディに巻締め接合される。キャンボディとしては深
絞り性及びDI成形性に優れたJIS3004合金板又はテイン
フリースチール板が用いられ、キャンエンドとしてはコ
ーヒー、果汁用にはリベット成形性に優れたJIS5052合
金が用いられ、内圧の発生する炭酸飲料やビール等には
さらに強度の高いJIS5082合金板やJIS5182合金等が用い
られている。
ところで、近年アルミ缶の需要が増大し、製造価格の
低減のため缶体の薄肉軽量化が進められており、これに
伴なって素材の高強度化が強く望まれている。
(発明が解決しようとする課題) しかし上記従来の合金板は成形性に優れているもの
の、缶の塗装焼付け(以下ベーキングと称す)時の加熱
により強度が低下し、これに伴なって耐圧強度が不足す
るため、内圧のかかる炭酸飲料やビール用のキャンエン
ドでは板厚0.3mm以下の薄肉化が困難であった。
そこで薄肉、高強度化を目的として各種の製造方法に
より得られる合金板が提案されているが、これ等の合金
板は何れも強度を向上させたために、開缶操作時に開缶
強度が高すぎて開けにくいという問題があった。開缶強
度を適正な範囲に下げるには、スコアの切込み深さを深
くすれば良いわけであるが、この場合スコア加工を受け
た部分に微視的な割れが発生しやすくなるため、缶とし
て致命的な欠陥となる。また耐応力腐食割れ性が十分で
なく、内容物を充填した後、長時間保存すると応力腐食
割れが発生しやすいという欠点があった。これは内圧力
によってエンド半径方向に引張応力が発生し、特にリベ
ット成形部分は成形加工により塗膜の健全性が劣化して
いるために、内容物と接触して応力腐食割れを生じ易
い。
さらに、従来の合金板の製造方法において、単に冷間
圧延率を上昇させて高強度にしようとすると、キャンエ
ンド絞り成形時の耳率の増加、張出し性の低下をもたら
すばかりでなく、塗装焼付け加熱時の強度低下が大きく
なり、薄肉化に必要な強度が得られないという問題が生
じた。
本発明は上記従来技術の問題点を解決して高強度を有
し、薄肉化が可能で適正な開缶性及び優れた耐応力腐食
割れ性を有し、かつ低耳率でベーキング加熱時の強度低
下が少ないキャンエンド用アルミニウム合金板の製造方
法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段) 本発明者らはアルミニウム合金板に特にMg、Cu、Muを
所定量添加することで合金板の強度を向上させ、さらに
Znを微量添加することで合金板より得られるキャンエン
ドの開缶性を良好とし、さらにCr又は/及びZrを微量添
加してキャンエンドの耐応力腐食割れ性を向上させ、か
つ上記の添加元素を含有するアルミニウム合金鋳塊に適
正な条件の中間焼鈍を施すことで得られた合金板の板幅
方向での結晶粒の平均幅を30μm以下とすることによ
り、合金板の成形性を改善することができることを見い
出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は(1)Mg3〜6wt%、Cu0.05〜0.5wt
%、Zn0.05〜0.5wt%、Mn0.05〜0.7wt%を含有し、さら
に、CrとZrの何れか1種又は2種を合計で0.01〜0.3wt
%含有し、残部としてAlと不可避不純物とを含有するア
ルミニウム鋳塊に、均質化処理、熱間圧延を施し、その
後中間焼鈍処理として2℃/secの加熱速度で480℃以上
に加熱し、10分間以内保持した後2℃/sec以上の冷却速
度で冷却し、次いで圧下率50〜90%の冷間圧延を施すこ
とを特徴とするキャンエンド用アルミニウム合金板の製
造方法及び(2)冷間圧延を施した後に120〜180℃の温
度で時効処理を行う前記(1)記載のキャンエンド用ア
ルミニウム合金板の製造方法を提供するものである。
以下本発明に使用する合金の含有元素の限定理由及び
本発明合金板の製造方法について説明する。
Mgは3〜6wt%とする。
Mgは強度を付与する重要な元素で、その含有量が3wt
%未満では強度付与効果が不十分であり、6wt%を越え
ると圧延性が悪くなるとともに成形性が低下する。
Cuは0.05〜0.5wt%とする。
Cuは固溶Cuとして強度に寄与するとともに、Al−Cu系
又はAl−Cu−Mg系の微細析出物を形成し、強度をさらに
向上するも、その含有量が0.05wt%未満ではその効果が
少なく、0.5wt%を越えると圧延性が悪くなるとともに
成形性と耐食性が低下する。
Znは0.05〜0.5wt%とする。
ZnはAl−Mg−Zn系、Mg−Zn系、Al−Cu−Mg−Zn系の微
細析出物を形成し、これらの析出物は結晶粒界に優先的
に分布するため、開缶時に結晶粒界に沿って亀裂が伝播
しやすくなるので、開缶強度を適正な範囲に下げること
ができる。しかしその含有量が0.05wt%未満ではその効
果が不十分であり0.5wt%を越えるとこの効果が飽和す
るばかりか、耐食性が劣化する。
Mnは0.05〜0.7wt%とする。
Mnは強度向上及び集合組織(カップ耳)の安定化に有
効な元素であり、その含有量が0.05wt%未満では効果が
十分ではなく、0.7wt%を越えると成形性、特にリベッ
ト成形性を阻害するようになる。
CrとZrは何れか1種又は2種を合計で0.01〜0.3wt%
とする。
Cr又/及びZrは耐応力腐食割れ性を向上させる作用が
あり、その合計含有量が0.01wt%未満では効果が十分で
なく、0.3wt%を越えると成形性を劣化させる。
なお不純物として含有されるFe、Siは、それぞれ0.5
%wt以下ならば特に問題はない。また、鋳塊組織の微細
化剤として通常添加されるTi、Bは、それぞれ0.1wt
%、0.02wt%以下の範囲で添加するのが好ましい。
次に本発明合金板の製造方法について説明する。まず
上記のような成分を含有するアルミニウム合金溶湯を常
法に従って鋳造する。この鋳造法としては半連続鋳造法
が一般的であるが、省エネルギーや機械的性質の向上等
から薄板連続鋳造を行ってもよい。得られた鋳塊は均熱
処理(均質化処理)を行う。この均熱処理条件は、中間
焼鈍時の結晶粒を微細化させるため、均熱温度を450〜5
80℃、均熱保持時間を48時間以内とすることが好まし
い。
均熱処理後は熱間圧延を行うが、熱間圧延に関しては
特に厳密に管理する必要はなく、常法に従って400〜500
℃で熱間圧延を行えばよい。
この熱間圧延後に冷間圧延を行ったり又は行わないこ
ともあるが、冷間圧延を行った場合には中間焼鈍時の再
結晶粒がより微細となり、リベット成形性を改善するこ
とができる。
次に行う中間焼鈍は、ベーキング後の強度をさらに向
上させ、しかも最終冷間圧延以前の平均再結晶粒径30μ
m以下にするために行い、加熱速度2℃/sec以上で加熱
することが好ましい。このようにすることにより中間焼
鈍時の結晶粒を微細化して最終板の板幅方向の結晶粒の
平均幅を30μm以下とすることができ、リベット成形性
を改善することができる。
ここで加熱速度が2℃/sec未満では中間焼鈍後の平均
再結晶粒径が30μmを越えリベット成形性の改善は望め
ない。
また、中間焼鈍温度は480〜580℃にすることがCu、Mg
などの固溶促進の点で望ましい。焼鈍温度480℃未満で
は固溶が十分に行われず、また580℃を越える温度では
この効果は飽飽してしまう。また保持時間が10分を越え
たとしても固溶効果は飽和してしまうばかりか再結晶粒
が粗大化してしまうため好ましくない。この中間焼鈍時
にZnがAl−Mg−Zn系、Mg−Zn系、Al−Cu−Mg−Zr系の金
属間化合物として、再結晶粒界に析出し、前述の様に開
缶性を良好なものとする。冷却速度は2℃/sec以上とす
ることにより、冷却過程での粗大析出物成長によるMg、
Cu固溶度の低下を防止でき、ベーキング加熱時の強度低
下を防ぐことができる。
続く最終冷間圧延は薄肉キャンエンド材として必要な
強度を得るため、上記中間焼鈍を施した後に行い、圧下
率は50〜90%とする。圧下率50%未満では薄肉化に必要
な強度が得られず、圧下率が90%を越えると十分な強度
は得られるもののキャンエンド成形時の耳及び強度異方
性が大きくなり、キャンエンド成形時の絞りしわの発生
を招くため製品の外観の劣化及び生産性の低下を生じる
こととなり好ましくない。
このようにして得られた本発明合金板は、脱脂等の処
理を受けた後、200℃程度の温度で数分間の塗装、焼付
け(ベーキング)した後、キャンエンドして成形加工さ
れる。このベーキング加熱時において前記Al−Cu系,Al
−Cu−MgZn系の金属間化合物が均一微細に析出し、強度
が冷間圧延後よりもさらに向上する。
なお冷間圧延を終った段階で120〜180℃で10時間程度
以下の人工時効処理を施すことにより、ベーキング後の
強度をより一層高めることが可能であり、特に強度を要
する場合にはこの人工時効処理を施すことが望ましい。
(実施例) 実施例1 以下実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
第1表に示す組成のアルミニウム合金No.1〜10を溶解
し、半連続鋳造法により厚さ500mmの鋳塊とした。これ
を面削した後、500℃で5時間均質化処理しこれを厚さ4
mmまで熱間圧延し続いて厚さ1.4mmまで冷間圧延した。
中間焼鈍はNo.1〜10について連続焼鈍炉により加熱速度
20℃/secで510℃まで昇温し、10秒間保持した後冷却速
度20℃/secで冷却した。また試料No.1〜4については上
記の中間焼鈍条件による処理を施したものとは別に、下
記の条件にて中間焼鈍を施したものを作製した。
すなわち、バッチ炉により加熱速度0.01℃/secで360
℃まで昇温し2時間保持後0.01℃/secで冷却した。この
後、以上の試料に最終冷間圧延を施し厚さ0.27mmの板に
仕上げた。これ等について脱脂後200℃、10分間のベー
キングを施してから引張り試験によりベーキング後の耐
力を測定した。また外径60mmのキャンエンドに成形し耐
圧強度、リベット成形性、開缶強度および耐応力腐食割
れ性を評価した。その結果を第2表に示す。
なお耐圧強度は350ml用キャンボデーにキャンエンド
を巻締接合した後、高圧N2ガスを圧入し、座屈に至った
ときの内圧力を測定して評価した。ビールや炭酸飲料で
は5〜6Kg/cm2の内圧が発生するため、これに耐える耐
圧強度として7Kgf/cm2以上が要求されている。
リベット成形性は三段階張出し加工により、外径3mm
のリベットを成形した後、タブを接合し割れ発生率を測
定し、10000個成形したときの割れ発生率で評価した。
また開缶強度は実用上2〜4Kgfの開缶強度が望まれて
おりスコア残厚0.15mmの台形状スコア(低部幅40μm)
加工を施した後、引張り試験機によりタブを引き上げ、
開缶に要した最大荷重により評価した。
耐応力腐食割れ性は3%クエン酸と0.1%塩化ナトリ
ウムを含有する炭酸水(内圧5.5Kgf/cm2、20℃)を缶に
充填し、30日間放置したときの100個についての耐応力
腐食割れ発生率により評価した。
第1表、2表の結果から明らかなように、本発明合金
板No.1〜4は従来合金板No.9、10に比べ素板の強度及び
耐圧強度が優れ同等のリベット成形割れの発生及び開缶
強度を示す。
これに対し、本発明合金板の組成範囲から外れる比較
合金No.5〜8では耐圧強度、リベット成形割れの発生率
又は開缶強度の何れか一つ以上が劣ることがわかる。ま
た本発明合金組成範囲内で加熱及び冷却速度5℃/sec以
上の中間焼鈍すなわち連続焼鈍を施した合金板No.1〜4
は加熱及び冷却速度5℃/sec未満の中間焼鈍すなわちバ
ッチ式焼鈍を施した比較合金板No.1′〜4′に比べ素板
の強度及び耐圧強度が優れ平均粒径30μm以下の微細な
結晶粒を呈し、リベット成形性が良好である。
実施例2 第1表に示すNo.4合金について中間焼鈍を第3表に示
す条件で実施した厚さ0.27mmの最終冷間圧延板のベーキ
ング後の機械的性質と中間焼鈍後の結晶粒の平均粒径を
第3表に示す。なお到達温度における保持時間は10sec
とした。
この第3表の結果から明らかなように、本発明の合金
板B、Cは高強度で微細な結晶粒が得られ、張出し性も
良好である。これに対し、本発明合金板の製造条件から
外れる比較合金板A、Dでは強度、結晶粒、張出し性の
いずれかが劣ることがわかる。すなわち加熱速度が2℃
/sec未満ではベーキング時の効果を生じず強度が低下す
る。また結晶粒径が30μm以上となり張出し性が劣る。
冷却性が速度2℃/sec未満では冷却時に粗大な析出物が
成長しMg、Cuの固溶度が低くなるためベーキング後の強
度が低下する。
実施例3 第1表に示すNo.1合金について520×10sec(加熱及び
冷却速度10℃/sec)の中間焼鈍を施した後、第4表に示
す圧下率で最終冷間圧延を施した0.27mmの冷間圧延板に
時効熱処理を施したもの及び施さないもの各々について
ベーキング後の機械的性質、耳率を測定した結果を第4
表に示す。
この第4表の結果から明らかなように、最終冷間圧延
時の圧下率が50%未満である比較合金板は、薄肉化する
の十分な強度が得られず、また圧下率が90%を越える比
較合金板Hは、強度は十分であるが耳率が高くなるとと
もに張出し性が低下する。これに対し本発明合金E、
F、G、Hは高強度で耳率も低く張出し性も良好であ
る。また第4表から120〜190℃の時効処理を施した合金
板Gは強度、張出し性が改善されることがわかる。
(発明の効果) 本発明によれば、耐応力腐食割れ性に優れ、高強度を
有する薄肉下の可能なキャンエンド用合金板を得ること
ができる。この合金板から製造されたキャンエンドは適
正な開缶性を有し、かつ優れた耐応力腐食割れ性を有す
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Mg3〜6wt%、Cu0.05〜0.5wt%、Zn0.05〜
    0.5wt%、Mn0.05〜0.7wt%を含有し、さらに、CrとZrの
    何れか1種又は2種を合計で0.01〜0.3wt%含み、残部
    としてAlと不可避不純物とを有するアルミニウム鋳塊
    に、均質化処理、熱間圧延を施し、その後として2℃/s
    ec以上の加熱速度で480℃以上に加熱し、10分間以内保
    持した後2℃/sec以上の冷却速度で冷却し、次いで圧下
    率50〜90%の冷間圧延を施すことを特徴とするキャンエ
    ンド用アルミニウム合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】冷間圧延を施した後に120〜180℃の温度で
    時効処理を行う請求項1記載のキャンエンド用アルミニ
    ウム合金板の製造方法。
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