JP2595631B2 - 記録再生素子の位置制御方式 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、トラッキング用のパターンを記録媒体の内
部に備えている如きディスクにおける所定の記録跡位置
に記録再生素子を迅速に位置させるようにする記録再生
素子の位置制御方式に関する。

（従来の技術） 情報信号の記録再生動作を磁気的に行うようにした磁
気記録再生方式は、磁気記録媒体に対する情報信号の記
録と、磁気記録媒体からの情報信号の再生とを極めて容
易に行いうるために、多くの技術分野における情報信号
の記録再生の手段として従来から広く採用されている
が、情報信号の高密度記録再生の要望が高まるのに伴
い、記録跡間隔（トラックピッチ）の狭小化が行われる
ようになったが、記録跡間隔が狭小化した場合には、磁
気ヘッドを記録跡上に正確に辿らせるようにすることが
困難になるために、各種のトラッキング制御手段を適用
してこの問題の解決を図ることが行われるようになり、
トラッキング制御用の信号あるいはパターンを磁気ディ
スクに記録させておいてトラッキング制御を行うように
することも広く実施されている。

前記のようにディスクに予めトラッキング用のパター
ンを設けておくようにしたディスクの一例としては、光
学的な検出手段によって検出できるようなトラッキング
用の光学的なパターンをトラッキング制御用情報として
可撓性磁気ディスクに予め記録しておくようにしたもの
があり、このような構成の可撓性磁気ディスクでは、そ
れに対する情報信号の記録時と、可撓性磁気ディスクか
らの情報信号の再生時とに、前記した可撓性磁気ディス
クに予め記録されていたトラッキング用の光学的なパタ
ーンを用いて磁気ヘッドがトラッキング制御動作の下に
狭小化された可撓性磁気ディスクにおける記録跡に正し
く位置できるようにされるのである。

前記のように、光学的な検出手段によって検出できる
ような状態でトラッキング用の光学的なパターンを可撓
性磁気ディスクに対して予め記録させておくのには、従
来、例えば、トラッキング用の光学的なパターンを可撓
性磁気ディスクの表面に設けるようにしたり、あるいは
トラッキング用の光学的なパターンを磁気記録媒体層よ
りも内部に設けるようにしたりすることなどが提案され
て来ており、また、前記のように光学的な検出手段によ
って検出できるような状態でトラッキング用の光学的な
パターンを予め記録させておくような構成形態にした可
撓性磁気ディスクからのトラッキング用の情報信号の読
取り動作と磁気ディスクの磁気記録媒体層に対する磁気
記録動作と磁気記録媒体層からの再生動作とを行うこと
ができるように構成した磁気ヘッドとしても、例えば特
公昭58-41577号公報、特開昭56-148770号公報、特開昭5
9-8172号公報などの記録事項中に各種形態のものが開示
されている。

第３図は前記のように光学的な検出手段によって検出
できるような状態でトラッキング用の光学的なパターン
が予め記録されている可撓性磁気ディスクを用いて記録
再生が行われるようになされている磁気記録再生装置の
概略構成を示す平面図｛第３図の（ａ）｝と正面図｛第
３図の（ｂ）｝と側面図｛第３図の（ｃ）｝である。

第３図において１はモータ、２はロータリ・エンコー
ダ、３は可撓性磁気ディスクＤを収納している容器（カ
セット）、４はキヤリッジ５に取付けられた記録再生素
子（磁気ヘッド）、５は前記した記録再生素子４やトラ
ッキング用の光学的なパターンの読取り用の構成部分の
一部が取付けられているキャリッジ、６はプーリ、７は
スチール・ベルトである。

前記したキャリッジ５はモータ１の回転軸に固着され
ているプーリ６に一端部が巻回されているスチール・ヘ
ッド７の他端部が固着されているから、モータ１が回転
することによりキャリッジ５は第３図の（ａ）中の矢印
８の方向に移動されるのであり、前記したモータ１とプ
ーリ６とスチール・ベルト７とをキャリッジ５とからな
る部分は記録再生素子４のアクチュエータとして動作す
る。

そして、シーク・モードでの動作時に、制御装置の制
御の下にキャリッジ５が第３図の（ａ）中の矢印８の方
向に移動されることにより、記録再生素子４を可撓性磁
気ディスクにおける径方向に変位させ、制御装置では記
録跡から読取られるアドレスによって目的の記録跡まで
の距離を知り、その距離に応じた移動速度で記録再生素
子が移送されるような制御動作（第８図中に速度制御と
して示されている範囲での動作）を行う。

また、前記したシーク・モードから位置制御（トラッ
キング制御）動作モードに切換えられて、第８図中に位
置制御として示されている範囲での動作が行われる場合
には、前記したキャリッジ５に取付けられているトラッ
キング用の光学的なパターンの読取り用の構成部分の一
部に対して、可撓性磁気ディスクを挟んで対向して設け
られているトラッキング用の光学的パターンの読取り素
子からの出力信号によりトラッキング制御が行われて、
記録再生素子４が目的の記録跡を正しく追跡できるよう
にされる。なお、前記のようなトラッキング用の光学的
なパターンの読取り素子としては、例えば特願昭62-194
950号の明細書に記載されているような構成のものを使
用することができる。

第７図は第８図中に速度制御として示されている範
囲、すなわち、シーク・モード時におけるサーボ系の基
本ブロック図であり、また、第６図は第８図中に位置制
御として示されている範囲、すなわち、位置制御（トラ
ッキング制御）動作モード時におけるサーボ系の基本ブ
ロック図である。

第６図及び第７図において、DSPはデジタル・シグナ
ル・プロセッサによって行われる演算の内容を示してお
り、後述の第１表は前記した両サーボ系の基本構成要素
のパルス伝達関数とデジタル・シグナル・プロセッサDS
P内で行われる計算式を示している。さらに、DSAは自動
制御系の機構部分の内容を示しており、第６図中のブロ
ックBAFは帯域増幅フィルタである。

可撓性磁気ディスクは、それの基材のポリエステルが
温度によって起こす膨張、収縮が異方性を示すことか
ら、可撓性磁気ディスクが偏心していると、その偏心に
よって発生するトラック・ランアウトの周波数は、可撓
性磁気ディスクの回転周期Tdと対応する周波数ｆ＝1/Td
と、前記の周波数ｆの２倍の周波数2fとの２つとなる
が、前記の帯域増幅フィルタBAFは、前記した２つの周
波数において充分に小さな残留オフ・トラックとなるよ
うにするために設けられたものである。

第７図中に示されている点線枠DSAの内容は、第６図
中に示されている点線枠の内容と全く同じであるため
に、第７図中ではその具体的な図示の省略が行われてい
る。

第８図中に速度制御として示されている範囲、すなわ
ち、シーク・モード時におけるサーボ系の基本ブロック
図（第７図）の解析が、第11図に示されている速度制御
サーボ系のブロック線図（線形近似を含む）に示されて
おり、また、第８図中に位置制御として示されている範
囲、すなわち、位置制御（トラッキング制御）動作モー
ド時におけるサーボ系の基本ブロック図（第６図）の解
析が第９図に示されている位置制御サーボ系のブロック
線図（線形近似を含む）によつて示されている。第10図
はBAFのボード線図である。

なお、第９図と第11図とにおいてＪはモータとキャリ
ッジの慣性（g cm sec²）、ktはモータのトルク定数（g
cm/A）、k3はプーリの半径（μm/rad）、k1はフォワー
ド利得、k2は速度フィードバック利得、Ｔは標本化周期
（sec）、τ1,τ２は計算による遅れ時間（sec）、k4は
利得である。

（発明が解決しようとする問題点） ところが、第６図乃至第11図を参照して説明した従来
の記録再生素子の位置制御方式においては、シーク・モ
ードの終りで記録跡の中心が記録再生素子から遠ざかる
ような状態で振れているときに、位置制御モードに切換
わるときに前記した両モードの切換わりに長い時間がか
かったり、シーク・モードから位置制御モードに切換わ
ったときに記録再生素子が記録跡の巾方向に大きくオー
バーシュートを起こすことがあり（第12図参照）、既述
したように、ディスクの偏心によって生じるトラックラ
ンアウトの影響によりアクセス・タイムが長くなって、
セットリングが不安定になるということが問題になり、
それの解決策が求められた。

（問題点を解決するための手段） 本発明はトラッキング用のパターンを記録媒体内部に
備えている如きディスクにおける所定の記録跡位置に記
録再生素子を位置させるようにする記録再生素子の位置
制御方式であって、目的の記録跡にまで記録再生素子を
移送させる移送手段と、複数の特定周波数における利得
を所定の状態に設定されたフィルタを含んで構成された
制御ループを備えており、目的の記録跡に記録再生素子
を追従させうるように記録再生素子の位置を制御する記
録再生素子の位置制御手段と、前記の記録再生素子の移
送手段と記録再生素子の位置制御手段とを切換える手段
と、ディスクの予め定められた領域の記録跡に記録再生
素子が正しく位置された状態におけるディスクの一回転
の期間と対応して前記したフィルタの内部の状態を記憶
する手段と、前記したフィルタの内部状態が記憶される
期間以外におけるアクセス時に、前記の記録再生素子の
移送手段から記録再生素子の位置制御手段に切換えられ
た時点以後に、前記した記憶手段に記憶されていた前記
のフィルタの内部の状態のデータを前記したフィルタの
初期値に用いてフィルタの演算を開始させるようにする
手段とを備えてなる記録再生素子の位置制御方式、及び
トラッキング用のパターンを記録媒体内部に備えている
如きディスクにおける所定の記録跡位置に記録再生素子
を位置させるようにする記録再生素子の位置制御方式で
あって、目的の記録跡にまで記録再生素子を移送させる
移送手段と、複数の特定周波数における利得を所定の状
態に設定されたフィルタを含んで構成された制御ループ
を備えており、目的の記録跡に記録再生素子を追従させ
うるように記録再生素子の位置を制御する記録再生素子
の位置制御手段と、前記の記録再生素子の移送手段と記
録再生素子の位置制御手段とを切換える手段と、ディス
クの予め定められた領域の記録跡に記録再生素子が正し
く位置された状態におけるディスクの一回転の期間と対
応して前記したフィルタの内部の状態を記憶する手段
と、前記したフィルタの内部状態が記憶される期間以外
におけるアクセス時に、前記の記録再生素子の移送手段
から記録再生素子の位置制御手段に切換えられた時点以
後に、前記した記憶手段に記憶されていた前記のフィル
タの内部の状態のデータにおける、記録再生素子の移送
手段から記録再生素子の位置制御手段への切換えの時点
の記録再生素子の位置についてディスクの基準の回転位
相を基準として示される回転位相と対応して得られるフ
ィルタの内部状態のデータを前記した記録再生素子の位
置制御系に重畳加算する手段とを備えてなる記録再生素
子の位置制御方式、ならびにトラッキング用のパターン
を記録媒体内部に備えている如きディスクにおける所定
の記録跡位置に記録再生素子を位置させるようにする記
録再生素子の位置制御方式であって、記録再生素子の速
度検出手段を有するアクチュエータと、前記の速度検出
手段によって検出された速度を基準速度に追従させるよ
うにする速度制御手段と、目的の記録跡に記録再生素子
を追従させる記録再生素子の位置制御手段と、前記の速
度制御手段と記録再生素子の位置制御手段とを切換える
手段と、ディスクの予め定められた領域の記録跡に記録
再生素子が正しく位置された状態におけるディスクの一
回転の期間と対応する記録再生素子の速度の変化態様を
記憶する手段と、前記した記憶手段に記憶されていた記
録再生素子の速度の変化態様のデータとして用いられる
帯域増幅フィルタの出力Wnを用いて速度制御に用いられ
る基準速度値を補正する手段とを備えてなる記録再生素
子の位置制御方式を提供するものである。

（実施例） 以下、添付図面を参照して本発明の記録再生素子の位
置制御方式の具体的な内容を詳細に説明する。第１図及
び第２図は本発明の記録再生素子の位置制御方式におけ
る位置制御系の基本ブロック図（第１図）とシーク・サ
ーボ系の基本ブロック図（第２図）であり、前記した第
１図及び第２図中において、DSPはデジタル・ジグナル
・プロセッサであり、また、既述した第１表は前記した
両サーボ系の基本構成要素のパルス伝達関数とデジタル
・シグナル・プロセッサDSP内で行われる計算式を示し
ている。

なお、第１図中の一点鎖線枠DSP中における「位置誤
差計算」のブロックから出力されて「BAF」のブロック
に与えられているunは、位置誤差（残留オフトラックＥ
…第１図参照）が、前記した「位置誤差計算」のブロッ
クで行なわれる演算により数値に変換されたものを示し
ている。

またWnは、既述のようにディスクの回転中心と記録跡
の中心とのずれ（ディスクの偏心）で発生する２つのト
ラック・ランアウトの周波数において、残留オフ・トラ
ックが充分に小さくなるようにするために設ける第１図
中の一点鎖線枠DSP中の「BAF」のブロックで示してある
帯域増幅フィルタBAFの出力である。

ところで、前記の帯域増幅フィルタBAFのパルス伝達
関数Ｗ（ｚ）は、第１表中に記載してあるように、Ｗ
（ｚ）＝｛Ｗ′（ｚ）/U（ｚ）｝｛Ｗ（ｚ）/W′
（ｚ）｝として示されているが、それはＷ（ｚ）＝F1
（ｚ）×F2（ｚ）の形になっている。すなわち、前記の
Ｗ（ｚ）はフィルタF1（Ｚ）とフィルタF2（Ｚ）とが直
列接続されたものとして示される。そして、第１表中に
記載されている帯域増幅フィルタBAFのパルス伝達関数
Ｗ（ｚ）の計算式から、Ｗ′ｎは前記したフィルタF1
（Ｚ）の出力であることが判かる。

さらに、Vnは第１図中の一点鎖線枠DSP中における
「モータ速度計算」のブロックで行なわれる演算により
モータの速度を数値に変換したものを示している。

また、第１図及び第２図においてDSAは自動制御系の
機構部分の内容を示しているが、第２図中に示されてい
る点線枠DSAの内容は、第１図中に示されている点線枠
の内容と全く同じであるために、第２図中ではその具体
的な図示の省略が行われている。

第１図中の帯域増幅フィルタBAFは、既述もしたよう
に可撓性磁気ディスクの基材のポリエステルが温度によ
って起こす膨張、収縮が異方性を示すことにより、可撓
性磁気ディスクの偏心で発生する２つのトラック・ラン
アウトの周波数、すなわち、可撓性磁気ディスクの回転
周期Tdと対応する周波数ｆ＝1/Tdと、前記の周波数ｆの
２倍の周波数2fとの２つの周波数において充分に小さな
残留オフ・トラックとなるようにするために設けられて
いるものである。

また、第３図は光学的な検出手段によって検出できる
ようなトラッキング用の光学的なパターンをトラッキン
グ制御用情報として可撓性磁気ディスクに予め記録して
あるような構成形態のディスクを用いて、可撓性磁気デ
ィスクに対する情報信号の記録時と、可撓性磁気ディス
クからの情報信号の再生時とに、前記した可撓性磁気デ
ィスクに予め記録されていたトラッキング用の光学的な
パターンを用いて磁気ヘッドをトラッキング制御動作の
下に可撓性磁気ディスクにおける目的の記録跡に正しく
位置できるようにさせた磁気記録再生装置の概略構成を
示す平面図｛第３図の（ａ）｝と正面図｛第３図の
（ｂ）｝と側面図｛第３図の（ｃ）｝である。

既述もしたように、第３図において１はモータ、２は
ロータリ・エンコーダ、３は可撓性磁気ディスクＤを収
納している容器（カセット）、４はキヤリッジ５に取付
けられた記録再生素子（磁気ヘッド）、５は前記した記
録再生素子４やトラッキング用の光学的なパターンの読
取り用の構成部分の一部が取付けられているキャリッ
ジ、６はプーリ、７はスチール・ベルトである。

前記したキャリッジ５はモータ１の回転軸に固着され
ているプーリ６に一端部が巻回されているスチール・ベ
ルト７の他端部が固着されているから、モータ１が回転
することによりキャリッジ５は第３図の（ａ）中の矢印
８の方向に移動されるのであり、前記したモータ１とプ
ーリ６とスチール・ベルト７とキャリッジ５とからなる
部分は記録再生素子４のアクチュエータとして動作す
る。

そして、シーク・モードでの動作時に、前記装置の制
御の下に第３図の（ａ）中の矢印８の方向に移動される
ことにより、記録再生素子４を可撓性磁気ディスクにお
ける径方向に変位させ、制御装置では記録跡から読取ら
れるアドレスによって目的の記録跡までの距離を知り、
その距離に応じた移動速度で記録再生素子が移送される
ような制御動作（第４図中に速度制御として示されてい
る範囲での動作）を行うのであるが、本発明の記録再生
素子の位置制御方式においては磁気記録再生素装置にお
ける電源スイッチの投入時に、記録再生素子４を可撓性
磁気ディスクにおける記録再生領域の略々中間部まで移
送させ、フィード・フォワードを非アクティブの状態と
し、かつ、ディスク駆動装置を非レディ状態として、可
撓性磁気ディスクの定常状態の１回転期間における第１
表中の内部変数un,w′n,wn,vnの値、すなわち、既述の
ように第１図中の「位置誤差計算」のブロックから出力
されて「BAF」のブロックに与えられているunの値、第
１図中の「BAF」のブロックで示してある帯域増幅フィ
ルタBAF中のフィルタF1（Ｚ）の出力Ｗ′ｎの値、及び
前記した帯域増幅フィルタBAFの出力Wnの値、ならびに
第１図中の「モータ速度計算」のブロックから出力され
るVnの値をランブム・アクセス・メモリにテーブル状に
記憶する（第１図中のラム・テーブル）。

定常状態における第１表中の前記した内部変数un,w′
n,wn,vnの値は、ディスクの回転周期と一致した周期で
変動している。そして、定常状態において残留オフトラ
ックは非常に小さいのでvnの値によってトラックランア
ウトの絶対速度が検出でき、またvnの値に比べて（wn-v
n）の値は非常に小さいので、トラックランアウトの速
度はwnでも検出できる。

前記の点について付言すると次のとおりである。さ
て、トラックランアウトがある場合におけるトラックセ
ンタは、ディスクの回転につれてディスクの半径方向に
変位する。ここで、第１図中に示されているトラッキン
グ制御系が正常に動作していて定常状態にある場合に、
その際の残留オフトラックをＥ、トラックセンタ位置を
Ｒ、記録再生素子（ヘッド）位置をＹとすると、前記の
E,R,Yの相互間の関係は次のように示される。

Ｒ−Ｙ＝Ｅ …（１） Ｒ≫E,Y≫Ｅ …（２） （例えば、トラックセンタ位置Ｒの変動が500μｍに対
して残留オフトラックＥが５μｍ程度） したがって、トラックセンタ位置Ｒと記録再生素子
（ヘッド）位置Ｙとは、Ｒ≒Ｙとなり、 dR/dt≒dY/dt …（３） （３）式で近似できる。

一方、モータの速度と記録再生素子（ヘッド）の速度
とは、第９図に例示されているように比例関係を有する
ものに設定されているから、モータの速度Vnから記録再
生素子（ヘッド）の速度を計算によって求めることがで
きる。

また、前記の（３）式の関係から、記録再生素子（ヘ
ッド）の速度は、トラックセンタの速度（トラックラン
アウトの速度）に近似できる。以上のことより、トラッ
クランアウトの速度はモータの速度Vnによって検出でき
るのである。

また、定常状態において、第１図中のスイッチSWはオ
フの状態になっており、 en＝Wn−Vn …（４） Wn≫en,Vn≫en …（５） （４），（５）式の関係があるから、 Wn≒Vn …（６） （６）式が得られる。

ところで、（１）〜（３）式を参照して既述したよう
に、モータの速度Vnから記録再生素子（ヘッド）の速度
を計算によって求めることができるので、前記した
（６）式の関係から、トラックランアウトの速度は帯域
増幅フィルタBAFの出力Wnの値からでも検出できるので
ある。

前記のように可撓性磁気ディスクの定常状態の１回転
期間における第１表中のun,w′n,wnの値をランダム・ア
クセス・メモリにテーブル状に記憶した後に、ディスク
駆動装置をレディ状態としてシーク・モードでの動作を
行って、記録再生素子４を第４図中における速度制御の
領域に示されている基準速度に一致させるように駆動変
位させる。

前記したシーク・モードから位置制御（トラッキング
制御）動作モードに切換えられる直前に、第２図のDSP
内に示されているスイッチSWがオンの状態にされて、ラ
ムテーブルに記憶されているwnに基づいて得られるトラ
ックランアウトの速度の分だけ基準速度の補正が行われ
るようにする。このような速度補正によってシーク・モ
ードから位置制御（トラッキング制御）動作モードに切
換えられるときにおける記録跡と記録再生素子との相対
速度が一定にされる。

前記の点について説明を加えると次のとおりである。
既述もしたように、本発明の記録再生素子に位置制御方
式では、シーク・モードでの動作時に、記録再生素子４
が制御装置の制御の下に可撓性磁気ディスクにおける径
方向｛第３図の（ａ）中の矢印８の方向｝に変位され、
また、制御装置では記録跡から読取られるアドレスによ
って目的の記録跡までの距離を知り、その距離に応じた
移動速度で記録再生素子が移送されるような制御動作
を、第４図中に速度制御として示されている範囲での動
作を行なう際に、磁気記録再生装置における電源スイッ
チの投入時に、記録再生素子４を可撓性磁気ディスクに
おける記録再生領域の略々中間部まで移送させ、フィー
ド・フォワードを非アクティブの状態とし、かつ、ディ
スク駆動装置を非レディ状態として、可撓性磁気ディス
クの定常状態の１回転期間における第１表中のun,w′n,
wn,vnの値をランダム・アクセス・メモリにテーブル状
に記憶している。

そして、前記した定常状態における第１表中の内部変
数un,w′n,wn,vnの値は、ディスクの回転周期と一致し
た周期で変動しているが、定常状態における残留オフト
ラックは非常に小さいので、vnの値によってトラックラ
ンアウトの絶対速度が検出でき、またvnの値に比べて
（wn-vn）の値は非常に小さいので、トラックランアウ
トの速度はwnでも検出できることも既述したとおりであ
る。

さて、第２図中の一点鎖線枠DSP中の「速度テーブル
より基準速度データ抽出」のブロックから出力された基
準速度データは、絶対座標（装置）に対する速度値のデ
ータである。それで、絶対座標に対する速度テーブルか
らの基準速度データにより目的の記録跡に到達したとき
の速度テーブルからの基準速度データは速度０となる
が、前記のように、絶対座標に対しての速度値が０であ
っても、トラックランアウトによって、記録跡に対して
はトラックランアウトの速度の分だけの速度が残るか
ら、前記の残った速度を補正する必要がある。

そのために、シークモードから位置制御動作モードに
切換えられる直前に、第２図中の一点鎖線枠DSP内に示
されているスイッチSWがオンの状態にされて、ラムテー
ブルに記憶されているWnのデータに基づいて得られるト
ラックランアウトの速度が、第２図中の一点鎖線枠DSP
中に示されている「トラックランアウトの速度」のブロ
ックから、前記のオン状態のスイッチSWも介して加算器
に供給されるようにし、前記の加算器において第２図中
の一点鎖線枠DSP中の「速度テーブルより基準速度デー
タ抽出」のブロックから出力された基準速度データに、
ラムテーブルに記憶されているWnのデータに基づいて得
られるトラックランアウトの速度データを重畳加算し
て、前記したラムテーブルに記憶されているwnに基づい
て得られるトラックランアウトの速度の分だけ基準速度
の補正が行われるようし、シーク・モードから位置制御
（トラッキング制御）動作モードに切換えられるときに
おける記録跡と記録再生素子との相対速度が一定にされ
るのである。

動作モードが位置制御モードに切換えられた直後から
微小な時間（例えば2ms）内に第１図中のラムテーブル
からwnのデータをフィードフォワード信号として出力し
てセットリング時のオーバーシュートがトラックランア
ウトの影響を受けずに小さくなる。

前記した微小な時間（例えば2ms）後にフィードフォ
ワードを非アクティブとし、ラムテーブル内のun,w′n,
wnを帯域増幅フィルタBAFの初期値として帯域増幅フィ
ルタBAFの計算を開始する。これにより、帯域増幅フィ
ルタBAFの定常状態、すなわち、位置制御の定常状態に
なるまでの時間が短縮される。

なお、前記したラムテーブル内のun,w′n,wnの読出し
は、可撓性磁気ディスクの基準の回転位相を基準として
所定のものが使用されるようになされている。

このように、前記したシーク・モードから位置制御
（トラッキング制御）動作モードに切換えられると、第
４図中に位置制御として示されている範囲における動作
に良好に移行して、前記したキャリッジ５に取付らられ
ているトラッキング用の光学的なパターンの読取り用の
構成部分の一部に対して、可撓性磁気ディスクを挟んで
対向して設けられているトラッキング用の光学的なパタ
ーンの読取り素子からの出力信号によりトラッキング制
御が行われて、記録再生素子４が目的の記録跡を正しく
追跡できるようにされる。

（発明の効果） 以上、詳細に説明したところから明らかなように、本
発明の記録再生素子の位置制御方式はトラッキング用の
パターンを記録媒体内部に備えている如きディスクにお
ける所定の記録跡位置に記録再生素子を位置させるよう
にする記録再生素子の位置制御方式であって、目的の記
録跡にまで記録再生素子を移送させる移送手段と、複数
の特定周波数における利得を所定の状態に設定されたフ
ィルタを含んで構成された制御ループを備えており、目
的の記録跡に記録再生素子を追従させうるように記録再
生素子の位置を制御する記録再生素子の位置制御手段
と、前記の記録再生素子の移送手段と記録再生素子の位
置制御手段とを切換える手段と、ディスクの予め定めら
れた領域の記録跡に記録再生素子が正しく位置された状
態におけるディスクの一回転の期間と対応して前記した
フィルタの内部の状態を記憶する手段と、前記したフィ
ルタの内部状態が記憶される期間以外におけるアクセス
時に、前記の記録再生素子の移送手段から記録再生素子
の位置制御手段に切換えられた時点以後に、前記した記
憶手段に記憶されていた前記のフィルタの内部の状態の
データを前記したフィルタの初期値に用いてフィルタの
演算を開始させるようにする手段とを備えてなる記録再
生素子の位置制御方式、及びトラッキング用のパターン
を記録媒体内部に備えている如きディスクにおける所定
の記録跡位置に記録再生素子を位置させるようにする記
録再生素子の位置制御方式であって、目的の記録跡にま
で記録再生素子を移送させる移送手段と、複数の特定周
波数における利得を所定の状態に設定されたフィルタを
含んで構成された制御ループを備えており、目的の記録
跡に記録再生素子を追従させうるように記録再生素子の
位置を制御する記録再生素子の位置前記手段と、前記の
記録再生素子の移送手段と記録再生素子の位置制御手段
とを切換える手段と、ディスクの予め定められた領域の
記録跡に記録再生素子が正しく位置された状態における
ディスクの一回転の期間と対応して前記したフィルタの
内部の状態を記憶する手段と、前記したフィルタの内部
状態が記憶される期間以外におけるアクセス時に、前記
の記録再生素子の移送手段から記録再生素子の位置制御
手段に切換えられた時点以後に、前記した記憶手段に記
憶されていた前記のフィルタの内部の状態のデータにお
ける、記録再生素子の移送手段から記録再生素子の位置
制御手段への切換えの時点の記録再生素子の位置につい
てディスクの基準の回転位相を基準として示される回転
位相と対応して得られるフィルタの内部状態のデータ前
記した記録再生素子の位置制御系に重畳加算する手段と
を備えてなる記録再生素子の位置制御方式、ならびにト
ラッキング用のパターンを記録媒体内部に備えている如
きディスクにおける所定の記録跡位置に記録再生素子を
位置させるようにする記録再生素子の位置制御方式であ
って、記録再生素子の速度検出手段を有するアクチュエ
ータと、前記の速度検出手段によって検出された速度を
基準速度に追従させるようにする速度制御手段と、目的
の記録跡に記録再生素子を追従させる記録再生素子の位
置制御手段と、前記の速度制御手段と記録再生素子の位
置制御手段とを切換える手段と、ディスクの予め定めら
れた領域の記録跡に記録再生素子が正しく位置された状
態におけるディスクの一回転の期間と対応する記録再生
素子の速度の変化態様を記憶する手段と、前記した記憶
手段に記憶されていた記録再生素子の速度の変化態様の
データとして用いられる帯域増幅フィルタの出力Wnを用
いて速度制御に用いられる基準速度値を補正する手段と
を備えてなる記録再生素子の位置制御方式であるから、
この本発明の記録再生素子の位置制御方式ではシーク・
モードから位置制御（トラッキング制御）動作モードに
切換えられたときの時間軸上での記録再生素子の変位の
状態が第５図に示すように、従来の記録再生素子の位置
制御方式においてシーク・モードから位置制御（トラッ
キング制御）動作モードに切換えられたときの時間軸上
での記録再生素子の変位の状態を示している第12図に比
べて大巾に改善され、本発明の記録再生素子の位置制御
方式ではシーク・モードから位置制御（トラッキング制
御）動作モードに切換えが円滑に行われるとともに、セ
ットリング時におけるオーバーシュートが小さくなり、
また、セットリング時間も小さくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本発明の記録再生素子の位置制御方
式における位置制御系の基本ブロック図（第１図）とシ
ーク・サーボ系の基本ブロック図（第２図）、第３図は
磁気記録再生装置の一例構成を示す図、第４図，第５
図，第８図及び第10図ならびに第12図は説明用の特性
図、第６図，第７図及び第９図ならびに第11図は説明の
ためのブロック図である。 １……モータ、２……ロータリ・エンコーダ、３……可
撓性磁気ディスクＤを収納している容器（カセット）、
４……アクチュエータに取付けられた記録再生素子（磁
気ヘッド）、５……記録再生素子４を取付けたアクチュ
エータやトラッキング用の光学的なパターンの読取り用
の構成部分の一部が取付けられているキャリッジ、６…
…プーリ、７……スチール・ベルト、DSP……デジタル
・シグナル・プロセッサ、DSA……自動制御系の機構部
分、BAF……帯域増幅フィルタ、

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トラックキング用のパターンを記録媒体内
   部に備えている如きディスクにおける所定の記録跡位置
   に記録再生素子を位置させるようにする記録再生素子の
   位置制御方式であって、目的の記録跡にまで記録再生素
   子を移送させる移送手段と、複数の特定周波数における
   利得を所定の状態に設定されたフィルタを含んで構成さ
   れた制御ループを備えており、目的の記録跡に記録再生
   素子を追従させうるように記録再生素子の位置を制御す
   る記録再生素子の位置制御手段と、前記の記録再生素子
   の移送手段と記録再生素子の位置制御手段とを切換える
   手段と、ディスクの予め定められた領域の記録跡に記録
   再生素子が正しく位置された状態におけるディスクの一
   回転の期間と対応して前記したフィルタの内部の状態を
   記憶する手段と、前記したフィルタの内部状態が記憶さ
   れる期間以外におけるアクセス時に、前記の記録再生素
   子の移送手段から記録再生素子の位置制御手段に切換え
   られた時点以後に、前記した記憶手段に記憶されていた
   前記のフィルタの内部の状態のデータを前記したフィル
   タの初期値に用いてフィルタの演算を開始させるように
   する手段とを備えてなる記録再生素子の位置制御方式
2. 【請求項２】トラッキング用のパターンを記録媒体内部
   に備えている如きディスクにおける所定の記録跡位置に
   記録再生素子を位置させるようにする記録再生素子の位
   置制御方式であって、目的の記録跡にまで記録再生素子
   を移送させる移送手段と、複数の特定周波数における利
   得を所定の状態に設定されたフィルタを含んで構成され
   た制御ループを備えており、目的の記録跡に記録再生素
   子を追従させうるように記録再生素子の位置を制御する
   記録再生素子の位置制御手段と、前記の記録再生素子の
   移送手段と記録再生素子の位置制御手段とを切換える手
   段と、ディスクの予め定められた領域の記録跡に記録再
   生素子が正しく位置された状態におけるディスクの一回
   転の期間と対応して前記したフィルタの内部の状態を記
   憶する手段と、前記したフィルタの内部状態が記憶され
   る期間以外におけるアクセス時に、前記の記録再生素子
   の移送手段から記録再生素子の位置制御手段に切換えら
   れた時点以後に、前記した記憶手段に記憶されていた前
   記のフィルタの内部の状態のデータにおける、記録再生
   素子の移送手段から記録再生素子の位置制御手段への切
   換えの時点の記録再生素子の位置についてディスクの基
   準の回転位相を基準として示される回転位相と対応して
   得られるフィルタの内部状態のデータを前記した記録再
   生素子の位置制御系に重畳加算する手段とを備えてなる
   記録再生素子の位置制御方式
3. 【請求項３】トラックキング用のパターンを記録媒体内
   部に備えている如きディスクにおける所定の記録跡位置
   に記録再生素子を位置させるようにする記録再生素子の
   位置制御方式であって、記録再生素子の速度検出手段を
   有するアクチュエータと、前記の速度検出手段によって
   検出された速度を基準速度に追従させるようにする速度
   制御手段と、目的の記録跡に記録再生素子を追従させる
   記録再生素子の位置制御手段と、前記の速度制御手段と
   記録再生素子の位置制御手段とを切換える手段と、ディ
   スクの予め定められた領域の記録跡に記録再生素子が正
   しく位置された状態におけるディスクの一回転の期間と
   対応する記録再生素子の速度の変化態様を記憶する手段
   と、前記した記憶手段に記憶されていた記録再生素子の
   速度の変化態様のデータとして用いられる帯域増幅フィ
   ルタの出力Wnを用いて速度制御に用いられる基準速度値
   を補正する手段とを備えてなる記録再生素子の位置制御
   方式