JP2592743Y2 - ミシンの釜軸位置調節装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はミシンの釜軸位置調節装
置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から本縫いミシンにおいては、釜軸
の先端に下糸巻（ボビン）を収納する回転釜を取付けて
おり、該釜軸を回転させるためにミシンの下軸の回転を
ギヤ等により釜軸へ伝達している。

【０００３】図３にこのような従来の本縫いミシンの釜
軸の構成図を示す。この図において、図示しないミシン
ベッドへ回転可能かつスラスト方向には移動不能に取り
付けられた下軸１は、その後端部に取り付けられたスプ
ロケット２及びタイミングベルト３を介して図示しない
上軸からの回転力を伝達される。この下軸１には下軸ギ
ヤ４が固定されている。

【０００４】先端に全回転釜５を取り付けられた釜軸６
は下軸１と平行に延在し、下軸ギヤ４と噛合う釜軸ギヤ
７が固定されている。釜軸ギヤ７と下軸ギヤ４とのギヤ
比は１：２であり、釜軸６は下軸１の２倍の速度で回転
する。このようにして釜軸６及び全回転釜５が回転し、
全回転釜５の剣先が上糸を掬い、縫目が形成される。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】ところで、ミシンにお
いては工程変更（例えば夏物から冬物への変更）により
生地や糸の種類等を変更し、それに伴いミシンの適正な
回転数（上軸の回転数）を変更する場合がある。このた
めミシンの回転数を変更すると、図４に示すように上糸
のループ形状が変化してしまう。図４において８は上
糸、２６は針を示す。同図（Ａ）はミシンの回転数が低
い場合に形成されるループの一例を示し、（Ｂ）はミシ
ンの回転数が高い場合に形成されるループの一例を示
す。これらの図に示すように、ミシンの回転数が高い場
合には低い場合に比べループの広がった部分が下方に移
動する。このため、ミシンの回転数が低い場合には全回
転釜５の剣先がループの広がった部分に入り込み適正に
該ループをすくうことができてもミシンの回転数が高い
場合にはすくうことができず、或いはその逆にミシンの
回転数が高い場合のループをすくうことができてもミシ
ンの回転数が低い場合のループをすくうことができない
ことがある。このように安定してループをすくうことが
できないため、目飛び、糸切れ、ちょうちん等が発生し
やすくなる。この問題点は釜軸６の高さ方向の位置が固
定されていることによるものである。

【０００６】また、被縫製物の種類や縫製長さの変化等
により、通常の釜（標準釜）の下糸巻量では足りない場
合（例えばジーンズ等の厚物の縫製の場合や縫製長さが
長い縫製の場合）に、標準釜より下糸巻量の多い釜を使
用すると好都合である。このため、従来から標準釜に対
してほぼ２倍の下糸巻量の釜（倍釜）が用いられてい
る。これら標準釜と倍釜は大きさが異なるため、使用す
る標準釜から倍釜或いは倍釜から標準釜へ変更する場合
には、釜軸６の高さが同じであれば剣先の高さも異な
る。従って、上糸のループをすくうためには剣先の高さ
が同じ位置になるように釜軸６の高さ位置を変更する必
要がある。しかしながら、上記従来の本縫いミシンの釜
軸は、高さ方向に位置が固定されているため、全回転釜
５の高さ方向の位置を変更することができない。

【０００７】従って、本考案の目的は、釜軸６の高さ方
向の位置を任意に変更することができる釜軸位置調節装
置を提供することにある。

【０００８】また、本考案の他の目的は、使用する釜の
種類（標準釜、倍釜）に応じて釜軸６の高さ方向の位置
を簡単に切り換えることができる釜軸位置調節装置を提
供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本考案によれば、ミシンベッドと、上軸に連動する下軸
と、前記下軸を中心として上下に回転可能に設けられた
釜軸ブロックと、前記下軸と平行に延在するとともに、
前記釜軸ブロックへ駆動可能に取り付けられた釜軸と、
前記下軸の駆動を釜軸へ伝達する運動伝達手段と、前記
釜軸ブロックの回転角度を調節することにより、釜軸の
上下位置を調整する釜軸高さ調整手段と、前記釜軸ブロ
ックを前記ミシンベッドへ固定しかつ該固定を解除可能
な固定手段と、を備えることを特徴とするミシンの釜軸
位置調節装置が提供される。

【００１０】また、本考案によれば、ミシンベッドと、
上軸に連動する下軸と、前記下軸を中心として上下に回
転可能に設けられた釜軸ブロックと、前記下軸と平行に
延在するとともに、前記釜軸ブロックへ駆動可能に取り
付けられた釜軸と、前記下軸の駆動を釜軸へ伝達する運
動伝達手段と、前記釜軸ブロックを前記下軸を中心とし
て回転させることにより、釜軸の上下位置を変更可能な
駆動手段と、前記釜軸ブロックの回転位置を、釜軸の高
さが標準釜を取付けるために最適な位置となるように規
制する第１の位置決めストッパ−と、前記釜軸ブロック
の回転位置を、釜軸の高さが倍釜を取付けるために最適
な位置となるように規制する第２の位置決めストッパ−
と、を備えることを特徴とするミシンの釜軸位置調節装
置が提供される。

【００１１】

【作用】第１の考案によれば、縫製時には釜軸ブロック
は固定手段によりミシンベッドへ固定されているが、釜
軸の高さを変更したいときはこの固定を解除し、釜軸高
さ調節手段により、釜軸が所望の高さになるように釜軸
ブロックの下軸に対する回転角度を調節した後、再び固
定手段により釜軸ブロックをミシンベッドへ固定する。

【００１２】第２の考案によれば、使用する釜を標準釜
から倍釜に変更する場合は駆動手段を作動させて釜軸ブ
ロックが第２の位置決めストッパーにより規制されるま
で回転させると、釜軸の高さが倍釜を取り付けるために
最適な位置に切り替わる。また、使用する釜を倍釜から
標準釜に変更する場合は駆動手段を作動させて釜軸ブロ
ックが第１の位置決めストッパーにより規制されるまで
回転させると、釜軸の高さが標準釜を取り付けるために
最適な位置に切り替わる。

【００１３】

【実施例】以下、本考案のミシンの釜軸位置調節装置の
一実施例を図面に基づいて説明する。

【００１４】図１は本考案の第１の実施例の斜視図であ
る。この図において、図示しないミシンベッドへ回転可
能かつスラスト方向には移動不能に取り付けられた下軸
１は後端部にスプロケット２を固定され、このスプロケ
ット２及びタイミングベルト３を介して図示しない上軸
からの回転力を伝達される。この下軸１にはベアリング
９，９を介して釜軸ブロック１０が取り付けられてい
る。この釜軸ブロック１０は、ブロック固定腕１１に形
成された長穴１１ａを通るブロック固定ねじ１２により
該ブロック固定腕１１へ固定されており、このブロック
固定腕１１は図示しないミシンベッドへ固定腕止めねじ
１４を介して固定されている。これらブロック固定ねじ
１２、ブロック固定腕１１及び固定腕止めねじ１４は、
釜軸ブロック１０をミシンベッドへ固定しかつ該固定を
解除可能な固定手段を構成する。釜軸ブロック１０はこ
の固定手段による固定を緩めて解除されると長穴１１ａ
の範囲内で下軸１に対して回転可能となるが、このとき
スラスト方向へは移動できないように下軸１の先端部に
固定されたスラストカラー１５によりスラスト方向に規
制されている。なお、図において１６はメタルである。

【００１５】下軸１と平行に延在する釜軸６は、釜軸後
メタル１７及び釜軸前メタル１８を介して釜軸ブロック
１０へ取り付けられている。この釜軸６は先端部に糸輪
捕捉器としての全回転釜５を取り付けられ、後端部に釜
軸ギヤ７が固定されている。釜軸ギヤ７は下軸１に固定
された下軸ギヤ４と噛合い、下軸１の回転を釜軸６へ伝
達するが、下軸ギヤ４とのギヤ比を２：１とされている
ので釜軸６は下軸１の２倍の速度で回転する。これら下
軸ギヤ４と釜軸ギヤ７は下軸の回転を釜軸へ伝達する運
動伝達手段を構成し、それぞれバックラッシュを防止す
るためテーパーギヤを使用している。

【００１６】釜軸ブロック１０には突出ブロック１９が
固定され、この突出ブロック１９へ設けられた孔（図示
せず）を貫通する釜軸心高さ調節ねじ２０がその下端部
をミシンのベッドのボス２１へ螺合されている。なお、
釜軸心高さ調節ねじ２０の上端と突出ブロック１９の間
にはロックナット２２が設けられている。これら釜軸心
高さ調節ねじ２０、ロックナット２２は釜軸ブロックの
回転角度を調節する釜軸高さ調節手段を構成する。

【００１７】以上の構成を有するミシンの釜軸位置調節
装置において、釜軸６の高さを変える場合は、まずブロ
ック固定ねじ１２を緩めて釜軸ブロック１０のミシンベ
ッドへの固定を解除し、該釜軸ブロック１０が下軸１に
対して長穴１１ａの範囲内で回転可能な状態とする。次
にロックナット２２を緩めて釜軸心高さ調節ねじ２０を
回すことにより、釜軸ブロック１０が釜軸６と共に下軸
１を中心として回転し、その結果、釜軸６の高さを任意
に変更できる。このようにして釜軸６を所望の高さに変
更した後、ロックナット２２を締め、ブロック固定ねじ
１２のブロック固定ねじを締め込んで、釜軸ブロック１
０を固定する。

【００１８】なお、釜軸ブロック１０は下軸１を中心と
して回動するため、下軸１と釜軸６の心間距離が不変で
ある。従って、下軸ギヤ４と釜軸ギヤ７との噛合いを調
整し直す必要がない。

【００１９】上記実施例のミシンの釜軸位置調節装置に
よれば、生地や糸の種類を変えることにより針先にでき
るループ形状が変化しても、釜軸の高さを変えることに
より釜剣先がループに対して最も良い高さになるようす
ることができるため、安定した縫製をすることができ
る。

【００２０】図２は本考案の他の実施例の斜視図であ
る。この実施例の構成が図１の実施例と異なるのは、図
１の実施例のブロック固定ねじ１２、ブロック固定腕１
１、固定腕止めねじ１４が設けられていない点と、釜軸
心高さ調節ねじ２０、ロックナット２２、ボス２１に代
えてシリンダー２３及び上下の位置決めストッパー（第
１及び第２の位置決めストッパー）２４，２５を設けて
ある点であり、他の構成は同一であるので同一或いは同
等の構成部分には同一の符号を付しその説明を省略す
る。

【００２１】シリンダー２３は図示しないミシンベッド
に固定され、そのロッド部２３ｂを釜軸ブロック１０へ
連結されている。また、第１及び第２の位置決めストッ
パー２４，２５はそれぞれ釜軸ブロック１０の上下壁に
固定され、それぞれミシンのベッドと当接することによ
り釜軸ブロック１０の、図２において反時計方向及び時
計方向の回動を規制する。このストッパー２４，２５
は、それぞれミシンのベッドに当接したとき釜軸６が標
準釜および倍釜を取り付けるのに適当な高さとなるよう
に構成されている。

【００２２】以上の構成を有するミシンの釜軸位置調節
装置において、使用する釜を標準釜から倍釜へ変更する
場合は、シリンダー２３を駆動して釜軸ブロック１０
を、第２の位置決めストッパー２５がミシンのベッド面
と当接するまで下軸１を中心として回動させる。このよ
うにして、釜軸６の高さを倍釜を取り付けるために適正
な位置へ変更することができる。逆に釜を倍釜から標準
釜へ変更する場合にはシリンダー２３を駆動して釜軸ブ
ロック１０を、第１の位置決めストッパー２４がミシン
のベッド面と当接するまで下軸１を中心として回動させ
る。このようにして、釜軸６の高さを標準釜を取り付け
るために適正な位置へ変更することができる。なお、第
１の実施例と同様に、釜軸ブロック１０は下軸１を中心
として回動するため、下軸１と釜軸６の心間距離が不変
であり、下軸ギヤ４と釜軸ギヤ７との噛合いを調整し直
す必要がない。この実施例の場合、簡単な操作により標
準釜と倍釜の使い分けることができる。

【００２３】また、上記実施例では糸捕捉器として全回
転釜を用いた例について説明したが、これに限らず糸輪
捕捉器として半回転釜を用いても良い。すなわち、上軸
の回転を揺動運動に変換して先に述べた運動伝達手段を
介して釜軸を揺動（駆動）する。一方半回転釜装置は、
釜軸に固定したドライバーと、ドライバーに係合するボ
ビンを内蔵したボビンケースを収容する剣先を有する中
釜と、ドライバー及び中釜を遊嵌するベッドに固定され
た大釜と、大釜の外周部に固定した中釜押え等から成っ
ている。従って、釜軸が揺動するとドライバーが振動
（駆動）し、その結果中釜が揺動してその剣先にて針糸
ループを捕捉するようにしたものである。従って、釜軸
６に半回転釜装置を適用するようにしても上記各実施例
と同様の効果を奏する。

【００２４】以上本考案の釜軸位置調節装置を図面に示
した実施例に基づいて説明したが、本考案はこれらの実
施例には限定されず例えばシリンダより成る駆動手段に
かえてソレノイド弁を用いても良く、また、運動伝達手
段として下軸ギヤ４の代りに下軸プーリを、釜軸ギヤ７
の代りに釜軸プーリを用いそれらをタイミングベルトで
駆動するような構成としても良い（但し各ギヤ４，７を
使用した場合の釜軸６の回転方向とタイミングベルトを
使用した場合の回転方向とが反対になるのでタイミング
ベルトを使用した場合は必要に応じて設計変更するこ
と）。

【００２５】

【考案の効果】以上本考案のミシンの釜軸位置調整装置
によれば、生地や糸の種類を変えることにより針先にで
きるル−プ形状が変化しても、釜軸の上下位置高さを変
えることにより釜剣先がル−プに対して最も良い高さに
なるようにすることができるため、安定した縫製をする
ことができる。また、釜軸の高さを釜の種類（標準釜お
よび倍釜）に応じて簡単に切り換えることができるの
で、１台のミシンで２種類の釜を用いることができてミ
シンの信頼性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による釜軸位置調節装置の第１の実施例
の斜視図である。

【図２】本考案による釜軸位置調節装置の第２の実施例
の斜視図である。

【図３】従来例の釜軸の斜視図である。

【図４】ミシンの回転数の変化による針糸ループの形状
の変化を示すための概略図であり、（Ａ）はミシンの回
転数が低い場合に形成されるループの一例を示し、
（Ｂ）はミシンの回転数が高い場合に形成されるループ
の一例を示す。

【符号の説明】

１ 下軸 ４ 下軸ギヤ ５ 全回転釜 ６ 釜軸 ７ 釜軸ギヤ ８ 上糸 １０ 釜軸ブロック １１ ブロック固定腕 １１ａ 長穴 １２ 固定ねじ １３ ブロック固定ねじ １４ 固定腕止めねじ １９ 突出ブロック ２０ 釜軸心高さ調節ねじ ２１ ミシンベッドのボス ２２ ロックナット ２３ シリンダー ２４ 第２の位置決めストッパー ２５ 第１の位置決めストッパー

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ミシンベッドと、 上軸に連動する下軸と、 前記下軸を中心として上下に回転可能に設けられた釜軸
   ブロックと、前記下軸と平行に延在するとともに、 前記釜軸ブロック
   へ駆動可能に取り付けられた釜軸と、 前記下軸の駆動を釜軸へ伝達する運動伝達手段と、 前記釜軸ブロックの回転角度を調節することにより、釜
   軸の上下位置を調整する釜軸高さ調整手段と、 前記釜軸ブロックを前記ミシンベッドへ固定しかつ該固
   定を解除可能な固定手段と、を備えることを特徴とする
   ミシンの釜軸位置調節装置。
2. 【請求項２】ミシンベッドと、 上軸に連動する下軸と、 前記下軸を中心として上下に回転可能に設けられた釜軸
   ブロックと、前記下軸と平行に延在するとともに、 前記釜軸ブロック
   へ駆動可能に取り付けられた釜軸と、 前記下軸の駆動を釜軸へ伝達する運動伝達手段と、 前記釜軸ブロックを前記下軸を中心として回転させるこ
   とにより、釜軸の上下位置を変更可能な駆動手段と、 前記釜軸ブロックの回転位置を、釜軸の高さが標準釜を
   取付けるために最適な位置となるように規制する第１の
   位置決めストッパ−と、 前記釜軸ブロックの回転位置を、釜軸の高さが倍釜を取
   付けるために最適な位置となるように規制する第２の位
   置決めストッパ−と、を備えることを特徴とするミシン
   の釜軸位置調節装置。