JP2587720Y2 - 車両用ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、自動車や自動二・三輪
車等の走行車両に搭載されるディスクブレーキに係り、
詳しくは、摩擦パッドの吊下げに用いるハンガーピン
と、同じく摩擦パッドを弾発保持するパッドスプリング
の保持構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】一対の摩擦パッドをハンガーピンにて吊
り下げる、いわゆるハンガーピンタイプの車両用ディス
クブレーキとして、例えば実開平３−１３０９２８号公
報に示されるものがある。

【０００３】このディスクブレーキは、キャリパボディ
に一対のピン挿通孔をディスク軸方向へ貫通形成し、各
ピン挿通孔に差し込まれるハンガーピンに、ディスクロ
ータの両側に対向配置される一対の摩擦パッドを、ディ
スク軸方向へ移動可能に吊持されたもので、ピン挿通孔
から突出するハンガーピンの軸部先端に、ピンクリップ
の端部を係合して、ハンガーピンを抜け止めしている。

【０００４】摩擦パッドとハンガーピンとの間には、板
状のパッドスプリングが、ブリッジ部に形成された天井
開口部を利用して取付けられており、摩擦パッドはこの
パッドスプリングにてディスク中心方向へ弾発されてい
る。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】このように取付けられ
たハンガーピンは、先端に差し込まれたピンクリップの
端部とピン挿通孔の開口面との間に間隔があり、またパ
ッドスプリングも、圧縮加重をディスク半径方向に作用
させるのみで、それぞれディスク軸方向の移動が自由で
あった。このため、悪路やコーナリング走行等で、車両
に横加重がかかると、ハンガーピンとパッドスプリング
にピンクリップを含めた３点に、耳障りなガタ付き音や
打音を発生することがあり、特にレースやダート走行で
の厳しい使用条件下では、ハンガーピンやパッドスプリ
ングを著しく損耗させることを免れない。

【０００６】そこで本考案は、部品点数を増加すること
なく、ハンガーピンとパッドスプリングとピンクリップ
とのガタ付きを抑えて、上述の問題を解決した車両用デ
ィスクブレーキを提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上述の目的に従い、本考
案は、ディスクロータの両側部に対向配置される摩擦パ
ッドを、キャリパボディにディスクロータの外側を跨い
でディスク軸方向へ貫通形成された一対のピン挿通孔に
挿通される２本のハンガーピンにてディスク軸方向へ移
動可能に吊持し、前記ピン挿通孔から突出するハンガー
ピンの先端に、線材でなるピンクリップの両端部を係合
してハンガーピンを抜け止めすると共に、前記摩擦パッ
ドを、その外側に配設されたパッドスプリングにてディ
スク中心方向へ弾発する車両用ディスクブレーキにおい
て、前記ピンクリップと前記パッドスプリングとにそれ
ぞれ係合部を突設し、前記キャリパボディには通孔を形
成して、該通孔の内部で前記ピンクリップとパッドスプ
リングの係合部を弾性係合させ、該ピンクリップの一部
を、前記キャリパボディの反ディスクロータ側面に圧接
して、前記ハンガーピンとパッドスプリングとピンクリ
ップとを弾持したことを特徴としている。

【０００８】

【作用】かかる構成により、ピンクリップと係合するハ
ンガーピンには、ピンクリップ方向への牽引力が作用す
る。またパッドスプリングと係合するピンクリップに
は、キャリパボディの反ディスクロータ側面と当接する
部分から先端部側が、反ディスクロータ側面との当接部
分を支点に、反ディスクロータ側面から遠ざかろうとす
るモーメントを生じ、このモーメントは、２本のハンガ
ーピンに差し込み方向の牽引力として作用する。これに
より、ハンガーピンとパッドスプリングとピンクリップ
とは相互に弾性力を以て保持され、それぞれがディスク
軸方向の移動をガタ付きなく規制される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説
明する。

【００１０】ディスクブレーキ１は、図示しない車輪と
矢印Ａ方向へ一体に回転するディスクロータ２と、該デ
ィスクロータ２の一側部で車体に固設される板状のキャ
リパブラケット３と、該ブラケット３に、一対のスライ
ドピン４，４を介してディスク軸方向へ移動可能に支持
されるキャリパボディ５と、該キャリパボディ５の内部
で、ディスクロータ２を挟んで対向配置される一対の摩
擦パッド６，６とからなっている。

【００１１】キャリパブラケット３は、鋼板等の薄板を
用いて形成されており、その中央部に、パッド装着凹部
３ａがディスク半径方向外側を開口して設けられると共
に、該パッド装着凹部３ａの両側に、取付け孔３ｂが貫
通形成されている。パッド装着凹部３ａには、作用部側
の摩擦パッド６が配設され、また各取付け孔３ｂには、
上述のスライドピン４が、それぞれ反ディスクロータ方
向に突出して設けられる。

【００１２】キャリパボディ５は、作用部側ピース５ａ
と反作用部側ピース５ｂとを、４本の連結ボルト７でつ
ないだ分割型で、作用部側ピース５ａには、ディスクロ
ータ２の一側部に配設される作用部５ｃと、ディスクロ
ータ２の外周を跨ぐブリッジ部５ｄとが、鋳造成形によ
って一体に形成されている。また、反作用部側ピース５
ｂは、プレス機で打抜かれた鋼板等の板材の全体が、デ
ィスクロータ２の他側部に配設される反作用部５ｅとな
っている。

【００１３】作用部側ピース５ａには、作用部５ｃの中
央に大径のシリンダ孔８が、その両側に小径のガイド孔
５ｆ，５ｆが、それぞれディスクロータ２側に開口して
設けられており、シリンダ孔８に、コップ状のピストン
９が液密且つ移動可能に収容され、シリンダ孔８とピス
トン９との底壁間に、液圧室１０が画成される。また、
ガイド孔５ｆには、キャリパブラケット３に突設された
スライドピン４が差し込まれ、キャリパボディ５は、両
スライドピン４，４を介して、キャリパブラケット３に
ディスク軸方向へ移動可能に支持される。

【００１４】ブリッジ部５ｄの中央部には矩形の天井開
口部５ｇが形成され、該天井開口部５ｇの両側部に、反
作用部５ｅ側に開口するめねじ孔５ｈが、それぞれ２個
づつ設けられており、作用部側ピース５ａ及び反作用部
側ピース５ｂは、連結ボルト７をそれぞれのめねじ孔５
ｈにねじ込んで一体に連結される。

【００１５】各摩擦パッド６は、ディスクロータ２の側
面と摺接するライニング６ａと、該ライニング６ａを保
持する金属製の裏板６ｂとからなっている。裏板６ｂの
上部中央にはパッド当接片６ｃが、また裏板６ｂの上部
両側部には、吊下げ片６ｄ，６ｄが、それぞれ延設され
ており、各吊下げ片６ｄには、ピン孔６ｅが穿設されて
いる。作用部５ｃ側の摩擦パッド６は、キャリパブラケ
ット３のパッド装着凹部３ａに、また反作用部５ｅ側の
摩擦パッド６は、反作用部５ｅの内側に膨出させたトル
ク受け突起５ｉ，５ｉの間にそれぞれ配設され、キャリ
パボディ５に天井開口部５ｇを跨いで懸架された２本の
ハンガーピン１１，１１を、パッド吊下げ片６ｄのピン
孔６ｅに差し込んで、ディスク軸方向へ移動可能に吊持
されると共に、摩擦パッド６，６のディスク半径方向外
側に縮設されるパッドスプリング１２にて、ディスク中
心方向へ弾発されている。

【００１６】作用部５ｃの外面中央部には、ボス部５ｊ
が天井開口部５ｇに隣接して設けられ、該ボス部５ｊに
は、断面横長円形の通孔５ｋが形成されている。また、
このボス部５ｊを挟んだ作用部５ｃと反作用部５ｅの外
面側には、２つのピン挿通孔５ｍ，５ｍが、天井開口部
５ｇの両側に分断して設けられている。上述の通孔５ｋ
とピン挿通孔５ｍ，５ｍは、いずれもディスク軸方向に
貫通形成され、このうち、両側のピン挿通孔５ｍ，５ｍ
には、上述のハンガーピン１１が差し込まれる。

【００１７】各ハンガーピン１１は、軸部１１ａの基端
に大径の頭部１１ｂを持ち、また軸部１１ａの先端に、
ピン孔１１ｃが穿たれており、軸部１１ａをピン挿通孔
５ｍに反作用部５ｅ側から差し込み、頭部１１ｂを、反
作用部５ｅ側でピン挿通孔５ｍが開口する反作用部５ｅ
の反ディスクロータ側面５ｎに当接させて、差し込み量
を規制すると共に、同じくこのピン挿通孔５ｍが、作用
部５ｃ側で開口する作用部５ｃの反ディスクロータ側面
５ｏから突出する先端のピン孔１１ｃに、ピンクリップ
１３の端部１３ｂを差し込んで抜け止めされる。

【００１８】パッドスプリング１２は、中央のベース片
１２ａと、該ベース片１２ａの一端部近傍から両側へハ
の字状に突出する係止片１２ｂ，１２ｂと、ベース片１
２ａの一端部を立ち上げて形成された摘み片１２ｃと、
該摘み片１２ｃと対向するベース片１２ａ他端部の立ち
上がり片１２ｄと、該立ち上がり片１２ｄから反ベース
片方向へ突出する係合部１２ｅとからなっている。各係
止片１２ｂの先端部１２ｆは、ベース片１２ａ側へ湾曲
形成され、また係合部１２ｅは、先端部を立ち上がり片
１２ｄ方向へ曲げ戻したフック状に形成されている。ま
たピンクリップ１３は、ピアノ線等の弾性のある線材を
ハの字状に傾斜させ、該線材の中央頂部を一側方へコ字
状に突出させて、係合部１３ａとしている。

【００１９】上記パッドスプリング１２は、ベース片１
２ａの一端部側を反作用部５ｅの外面に乗せながら、係
合部１２ｅをボス部５ｊの通孔５ｋに収容し、更に両係
止片１２ｂ，１２ｂの先端部１２ｆ，１２ｆを、それぞ
れハンガーピン１１の軸部１１ａの内側に係止して、天
井開口部５ｇに配設される。ベース片１２ａの内面は、
裏板６ｂのパッド当接片６ｃの外面と弾性力を以て当接
し、ハンガーピン１１，１１に吊持される摩擦パッド
６，６をディスク中心方向へ弾発する。

【００２０】また、ピンクリップ１３は、両端部１３
ｂ，１３ｂを、ピン挿通孔５ｍの反ディスクロータ側面
５ｏから突出する各ハンガーピン１１先端のピン孔１１
ｃにそれぞれ差し込み、中央の係合部１３ａを天井開口
部５ｇ方向へ引き寄せて、該係合部１３ａをボス部５ｊ
の通孔５ｋに収容し、通孔５ｋの内部で、パッドスプリ
ング１２とピンクリップ１３の係合部１２ｅ，１３ａを
係合する。

【００２１】この係合により、パッドスプリング１２に
は、ピンクリップ方向の牽引力が作用し、ベース片１２
ａ他端部の立ち上がり片１２ｄをボス部５ｊの天井開口
部側面に当接させて、ディスク軸方向の移動を規制され
る。一方、ピンクリップ１３には、パッドスプリング方
向の牽引力が作用し、係合部１３ａの突出基部１３ｃ，
１３ｃが、通孔５ｋのハンガーピン突出側の開口縁５ｐ
に弾性力を以て当接する。これにより、ピンクリップ１
３には、係合部１３ａの突出基部１３ｃから先端側に、
パッドスプリング１２による牽引力とは逆のモーメント
が突出基部１３ｃを支点に作用し、作用部５ｃの反ディ
スクロータ側面５ｏから遠ざかろうとするピンクリップ
１３の端部１３ｂが、ハンガーピン１１を差し込み方向
に牽引し、該ハンガーピン１１のディスク軸方向の移動
を規制する。

【００２２】このようにして、ハンガーピン１１，１１
とパッドスプリング１２は、ピンクリップ１３との係合
によって弾性力を以て保持され、またピンクリップ１３
も、ハンガーピン１１，１１とパッドスプリング１２と
の係合によって弾持され、それぞれがディスク軸方向の
移動をガタ付きなく規制される。

【００２３】尚本考案は、ディスクロータの両側に配置
される双方の作用部にピストンを対向させたピストン対
向型のキャリパボディにも適用することができる。ま
た、上述の実施例では、パッドスプリングの取付けに、
キャリパボディの天井開口部を利用したが、本考案は、
ブリッジ部に天井開口部がなく、パッドスプリングをブ
リッジ部の内側に配設するタイプのキャリパボディにも
実施が可能である。

【００２４】更に本考案は、ピンクリップの先端側に、
パッドスプリングと逆方向のモーメントを出すために、
ピンクリップの一部を突出させ、この突出部をキャリパ
ボディの一側部反ディスクロータ側面へ直接当ててもよ
い。

【００２５】

【考案の効果】本考案は、以上に説明した如く、キャリ
パボディのピン挿通孔から突出するハンガーピンの先端
に、線材で形成されたピンクリップの両端部を係合して
ハンガーピンを抜け止めし、該ピンクリップとパッドス
プリングとにそれぞれ係合部を突設し、前記キャリパボ
ディには、ピンクリップ側へ開口する通孔を形成して、
該通孔の内部で前記ピンクリップとパッドスプリングの
係合部を係合し、該ピンクリップの一部を、キャリパボ
ディの反ディスクロータ側面に圧接して、前記ハンガー
ピンとパッドスプリングとピンクリップとを弾持したこ
とにより、これらハンガーピンとパッドスプリングとピ
ンクリップはディスク軸方向の移動が規制されるので、
悪路やコーナリング走行によって、これらハンガーピン
やパッドスプリング，ピンクリップに、耳障りなガタ付
き音や打音を発生することがなく、レースやダート走行
での激しい使用でも、ハンガーピンやパッドスプリング
の損耗や損傷を有効に防止することができ、また部品点
数を増加する必要がないので、経済性にも優れている。

【００２６】更に、ピンクリップとパッドスプリングの
双方の係合部を、キャリパボディの通孔の内部で弾性係
合させるので、飛石や積雪にも係合状態を保持できて、
ディスク軸方向の移動規制を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示すディスクブレーキの一
部断面平面図

【図２】図１の正面図

【図３】図２のIII −III 断面図

【図４】図３のIV−IV断面図

【図５】図１のＶ−Ｖ断面図

【図６】本考案の一実施例に用いたハンガーピンとパッ
ドスプリングとピンクリップの組付け状態を示す斜視図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ ２…ディスクロータ ３…キャリパブラケット ４…スライドピン ５…キャリパボディ ５ａ…キャリパボディ５の作用部側ピース ５ｂ…キャリパボディ５の反作用部側ピース ５ｃ…キャリパボディ５の作用部 ５ｄ…キャリパボディ５のブリッジ部 ５ｅ…キャリパボディ５の反作用部 ５ｇ…キャリパボディ５の天井開口部 ５ｊ…キャリパボディ５のボス部 ５ｋ…ボス部５ｊに形成された通孔 ５ｍ…ハンガーピン１１が挿通されるピン挿通孔 ５ｎ…反作用部５ｅの反ディスクロータ側面 ５ｏ…作用部５ｃの反ディスクロータ側面 ５ｐ…通孔５ｋのハンガーピン突出側の開口縁 ６…摩擦パッド ６ａ…ライニング ６ｂ…裏板 ６ｃ…裏板６ｂのパッド当接片 ６ｄ…裏板６ｂの吊下げ片 ６ｅ…裏板６ｂのピン孔 １１…ハンガーピン １２…パッドスプリング １１ａ…ハンガーピン１１の軸部 １１ｂ…ハンガーピン１１の頭部 １１ｃ…軸部１１ａの先端に穿たれたピン孔 １２ａ…パッドスプリング１２のベース片 １２ｂ…パッドスプリング１２の係止片 １２ｃ…パッドスプリング１２の摘み片 １２ｄ…パッドスプリング１２の立ち上がり片 １２ｅ…パッドスプリング１２の係合部 １２ｆ…係止片１２ｂの先端部 １３…ピンクリップ １３ａ…ピンクリップ１３の係合部 １３ｂ…ピンクリップ１３の端部 １３ｃ…係合部１３ａの突出基部 Ａ…ディスクロータ２の回転方向

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスクロータの両側部に対向配置され
   る摩擦パッドを、キャリパボディにディスクロータの外
   側を跨いでディスク軸方向へ貫通形成された一対のピン
   挿通孔に挿通される２本のハンガーピンにてディスク軸
   方向へ移動可能に吊持し、前記ピン挿通孔から突出する
   ハンガーピンの先端に、線材でなるピンクリップの両端
   部を係合してハンガーピンを抜け止めすると共に、前記
   摩擦パッドを、その外側に配設されたパッドスプリング
   にてディスク中心方向へ弾発する車両用ディスクブレー
   キにおいて、前記ピンクリップと前記パッドスプリング
   とにそれぞれ係合部を突設し、前記キャリパボディには
   通孔を形成して、該通孔の内部で前記ピンクリップとパ
   ッドスプリングの係合部を弾性係合させ、該ピンクリッ
   プの一部を、前記キャリパボディの反ディスクロータ側
   面に圧接して、前記ハンガーピンとパッドスプリングと
   ピンクリップとを弾持したことを特徴とする車両用ディ
   スクブレーキ。