JP2584423B2 - 紫外線吸収剤 - Google Patents

紫外線吸収剤

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、紫外線吸収剤、特に波長320〜400nmの長波
長領域に顕著な吸収を有する紫外線吸収剤に関するもの
である。
〔従来の技術〕
太陽光線に含まれ地上に到達する紫外線は、290〜320
nmの中波長紫外線(いわゆるUV−B)と320〜400nmの長
波長紫外線(いわゆるUV−A)とに大別される。そして
UV−Bについては、皮膚の老化を促進し、しみやそばか
すの発生原因もしくは悪化原因となるなど、人体に対し
て悪影響を及ぼすことが知られており、その防御策が早
くから検討され、実施されている。一方、UV−Aは、UV
−Bほど顕著な有害生理作用がなく、また美しく日焼け
するのに有効であることなどにより、その制御について
は従来あまり関心が持たれていなかった。しかしなが
ら、地表におけるUV−Aの照射量がUV−Bのそれの約15
倍にも達し、それが真皮内に到達することが近年確認さ
れた結果、UV−Aが血管壁や結合組織中の弾性繊維に微
慢性の変化をもたらすとともにUV−Bの生理作用を促進
することが予想されるに至り、UV−Aの防御手段に大き
な関心が持たれるようになった。
紫外線の防御手段としては、紫外線吸収剤の使用が最
も一般的である。紫外線吸収剤は、紫外線領域に特に強
い吸収を有する物質から選ばれ、種々の基材に混入され
て紫外線カットフィルターを形成する。しかしながら、
UV−Aに有効な紫外線吸収剤は従来きわめて少なく、あ
っても合成品であって、化粧料等、皮膚に直接適用する
ものに混入できるような、安全性の確認されたものはほ
とんどなかった。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明の目的は、上述のような現状に鑑み、安全性の
高い天然物からなるUV−A用紫外線吸収剤を提供するこ
とにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者は、マメ科植物・甘草(GLYCYRRHIZAE RADI
X)に関する研究中、甘草のある種のものがUV−A領域
に顕著な吸収を示す物質を含有することを見いだした。
この紫外線吸収物質は、甘草から有機溶媒によって抽出
されるが、その含有量は、多数ある甘草の種、産地、収
穫年度等によって異なり、特に種間変動が著しく、ほと
んど含有しない種もある。本発明者が確認した範囲で
は、高率でこの紫外線吸収物質を含有するのはいわゆる
新彊産甘草(複数種が混在する)であり、その中でも、
中国名で脹果甘草と呼ばれる Glycyrrhiza inflata Bat
al.は、最も含有率が高い。
上記紫外線吸収物質は甘草から有機溶媒で容易に抽出
され、粗抽出物の状態でそのUV−A吸収能を確認するこ
とができる。
本発明は、上記知見に基づき、Glycyrrhiza inflata
Batal.に属する甘草の有機溶媒抽出物であって波長320
〜400nmのUV−A領域に吸収極大点を有するものよりな
る紫外線吸収剤を提供するものである。
本発明の紫外線吸収剤の上記有効成分を甘草より得る
方法についてさらに詳しく説明する。
原料の甘草としては、高率で有効成分を含有すること
が確実な Glycyrrhiza inflata Batal.を用いる。
甘草中の紫外線吸収物質は水に溶けないので、抽出用
の甘草は、甘草の水(もしくは含水有機溶媒)抽出残渣
(たとえば甘草からグリチルリチンを抽出した残渣)で
あっても差し支えない。有効成分抽出用有機溶媒の例と
しては、メタノール、エタノール等の低級脂肪族アルコ
ール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケ
トン;ジオキサン、エチルエーテル等の低級脂肪族エー
テル;石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、
トルエン、ベンゼン等の揮発性炭化水素;塩化メチレ
ン、クロロホルムなど炭素原子数1〜4のハロゲン化炭
化水素;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチ
ルなど炭素原子数3〜7のエステル;およびこれらの溶
媒の2種以上の混合物がある。これらの溶媒により甘草
から有効成分を抽出するには、被処理原料を約3〜5倍
量の抽出溶媒に浸漬して還流下に加熱するか、約5〜10
倍量の抽出溶媒に常温で浸漬すればよい。得られる抽出
液から溶媒を留去して得られる抽出物は、特有の臭気を
有する茶褐色の固体である。この抽出物は、多くの場合
そのままで紫外線吸収剤として利用することができる
が、必要ならば、その効力に影響がない範囲で、脱臭、
脱色等の精製処理を施してから用いてもよい。
本発明の紫外線吸収剤の使用法は特に制限されるもの
ではないが、例えば化粧水、クリーム、乳液、パックな
ど、各種皮膚用化粧料に含有させる場合は、通常0.05%
〜1%の範囲で、必要に応じて溶解用基剤または助剤
(たとえばアルコール、高級脂肪族、モノグリセリド等
の乳化剤、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリ
コール、油脂等)とともに混入すればよい。また、他の
UV−A吸収剤やUV−B吸収剤と併用してもよい。
〔作用・効果〕
本発明の紫外線吸収剤は、前述のように従来適当なも
のが少なかったUV−A領域に有効なものであり、しかも
早くから医薬として使われて安全性が確認されている甘
草から得られるものであるから、UV−A遮断能を有する
化粧料等の製造原料としてきわめて有利なものである。
〔実施例〕
以下、実施例を示して本発明を説明する。なお、各例
において用いた甘草は、Glycyrrhiza inflata Batal.を
約70%含有する新彊産甘草である。
実施例1 甘草根粉砕物1kgを5のエチルエーテルとともに2
時間還流下に加熱してエチルアルコール可溶成分を抽出
した。抽出液を分離した抽出残渣について同様の操作を
繰り返し、合計9の抽出液を得た。この抽出液の溶媒
を留去し、さらに減圧乾燥して、抽出物30gを得た。こ
れを紫外線吸収剤Aとする。
実施例2 甘草根粉砕物2kgを10の酢酸エチルに常温で5時間
浸漬して、酢酸エチル可溶成分を抽出した。抽出液を分
離した抽出残渣について同様の操作を繰り返し、合計18
の抽出液を得た。この抽出液の用媒を留去し、さらに
減圧乾燥して、抽出物101gを得た。これを紫外線吸収剤
Bとする。
実施例3 n−ヘキサン5部およびアセトン2部からなる混合溶
媒10と甘草根粉砕物1kgを2時間還流下に加熱して、
溶媒可溶成分を抽出した。抽出液を分離した抽出残渣に
ついて同様の操作を繰り返し、合計19の抽出液を得
た。この抽出液の溶媒を留去し、さらに減圧乾燥して、
抽出物26gを得た。これを紫外線吸収剤Cとする。
比較例1 甘草を Glycyrrhiza glabra L.に変えたほかは実施例
1と同様にして、抽出物33gを得た。
比較例2 甘草を Glycyrrhiza uralensis に変えたほかは実施
例1と同様にして、抽出物37gを得た。
試験例 紫外線吸収剤A〜Cをエタノールに溶解して濃度80pp
mの溶液とし、分光光度計により、エタノールを対照液
として220〜440nmの吸光度を測定した。その結果は図1
のとおりで、290〜320nmのUV−B域の吸収とともに320
〜400nmのUV−A域に強い吸収を有するものであった。
一方、同様にして測定した比較例1,2の抽出物の紫外
線吸収曲線は、図2に示したように、UV−A領域に顕著
な吸収を示さず、長波長紫外線吸収剤とはなり得ないも
のであった。
使用例 ステアリン酸 15.0% セタノール 1.0 紫外線吸収剤B 0.5 UV−B吸収剤(市販品) 0.5 プロピレングリコール 3.0 グリセリン 5.0 水酸化ナトリウム 0.7 殺菌・防腐剤 適量 精製水 74.0 香料 0.3 上記を82℃に、を80℃に、それぞれ加熱溶解し、
撹拌しながらをに徐々に加えて乳化を行う。その後
50℃にてを添加し、30℃まで冷却して容器に充填す
る。
以上により、UV−A、UV−B、両域にわたって吸収能
を有し、従来のものよりも効果の優れた日焼け防止クリ
ームを得た。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明実施例製品の紫外線吸収曲線である。 図2は、比較例1,2の抽出物の紫外線吸収曲線である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Glycyrrhiza inflata Batal.に属する甘草
    の有機溶媒抽出物であって波長320〜400nmの長波長紫外
    線領域に吸収極大点を有するものよりなる紫外線吸収
    剤。
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