JP2580728B2 - 侵食防止用の人工堤 - Google Patents

侵食防止用の人工堤

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JP2580728B2 JP63177048A JP17704888A JP2580728B2 JP 2580728 B2 JP2580728 B2 JP 2580728B2 JP 63177048 A JP63177048 A JP 63177048A JP 17704888 A JP17704888 A JP 17704888A JP 2580728 B2 JP2580728 B2 JP 2580728B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、沿岸に沿って海域に設置される人工堤、特
に海浜変形の小さい離岸堤等として有効な侵食防止用の
人工堤に関するものである。
[従来の技術] わが国の砂浜海岸は、河川の改修工事、分水工事や、
港湾の突堤工事などが行われ、海岸部への土砂供給が大
幅に減少した等の理由により侵食が著しくなり、現在、
離岸堤、突堤等によって、侵食を食い止める方策がとら
れている。
また、新しい海岸防護工法として、海岸を線的でなく
面的な構造物で防護するいわゆる面的防護工法がある。
これは、第10図の如く、比較的海底地形変化の少ない沖
合に幅広潜堤110を設け、来襲する波浪を、この潜堤110
により減衰させ、その後の波浪のエネルギを海底に沿っ
て徐々に減衰させる。また、上記潜堤を乗り越えて入り
込んだ波による流れにより沿岸方向に砂が運ばれるのを
防ぐため、現在の汀線111より沖合方向に突出させて突
堤112を設ける。この幅広潜堤と突堤の組合わせにより
面的に侵食対策を行う方法を面的防護工法というが、幅
広潜堤は消波堤の例である。
[発明が解決しようとする課題] しかし、離岸堤として従来使用されている海岸侵食防
止用の人工堤は、普通には波の透過率の極めて小さいい
わゆる防波堤のみから成るか、又は、ある割合で波の透
過を許すいわゆる消波堤のみから成る。即ち、沿岸方向
に見て、これら防波堤或いは消波堤の波の透過率は一定
となっている。
この様な防波堤又は消波堤からなる人工堤を、例えば
第9図のように離岸堤101として海域に設置すると、こ
の人工堤の端部で波の回折が発生し、第9図に示すよう
な比較的強い海水流106を発生させる。107はその波峰を
示す。この離岸流のため、離岸堤101の背面の海浜に図
のように侵食と堆積(トンボロと称する)108が生じ、
点線で示す従前の汀線102が実線109で示すごとく変形し
て来て、極端な場合には、このトンボロ108が離岸堤と
繋がってしまう。
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたもの
で、端部での波の回折を抑え、汀線の変形を減少させ得
る侵食防止用の人工堤を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明の侵食防止用の人工堤は、防波堤又は消波堤か
ら成る本体堤と、その両端又は片端に連続的に延在させ
た1又は2以上の消波堤から成る緩衝堤とを備え、緩衝
堤の各消波堤の波の透過率を、隣り合う本体堤に対し又
は本体堤側に位置する消波堤に対し大きくした構成のも
のである。
[作用] 本体堤の両端に本体堤より波の透過率の大きい構造の
緩衝堤を設置しているため、緩衝堤で波の回折が低減で
き、人工堤に背後から回り込む海水流は、緩衝堤が無い
場合に比べ少なくなる。このため、人工堤の背面の海浜
に生じて来る侵食とトンボロの程度が小さくなる、汀線
の変化は従来の離岸堤等に比して小さくなる。
[実施例] 以下、本発明を図示の実施例について説明する。
第1図において、1は海岸侵食防止用人工堤として海
域に設置した離岸堤であり、海浜の変形前の汀線2から
適当な距離だけ離れた所に、沿岸方向に沿って長細く設
けてある。離岸堤1は、防波堤又は消波堤から成る本体
堤3と、その両側に連続的に設けた緩衝堤4、5とから
構成されている。緩衝堤4、5は1又は2以上の消波堤
から成り、その消波堤の波の透過率KTNは、本体堤3を
構成している防波堤又は消波堤の透過率KTOよりも大き
くなっている。
このように、本体堤3の端部にそれより波の透過率の
大きい緩衝堤4,5を設けた構造の離岸堤1を設置する
と、第1図のように、離岸堤1の端部で波の回折を低減
できる。従って、離岸堤1に背後から回り込む海水流6
は、第1図に1本線で示すように、緩衝堤1が無い場合
に比べ少なくなる。このため、離岸堤1の背面の海浜に
生じて来るトンボロ8の程度は、第9図の場合に比べ小
さくなり、変形後の汀線9は実線で示すように、従前の
汀線2に対しての変形が小さくなる。
第2図は、本体堤3の一端側の緩衝堤4を透過率が一
定の1つの消波堤41で、他端側の緩衝堤5を、透過率が
一定でしかし互いに透過率が異なる2つの消波堤51,52
で構成した例である。本体堤3は、これらの消波堤41,5
1,52よりも透過率の小さい防波堤又は消波堤で構成され
る。このように、緩衝堤4,5を構成する消波堤の数を1
以上の任意の数Nとして増加した場合にも、汀線2の変
形の程度を小さくする海岸侵食防止作用が得られる。
第2図において、lは本体堤3に接続する緩衝堤4,5
の長さ(堤長)であり、この堤長lは、あまり短くては
海岸侵食防止効果がない。侵食を著しく発生させる波の
波長をLWとすると、堤長lは波長LWの半分以上とするこ
と、即ち、l>0.5LWが望ましい。
また、緩衝堤4,5の透過率KTNが本体堤3に対しあまり
変化がない場合も海岸侵食防止効果が薄い。従って、緩
衝堤4,5の全体の透過率は本体堤3に比べ比較的大きく
なるように定め、また個々の消波堤41,51,52の透過率K
TNも、隣り合う本体堤3に対し又は本体堤3側に位置す
る消波堤に対し、段階的に大きくなるように定めるのが
よい。但し、一般に、透過率KTNの消波堤の消波率は
(1−KTN)で表わされ、従って、消波率で考えた場
合、より良い海岸侵食防止効果を得るには、当該消波堤
41,51,52の消波率(1−KTN)が、隣り合う本体堤3に
対し又は本体堤3側に位置する消波堤51に対し、半分程
度になるように定めるのがよい。例えば、消波堤41,51
の消波率は本体堤の消波率の半分、消波堤52の消波率は
更にその半分の消波率となるように定めるのが好まし
い。
もっとも、緩衝堤4,5を構成する各消波堤41,51,52の
透過率KTNは、隣り合う本体堤3に対し又は本体堤3側
に位置する消波堤に対し、段階的に大きくなるように定
めるとは言っても、巨視的にみてその様になっていれば
良いのであって、完全に連続的に透過率が変化している
場合や、若干透過率の大小関係が入り乱れている場合を
も含む。この様な形態でも、汀線の変形を低減すること
ができるからである。
具体的に如何なる構造の防波堤或いは消波堤を用い
て、本体堤3又は緩衝堤4,5を構築するかは、自由であ
る。本体堤3を構築することのできる防波堤の種類は、
既に多数知られている。また、本体堤3又は緩衝堤4,5
を構築することのできる消波堤の種類についても、透過
率が可変のものを含めて既に多数知られており、それら
の任意の1つを単独に、又は、それらの同一種類の或い
は互いに異なる種類の消波堤を任意の数だけ組み合わせ
て使用することができる。
公知の防波堤の例としては、傾斜堤(捨石式)、直立
堤(ブロック式)、混成堤(ケーソン式)、消波ブロッ
ク被覆堤(ケーソン式)、鋼管防波堤などがある。
一方、公知の消波堤としては、第3図〜第7図に示す
ものがある。
(1)スリット式消波堤 堤体に透過孔を円筒形の孔或いはスリットの形で多数
あけ、波力の吸収を図る消波堤である。これには、例え
ば、透過式ケーソン部10の反射と開口を海水が通過する
ときの乱れにより消波する混成堤型(第3図(a))
や、杭11とブロック12で施工し乱れと反射を利用した消
波をなすスリット型(第3図(b))や、杭11と透過水
平板付ケーソン13で施工し乱れと反射を利用して消波す
る透過水平板付スリット型(第3図(c))や、鋼板セ
ル14にスリットを設けて乱れと反射を利用した消波をな
す鋼板セル型(第3図(d))などがある。
(2)潜堤 堤体を海水中に沈めて海底の高さに変化を与え、波浪
の減衰を図る消波堤である。これには、例えば、異型ブ
ロック15を利用した消波ブロック型(第4図(a))
や、可撓性膜16で施工し波の位相のずれを利用して消波
するフレキシブルマウンド型(第4図(b))や、斜板
19による破波を利用して消波をなす斜板型(第4図
(c))や、半円形ケーソン20を利用した半円形ケーソ
ン型(第4図(d))などがある。
(3)斜板堤 第5図に示すように、斜板21を海面上から表・中層に
かけて配設し、表・中層の波を遮蔽し、斜板21の下部を
通り抜け可能とし、波浪を減衰させるものである。
(4)浮消波堤 第6図に示すように、係留索23により海面に浮置され
た消波体22によって波を消す消波堤である。
(5)カーテン消波堤 第7図に示すように、海底から離れて、水面付近に杭
24等で固定された消波壁体25を設け、その消波壁体によ
り入射波の波高を低減するものである。
第8図は、第4図(a)に示した潜堤の波高伝達率を
示したものである。Htは伝達波高,H0は換算沖波波高,L0
は沖波波高,dは堤上水深、lは平均堤幅である。第8図
から分かるように、堤上水深d、平均堤幅lにより潜堤
の波高伝達率を変えることができる。このことは、消波
率の異なる同一種類の潜堤のみで、本体堤3や緩衝堤4,
5を構築できることを示している。他の構造の人工消波
堤についても同様であり、例えば、射板堤についてはそ
の傾斜角を変えることにより、スリット型についてはそ
のスリットの大きさを変えることにより、透過率を変え
て、消波率を任意に設定することができる。
上記実施例では、海岸侵食防止用の離岸堤について説
明したが、本人工堤はこれに限定されるものではなく、
例えば港湾の侵食防止用の防波堤としても使用でき、同
様の効果が得られることが明らかである。
[発明の効果] 以上述べたように、本発明の侵食防止用の人工堤は、
本体堤の端部に波の透過率の大きい構造の緩衝堤を備え
ており、これにより波の回折を抑え、海水流を小さくす
ることができるため、緩衝堤のない従来の離岸堤よりも
海岸侵食をより確実に防止し、海浜変形を小さくするこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例における離岸堤の構成及び配
置を示す概略図、第2図は本発明の他の実施例における
離岸堤の構成及び配置を示す概略図、第3図の(a)
(b)(c)(d)はそれぞれスリット式消波堤の構成
を例示した図、第4図の(a)(b)(c)(d)はそ
れぞれ潜堤の構成を例示した図、第5図は斜板堤を例示
した図、第6図は浮消波堤を例示した図、第7図はカー
テン消波堤を例示した図、第8図は第4図(a)に示し
た潜堤の波高伝達率を示した図、第9図は従来の離岸堤
の作用を示す図、第10図は従来の面的離岸堤の概念図で
ある。 図中、1は離岸堤、2は変形前の汀線、3は本体堤、4,
5は緩衝堤、6は海水流、7は波峰、8はトンボロを示
す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】防波堤又は消波堤から成る本体堤と、その
    両端又は片端に連続的に延在させた1又は2以上の消波
    堤から成る緩衝堤とを備え、緩衝堤の各消波堤の波の透
    過率を、隣り合う本体堤に対し又は本体堤側に位置する
    消波堤に対し大きくしたことを特徴とする侵食防止用の
    人工堤。
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