JP2579936B2 - 過給機付エンジンの空燃比制御装置 - Google Patents

過給機付エンジンの空燃比制御装置

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、所定の運転領域では理論空燃比よりリーン
な空燃比で運転される過給機付エンジンの空燃比制御装
置に関するものである。
[従来技術] 混合気の空燃比(A/F)をリーンにすれば、出力は低
下するが(同一スロットル開度で)、燃料が十分な空気
によって完全燃焼されるので燃費性が向上し、また燃焼
温度が抑制されるのでNOx(窒素酸化物)の発生量が低
減されるということはよく知られている。
そこで、それ程高出力が要求されない通常の実用運転
領域では空燃比を理論空燃比(14.7)よりリーンとなる
ように制御して(例えば、A/F=17〜24)、燃費性の向
上とNOx発生量の低減とを図った、いわゆるリーンバー
ンエンジンが提案されている(例えば、特開昭57−2101
37号公報参照)。
ところが、実用運転領域においても比較的高トルクが
要求される運転状態では、空燃比をリーンにしてリーン
バーンを行なうと出力不足となるので、第7図に示すよ
うに、実用運転領域内において、スロットル開度が所定
値TVθ以上となったときには、空燃比をリッチ側(例
えば、A/F=14.7)に移行させるのが一般的である。と
ころが、このようなエンジンではリーンバーン時には同
一トルクを得るためのスロットル開度が大きくなるた
め、空燃比をリッチにして運転する(リッチバーン)運
転領域のスロットル開度の幅(TVθ〜WOT)は小さく
なり、したがって、スロットル開度がTVθ以上の運転
領域ではスロットル開度の増加に対して急激なトルク増
加が生じることになる。このため、スロットル弁が開か
れTVθに達したときには、折線G1上の点Pで示すよう
なトルク急変点が生じ、トルクショックが発生するとい
った問題があった。
このトルクショックの発生を防止するために、例え
ば、リーンバーンからリッチバーンへの空燃比の移行を
緩慢にする方法が考えられるが、第8図に示すように、
NOx発生量は空燃比A/F=15〜16の時点で最大となるた
め、例えば、スロットル開度がTVθ〜TVθの区間で
リーンバーン(L1)からリッチバーン(L2)へ空燃比の
移行を緩慢に行なうと、空燃比がA/F=15〜16のゾーン
に長時間置かれ、第7図の折線G1上のRで示す部分でNO
x発生量が増大するといった問題があった。
[発明の目的] 本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであ
って、実用運転領域において低出力時には空燃比をリー
ンとして燃費性の向上とNOx発生量の低減とが図られ、
一方、実用運転域において比較的高出力が要求される場
合には十分な出力が得られるとともに、トルクショック
を起こさず、かつ、燃費性が良くNOx発生量の増加を生
じさせないリーンバーンエンジンの空燃比制御装置を提
供することを目的とする。
[発明の構成] 上記の目的を達するべくなされた本発明は、吸気を過
給する過給機と、エンジンの運転状態を検出する運転状
態検出手段と、空燃比を任意の設定値に調節する空燃調
節手段とを備えた過給機付エンジンの空燃比制御装置に
おいて、上記運転状態検出手段によってエンジンが定常
運転状態にあることが検出されたときには空燃比が理論
空燃比よりリーン側の所定値となるようにし、一方出力
要求運転状態にあることが検出されたときには空燃比が
上記リーン側の所定値よりリッチ側の所定値となるよう
に上記空燃比調節手段を制御するとともに、上記定常運
転状態における低出力領域では上記過給機に過給を停止
させる一方、上記定常運転状態における高出力領域と上
記出力要求運転状態とでは上記過給機に過給を行なわせ
る制御手段を設けたことを特徴とするものである。
[発明の効果] 本発明によれば、運転状態検出手段によって検出され
るエンジンの運転状態が実用運転領域(定常運転領域)
にありかつスロットル開度が所定開度以下となる比較的
低出力運転時には、制御手段によって、吸気の過給が行
なわれず、かつ空燃比が空燃比調節手段を介して理論空
燃比(14.7)よりはリーンな所定値となるように制御さ
れるので、従来のリーンバーンエンジンと同様燃費性の
向上とNOx発生量の低減が図れる。一方、エンジンの運
転状態が実用運転領域にありかつスロットル開度が上記
所定開度より大きくなる比較的高出力運転時には、制御
手段によって、吸気の過給が行なわれるとともに、空燃
比が上記リーンバーン時と同様のリーンな値となるよう
に制御されるので、過給によって実用運転領域で要求さ
れる出力が十分得られるとともに、リーンバーンで運転
しているので、燃費性が向上するとともにNOx発生量を
低減することができる。
また、実用運転領域ではすべてリーンバーン運転が行
なわれるので、従来のリーンバーンエンジンにおいて生
じるような空燃比移行時のトルクショックが発生しな
い。
さらに、実用運転域より高負荷域では過給を行いつつ
空燃比が上記リーン側の空燃比よりリッチとなるように
制御するので強力な出力が得られる。
[実施例] 以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
<第一実施例> 第1図に示すように、エンジン1は、吸気弁2が開か
れたときに吸気ポート3から吸気(混合気)を燃焼室4
内に吸入し、燃焼室4内の吸気(混合気)をピストン5
で圧縮して点火プラグ6で着火燃焼させ、排気弁7が開
かれたときには燃焼室4内の燃焼ガスを排気ポート8か
ら排気通路9へ排出する一連の行程が連続的に繰り返さ
れ、これに伴って生じるピストン5の往復運動がコネク
チングロッド11を介してクランク軸(図示していない)
の回動運動に変えられ出力として取り出される基本構成
となっている。
そして、燃焼室4に吸気を供給するために、吸気ポー
ト3と連通して吸気通路12が設けられている。この吸気
通路12には上流から順に、吸気中の浮遊塵を除去するエ
アクリーナ13と、時々刻々の吸気量を検出するエアフロ
ーメータ14と、エンジン1の出力軸(図示していない)
によって駆動されるベーン式の機械式過給機15と、アク
セルペダル(図示していない)の踏み込みに応じて開閉
されるスロットル弁16と、吸気弁2が開かれたときに吸
気ポート3近傍に発生する負の圧力波が吸気通路12内を
上流に向って伝播してきたときにこれを正の圧力波に反
転させて吸気行程終期に燃焼室4内に到達させ、慣性効
果による圧力波過給を行なわせる容積部17と、吸気中に
燃料を噴射するインジェクタ18とが介設されている。
さらに、吸気通路12には機械式過給機15をバイパスし
て機械式過給機15上流に位置する分岐部21と機械式過給
機15下流に位置する集合部22とを連通するバイパス吸気
通路23が設けられている。このバイパス吸気通路23には
これを開閉するバタフライ式の制御弁24が介設され、こ
の制御弁24は制御回路25からの信号を受けて、アクチュ
エータ26によってリンク機構27を介して開閉されるよう
になっている。
ところで、上記制御回路25は、エアフローメータ14に
よって検出される吸気量、スロットル弁開度センサ31に
よって検出されるスロットル開度、排気通路9に臨設さ
れたO2センサ32によって検出されるO2濃度(空燃比が算
出できる)、機械式過給機15のやや下流となる位置にお
いて吸気通路12に介設された圧力センサ33によって検出
される吸気圧、回転数センサ(図示していない)によっ
て検出されるエンジン回転数等を制御情報として、空燃
比制御、過給圧制御をはじめ所定の制御を行なうように
なっているが、以下、制御回路25による制御方法につい
て説明する。
制御回路25によって過給圧と空燃比の制御が行なわ
れ、運転状態に応じて必要な出力を確保しつつ、燃費性
の向上とNOx発生量の低減とが図られるが、その基礎と
なるエンジン1の平均有効圧力Pe(すなわち、エンジン
出力)の吸気圧力P(過給時な過給圧)と空燃比に対す
る特性を夫々第3図と第4図に示す。第3図に示すよう
に空燃比を一定にした場合、平均有効圧力Peは吸気圧力
Pの増加1次関数として表わされ、空燃比が異なるそれ
ぞれの1次関数の傾きはほぼ等しくなっている。この傾
きは、例えば空燃比A/F=18のときにはΔPe/ΔP=1.17
(kg/cm2)/(100mmHg)となる。これに対して、吸気
圧力を一定とした場合は、第4図に示すように、平均有
効圧力Peは空燃比(A/F)のリーン化に伴って急速に低
下する。制御プログラムはこのような出力特性に鑑みて
作成されている。
制御回路25によって過給圧と空燃比とを制御する場合
のスロットル開度と吸気圧力との関係は第5図(a)の
直線C1のとおりである。また、吸気圧力が高いほどノッ
キングが起こりやすくなるので、点火時期は第5図
(b)の直線C2で示すように、吸気圧力が高いほど遅角
するように制御される。スロットル開度TVθが実用運転
領域内で所定開度TVθ以下の場合は、出力はそれほど
必要とされないので機械式過給機15を作動させず過給は
行なわない。このとき、制御弁24はアクチュエータ26に
よって全開され、吸気はバイパス吸気通路23を通して供
給される。このような非過給領域では、燃費性を向上さ
せるために空燃比(A/F)を理論空燃比14.7よりリーン
(例えば、A/F=18)にしてリーンバーン運転が行なわ
れる。燃費性の空燃比に対する特性は、例えばWOT時
(過給)には第6図(a)中の曲線G1で示すように空燃
比がリーン化すると大幅に向上する。また、燃焼温度の
空燃比に対する特性は第6図(a)中の折線G2で示すよ
うに空燃比がリーン化すると大幅に低くなるので上記の
リーンバーン時のNOx発生量は非常に少なくなる。空燃
比の制御は、エアフローメータ14によって検出される吸
気量に応じてインジェクタ18の燃料噴射パルス時間を変
えることにより行なわれる。このようにして、実用運転
領域の非過給運転時には、リーンバーンが行なわれ、従
来のリーンバーンエンジンと同様、燃費性が向上し、NO
x発生量が低減される。
一方、スロットル開度が上記のTVθを超えた場合に
は実用運転域ではあるが比較的高出力が要求されるの
で、機械式過給機15が作動され過給が行なわれる。そし
て、過給圧は制御弁24を開閉してバイパス吸気通路23内
を集合部22側から分岐部21側へ還流する過給気の還流量
を調節することにより、目標値と一致するようにフィー
ドバック制御される。過給圧の目標値は基本的にはスロ
ットル開度に応じて徐々に高められるように設定されて
いるが、後で詳しく説明するように加速時には、目標値
は高めに補正されるようになっている。
そして、スロットル開度がTVθを超えて過給が行な
われる場合、過給圧(吸気圧力)が所定値P1(第5図
(c)参照)以下の運転領域では空燃比を非過給時と同
様にリーンにして運転を行なう。これは、過給圧がP1
下の運転領域は実用運転域に該当し、それ程高出力が要
求されないので、過給を行いつつリーンバーンを行なう
ことにより、必要な出力を確保しつつ燃費性の向上とNO
x発生量の低減を図ることができるからである。
ところが、上記のようなリーンバーン過給時でも、エ
ンジン1が加速状態にあるときには高出力が要求される
ので、エンジン1の加速状態に応じて補正制御するよう
にしている。リーンバーン過給時に緩加速状態に入った
ときには、空燃比はリーン状態を保持し、所定時間過給
圧を高め出力を高める。また、通常の加速状態に入った
ときには、過給圧は変えず空燃比をほぼ理論空燃比に移
行する。さらに、急加速状態に入ったときには過給圧を
高めるとともに空燃比をリッチ側に移行する。
なお、過給時にはノッキングが起こりやすくなるが、
過給時のノッキング限界の点火時期と平均有効圧力の空
燃比に対する特性を、夫々第6図(b)と第6図(c)
とに示す。これらの図に示すように、ノッキング限界の
平均有効圧力は空燃比がリーンとなるほど低くなるの
で、吸気冷却装置を設けるなどしてノッキング対策を行
うことが好ましい。
さらに、スロットル弁16が開かれ過給圧が上記所定値
P1(第5図(c)参照)を超えたときには、エンジン1
は例えば登板時あるいは急加速時のような高出力を必要
とする運転状態にあり、リーンバーンを行なったのでは
必要な出力が得られないので、過給圧に応じて空燃比を
リッチ側に移行させて十分な出力が得られるような制御
を行なう。例えば、吸気圧力PがP1より高い所定の圧力
P2(第5図(c)参照)になったときには空燃比A/F=1
4.7(理論空燃比)とし、さらに吸気圧力Pが最大過給
圧Pmaxになったときには空燃比A/F=13となるように空
燃比の制御目標値を設定する。
以上のような制御が行なわれた場合、平均有効圧力Pe
(エンジン出力)の吸気圧力に対する特性は第5図
(c)の折線C3のようになる。第5図(a)の直線C1
示すようにスロットル開度TVθと吸気圧力とはリニアー
な関係にあるので、エンジン出力のスロットル開度に対
する特性もまた折線C3と同様の傾向をもつ。
<第2実施例> 第2図に、排気ターボ式過給機を備えたエンジンにつ
いて、本発明の第2実施例を示す。ただし、第1図に示
す第1実施例と同一の部材については夫々同一番号を付
し、その説明は省略する。
第2図に示すように、第2実施例では、排気ターボ式
過給機40を構成する、排気通路9に介設されたタービン
40aによってシャフト40cを介して駆動されるブロワー40
bによって過給が行なわれる。そして、非過給時にはバ
イパス吸気通路23の集合部22近傍に介設された開閉弁41
が開かれ、吸気はバイパス吸気通路23を通して供給され
るようになっている。
一方、タービン40aをバイパスして排気通路9のター
ビン40aの上流と下流とを連通するバイパス排気通路42
が設けられ、このバイパス排気通路24にはタービン40a
に流入する排気ガス量を調節するためのウエストゲート
バルブ43が介設されている。このウエストゲートバルブ
43に対しては、正圧応動式のダイヤフラムよりなるアク
チュエータ44が設けられ、制御回路25からの信号を受け
て、ソレノイド弁45の開度を調節することによって、正
圧導入通路46を通してアクチュエータ44に導入される圧
力を調節することによりウエストゲートバルブ43の開度
が調節されるようになっている。
なお、第2実施例の制御方法及び作用は第1実施例と
同様であるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例を示す機械式過給機を備え
たエンジンのシステム構成図である。 第2図は本発明の第2実施例を示す排気ターボ式過給機
を備えたエンジンのシステム構成図である。 第3図は平均有効圧力の吸気圧力に対する特性の一例を
示す図である。 第4図は平均有効圧力の空燃比(A/F)に対する特性の
一例を示す図である。 第5図(a),(b),(c)は、夫々本発明の実施例
におけるスロットル開度と点火時期と平均有効圧力の吸
気圧力に対する特性を示す図である。 第6図(a)は本発明の実施例における燃費性及び燃焼
ガス温度の空燃比(A/F)に対する特性を示す図であ
り、第6図(b),(c)は、夫々本発明の実施例にお
けるノッキング限界点火時期とノック限界平均有効圧力
の空燃比(A/F)に対する特性を示す図である。 第7図は、従来のリーンバーンエンジンにおけるトルク
のスロットル開度に対する特性の一例を示す図である。 第8図はNOx発生量の空燃比(A/F)に対する特性の一例
を示す図である。 1……エンジン、3……吸気ポート、8……排気ポー
ト、12……吸気通路、15……機械式過給機、16……スロ
ットル弁、18……インジェクタ、23……バイパス吸気通
路、24……制御弁、25……制御回路、40……排気ターボ
式過給機、42……バイパス排気通路、43……ウエストゲ
ートバルブ。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】吸気を過給する過給機と、エンジンの運転
    状態を検出する運転状態検出手段と、空燃比を任意の設
    定値に調節する空燃比調節手段とを備えた過給機付エン
    ジンの空燃比制御装置において、 上記運転状態検出手段によってエンジンが定常運転状態
    にあることが検出されたときには空燃比が理論空燃比よ
    りリーン側の所定値となるようにし、一方出力要求運転
    状態にあることが検出されたときには空燃比が上記リー
    ン側の所定値よりリッチ側の所定値となるように上記空
    燃比調節手段を制御するとともに、上記定常運転状態に
    おける低出力領域では上記過給機に過給を停止させる一
    方、上記定常運転状態における高出力領域と上記出力要
    求運転状態とでは上記過給機に過給を行なわせる制御手
    段を設けたことを特徴とする過給機付エンジンの空燃比
    制御装置。
JP62082004A 1987-04-02 1987-04-02 過給機付エンジンの空燃比制御装置 Expired - Lifetime JP2579936B2 (ja)

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