JP2579322B2 - 炭化チタン/炭化珪素ウイスカー/ジルコニア系複合焼結体及びその製造方法 - Google Patents

炭化チタン/炭化珪素ウイスカー/ジルコニア系複合焼結体及びその製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は高硬度、高靭性且つ高強度を有し、工具類及
び耐摩耗部品等に応用される炭化チタンマトリックス/
炭化珪素ウィスカー/ジルコニア系複合焼結体及びその
製造方法に関するものである。
(従来技術と問題点) 炭化チタン焼結体は電気伝導性、高硬度、耐熱性(真
空中又は還元雰囲気中)等、構造用セラミックスとして
の利点を多く有しているが、耐酸化性、破壊靭性の低さ
により実用化されるまでに到っていない。そこで炭化チ
タンの長所のみを生かし短所を克服するためには次の3
点に着目する必要がある。
(1)耐酸化性を向上させるに有効な元素を添加する。
(2)炭化チタン系のセラミックスに対して耐酸化性を
向上させる適当な添加元素が見出されない場合、炭化チ
タン系のセラミックスを応用する製品分野は酸化が問題
にならない分野に限定すること。
(3)破壊靭性を何等かの方法で上げること。
(1)の耐酸化性向上に対して基本的には二つの方法が
ある。先ず第1は、添加元素により炭化チタン自身を耐
酸化性のあるものに変えるという方法、又、第2の方法
として、意識的に表面に緻密な酸化物を形成させ、酸化
が内部に進行することを防止することにより耐酸化性を
持たせるという方法である。しかし、現在までにこのど
ちらに対しても適当な添加元素は見出されてはおらず、
炭化チタン系のセラミックスは耐酸化性の低い材料であ
るという一般的認識がある。
このような点に着目すると、炭化チタン系セラミック
スは引き抜きダイス、ドリル、カッター刃等酸化性があ
まり問題にならない工具類及び耐摩耗部品への応用が最
も適した応用分野であると考えられる。しかし、先に述
べたように炭化チタン焼結体は破壊靭性及び強度が低く
工具及び耐摩耗部品として使用するためには破壊靭性及
び強度をある水準以上に上げることが鍵であると考えら
れる。ところが現在までに、炭化チタンの破壊靭性を上
げる研究はあまり行われておらず、その手法もいまだ確
立されたものになっていない。又、炭化チタンは共有結
合性の強い物質であるため難焼結性である。このため、
焼成時に大きなポアーができやすく、このことが強度を
下げる原因となっている。
(目的) 本発明は炭化チタンマトリックス中に炭素珪素ウィス
カー及び部分安定化ジルコニア又はジルコニアを分散さ
せることにより、高硬度、高靭性且つ高強度の性質を有
しセラミックス工具への応用可能な炭化チタン/炭化珪
素ウィスカー/ジルコニア系複合焼結体及びその製造方
法を提供することを目的とする。
(問題点を解決するための手段) 本発明の第1の発明は、炭化珪素ウィスカー3〜45容
積%、ジルコニア又は部分安定化ジルコニア粒子5〜40
容量%、残部が実質的に炭化チタン粒子からなる高硬
度、高靭性且つ高強度の炭化チタン/炭化珪素ウィスカ
ー/ジルコニア系複合焼結体であり、第2の発明は炭化
珪素ウィスカー3〜45容積%、ジルコニア又は部分安定
化ジルコニア粉末5〜40容量%、残部が炭化チタン粉末
からなる原料粉を混練する工程と、混練された原料粉を
成形し成形体とする工程と、該成形体を焼結する工程か
らなる高硬度、高靭性且つ高強度の炭化チタン/炭化珪
素ウィスカー/ジルコニア系複合焼結体の製造方法であ
る。混練する方法として後述するようにウィスカー長さ
が適当で、しかも均一である場合には超音波分散法を用
いることが好ましい。
(作用) 第1の発明について以下説明する。
先ず、本発明の複合焼結体のマトリックスである炭化
チタンについて説明する。マトリックスの炭化チタンは
ビッカース硬度が室温で約3200であり、ダイヤモンド、
ボロン炭化物に次いで硬い物質である。又、良好な電気
伝導性を有しており放電加工も可能である。さらに、真
空中、還元雰囲気中では高温強度が高いことも見逃せな
い炭化チタンの性質である。一方、炭化チタンは非常に
酸化しやすく、800℃程度で既に酸化が始まり、表面に
形成される酸化チタンにより強度は大幅に低下する。
又、炭化チタン焼結体は破壊靭性が非常に低く、小さな
欠陥からもマクロ的な破壊を生じやすい物質である。炭
化チタンを構造用セラミックス材の構成要素と考える
時、その長所(硬度、電気伝導性、等)と短所(耐酸化
性、破壊靭性等)等の差が大きい、つまり長所としては
非常に良いが、短所も非常に大きいという性格を炭化チ
タンは持っている。
炭化チタンの原料粉は近年超硬材質改善用としての需
要が大きくなっているため、その性能は大幅に改善さ
れ、粒径は1μm以下のもなが市販されるようになって
いる。純度は98%程度のものも使用できる。95%以下で
は不純物として混入している酸化物(Al2O3、MgO等)が
焼結温度において液相となり結晶粒界に介在して強度を
極端に下げてしまう。又、炭化チタンの粒径は細かけれ
ば細かい程良い。又、粒径の上限としては5μm以下に
すべきである。5μm以上であると焼結後の炭化チタン
マトリックス結晶粒径も5μm以上になり、マトリック
スの破壊靭性は極端に低下する。更に粒子形状は球形に
近いものを使用すべきである。球形からはずれる程焼結
性が低下するからである。
前述した炭化チタンを構造用セラミックスの実用材料
として使用するため鋭意研究した結果マトリックスであ
る炭化チタンに炭化珪素ウィスカーとジルコニアを複合
化することにより炭化チタンの長所を活かし耐酸化性と
いう問題を除いて短所を補うことができることを見出し
た。
以下、炭化珪素ウィスカー及びジルコニアの作用につ
いて詳細に説明する。
先ず炭化珪素ウィスカーについては、発明者自身によ
って書かれた論文;セラミックス〔窯業協会、Vol.21
(7)、1986.p621〜〕によれば、マトリックスに炭化
珪素ウィスカーを分散させることは、破壊の起源である
クラック面に第1図及び第2図に示すようにクラックデ
ィフレクション及びウィスカー引き抜き効果を生じさせ
ることになり、破壊靭性を大幅に増加させることにな
る。
但し、この場合、マトリックスの線膨張係数(α
がウィスカーの線膨張係数(αSiCウィスカー)より大
きいことが条件である。本発明においてはαTiC8×1
0-6(1/℃)、αSiC5×10-6(1/℃)、 程度であり、 αTiC/ZrOzマトリックス>αSiCウィスカー (1) であるので、この条件は満足されている。
又、焼結温度において、ウィスカー界面とマトリック
スとで化学反応を起こさないことも別の条件であるが、
後述するように、炭化チタン/ジルコニア マトリック
スと炭化珪素ウィスカーは本系の焼結温度である1950℃
近辺でも界面反応は生じない。このように、炭化チタン
/ジルコニア マトリックス/炭化珪素ウィスカーとい
う系はウィスカーによる破壊靭性向上の条件を満足して
いるため、クラックディフレクション・ウィスカー引き
抜きという高靭化機械が生じるはずであり、炭化珪素ウ
ィスカー複合により破壊靭性が大きく増加することが容
易に想像できる。
炭化珪素ウィスカーの破壊靭性に対する作用は以上の
如くである。
次に炭化珪素ウィスカーはひげ状でしかも単結晶であ
ることが必要である。それゆえ、炭化珪素ウィスカーは
ニカロン(炭化珪素の長繊維)のような多結晶炭化珪素
繊維とは区別されなければならない。先ず、炭化珪素に
は六方晶構造を持つα型と立方晶構造を持つβ型がある
が、通常の炭化珪素ウィスカーはαとβの混合体であ
る。しかし、炭化珪素ウィスカーが単結晶であるかぎ
り、αかβかということは炭化珪素ウィスカーの強度自
体にはあまり関係がない。従って炭化珪素ウィスカーで
あるかがり結晶構造はαでもβでもまたその混合体でも
よい。
炭化珪素ウィスカーの直径は5μm以下であることが
必要である。それは焼結後室温まで冷却される過程にお
いて、炭化チタンの方が炭化珪素ウィスカーよりも線膨
張係数が大きいため炭化チタンマトリックス内に引張応
力が発生するのであるが、炭化珪素ウィスカーの径が約
5μm以上ではこの引張応力のために炭化チタンマトリ
ックス内にマイクロクラックが発生するからである。し
かし、あまりにウィスカー径が小さすぎると、この系の
重要な高靭化構造であるウィスカー引き抜き効果(ウィ
スカーの断面の周に比例)が低減し、高靭性化は望めな
い。適切なウィスカー径は1〜2μm程度である。ウィ
スカー長は10〜100μm程度であるべきである。10μm
未満ではアスペクト比(ウィスカー長と径の比)が小さ
すぎ、クラックディフレクションやウィスカー引き抜き
効果が充分に活かされないし、100μmを超えた場合は
ウィスカーのからみ等による欠陥を発生しやすいからで
ある。炭化珪素ウィスカーの複合量は3〜45容量%の範
囲にするべきである。3容量%未満ではウィスカーによ
る高靭化効果が殆どなく、又45容量%以上ではウィスカ
ーによるからみ等のようなウィスカー添加過多による欠
陥発生が非常に大きくなるからである。
次に、部分安定化ジルコニアについて述べる。前述の
論文に述べられているように部分安定化ジルコニアを複
合化することは少なくとも次の四つの効果が考えられ
る。
(1)ジルコニアが炭化チタン結晶粒界の3重点の位置
にすることにより、炭化チタン結晶粒成長を抑制し、結
果として炭化チタンマトリックスの結晶粒微細化効果を
生ずる。
(2)ジルコニアと炭化チタンマトリックスのヤング率
の差により、炭化チタン粒内又は粒界を通過したクラッ
クはジルコニアによる偏向を生じ高靭化を生ずる。
(3)ジルコニアは部分安定化されているため、クラッ
ク応力場により正方晶から単斜晶に相変態を生ずる。所
謂相変態高靭化を生ずる。
(4)部分安定化ジルコニアが炭化チタンの焼結助材と
なり緻密化促進に寄与する。このため低温焼成が可能と
なり微細な組織が得られる。
以上の4点において部分安定化ジルコニアを炭化チタ
ンに複合化することは破壊靭性向上のために非常に有力
な方法である。但し、ここで注意しなければならないこ
とは、部分安定化ジルコニア粉末を炭化チタン粉末と混
合し焼結体を焼成する場合必ず固相焼結でなければなら
ないということである。液相焼結であるとマトリックス
成分とジルコニアが液相を通過して再析出する際、部分
安定化ジルコニアは正方晶の結晶相を維持できず、単斜
晶に相変態してしまい相変態高靭化効果を失うからであ
る。又、液相になってしまうとジルコニアは液相中に吸
収されてしまうため、炭化チタン結晶粒の3重点に位置
し粒成長を抑制するというジルコニアの作用が少なくな
る。現在まで部分安定化ジルコニアが窒化珪素(Si
3N4)や炭化珪素(SiC)への複合化要素となっていない
のは窒化珪素や炭化珪素が液相焼結により緻密化される
ためであると考えられる。それゆえ本発明の系に対して
は緻密化を達成する範囲では固相焼結するためなるべく
低温焼成を心掛けなければならない。
ジルコニアの原料は安定化処理なしのジルコニアが使
用できるし、又イットリア、マグネシア、カルシア等の
安定化ジルコニアも使用できる。但し、安定化処理なし
のジルコニアについては先に述べたジルコニアの効果の
中での相変態高靭化効果は期待できない。純度はいずれ
も98%以上のもの、又粒径はサブミクロンのものを使用
すべきである。純度が98%未満では焼結時に粒界にガラ
ス相が生成されて機械的強度が低下し、粒径がμm単位
以上になると、粒子成長が他のセラミックス粒子との粒
界3重点に止まって粒子成長を制御する効果が弱まり、
又粒子サイズが粗大化することによって部分安定化され
たジルコニアであっても、高温で安定な正方晶相を室温
迄保持させることが困難になってこれが単斜晶相に変態
し尽くし、応力誘起強靭化効果がなくなってしまう。し
かし、ジルコニアの粒径が0.1μm未満に細かくなる
と、安定化し過ぎてクラックの応力場によっても変態が
起こらなくなって、かえって逆効果となる。従って、ジ
ルコニアの平均粒径は0.1〜1.0μmとする。粒度分布は
狭い範囲に鋭いピークを有するのが良く、0.15〜0.5μ
mの間に少なくとも約50%以上が含まれることが好まし
い。配合割合は、ジルコニアが第2相として加えられる
場合は5〜40容積%が好ましい。これが5容積%未満で
は結晶粒微細化効果及び応力誘起強靭化効果が顕著では
なく、これが40容量%を超えるとジルコニア粒子同志が
接触して第2相として作用しなくなるからである。
以上述べたように炭化チタンに炭化珪素ウィスカー及
びジルコニアを複合化することにより破壊靭性を大幅に
改善することができるので炭化チタンマトリックスセラ
ミックス工具の弱点である耐欠損性も大きく改善するこ
とが可能である。一方、耐酸化性の問題であるが、セラ
ミックス工具を考える場合、長時間高温に曝されるよう
な場合であっても、摩耗熱による加熱と空冷という状況
で使われるため、工具温度はある一定温度以上には上が
り得ず、又この温度も極く一部を除いて800℃以上にな
るとは考えられない。よって炭化珪素ウィスカー及びジ
ルコニア強化炭化チタン複合セラミックスはセラミック
ス工具への応用としては非常に有望な材料であると考え
られる。
第2の発明を以下に説明する。
前記した必須成分の他に、炭化チタンは共有結合性の
強い炭化物であり難燃結性であるため、焼結助材を用い
ることは常圧焼結法において複雑形状焼結品を製造する
ためには必要である。
又、ホットプレス法(常圧焼結法+HIP法)において
も焼結助材を用いることは低温焼成を可能にし微細組織
を持つ焼成体の製造を可能にする。炭化チタンに対する
焼結助材は現在あまり研究された例がないが、炭化チタ
ンと炭化珪素の類似性からボロン、炭素系の焼結助材が
有効であると考えられる。但し、ボロン+炭素の総量が
2重量%を超えるべきではない。又酸化物を助材に用い
ることも可能であるが、前述のように酸化物の融点又は
酸化物と炭化チタンとの共晶点以下で固相焼成すること
が重要である。本発明の系においては、ジルコニアがそ
の構造要素として含まれるので特別な焼結助材は必要な
い。
前記した炭化チタン原料粉、炭化珪素ウィスカー及び
ジルコニア原料粉を混練する。本系におけるようにウィ
スカーを複合体の一成分として含む場合混練には特に注
意を払わなければならない。基本的には次の二つの方法
がある。
(1)超音波混練法…マトリックスとなる原料粉(炭化
チタン原料粉及びジルコニア原料粉)とウィスカーとを
混練溶媒と共に入れ超音波攪拌を利用することにより混
練する方法である。この方法の利点はウィスカーに損傷
を与えずに混練できるところにあり、ウィスカー長さを
そのまま焼結体まで保つことが可能である。しかし、こ
の方法が有効であるためには、 (a)ウィスカー同志が混練前に強く絡んでいないこ
と。つまり超音波分散でほぐれること。
(b)ウィスカー長さが混練前から均一であること。超
音波分散法では分散中にウィスカー長さがそろうような
作用はない。従って混練前からウィスカー長さにバラツ
キがあるとそのバラツキは焼結体にそのまま持ち込ま
れ、靭性値にバラツキが発生する原因となる。
(c)ウィスカー以外の原料粉サイズがウィスカー径よ
りもはるかに小さく、又原料粉の凝集性が低いこと。ウ
ィスカーと原料粉とがよく混練されるということは、原
料粉がウィスカーの周りによく分散するということであ
る。原料粒粒子がウィスカー径より大きければウィスカ
ー間に原料粉が存在するという確率は低くなり分散性は
上昇しない。又たとえ原料粉粒子サイズは小さくとも、
それらが強く凝集していれば大きな粒子が存在している
のと同じであり、これまた分散性は良くならない。以上
の3条件が必要不可欠である。
(2)ボールミル法…マトリックスとなる原料粉ととウ
ィスカーを混練溶媒とボールと共に容器の中に入れ湿式
で攪拌混練する混練法である。
この方法の利点としては次の事が挙げられる。
(a)装置が非常に安価であり、方法も非常に簡単であ
る。
(b)ウィスカー長さが不均一でもボールで混練するこ
とによりその長さは均一なものになってゆく。
(c)ウィスカーが多少からんでいてもボールで混練す
ることによりほぐすことは容易である。
(d)ウィスカーの分散性に対して原料粉サイズ及び凝
集性は重要なものではない。ボールによりウィスカーは
良く分散されるし原料粉の凝集もボールにより改善され
る。
以上二つの混練法を比較したが、本系に用いられてい
る炭化チタンは現時点では1μm程度のサイズであり、
ウィスカー径に比較すると大体同程度である。又現在日
本で入手可能なウィスカーはその長さに均一性がなく、
長さのそろったものだけを分級することも非常に煩雑な
作業である。これらのことを考慮して、本発明における
混練法はボールミル法とした。本発明の系においてはジ
ルコニアが含まれているためボールミル法においてはジ
ルコニアの容器とジルコニアのボールを使用すべきであ
る。また、本系の他の構成要素である炭化チタン又は炭
化珪素の容器及びボールを使用しても良い。但し、将
来、凝集性の少ない超微粉(約0.1μmオーダーの粒
径)の炭化チタン原料粉及び長さのそろったウィスカー
が工業的に入手可能となれば超音波分散法が採用される
べきである。
混練後の混練粉の乾燥には、電子レンジ又はスプレー
ドライアが使用できる。但し、電子レンジを使用した場
合は、再度乾式で混合して混練媒体を除去する必要があ
る。しかし、後述するように、焼結時に焼結温度への加
熱に先だって所定の温度で排気すれば、乾燥をより確実
にすることができる。
成形は、プレス成形、射出成形、スリップキャスト成
形のいずれでも良い。
焼結はホットプレス、加圧焼結、常圧焼結のいずれに
よっても良い。
前述したように、焼結温度への加熱に先だって、室温
から粒子の表面拡散が起こらない室温範囲でセラミック
ス粒子に付着している有機物や水分(特に混練媒体の残
留分)を除去するよう排気を行うことが望ましい。
炭化チタンマトリックス/炭化珪素ウィスカー/ジル
コニア系複合焼結体の製造にあっては、ホットプレスに
よる場合は400〜1000℃の温度範囲に10分間保持すると
共に、10-1Torrに減圧する。加圧、常圧焼結の場合はバ
インダとして使用される。例えばポリビニルブチルアル
コール等が水分と共に存在しているので、これを除去す
るために保持時間は30分間以上とする。
焼結温度は1800〜2300℃の範囲の温度とする。焼結温
度が1800℃よりも低いと焼結体の密度が上がらず、これ
が2300℃を超えると結晶粒の粗大化が起こり、いずれも
機械的強度が低下する。密度95%以上、結晶粒サイズ3
μm以下(特に好ましくは2μm以下)になるように焼
結温度、焼結時間を設定するのが良い。
以下具体的実施例について説明する。
(実施例) 炭化チタン原料粉はメンストラム法により作製されて
おり化学成分(重量%)及び粒子サイズは第1表に示す
とおりである。用いた炭化珪素ウィスカーは直径が0.8
〜1.0μm程度、アスペクト比20〜200のものである。詳
細は第2表に示す。
ジルコニア粉末は2モル%イットリアで安定化した部
分安定化ジルコニア粉末であり、純度はジルコニア・イ
ットリアで98%以上である。又比表面積はBET値で17m2/
gのものである。今回用いたジルコニア粉の特性を第3
表に示す。
特許願62−56732の中で示されているように、炭化チ
タンの中に炭化珪素ウィスカーのみを配合した系におい
ては、炭化珪素ウィスカーが15容積%において最大の破
壊強度を示した。そこで本実施例においては炭化珪素ウ
ィスカーの配合割合は15容積%に固定して部分安定化ジ
ルコニアを5容積%から40容積%まで変化させた。
又、ジルコニアが焼結助材の役割をするので助材とし
て特別な元素は加えなかった。
上記原料セラミックを約200gをボールミル法で混合し
た。混合容器は1のポリエチレン容器を使用した。こ
れに直径10mmの炭化珪素ボールを350個入れエチレンア
ルコール500mlを添加した後48時間混合した。混合後、
電子レンジによって乾燥し、篩による造粒を行い60メッ
シュ篩下の粉を焼結用原料粉とした。
焼結はホットプレスで行い、第3図に示すようなプロ
グラムを採用した。本焼結に先立ち、700℃で30分間原
料粉表面に付着した水分、有機分を除去するため排気し
た。又本焼結は1950℃で30分間400kg/cm2のプレス圧と
した。第4図に代表例として炭化チタン/15容積%炭化
珪素ウィスカー/10容積%ジルコニアの光学顕微鏡粒子
構造を示す。第4図で判るようにわずかに微小な空孔は
観察されるが殆ど焼結は完了している。又第5図で判る
ように炭化珪素ウィスカー及びジルコニアの分散も非常
に良い。他の配合比についても同様に非常に少ないポア
ー、分散性の良い組織が得られた。
このようにして得られた焼結体からダイヤモンドブレ
ードを使用して3×4×40mmの曲げ試験片、4×10×10
mmの硬度測定用試験片を採取しダイヤモンド研磨液を使
用して表面に鏡面仕上げを施した。曲げ試験は支点間距
離30mm、クロスヘッド速度0.5mm/minの3点曲げ試験
法、硬度及び破壊靭性の測定は荷重10kgによるビッカー
ス硬度計で行った。
破壊靭性KIOの算出は、 の式によった。
但しHはビッカース硬度、aは圧痕対角長さ、cはこ
の対角線の先端から発生したメディアンクラック長さで
ある。試験の結果は第4表に併記した。表中、xは平均
値、nは測定回数、σは標準偏差である。
第4表に示すように、ジルコニアを複合化することは
複合量が増すに従い硬度低下を引き起こしており、又ジ
ルコニアの複合量が少ない場合はジルコニアを複合しな
いものと比較して破壊靭性が若干低下しているが、曲げ
強度を大幅に増加させている。特にジルコニアが複合化
されていないもの(比較例1参照)とジルコニアが40容
積%のものと比較すると約45%の強度改善がなされてお
り、ジルコニアの炭化チタン/炭化珪素ウィスカー系へ
の複合化が如何に有効であるかを示している。又ジルコ
ニアの複合量に対して硬度はほぼ比例的に減少している
が、破壊靭性、強度に対しては、30容積%まで急激に増
加し、それ以上は飽和しているという傾向を示してい
る。それ故、硬度を重視する場合はジルコニアは30容積
%までに止めるべきである。
第6図、第7図には、ジルコニアが10及び40容積%の
場合のSEM写真を示す。ジルコニアが40容積%のものの
破面は10容積%のものに比較して組織が非常に細かく、
ジルコニアが結晶粒微細化効果に有効に作用しているこ
とを示している。又、第6図においては、明瞭な粒内破
壊が支配的であるが、第7図では粒界破壊の割合が増加
している。これはクラック面がジルコニアの存在によ
り、よく偏向していることを示しており、クラックディ
フレクション高靭性化作用にジルコニアが有効であるこ
とを示している。又、鏡面と破面とからX線解析を行っ
た結果、破面において単斜晶割合が約5%増加していた
ことから、相変態高靭性化も部分安定化ジルコニアの複
合化により発生していると考えられる。更に、ジルコニ
アの複合化により炭化チタン/炭化珪素ウィスカー系複
合材よりも低温で焼成することが可能になったので、ジ
ルコニアの焼結助材としての効果も重要である。以上の
ように、前述したジルコニアの四つの効果は全て満足さ
れており、これが高靭性、高強度に有効に作用したと考
えられる。
又、試験片No.6は、安定化されていない純粋なジルコ
ニアを使用した例である。部分安定化されたジルコニア
を使ったもの(試験片No.5)と比較すると相変態高靭化
効果がないため破壊靭性も曲げ強度も少し低くなってい
る。試験片No.7は超音波分散により混練したものであ
る。ボールミル法と比較すると、ウィスカーが長いため
破壊靭性は大きくなったが破壊源もウィスカーサイズが
大きくなったことにより大きくなり強度低下を引き起こ
している。
本発明の系である炭化チタン/炭化珪素ウィスカー/
部分安定化ジルコニア系複合セラミックスは配合比に注
意を払えば曲げ強度100Kg/mm2を超すものも得ることが
可能であり、広汎なセラミックス工具、耐摩耗部品への
応用が可能である。
(効果) 本発明は炭化チタン/炭化珪素ウィスカー系複合セラ
ミックスに更にジルコニアを複合化することにより、よ
り高靭性、高強度の複合セラミックスが得られた。又焼
成温度も低温で行うことができた。
【図面の簡単な説明】
図面は本発明の一実施例を示すものである。第1図はウ
ィスカーによるクラックディフレクションの模式図、第
2図はウィスカー引き抜き現象の模式図、第3図は焼成
温度条件を示す図、第4図は炭化チタン/15容積%炭化
珪素ウィスカー/10容積%ジルコニア複合焼結体の粒子
構造を示す顕微鏡写真(50倍)、第5図は炭化チタン/1
5容積%炭化珪素ウィスカー/10容積%ジルコニア複合焼
結体の粒子構造を示す顕微鏡写真(400倍)、第6図は
炭化チタン/15容積%炭化珪素ウィスカー/10容積%ジル
コニア複合焼結体の粒子構造を示すSEM写真、第7図は
炭化チタン/15容積%炭化珪素ウィスカー/40容積%ジル
コニア複合焼結体の粒子構造を示すSEM写真である。 図中;1、7……炭化珪素ウィスカー、2……ディフレク
ションを生じない場合のクラック面、3……ディフレク
ションを生じた場合のクラック面、4……クラック、6
……ウィスカーの引き抜け跡、8……粒内破壊、9……
粒界破壊。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭化珪素(SiC)ウィスカー3〜45容積
    %、ジルコニア(ZrO2)又は部分安定化ジルコニア(Zr
    O2)粒子5〜40容積%、残部が実質的に炭化チタン(Ti
    C)粒子からなる高硬度、高靭性且つ高強度の炭化チタ
    ン/炭化珪素ウィスカー/ジルコニア系複合焼結体。
  2. 【請求項2】炭化珪素(SiC)ウィスカー3〜45容積
    %、ジルコニア(ZrO2)又は部分安定化ジルコニア(Zr
    O2)粒子5〜40容積%、残部が炭化チタン(TiC)粉末
    からなる原料粉を混練する工程と、混練された原料粉を
    成形し成形体とする工程と、該成形体を焼結する工程か
    らなる高硬度、高靭性且つ高強度の炭化チタン/炭化珪
    素ウィスカー/ジルコニア系複合焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】超音波分散法を用いて混練する特許請求の
    範囲第2項記載の炭化チタン/炭化珪素ウィスカー/ジ
    ルコニア系複合焼結体の製造方法。
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