JP2577004B2

JP2577004B2 - ベーン

Info

Publication number: JP2577004B2
Application number: JP62229636A
Authority: JP
Inventors: 晃一権代; 秀樹中村; 照雄加藤; 董飯塚; 伸石原; 裕章畠; 信雄阿部
Original assignee: Hitachi Ltd; Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Hitachi Ltd; Proterial Ltd
Priority date: 1987-04-02
Filing date: 1987-09-16
Publication date: 1997-01-29
Anticipated expiration: 2012-01-29
Also published as: JPS6435091A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は、ロータリーコンプレッサー、ベーンポンプ
等の回転機に用いられるベーンに関する。

〔従来の技術〕

ベーンを有する回転機の例として、ロータリーコンプ
レッサーは、冷蔵庫、エアコン等によく用いられ、その
断面形状は、第３図に示されるようなものである。

ここで、１はベーン、２はロータ、３はシリンダ、４
はスプリングである。

このロータリコンプレッサーにおいて、ロータ２はシ
リンダ内面に沿って偏心回転する。またベーン１は、ス
プリング４により常時、ロータ２に押し付けられてお
り、ロータ２の動きに沿って、往復動する。このベーン
１、ロータ２およびシリンダ３により成る二つの空間の
容積変化により気体を圧縮するものである。

ここでベーンに要求される特性としては、対摩耗性を
有すること、摺動する相手材、すなわちシリンダ、ロー
タを摩耗させないことが挙げられる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

この必要性に対しては、ベーンの材質および組成面を
改良し、耐摩耗性を向上させたり、自己潤滑性を持たせ
たりした特開昭56−47550号公報、特開昭59−20446号公
報および特開昭61−48556号公報等の公知例は多くあ
る。

しかしながら、近年、前記のようなベーンを有する回
転機に対して高性能化すなわち、高回転化が要求されて
きた。そしてロータリーコンプレッサーに代表されるベ
ーンを有する回転機を従来の装置で高回転させるとさま
ざまな問題点が生じる。

以下、その問題点を記す。

（１）ベーンとロータ、シリンダ相互が異常摩耗を引き
起こし寿命が激減する。

（２）ベーンがロータの動きについてゆけず、ベーンを
ロータに押し付けるスプリングを強くしなければならな
い。しかしスプリングを強いものにしベーンをロータに
押し付ける力を強くすることに摩耗量が増大する。

（３）ロータを回転させるトルクが大きくなり、装置自
体が大きくなってしまう。

これらの問題点に対し、従来からベーン自体の慣性重
量を低減する手法が提案されている（実公昭50−42407
号公報、実開昭57−43379号公報、特開昭60−237109号
公報、実開昭61−21894号公報等）。

上記手段はベーン内部に中空部を設け慣性重量を低減
せしめるものであり、中空部を設ける手段として、特開
昭60−237109号公報には、冷間鋳造、熱間鋳造、機械加
工および粉末治金法が開示されており、また放電加工と
いう手段も考えられる。

しかし、機械加工、放電加工等ではいずれも工数がか
かりすぎるという欠点を有し工業的でない。

一方、粉末治金を適用する場合は、粉末プレス成形−
焼結法が考えられる。しかし、中空ベーンの形状および
軽量化のために肉厚を可能な限り薄くすることが要求さ
れるため、プレス金型の構造上成形が非常に困難であ
る。

本発明は、上記従来技術に鑑み、まず中空部を有する
ベーンを簡易に製造する手段として射出形法の適用を提
案し、次いで当該手段に適したベーン形状、材質等のベ
ーンを提供し、回転機の高回転化の要求を十分に満足し
ようとするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、高速度工具鋼組成を有する水アトマイズ原
料粉末を用い射出成形法によって製造され、非摺動面に
連通する中空部を有することを特徴とするベーンであ
る。

以下、本発明を詳述する。

本発明者らは種々検討した結果、所定の化学組成を有
する水アトマイズ粉末を出発原料とし、これとバインダ
ーとを混合、混練してこれらを可塑化し、所定形状の金
型により成形体を成形する射出成形後、脱脂、焼結する
手法（以下本明細書中では単に射出成形と記す）により
中空ベーンを簡易に製造できることを知見し本発明を完
成するに至ったものである。

本発明のごとく射出成形法により中空ベーンを製造す
る場合、成形体が成形、脱脂、焼結の過程で崩壊するこ
となくハンドリングが可能であるため、見掛け密度が高
く、平均粒径の小さい粉末が必要となる。そこで本発明
ではこのような要求を満足させるため水アトマイズ粉末
を出発原料とした。

次に、本発明の材質としては高速度回転下で十分な耐
摩耗性を有し、かつ中空状であっても十分な強度を有す
ることが要求される。この要求を満足するものとして本
発明者らは高速度工具鋼を選定した。

本発明でいうところの高速度工具鋼が、重量比で、C
0.4〜2.0％、Si1.5％以下、Mn1.0％以下、Cr2.0〜6.0
％、Ｗ＋2Moで6.0〜24.0％、V6％以下を含み残部Feおよ
び不可避的不純物から構成されるものである。

各成分の限定理由は以下のとおりである。

Ｃは0.4％未満では硬度が得られずまた２％を越える
と反対に脆化してしまうため0.4〜２％とする。

Crは耐摩耗性を与えるものであるが、２％未満または
６％を越えると、その効果は顕著でなくなるので２〜６
％とする。

Ｗ＋2Moはこの割合で６〜24％とすると高温強度およ
び硬度が得られ、６〜24％以外ではその効果は顕著では
ない。

Ｖは高硬度の炭化物を形成し、結晶粒度を細かくする
効果を有するが、６％を越えると効果の増大は見られな
いため６％以下とする。

Siは、脱酸剤としてさらに基地の硬度を高める作用が
あるので、1.5％以下に限定した。

またMnも脱酸効果があり、さらに焼き入れ性を高める
作用があるので１％以下に限定する。

なお、Coは耐熱性を向上せしめる効果があるので、前
記各成分のほかさらに含有せしめてもよい。しかし、14
％を越える含有は効果の増大が著しくない上に、高価に
なって経済的でもないため14％以下とする。

また、前記中空部を有するベーンが実密体に対し重量
比80％以上である場合は、その効果が顕著ではないた
め、前記中空部を有するベーンが実密体に体し重量比80
％以下となるような中空部を有することが望ましい。

前記中空部を有するベーンとシリンダおよびロータの
摩耗を低減させるには、ベーンの摩擦係数を下げること
が必要であり、このため、ベーン表層部に摩擦係数を下
げるため表面処理をほどこすことが好ましい。

本発明で使用する表面処理法は、浸硫窒化処理であ
り、浸硫窒化処理でベーン表面に生成された硫化層がベ
ーン表面の摩擦係数を著しく低下させ、また、浸硫窒化
により生成された窒化物がベーン表面に硬度を与え、耐
久度を上げる。

ところで、本発明者らは本発明を完成する過程で中空
ベーンの形状として射出成形法に適したものとすること
が望ましいことをも見出だした。

以下、その点について説明する。

本発明者らが検討に供したベーンはロータリーコンプ
レッサーに用いられるベーンであり、従来のに中空部を
有しないベーン（以下中実ベーンと記す）を第４図に示
す。この中実ベーン13の軽量化を図るため第２図に示す
ベーン成形体を射出成形により作製した。なお、第２図
中、12はロータリーコンプレッサーに組み込まれた際に
スプリングと当接するフィンであり、該フィン12以外の
部分を中空部11とした。

射出成形後に成形体を観察すると、射出条件等により
第５図（ｄ）に示すように、いわゆるウエルドライン11
がベーン１の上下面に発生することが見出だされた。な
お、ウエルドラインとは、射出成形においてコンパウン
ド10の流れが何等がの影響で複数となり、再び合流した
際に完全に圧着しないで亀裂もしくは細かいラインとな
って残ったものである。

次に、ウエルドライン11の発生した成形体を焼結した
が、ウエルドライン11は接合しなかった。

本発明者らは、前記ウエルドライン11の発生原因を確
認するため射出成形時における金型内のコンパウンド
（原料粉末とバインダーを混合、混練して得られたも
の、以下同じ）10の充填過程を観察したところ、第５図
（ａ）〜（ｄ）のような過程を経ることが確認された。

すなわち、フィン12部分のベーン上下面およびベーン
側面に比べ、フィン12部分以外のベーン上下面における
コンパウンド10の充填が遅れる傾向にあり、そのため最
終的にウエルドライン11が発生するのである。

次に、射出成形体を焼結したがウエルドラインの発生
しない成形体であっても焼結後の変形が大きく、仕上げ
加工に供せるものではなかった。この問題に対しては、
成形体の肉厚を厚くすることにより対処が可能である
が、仕上げ加工等の面から望ましいものではない。

以上のウエルドラインおよび焼結変形の問題を解決す
べく検討を行なった結果、第１図に示すごとく、フィン
12を２つ増設したものとすることによりウエルドライン
の発生および焼結変形の防止に効果があることを確認し
た。

第７図（ａ）〜（ｄ）は第１図に示す形状の中空ベー
ン１を射出成形した際の金型内のコンパウンド20の充填
過程を示す図であるが、フィン12を増設したことにより
コンパウンド20の充填が均等に進行しウエルドライン発
生が防止されている。

また、本形状の成形体を焼結したところ、若干の焼結
変形は生ずるものの、第６図にに示すように大幅は変形
14を生ずることなく、薄肉成形体でも仕上げ加工に供す
ることができるものであった。

したがって、本発明ベーンの実施にあたっては上記思
想に基づき２あるいはそれ以上のフィンに相当するもの
（本明細書中ではフィンと総称する）を設け、中空部を
３あるいはそれ以上に分割した形状とすることが望まし
い。

なお、フィンの設置数はベーンの寸法、用途によって
適宜決定されることはいうまでもない。

〔実施例〕

以下本発明を実施例に基づき説明する。

重量比でC0.7％、Si0.3％、Mn0.3％、Cr4.5％、W6.5
％、Mo5.3％、V2.0％、残部Feおよび不可避的不純物を
含む予備合金化された水アトマイズ粉末を作り、振動ミ
ルで粉砕した。

この粉末にC0.21％メチルセルロース（信越化学SM400
0）を３％添加し、Ｖ型ブレンダーで24Hrを混合した。
この後、グリセリン１％、水11％を添加し、ヘンシェル
ミキサーで混練し、コンパウンドを作った。このコンパ
ウンドを、温度95℃に保持した射出成形用金型に、射出
圧力1000kg/cm²で射出成形し、第１図および第２図に示
すような中空部11有するベーン１を整形した（第１図、
第２図に示すベーン１をそれぞれベーンＡ、ベーンＢと
する）。

この成形体を10^-2torrの真空中で、昇温速度100℃/Hr
で加熱し、900℃で2Hr保持後、1250℃まで昇温し1Hr保
持し焼結した。その後1240℃で焼入れし、さらに560℃
×３回の焼戻処理を行なった。

ここで得られたベーン１の重量は、第４図に示す従来
の中実のベーン13と比較し、ベーンＡは64％、ベーンＢ
は50％の重量であった。

さらに、この中空部11を有するベーン１と中実のベー
ン13と浸硫窒化処理をした。中空部11を有するベーン１
を各々第３図に示すような構造のロータリーコンプレッ
サーの実機試験機に組み込み、摺動部の摩耗量の比較テ
ストを行なった。

その結果、ベーン１、ロータ２、シリンダ３の摩耗量
は、中実のベーン13を組み込んだ時の摩耗量を100％と
すると、中空部11を有するベーン１を組み込んだ時の摩
耗量は、ベーン１においてはベーンＡが48％、ベーンＢ
は40％、ロータ２においてはベーンＡの場合62％、ベー
ンＢの場合55％、シリンダ３においてはベーンＡの場合
70％、ベーンＢの場合65％であり、浸硫窒化処理をした
中空部11を有するベーン１を組み込んだ時の摩耗量は、
ベーン１を組み込んだ時の摩耗量は、ベーン１において
はベーンＡが34％、ベーンＢが30％、ロータ２において
はベーンＡの場合43％、ベーンＢの場合40％、シリンダ
３においてはベーンＡの場合54％、ベーンＢの場合50％
であった。

また、回転数については、中実のベーン13を組み込ん
だ場合は、8,000rpmでベーン13がロータ２についてゆけ
なくなり、コンプレッサーの機能を果たせなくなったの
に対し、中空部11を有するベーン１および浸硫窒化処理
を施した中空部11を有するベーンＡおよびＢを組み込ん
だ場合は、15,000rpmにおいても何等異常は認められな
かった。

〔発明の効果〕

本発明によれば、ベーンが著しく軽量化され、かつそ
の摩擦係数が低減されて回転機の機動時および通常回転
時のトルクが大幅に減少し、ベーンをロータに押し付け
るスプリング力も小さくてすむ。

従って、回転機のロータを高速回転させてもベーンは
ロータに十分ついてゆき、ベーン、ロータ、シリンダの
摩耗量も大きく減少する。

以上のように本発明により、ベーンを有する回転機の
高性能化すなわち高回転化が可能となるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明ベーンの一実施例を示す図で、（ａ）は
正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は底面図、第２図は本
発明ベーンの他の実施例を示す図で、（ａ）は正面図、
（ｂ）は側面図、（ｃ）は底面図、第３図はロータリー
コンプレッサーの断面図、第４図は従来の中実ベーンを
示す図で、（ａ）は正面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は
底面図、第５図は射出成形時の金型内でのコンパウンド
の充填過程を示す斜視図、第６図は射出成形体の焼結後
の形態を示す底面図、第７図は射出成形時金型内でのコ
ンパウンド充填過程を示す斜視図である。 1:ベーン、2a:摺動面、1b:非摺動面、2:ロータ、3:シリ
ンダ、4:スプリング、10:コンパウンド、11:中空部、1
2:フィン、13:中実のベーン

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者加藤照雄島根県安来市安来町2107番地の２日立金属株式会社安来工場内 (72)発明者飯塚董栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者石原伸栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者畠裕章栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地株式会社日立製作所栃木工場内 (72)発明者阿部信雄栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地株式会社日立製作所栃木工場内 (56)参考文献特開昭61−243155（ＪＰ，Ａ) 特開昭60−237190（ＪＰ，Ａ) 特開昭61−152987（ＪＰ，Ａ) 実開昭61−21894（ＪＰ，Ｕ)

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】高速度工具鋼組成を有する水アトマイズ原
料粉末を用い射出成形法によって製造され、非摺動面に
連通する中空部を有することを特徴とするベーン。
【請求項２】高速度工具鋼が、重量比でC0.4〜2.0％、S
i1.5％以下、Mn1.0％以下、Cr2.0〜6.0％、Ｗ＋2Moで6.
0〜24.0％、V6％以下を含み残部Feおよび不可避的不純
物よりなる特許請求の範囲第１項記載のベーン。
【請求項３】前記中空部を有するベーンが実密体に対
し、重量比で80％以下に軽量化されている特許請求の範
囲第１項または第２項記載のベーン。
【請求項４】前記中空部を有するベーンの表層部がロー
タ、シリンダの摩擦係数を下げるための表面処理が施さ
れている特許請求の範囲第１項ないし第３項のいずれか
に記載のベーン。
【請求項５】前記中空部を有するベーンの表面処理が浸
硫窒化処理である特許請求の範囲第１項ないし第４項の
いずれかに記載のベーン。
【請求項６】前記中空部に少なくとも２つのフィンを設
け、中空部を分割している特許請求の範囲第１項ないし
第５項のいずれかに記載のベーン。