JP2573655B2 - ノンドープ化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents

ノンドープ化合物半導体単結晶の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、GaAsやInP等の化合物半導体単結晶の製
造方法に関するものであり、特にノンドープの化合物半
導体単結晶の製造方法に関するものである。
[従来の技術および発明が解決しようとする課題] 液体封止チョクラルスキ法(LEC法)により化合物半
導体単結晶を成長させる場合に、原料の融液を作成する
方法としては以下の2つの方法がある。1つの方法は、
予め合成した化合物半導体の多結晶をるつぼ内に入れ、
昇温して溶融させる方法である。もう1つの方法は、化
合物半導体の構成元素の単体金属をそれぞれるつぼ内に
入れ、昇温させて反応させ融液とする方法である。前者
の方法は2ステップ法、後者の方法は直接合成法(1ス
テップ法)と呼ばれている。ノンドープの化合物半導体
単結晶を製造する場合にも、2ステップ法かあるいは直
接合成法が用いられている。るつぼにいずれかの方法で
調製した融液を入れ、その融液の上に液体封止層を設
け、融液に種結晶の接触させた後種結晶を引き上げるこ
とにより、単結晶を引き上げて製造している。
たとえば、GaAsの場合、ノンドープの半絶縁性単結晶
として1×107Ω・cm以上の比抵抗を示すものが得られ
ている。半絶縁性を示すメカニズムは、内因性欠陥、お
よびカーボンを含む残留不純物により生ずるキャリア
を、深いドナーレベルであるEL2と呼ばれる電子準位の
欠陥により補償しているものと説明されている。このEL
2準位は、結晶中に存在する過剰なAsが関与すると考え
られている。したがって、EL2の濃度は、原料融液中の
組成比、たとえばGaAsの場合、GaとAsとの比率に依存し
て変化する。成長結晶の全領域にわたり半絶縁性を再現
性良く得るためには、カーボンなどの不純物濃度のレベ
ルを精度良く制御する必要があるが、これらの不純物濃
度のレベルは、成長炉の違いや、あるいは成長条件の違
いにより大きく変化する。したがって、この不純物濃度
のレベルの違いに応じて、EL2の濃度レベルを制御する
ことが必要となる。上述のようにEL2の濃度レベルは、
原料融液中の組成比に依存して変化する。したがって、
EL2のレベルを制御するには、原料融液中の組成比を変
化させる必要を生じる。
しかしながら、原料の融液の組成比(As/Ga+As)を
0.5から外れるような状態にすると、融液の組成と結晶
の組成とがずれ、結晶成長の進行に伴って融液の組成比
が徐々に変化し、これに伴いEL2の濃度レベルも所望の
レベルに維持することができず、結晶全域にわたって所
望のEL2の濃度レベルとすることができないという問題
を生じる。
この発明の目的は、成長結晶の全領域にわたって半絶
縁性を再現性良く得ることのできるノンドープ化合物半
導体単結晶の製造方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] この発明の製造方法は、外るつぼと、該外るつぼの内
側に設けられて、底部に形成された流通孔から該外るつ
ぼに連通する内るつぼとから構成される二重るつぼを用
い、液体封止チョクラルスキ法により内るつぼ内の融液
からノンドープの化合物半導体の単結晶を引き上げて成
長させる方法であり、外るつぼ内の融液の原料として、
化合物半導体の組成になるよう予め合成された多結晶を
用い、内るつぼ内の融液の原料の少なくとも一部とし
て、化合物半導体の構成元素の少なくとも1つの単体金
属を用いることを特徴としている。
[作用] この発明の製造方法では、ノンドープの化合物半導体
単結晶の製造に二重るつぼを用いている。
成長結晶の軸方向の不純物濃度分布を均一にする目的で
は、二重るつぼを用いたLEC法が、たとえばJournal of
Applied Physics,Volume 29,No.8,1958,p,1241〜12
44などに開示されているが、この発明のように内るつぼ
内の融液の組成を0.5からずらせてノンドープの成長結
晶のEL2濃度を制御する目的で二重るつぼを用いること
は従来知られていない。
この発明において、結晶成長の進行中、内るつぼ内の
融液の体積が一定に保たれ、かつ結晶の組成と外るつぼ
の融液の組成が一致していれば、内るつぼの融液の組成
はその組成比の値の如何にかかわらず結晶成長中一定に
なる。したがって、成長結晶を、常に一定組成の内るつ
ぼの融液から成長させることができ、成長結晶中のEL2
濃度を所望のレベルで、しかも成長方向に対して一定に
制御することが可能になる。
以上のように、EL2の濃度レベルを一定にするために
は、外るつぼの融液の組成を成長結晶の組成と正確に一
致させることが必要であり、また内るつぼの融液の組成
を、所望のEL2の濃度レベルに応じた組成に調製可能な
ことが必要である。
この発明では、外るつぼ内の融液の原料として、化合
物半導体の組成になるよう予め合成された多結晶を用い
ている。このようにして合成された多結晶の組成比(As
/As+Ga)はほぼ正確に0.5であるので、外るつぼ内の融
液の組成比と、成長結晶の組成比とが一致したものにな
る。
また、この発明では内るつぼ内の融液の原料の少なく
とも一部として、化合物半導体結晶の構成元素の少なく
とも1つの単体金属を用いている。このようにすること
により、内るつぼ内の融液の組成比を、所望のEL2の濃
度レベルとなるよう調製することが可能になる。EL2の
濃度レベルと融液の組成比との関係は、多くの場合化合
物半導体の構成元素の単体金属をるつぼ内に入れ昇温し
反応して得られる融液から成長させた成長結晶について
検討されており、このような直接合成法においてEL2濃
度レベルと融液組成比との関係が明らかにされているの
で、これらのデータを有効に利用することができる。
[実施例] 第1図は、この発明の一実施例を説明するための断面
図である。第1図を参照しながら、以下この発明の実施
例について説明する。外るつぼ1としては内径100mmのP
BN製のるつぼを用い、内るつぼ2としては内径75mmの同
じくPBN製のるつぼを用いて、50mmの径のGaAs結晶を成
長させた。
内るつぼ内の融液3は、直接合成法により作製した。
融液の組成比(As/As+Ga)を、0.48、0.50および0.52
の3つの条件にして実験を行なった。高純度のGaおよび
高純度のAsのそれぞれの単体金属は、組成比0.48の場合
Ga約50.2gとAs約49.8g、組成比0.50の場合Ga約48.2gとA
s約51.8g、組成比0.52の場合Ga約46.2gとAs約43.8gを、
内るつぼ2内に、液体封止剤6としての酸化硼素90gと
ともに入れた。外るつぼ1には、予め合成された高純度
のGaAs多結晶約900gを入れ、この外るつぼ1に、先程の
内るつぼ2を収容した。
次に、カーボンヒータで、外るつぼ1および内るつぼ
2を600℃まで加熱した。まず酸化硼素が溶融して原料
のGa、AsおよびGaAsを覆った。さらに、850℃まで加熱
すると、内るつぼ2内でそれぞれ別に存在していたGaと
Asとが反応を起こし、GaAsの多結晶となった。そして、
1270℃まで加熱すると、内るつぼ2および外るつぼ1の
GaAs多結晶は溶融し、それぞれ内るつぼ内の融液3およ
び外るつぼ内の融液4となった。次に、徐々に温度を12
50℃まで下げ、種結晶8を回転させながら、液体封止剤
6の層を通して、内るつぼ内の融液3に接触させた。次
に種結晶8を10rpmの速度で回転させながら、10mm/時間
の速度で引き上げて、結晶を成長させ、成長結晶7とし
た。なお、結晶成長中、外るつぼ内の融液4は、内るつ
ぼ2の流通孔5を通り内るつぼ内の融液3に添加され
る。得られた成長結晶7の直径は50±1mmであった。ま
た、得られた成長結晶の組成比は、いずれの場合も0.50
のものであった。
以上のようにして得られたそれぞれの結晶について、
光吸収法によりEL2濃度を測定した。結晶の軸方向のEL2
濃度の分布を第2図に示す。内るつぼ内の融液の組成比
の違いに応じて、得られた結晶中のEL2の濃度レベルが
変化することが確認された。また、いずれの組成比の場
合であっても、軸方向への分布は均一であることも確認
された。なお、組成比が0.52および0.48の場合に、結晶
の尾部で、EL2濃度が大きく変化しているのは、成長終
了時に、外るつぼ内の融液が減少して、内るつぼの底部
が外るつぼの底に到達し、二重るつぼの効果がなくなる
ためである。
なお、比較のため従来の方法、すなわち1つのるつぼ
内に原料融液を入れ成長結晶させる方法で、同じく融液
の組成比を0.48、0.50および0.52に変化させ、結晶成長
を行ない、得られた結晶についてEL2濃度分布を測定し
た。この結果を第3図に示す。第3図に示されるよう
に、従来の方法で成長させた結晶は、組成比が0.50のも
のは軸方向に均一なEL2の濃度分布が得られるが、組成
比が0.52および0.48の場合には、均一なEL2濃度分布が
得られていない。
以上のように、この発明の実施例によれば、所望のEL
2濃度レベルでありかつ軸方向に一定したEL2濃度レベル
であるノンドープ化合物半導体単結晶を得ることができ
る。
なお、この実施例では化合物半導体としてGaAsを例に
して説明したが、この発明はこの化合物半導体に限定さ
れるものではなく、たとえばInpなどその他の化合物半
導体にも適用されるものであることをここで明らかにし
ておく。
[発明の効果] この発明では、ノンドープ化合物半導体単結晶の製造
に二重るつぼを用い、しかも内るつぼ内の融液の原料の
少なくとも一部として、化合物半導体の構成元素の少な
くとも1つの単体金属を用いてその組成比を調整可能に
している。したがって、この発明によれば、単結晶の軸
方向に均一な組成を実現することが可能となり、カーボ
ンなどの残留不純物の濃度レベルに応じた最適なEL2濃
度レベルを、結晶全域にわたって実現することが可能と
なる。したがって、この発明によれば、結晶の軸方向全
域にわたって均一な半絶縁性を有するノンドープ化合物
半導体単結晶を歩留り良く安定して製造することが可能
になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の一実施例を説明するための断面図
である。第2図は、この発明の一実施例により得られた
単結晶の軸方向のEL2濃度分布を示す図である。第3図
は、従来の方法により得られた単結晶の軸方向のEL2濃
度分布を示す図である。 図において、1は外るつぼ、2は内るつぼ、3は内るつ
ぼ内の融液、4は外るつぼ内の融液、5は流通孔、6は
液体封止剤、7は成長結晶、8は種結晶を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体封止チョクラルスキ法により、ノンド
    ープ化合物半導体単結晶を製造する方法であって、 外るつぼと、該外るつぼの内側に設けられていて、底部
    に形成された流通孔から該外るつぼに連通する内るつぼ
    とから構成される二重るつぼを用い、 前記外るつぼ内の融液の原料として、前記化合物半導体
    の組成と同一の組成となるように予め合成された多結晶
    を用い、 前記内るつぼ内の融液の原料として、前記化合物半導体
    の組成と異なる組成の融液となるように、少なくとも一
    部として、前記化合物半導体の構成元素の少なくとも1
    つの単体金属を用い、 前記流通孔を介して、前記外るつぼ内の融液を前記内る
    つぼ内の融液と混合しながら、前記内るつぼ内の融液か
    ら単結晶を引き上げて成長させることを特徴とする、ノ
    ンドープ化合物半導体単結晶の製造方法。
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