JP2572223Y2 - カン切り鋏 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、児童・生徒等が空カン
を使用した作品を製作する場合に使用するカン切り鋏に
関し、特にカンを切るきっかけのための穴を明ける穴明
片を備えたカン切り鋏に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】児童・生徒が行う教課の中に、空カンを
利用して何かを作るというものがある。空カンは、一定
の形状をしているから、これから何かを作ろうとすれ
ば、ある程度の加工を施さなければならない。その場合
に一般に使用されているのが鋏である。

【０００３】しかしながら、鋏はもともと平面的なもの
を切断するのに便利な道具であるため、空カンのような
丸い立体的なものは切断しにくい。そこで、まず、図６
に示すように空カンの側面等に刃先が入れられる程度の
穴を明け、この穴をきっかけとして、図７に示すような
切れ込みを入れていくのである。

【０００４】このような「きっかけ穴」を形成するもの
として、例えば図８に示すような刃部とは別体の突起を
有した鋏が既に提案されている。この鋏は、その両刃部
を枢着している枢軸とは別の枢軸によって、刃部の一方
側に穴明け突起を枢着しているものであり、この穴明け
突起を使用しない場合には刃部に重なるように折り込ん
でおき、必要な時にこれを引き出して突出させるもので
ある。そして、この穴明け突起を突出させたときには、
その一部を刃部と一体的なハンドル部の一部に当接させ
て、これに確実に力を込められるようにしたものであ
り、それなりに便利なものではある。

【０００５】しかしながら、この図８に示した従来の鋏
は、もしその穴明け突起を起したまま使用した場合に
は、穴明け突起の先端が突出したままの状態となるか
ら、その使用には注意を要することになる。また、この
図８に示した従来の鋏は、起した穴明け突起の固定を、
一般に合成樹脂によって形成されていることの多いハン
ドル部の一部に当接させて行うものであるから、この当
接部が短時間で変形してしまい、十分なストッパ効果が
得られないことになってしまうのである。

【０００６】そこで、本考案者等は、このような「きっ
かけ穴」を形成するための突起が不使用時に自動的に収
納されて、しかもストッパ効果を十分なものとするには
どうしたらよいかについて種々検討を重ねてきた結果、
本考案を完成したのである。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】本考案は、以上のよう
な経緯に基づいてなされたもので、その解決しようとす
る課題は、穴明け突起を有した鋏の安全性確保である。

【０００８】そして、本考案の目的とするところは、不
使用時には穴明片を安全な状態に自動的に格納すること
ができ、かつ使用時のストッパ効果を長時間維持するこ
とのできるカン切り鋏を、簡単な構成によって提供する
ことにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに、本考案の採った手段は、実施例において使用する
符号を付して説明すると、「第一刃部１１ａと第二刃部
１１ｂとを枢軸１２によって回転可能に枢支した鋏にお
いて、カンの側面等に穴を明けるための穴明片１３を、
枢軸１２によって第一刃部１１ａ上にて回動可能に枢支
し、この穴明片１３に、その先端１３ａが第一刃部１１
ａから突出したときに、この第一刃部１１ａの側面に当
接して当該穴明片１３のそれ以上の回動を規制するとと
もに、この第一刃部１１ａに対して閉じた第二刃部１１
ｂの第一刃部１１ａの当接面と同じ側面に当接するスト
ッパ１４を一体的に形成したことを特徴とするカン切り
鋏１０」である。

【００１０】

【考案の作用】次に、本考案に係るカン切り鋏１０の作
用を、その使用の態様とともに、実施例を示す図面を参
照して説明する。

【００１１】まず、本考案のカン切り鋏１０は、図１及
び図２に示すように、第一刃部１１ａと第二刃部１１ｂ
とを一本の枢軸１２によって枢着した、鋏としての一般
的形態を基本的に有するものではあるが、その枢軸１２
によって第一刃部１１ａの上面側に配置した穴明片１３
を同軸的に枢支した点が一般的な鋏とは異っているもの
である。そして、この穴明片１３は、これを引き起すこ
とによって、図１及び図６に示すように、その先端１３
ａが第一刃部１１ａ等の側方に突出するものなのであ
る。

【００１２】この図１に示した状態にある、穴明片１３
と一体的なストッパ１４の第一ストッパ面１４ａは、当
該穴明片１３と接触している第一刃部１１ａの側面に当
接しているものであり、これにより穴明片１３の図示反
時計方向への回動が規制されているのである。従って、
図１に示した状態の穴明片１３は、図６に示したよう
に、空カンの側面に「きっかけ穴」を形成する際に、当
該カン切り鋏１０全体に入れた力をその先端１３ａに集
中し得るのであり、「きっかけ穴」の形成が容易かつ確
実に行えるのである。

【００１３】「きっかけ穴」の形成ができると、今度
は、この「きっかけ穴」を利用して、図７に示すよう
に、空カンを当該カン切り鋏１０によって切断すること
になるのであるが、このカン切り鋏１０の刃先を開くと
同時に、穴明片１３が第一刃部１１ａ上に突出しないよ
うに自動的に収納されるのである。すなわち、図３に示
すように、カン切り鋏１０のハンドル部１５を開くと、
穴明片１３に一体的に形成したストッパ１４の第二スト
ッパ面１４ｂに、図４に示すように、第二刃部１１ｂ側
の側面が当接することにより、これによって、穴明片１
３は第一刃部１１ａに対して図１の図示時計方向に回動
されて、図３に示したように、第一刃部１１ａ上に突出
部がない状態で収納されるのである。従って、図７に示
したように、空カンに形成しておいた、「きっかけ穴」
に穴明片１３が重った第一刃部１１ａあるいは第二刃部
１１ｂを挿入することにより、この空カンの切断が行え
ることになるのである。

【００１４】なお、以下に示す実施例においては、図５
に示すように、穴明片１３の図示下面に突起１３ｂが形
成してあり、この突起１３ｂに対応する凹部１１ｃが、
図５あるいは図１に示したような位置に形成されている
ため、穴明片１３が第一刃部１１ａ上に重なったとき、
突起１３ｂが凹部１１ｃ内に嵌合されることになるか
ら、収納された穴明片１３の第一刃部１１ａに対する固
定がなされるものである。勿論、この固定は、突起１３
ｂが凹部１１ｃ内に単に嵌まり込むことによりなされる
ものであるから、その解除は穴明片１３に指等で力を加
えることにより容易に行えるものである。

【００１５】また、本実施例に係るカン切り鋏１０にお
いては、図１及び図６に示したように、第一刃部１１ａ
の刃体の反対側面に傾斜面１６が形成してあるから、こ
の第一刃部１１ａを空カンの「きっかけ穴」内への挿入
が容易なものとなっているだけでなく、この傾斜面１６
によって第一刃部１１ａを空カンに対して自由に動かし
得るものとなって、曲線での切断を良好に行えるものと
なっているのである。

【００１６】

【実施例】次に、本考案に係るカン切り鋏１０を、図面
に示した実施例に従って詳細に説明すると、図１及び図
２には、穴明片１３を引き起した状態のカン切り鋏１０
の正面図及び側面図が示してある。このカン切り鋏１０
は、第一刃部１１ａと第二刃部１１ｂとを一本の枢軸１
２によって開閉自在に枢着したものであり、その第一刃
部１１ａ上に配置した穴明片１３は、この枢軸１２によ
って同軸的に枢支してあるものである。

【００１７】なお、本実施例における第一刃部１１ａに
おいては、図１に示したように、その刃部の先端の反対
側面に、刃部とは反対の傾斜面１６が形成してあり、こ
れにより第一刃部１１ａの先端が細くなるようにしてあ
る。勿論、この傾斜面１６は、第二刃部１１ｂ側にも形
成してあるものであり、図７に示したように、「きっか
け穴」内への第一刃部１１ａまたは第二刃部１１ｂの挿
入を容易にしているものである。また、第一刃部１１ａ
の穴明片１３側面には、図１に示したように、凹部１１
ｃが形成してあり、この凹部１１ｃ内には穴明片１３の
裏面に形成した突起１３ｂが嵌合するようになってい
る。勿論、これらの突起１３ｂ及び凹部１１ｃは、上記
とは反対に、第一刃部１１ａ及び穴明片１３側に形成し
て実施してもよいことは言うまでもない。

【００１８】本実施例においては、各第一刃部１１ａ及
び第二刃部１１ｂの図示下端に一体化したハンドル部１
５を、軟質合成樹脂材料によって形成してあり、児童・
生徒が使用するのに適したものとしてある。

【００１９】穴明片１３は、図１に示したように引き起
されたとき、その先端１３ａがカン切り鋏１０の側方に
突出するものであり、この先端１３ａによって、図６に
示したように、空カンの丸い側面に、切断のための「き
っかけ穴」を形成するものである。従って、この先端１
３ａは、空カンに対する穴明けを行うものであるから、
尖ってはいても、鋭利な刃物のようにしてあるものでは
ない。そして、この穴明片１３には、図４の（ロ）に示
した展開図のようにして、ストッパ１４が一体的に形成
してあるものである。

【００２０】ストッパ１４は、図４の（イ）及び（ロ）
に示したように、図示右側面第一ストッパ面１４ａ及び
第二ストッパ面１４ｂを有しているものであり、第一ス
トッパ面１４ａは第一刃部１１ａの側面にのみ、また第
二ストッパ面１４ｂは第二刃部１１ｂの側面にのみそれ
ぞれ当接し得るものである。つまり、このストッパ１４
は、図４の（ロ）に展開して示したものを打ち抜き加工
等によって形成するとともに、図中の点線にて示した部
分で直角に折曲することにより、図４の（イ）に示した
関係になるものとしたものである。

【００２１】勿論、このストッパ１４としては、穴明片
１３を引き起したときに第一刃部１１ａに当接する第一
ストッパ面１４ａと、第一刃部１１ａに対して開いた第
二刃部１１ｂに当接する第二ストッパ面１４ｂとを備え
ていれば、前述したような形状のものに限るものではな
く、適宜変更して実施してよいことは当然である。な
お、以下に示す実施例においては、図５に示すように、
穴明片１３の図示下面に突起１３ｂが形成してあり、こ
の突起１３ｂに対応する凹部１１ｃが、図５あるいは図
１に示したような位置に形成してある。この突起１３ｂ
は、穴明片１３が第一刃部１１ａ上に重なったとき、凹
部１１ｃ内に嵌合されるものであり、収納された穴明片
１３の第一刃部１１ａに対する固定を行なうものであ
る。勿論、この固定は、突起１３ｂが凹部１１ｃ内に単
に嵌まり込むことによりなされるものであるから、その
解除は穴明片１３に指等で力を加えることにより容易に
行えるものである。これらの突起１３ｂ及び凹部１１ｃ
の形成は、上述したのとは逆にしてもよいものであり、
また凹部１１ｃに代えて単なる穴として実施してもよい
ものである。

【考案の効果】以上説明した通り、本考案においては、
上記実施例にて例示した如く、「第一刃部１１ａと第二
刃部１１ｂとを枢軸１２によって回転可能に枢支した鋏
において、カンの側面等に穴を明けるための穴明片１３
を、枢軸１２によって第一刃部１１ａ上にて回動可能に
枢支し、この穴明片１３に、その先端１３ａが第一刃部
１１ａから突出したときに、この第一刃部１１ａの側面
に当接して当該穴明片１３のそれ以上の回動を規制する
とともに、この第一刃部１１ａに対して閉じた第二刃部
１１ｂの第一刃部１１ａの当接面と同じ側面に当接する
ストッパ１４を一体的に形成したこと」にその構成上の
特徴があり、これにより、不使用時には穴明片を安全な
状態に自動的に格納することができ、かつ使用時のスト
ッパ効果を長時間維持することのできる、カン切り鋏を
簡単な構成によって提供することができるのである。

【００２２】特に、本考案に係るカン切り鋏１０によれ
ば、穴明片１３を第一刃部１１ａと第二刃部１１ｂとの
枢軸１２によって同軸的に枢支するようにしたので、第
一刃部１１ａ及び第二刃部１１ｂを従来よりあるものを
そのまま使用して、枢軸１２と穴明片１３のみを用意す
ればよいから、その製造を非常に簡単に行うことができ
るのである。また、穴明片１３は、これと一体的にスト
ッパ１４が形成してあり、このストッパ１４の第一スト
ッパ面１４ａ及び第二ストッパ面１４ｂは硬い材質から
なる第一刃部１１ａまたは第二刃部１１ｂに当接させる
ようにしているので、このカン切り鋏１０を耐久性に優
れたものとすることができるのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るカン切り鋏を示す図であって、そ
の穴明片を引き起した状態の平面図である。

【図２】同カン切り鋏の側面図である。。

【図３】両刃部の開いたときのカン切り鋏の平面図であ
る。

【図４】同カン切り鋏の穴明片及びこれに一体化したス
トッパを示すものであり、（イ）は図２の矢印１からみ
た部分拡大側面図、（ロ）は穴明片及びストッパの展開
図である。

【図５】図３の２−２線に沿ってみた部分拡大断面図で
ある。

【図６】本考案に係るカン切り鋏を使用して空カンにき
っかけ穴を形成している状態の斜視図である。

【図７】同カン切り鋏によって空カンを切断している状
態の斜視図である。

【図８】従来のカン切り鋏を示す平面図である。

【符号の説明】

１０ カン切り鋏 １１ａ 第一刃部 １１ｂ 第二刃部 １１ｃ 凹部 １２ 枢軸 １３ 穴明片 １３ａ 先端 １３ｂ 突起 １４ ストッパ １４ａ 第一ストッパ面 １４ｂ 第二ストッパ面 １５ ハンドル部 １６ 傾斜面

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 第一刃部と第二刃部とを枢軸によって回
   転可能に枢支した鋏において、 カンの側面等に穴を明けるための穴明片を、前記枢軸に
   よって前記第一刃部上にて回動可能に枢支し、 この穴明片に、その先端が前記第一刃部から突出したと
   きに、この第一刃部の側面に当接して当該穴明片のそれ
   以上の回動を規制するとともに、この第一刃部に対して
   閉じた第二刃部の前記第一刃部の当接面と同じ側面に当
   接するストッパを一体的に形成したことを特徴とするカ
   ン切り鋏。