JP2571798B2 - アルミニウム材のろう付方法 - Google Patents

アルミニウム材のろう付方法

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Description

【発明の詳細な説明】 a. 発明の目的 (産業上の利用分野) この発明に係るアルミニウム材のろう付方法は、アル
ミニウム、或はアルミニウム合金(本明細書では、これ
らを総称してアルミニウム材とする。)同士をろう付し
て、各種製品を造る場合に利用するもので、例えばコン
デンサ等として使用されるアルミニウム材製の熱交換器
を造る場合に利用される。
(従来の技術) 例えばアルミニウム材製の熱交換器を造る場合、アル
ミニウム材製の伝熱管と、同じくアルミニウム材製の放
熱フィンとを組み合わせた状態で、これら伝熱管とフィ
ンとを加熱炉中で加熱し、予め伝熱管とフィンとの当接
面間に介在させたろう材(Siを5〜16%含むアルミニウ
ム合金)を溶融させ、このろう材によって伝熱管とフィ
ンとをろう付けする様にしている。
このろう付作業の際、伝熱管やフィンを構成している
アルミニウム材の表面の酸化膜を破壊して、伝熱管とフ
ィンとのろう付が良好に行なわれる様にする為、ろう付
部にフラックスを塗布する事が広く行なわれている。
この様なアルミニウム材同士のろう付に使用するフラ
ックスとして従来の一般に、アルカリ金属やアルカリ土
類金属のハロゲン化物と、Al、Zn、Mgのハロゲン化物と
を混合してフラックスが広く使用されていた。
更に、ろう付後の残渣がアルミニウム材に対する腐食
性を持たないフラックスとして、英国特許第1055914号
明細書には、45〜47%(本明細書に於ける『%』は、後
述のクラッド率、或は長さ割合を表わす場合を除き、混
合割合を表わす場合は総て『重量%』である。)のKFと
55〜53%のAlF3とを混合したものが開示されている。
(発明が解決しようとする問題点) ところが、上述の様なフラックスを使用して行なう、
従来のアルミニウム材のろう付に於いては、次に述べる
様な不都合を生じる。
即ち、従来のろう付方法に於いては、何れのフラック
スを使用する場合に於いても、水を分散媒として使用
し、ろう付に使用するフラックスを分散媒としての水の
中に所定濃度で分散し、懸濁液としていた。
この懸濁液は、ろう付前にろう付部分に塗布するが、
フラックスは本来、伝熱管とフィンとの接触部等、ろう
付け部にのみ塗布すれば良く、それ以外の部分に塗布し
ても、フラックスが無駄に消費されるだけでなく、ろう
付後の残渣がフィンの表面に付着して通気抵抗を増大さ
せたり、残渣が著しく多い場合には、この残渣がフィン
を詰らせたりしてしまう。
ところが、水を分散媒として使用した場合、フラック
スの懸濁液の粘度は極く小さいものとなって(流動性が
極めて良くなって)、この懸濁液をろう付部にのみ塗布
する事は極めて困難となる。この為従来は、ろう付に必
要な部分だけでなく、それ以外の部分にもフラックスの
懸濁液を、スプレー等によって塗布していた為、ろう付
け後に上述の様な問題が生じる事が避けられなかった。
又、フラックス中にZn化合物(特願昭62−8955号、同
62−259462号に開示されている様に、ZnF2が、残渣に腐
食性がない事から、好ましく使用される。)を混入し、
このZn化合物中のZnを、ろう付時にアルミニウム材中に
拡散させて、このアルミニウム材の防食を図る様な場
合、分散媒として水を使用すると、Zn化合物の分散が不
均一になり易く、部分的に十分な防食効果を発揮出来な
い場合が生じる。アルミニウム材製熱交換器の場合、そ
の極く一部でも耐久性が劣っていた場合、全体としての
耐久性に問題が生じる(全体としての耐久性は、最も劣
っている部分で決定される。)。
分散媒として水の代りに合成樹脂を使用する事も、前
記英国特許明細書に記載されている様に、一部で研究さ
れてはいるが、現状に於いては、合成樹脂を使用した場
合、ろう付時の加熱に伴なって合成樹脂が炭化する事
で、ろう付後に炭素粉末が残留し、ろう付性の面から
も、残渣処理の面からも好ましくないとされている。
フラックスを使用する事なく、アルミニウム材同士を
ろう付けする方法として、10-3〜10-5Torrの高真空中で
ろう付を行なう、真空ろう付法が知られているが、この
真空ろう付法の場合、防食の為にアルミニウム材中、或
はフラックス中に含有させたZnが、ろう付の為の加熱時
に飛散してしまい、Znを添加する事に伴なう犠牲腐食作
用が弱くなって、ろう付によって得られるアルミニウム
材製品に十分な耐食性を期待出来なくなってしまう。
本発明のアルミニウム材のろう付方法は、フラックス
の分散媒を工夫する事で、上述の様な不都合を何れも解
消するものである。
b. 発明の構成 (問題を解決するための手段) 本発明のアルミニウム材のろう付方法に於いては、フ
ラックスを分散させる為の分散媒として、イソブチレン
を主体とする共重合体で末端に1個の二重結合を有し、
構造式 で表わされるポリブテンを使用する。
ろう付を行なう場合には、この様なポリブテン中に、
フラックスを均一に分散混合したものを、対となって互
いにろう付けされるアルミニウム材の内の、少なくとも
一方のアルミニウム材の表面に塗布した後、上記対とな
るアルミニウム材を非酸化性雰囲気中で加熱し、対とな
るアルミニウム材の間に存在するろう材を溶融させる。
又、フラックスとしては、30〜90%のK2SiF6と、同じ
く基本組成物に対する割合が70〜10%のZnF2とを混合し
て100%としたもの(第一番目の発明)、或は基本組成
物に対する割合が30〜90%のK2SiF6と、同じく基本組成
物に対する割合が70〜10%のZnF2とから成り、フラック
ス全体に対する割合が98〜90%の基本組成物と、フラッ
クス全体に対する割合が1〜3%のNaFと、同じく1〜
7%のAlF3とから成るもの(第二番目の発明)を使用す
る。
(作用) 本発明のアルミニウム材のろう付方法に於いて、フラ
ックスの分散媒としても使用されるポリブテンは、流動
性はあるにしても、水に比べて十分に大きな粘性を有す
る為、フラックスを必要とするろう付部分にのみ、これ
を塗布する事が可能となり、フラックスの使用量を少な
く抑えると同時に、ろう付後に於けるフラックス残渣を
少なくする事が出来る。
又、ポリブテンは、アルミニウム材同士のろう付温度
(通常600℃程度)以下の約300℃で解重合して昇華する
為、ろう付後にカーボン残渣が生じる事もなく、ろう付
性の悪化やフィンの目詰り等を生じる事もない。
更に、ポリブテン中に分散混合するフラックスとし
て、K2SiF6とZnF2とを、或はK2SiF6とZnF6とNaFとAlF3
とを、それぞれ上述の様な割合で混合したものを使用す
る為、ろう付後のフラックス残渣が、アルミニウム材に
対する腐食性を有しない様になり、耐食性を要する製品
の場合に於いても、ろう付後にこのフラックス残渣を洗
浄する必要がなくなるだけでなく、ZnF2を含むフラック
スを、(防食性を要しないフィン等に塗布する事なく)
防食性を要する伝熱管等の所望部分にのみ塗布する事が
出来る為、ろう付の為の加熱に伴なって、上記所望部分
にのみ、Znを均一に拡散させる事が出来、この所望部分
の防食を確実に図る事が出来る。
尚、フラックス全体、或は基本組成物に対するK2SiF6
とZnF2との混合割合を上述の範囲としたのは、K1SiF6
含有量が30%未満だと、ろう付性が悪くなり、反対に含
有量が90%を越えた場合は、ZnF2の含有量減少に伴なっ
て、十分な防食性を期待出来なくなる為である。
又、NaFとAlF3とを加える場合に、これらの混合割合
を上述の範囲としたのは、NaFとAlF3との何れに就いて
も、この混合割合を外れた場合には、これらを加える事
に伴なうろう付性の向上を得られない為である。
尚、ポリブテン中へのフラックスの添加量は、10〜50
%の範囲が好ましい。
この理由は、フラックスの添加量が10%未満の場合、
フラックスの絶対量が不足して、ろう付性を悪化させ、
反対に50%を越えて添加した場合、フラックスの分散が
なされずに流動性が悪くなり、ろう付部分への塗布が困
難となる為である。
(実施例) 次に、本発明の効果を確認する為に行なった実験に就
いて説明する。
先ず、本発明に於いて、フラックスの分散媒として使
用するポリブテンの加熱時に於ける変化を確認する為、
分子量が1000のポリブテンを加熱炉中に入れ、このポリ
ブテンの重量を測定しつつ、この加熱炉内の温度を第1
図の曲線aで示す様に徐々に上昇させた所、ポリブテン
の重量は、同図に曲線bで示す様に減少し、450℃程度
でほぼ100%昇華して、後には何の残渣も残らなかっ
た。
この事から、ポリブテンが、アルミニウム材のろう付
温度である600℃よりも低い温度で解重合し、完全に昇
華する事が解った。
尚、ポリブテンとしては、分子量が200〜2500のもの
を使用出来るが、分子量によって粘度が異なる(分子量
が多い程、粘度が高くなる。分子量1000のもので、粘度
は10000cp程度。)為、ろう付部分の形状等に応じて適
当な粘度(8000cp程度のものが、熱交換器製造の際に、
好ましく使用出来る。)を有するポリブテンを選択す
る。但し、粘度を低下させる為ならば、ポリブテンを有
機溶剤(パラフィン系炭化水素)によって希釈する事も
出来る。
上述の様な性質を有するポリブテン中に混合するフラ
ックスとして、K2SiF6とZnF2とのみから成り、第1表に
示した様な組成を有するものを使用して、第2図に示し
た様なコンデンサのろう付を行なった。
尚、本発明のろう付方法は、次の様な理由により、コ
ンデンサのろう付に好適である。
即ち、アルミニウム材製のコンデンサ(エバポレータ
も同様であるが、エバポレータの場合は、コンデンサ程
防食性を要求されない為、実用上、特に問題は生じ難
い。)を製造する場合は、内部に高圧の冷媒を流す伝熱
管1としてアルミニウム材製の引抜管を使用する為、伝
熱管1の表面にろう材をクラッドする事が出来ない。こ
の為、伝熱管1とフィン2とをろう付けする為のろう材
は、フィン2を構成するアルミニウム材の表面にクラッ
ドする事になる。この様にフィン2の表面にクラッドさ
れたろう材は、ろう付後に於いてもこのフィン2の表面
を覆い、その結果、ろう材により覆われたフィン2の表
面の電位が、ろう材により覆われていない伝熱管1の表
面の電位に比較して高く(貴と)なる為、そのままで
は、伝熱管1が腐食し易くなってしまう。
この様な場合に、本発明のろう付方法によって伝熱管
1とフィン2とをろう付けすれば、フラックス中に含ま
れていたZnが伝熱管1を構成するアルミニウム材の表面
に均一に拡散し、この伝熱管1に孔食が発生する事を防
止する事が出来る。
ろう付性、耐食性の実験を行なう場合に於いては、上
述の様にコンデンサ等として使用される熱交換器の伝熱
管1として、厚さが0.7mmの引抜管を使用し、フィンを
構成する為のアルミニウム材製板材として、厚さ0.16mm
のクラッド板を使用した。
伝熱管1を構成するアルミニウム材としてはJIS 1050
材(Siが0.25%以下、Feが0.40%以下、Cuが0.05%以
下、Mnが0.05%以下、Mgが0.05%以下、Znが0.05%以
下、Tiが0.03%以下、その他の不純物が、個々の物が0.
03以下%で、残りをAlとしたもの)を使用した。
又、フィン2を構成するクラッド板は、芯材の表面に
ろう材である皮材を、10%のクラッド率(板全体の厚さ
に対するクラッド層(皮材層)の厚さの割合)で両面に
クラッド(両面で合計20%)したもので、芯材にはJIS
3003材に1.0%のZnを添加したもの(Siが0.6%以下、Fe
が0.7%以下、Cuが0.05〜0.20%、Mnが1.0〜1.5%、Zn
が1.0%、その他の不純物が、個々の物が0.05%以下
で、不純物の合計が0.15%以下とし、残りをAlとしたも
の)を、皮材にはJIS 4045材に1.0%のZnを添加したも
の(Siが9.0〜11.0%、Feが0.8%以下、Cuが0.30%以
下、Mnが0.05%以下、Znが1.0%、Tiが0.20%以下、そ
の他の不純物が、個々の物が0.05%以下で、不純物の合
計が0.15%以下とし、残りをAlとしたもの)を、それぞ
れ使用した。
この様なクラッド板により造られたフィン2と、前記
したJIS 1050材製の伝熱管1とを、第2図に示す様に組
み合わせ、本発明のろう付方法、従来の様に水を分散媒
として使用するろう付方法により、伝熱管1とフィン2
とを互いにろう付けした所、第1表に示す様な結果を得
られた。
尚、各ろう付方法を実施する場合に於いては、非腐食
性雰囲気としてN2ガス雰囲気を使用し、ろう付時に於け
る露点を−30℃とし、ろう付を行なう際には、第2図に
示す様に組み合わされた伝熱管1とフィン2とを、150
℃で3分間予熱した後、600℃で3分間加熱して、ろう
付けした。ろう付後にフラックスの残渣を洗い流す作業
は、総ての供試体に就いて行なわなかった。
又、ろう付性は、ろう付後の熱交換器を目視する事で
行ない、このろう付性を表わす欄で『非常に良好』は、
ろう付後に、伝熱管1とフィン2との間に形成されるろ
う材のフィレットが、ろう付部の全長に亘って形良く、
途切れる事なく連続している状態を、『良好』は、フィ
レットの形状は若干悪いが、フィレットはろう付部の全
長の95%以上に亘って連続しており、ろう付強度には問
題がない状態を、『不良』は、フィレットが不連続で、
ろう付強度にも問題がある状態を、それぞれ示してい
る。
又、腐食試験結果の欄には、ろう付後に伝熱管1とフ
ィン2との耐食性を測定した試験の結果を、伝熱管1の
表面に生じた孔食の内の、最も深いものの深さ(単位m
m)で記載した。腐食試験は、JIS H 8681に定められたC
ASS試験法により1000時間連続して行なった後、伝熱管
3の表面に生じた孔食の深さを測定する事で行なった。
孔食深さが0.1mm以下のものは、耐食性良好と判断され
る。CASS試験法とは、5%のNaCl懸濁液を、酢酸によっ
てPH3に調整し、更にCu2+イオンを、塩化第二銅の形で1
00ppm加えた腐食性液体を、50℃の雰囲気で、1.0〜2.0m
l/80cm2/hrの割合で噴霧するもので、試験片は、試験の
間中、この腐食性液体の霧中に曝される。
更に、放熱性能は、比較例5によって造られた熱比較
器の放熱性能を100とし、全く同じ大きさの熱交換器の
放熱性能を、これ(比較例5)の放熱性能と比較する事
で行なった。
この様な試験の結果を示す第1表から明らかな通り、
本発明のろう付方法によりアルミニウム材同士をろう付
する場合、良好なろう付を行なう事が出来、しかもフラ
ックスの残渣をそのままとしても、ろう付後に於ける耐
食性に問題がない事を確認出来た。
次に、ポリブテン中に混合するフラックスとして、K2
SiF6とZnF2とから成る基本組成物に、NaFとAlF3とを加
えて、第2表に示した様な組成を有するものを使用し
て、第2図に示した様なコンデンサのろう付を行なっ
た。コンデンサを構成する伝熱管1とフィン2とを構成
するアルミニウム材は、上述の第一番目の発明の実施例
の場合と全く同じ寸法、組成のものを使用した。
この第2表から明らかな通り、本発明のろう付方法に
よりアルミニウム材同士をろう付する場合、良好なろう
付を行なう事が出来、しかもフラックスの残渣をそのま
まとしても、ろう付後に於ける耐食性に問題がない事を
確認出来た。
c. 発明の効果 本発明のアルミニウム材のろう付方法は、以上に述べ
た通り構成され実施される為、フラックスを必要な部分
にのみ塗布する事が可能となって、フラックスの使用量
低減に伴なうろう付製品の製作費低減を図れるだけでな
く、余分なフラックスの残渣によるろう付製品の品質、
性能の低下を防止出来、しかもアルミニウム材同士のろ
う付強度の向上や耐食性の向上も図れて、耐久性の優れ
たアルミニウム材ろう付製品を得る事が出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は温度上昇に伴なうポリブテンの重量減少の状態
を示す線図、第2図は本発明の方法によりろう付される
アルミニウム材製のコンデンサを示す正面図である。 1:伝熱管、2:フィン。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イソブチレンを主体とする共重合体で末端
    に1個の二重結合を有し、構造式 で表わされるポリブテン中に、30〜90%のK2SiF6と70〜
    10%のZnF2とを混合して100%として成るフラックスを
    均一に分散混合したものを、対となって互いにろう付さ
    れるアルミニウム材の内の、少なくとも一方のアルミニ
    ウム材の表面に塗布した後、上記対となるアルミニウム
    材を非酸化性雰囲気中で加熱し、対となるアルミニウム
    材の間に存在するろう材を溶融させる、アルミニウム材
    のろう付方法。
  2. 【請求項2】イソブチレンを主体とする共重合体で末端
    に1個の二重結合を有し、構造式 で表わされるポリブテン中に、基本組成物に対する割合
    が30〜90%のK2SiF6と、同じく基本組成物に対する割合
    が70〜10%のZnF2とから成り、フラックス全体に対する
    割合が98〜90%の基本組成物と、フラックス全体に対す
    る割合が1〜3%のNaFと、同じく1〜7%のAlF3とか
    ら成るフラックスを均一に分散混合したものを、対とな
    って互いにろう付けされるアルミニウム材の内の、少な
    くとも一方のアルミニウム材の表面に塗布した後、上記
    対となるアルミニウム材を非酸化性雰囲気中で加熱し、
    対となるアルミニウム材の間に存在するろう材を溶融さ
    せる、アルミニウム材のろう付方法。
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