JP2570808B2 - 工具鋼の鍛造方法 - Google Patents

工具鋼の鍛造方法

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JP2570808B2 JP63113346A JP11334688A JP2570808B2 JP 2570808 B2 JP2570808 B2 JP 2570808B2 JP 63113346 A JP63113346 A JP 63113346A JP 11334688 A JP11334688 A JP 11334688A JP 2570808 B2 JP2570808 B2 JP 2570808B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【発明の目的】
(産業上の利用分野) 本発明は、冷間工具鋼や高速度工具鋼からなる被鍛造
材をその軸方向に対し直角方向の複数方向から金敷によ
り同時に圧下して当該被鍛造材をスエージングにより鍛
伸(細径化,テーパ化等)するのに利用される工具鋼の
鍛造方法に関するものである。 (従来の技術) 従来、冷間工具鋼や高速度工具鋼などの工具鋼を鍛造
するに際しては、固定の下部金敷と昇降可能にした上部
ポンチとを備えた鍛造プレスを用い、被鍛造材を所定の
鍛造温度に加熱した状態で下部金敷上に設置し、上部ポ
ンチを降下させて被鍛造材を圧下する自由鍛造を繰り返
し行い、被鍛造材の温度が低下した場合には鍛造の途中
において適宜再加熱を行って温度を上昇させたのち鍛造
を再開することによって被鍛造材を細径化し、所望の寸
法となったところで鍛造を終了するようにしていた。 (発明が解決しようとする課題) このような従来の工具鋼の鍛造方法では、固定の下部
金敷と昇降可能にした上部ポンチとを備えた鍛造プレス
を用い、鍛造の間に温度が低下した場合には鍛造の途中
において何回か加熱炉内で適宜再加熱を実施して温度を
上昇させたのち鍛造を再開するようにしていると共に、
加工度を高めることが困難であるため、加工工数および
加工時間が多くかかり、熱エネルギーも多く必要とし、
コスト高につくものになっているという課題を有してい
た。 (発明の目的) 本発明は、上述した従来の課題にかんがみてなされた
もので、冷間工具鋼や高速度工具鋼などの工具鋼からな
る被鍛造材に対する鍛造を短時間のうちに行うことが可
能であり、とくに中心部の延性が低い高C工具鋼におい
てその中心部分に内部欠陥を発生させることなく内部鍛
伸を行うことが可能であり、さらには鍛造途中での再加
熱を低減ないしは不要とすることができるため省エネル
ギーをも実現することが可能である工具鋼の鍛造方法を
提供することを目的としているものである。
【発明の構成】
(課題を解決するための手段) 本発明に係る工具鋼の鍛造方法は、工具鋼からなる被
鍛造材をその軸方向に対し直角方向の複数方向から金敷
により同時に圧下して当該被鍛造材をスエージングによ
り鍛伸するに際し、前記被鍛造材に対する1パスあたり
の減面率を低目に設定するようになすと共に前記被鍛造
材の送り速度を高目に設定するようになすことを特徴と
しており、前記被鍛造材が冷間工具鋼よりなる場合に
は、前記冷間工具鋼からなる被鍛造材をその軸方向に対
し直角方向の複数方向から金敷により同時に圧下して当
該被鍛造材をスエージングにより鍛伸するに際し、前記
冷間工具鋼からなる被鍛造材に対する1パスあたりの減
面率を20〜30%の範囲にすると共に前記被鍛造材の送り
速度を7〜10m/分の範囲にするようにしたことを特徴と
しており、前記被鍛造材が高速度工具鋼よりなる場合に
は、前記高速度工具鋼からなる被鍛造材をその軸方向に
対し直角方向の複数方向から金敷により同時に圧下して
当該被鍛造材をスエージングにより鍛伸するに際し、前
記高速度工具鋼からなる被鍛造材に対する1パスあたり
の減面率を28〜40%の範囲にすると共に前記被鍛造材の
送り速度を5〜8m/分の範囲にするようにしたことを特
徴としており、このような1パスあたりの減面率を低目
に設定すると共に送り速度を高目に設定するようにした
工具鋼の鍛造方法を上述した従来の課題を解決するため
の手段としたものである。 第1図は本発明に係る工具鋼の鍛造方法の実施態様を
例示しており、加熱炉1内で所定の鍛造温度に加熱され
た被鍛造材2は、前部マニピュレータ3に把持され、片
持ちにより浮いた状態で鍛造装置4に送り込まれる。こ
の被鍛造材2に対しては、後に詳述するように、その幅
方向に対し直角方向の複数方向から金敷により同時に圧
下して当該被鍛造材2をスエージングにより鍛伸し、こ
の鍛伸の間において被鍛造材2は前部マニピュレータ3
と後部マニピュレータ5とによって、適宜例えば交互に
片持ち状態で把持され、鍛伸を終えたあとの軸状鍛造材
は後部マニピュレータ5によって把持されたのち鍛造ラ
インから搬出される。 第2図および第3図は、第1図の鍛造装置4の原理的
構造を例示するもので、被鍛造材2の軸方向(第3図の
左右方向)に対し直角方向(第2図の上下および左右方
向)でかつ90゜の間隔で配設した四つの金敷4a,4b,4c,4
dを用い、前記被鍛造材2を前部マニピュレータ3また
は後部マニピュレータ5によって片持ちで保持した状態
にして、まず、被鍛造材2の軸方向に対し直角方向の四
方向から各金敷4a〜4dを同時に求心方向に移動させるこ
とにより当該被鍛造材2を圧下し、次いで各金敷4a〜4d
を同時に遠心方向に引込ませたのち、あるいは引込ませ
る過程で、被鍛造材2を第2図の矢印A方向に角度θだ
け回転させ、次いで再び被鍛造材2の軸方向に対し直角
方向の四方向から各金敷4a〜4dを同時に求心方向に移動
させることにより当該被鍛造材2を圧下し、続いて再び
各金敷4a〜4dを同時に引込ませたのち、あるいは引込ま
せる過程で、被鍛造材2を第2図の矢印A方向にさらに
角度θだけ回転させ、かくして各金敷4a〜4dによる1回
の圧下毎に被鍛造材1を角度θだけ回転させそして被鍛
造材2を適宜その軸方向(第3図の矢印B方向)に送る
という圧下・回転・送りを繰返し、被鍛造材2の軸方向
に何回かのパスを行うことによって鍛伸(スエージン
グ)することにより、被鍛造材2を所望の大きさまで細
径化した軸状鍛造材とする。 このように、被鍛造材2をその軸方向に対し直角方向
の例えば四方向から金敷4a〜4dにより同時に圧下して当
該被鍛造材2をスエージングにより鍛伸する過程におい
ては、前記被鍛造材2の1パスあたりのサイズ変化量
(鍛伸率,減面率)および/または送り速度をある程度
大きなものとすることによって、被鍛造材2はその塑性
加工量に対応した加工発熱を生ずる(この加工発熱は、
被鍛造材2の変形抵抗,パスサイズ,減面率,送り速
度,金敷4a〜4dとの接触面積などによって影響され
る。)ので、本発明に係る工具鋼の鍛造方法においては
前記例えば四方向高速鍛造時に生ずる被鍛造材2の加工
発熱を利用し、鍛造途中における温度低下を防ぐように
して、鍛造途中での加熱炉による再加熱を低減ないしは
不要となるようにすることもできる。 そして、本発明に係る工具鋼の鍛造方法においては、
前記被鍛造材2の1パスあたりのサイズ変化量を低目に
設定すると共に送り速度を高目に設定することによっ
て、当該被鍛造材2の中心部分に十分な圧縮応力が加え
られるようにし、すなわち中心部分での引張応力が緩和
されるようにし、とくに高C工具鋼のように中心部の延
性が低い材料であっても内部欠陥を発生させずに鍛造を
実施することができるようにしている。 本発明に係る工具鋼の鍛造方法において、前記工具鋼
が冷間工具鋼である場合には、当該冷間工具鋼の成分組
成が、重量%で、C:0.75〜1.75%、Si:0.5〜3.0%、Mn:
0.1〜2.0%、Cr:5.0〜11.0%、Mo:1.3〜5.0%、V:0.1〜
5.0%を含有し、もしくはこれにさらにREM:0.001〜0.5
%,Cu:0.1〜2.0%,Ni:0.2〜2.0%,W:0.1〜3.0%,Co:0.1
〜5.0%,Nb:0.01〜3.0%,Ti:0.01〜2.0%,Zr:0.01〜2.0
%のうちの1種または2種以上を含有し、および/また
はS:0.20%以下,Pb:0.40%以下,Se:0.30%以下,Bi:0.50
%以下,Te:0.30%以下,Ca:0.002〜0.01%のうちの1種
または2種以上を含有し、残部Feおよび不純物からなる
ものとすることがより望ましい。 すなわち、Cはマルテンサイトの硬さを高め、高温焼
もどしにより特殊炭化物を形成して2次硬化に寄与し、
またさらにCr,Mo,Vと炭化物を形成して耐摩耗性に寄与
するが、多すぎると靭性が低下するため0.75〜1.75%と
し、Siは高温焼もどし硬さの増大に有効であり、また硬
さを低下させることなく靭性を向上させるが、多すぎる
と熱間加工性,靭性を低下させるため0.5〜3.0%とし、
Mnは脱酸および脱硫剤として作用し、鋼の清浄度を向上
させるとともに焼入性を良好にするが、多すぎると加工
性を害するため、0.1〜2.0%とし、Crは焼入時に基地中
に固溶して焼入性を高めるとともにCr炭化物を形成し、
耐摩耗性を向上させるが、多すぎると靭性を劣化させる
ため5.0〜11.0%とし、Moは焼入時に基地中に固溶する
とともに炭化物を形成して耐摩耗性を向上させ、焼入れ
および焼もどし抵抗性を高めるのに有効な元素である
が、多く添加してもその効果の増大はそれ程ではなく熱
間加工性を劣化させるようになるため1.3〜5.0%とし、
Vは基地のオーステナイト系結晶粒の粗大化を防止し、
微細な炭化物を形成して耐摩耗性および焼入性の向上に
寄与するが、多すぎると加工性が劣化するため0.1〜5.0
%とし、REM,Cu,Ni,W,Co,Nb,Ti,Zrは強度および靭性の
向上に寄与するものであるが、多量に含有すると熱間加
工性や靭性を低下させるため、それぞれREMは0.001〜0.
5%、Cuは0.1〜2.0%、Niは0.2〜2.0%、Wは0.1〜3.0
%、Coは0.1〜5.0%,Nbは0.01〜3.0%,Tiは0.01〜2.0
%,Zrは0.01〜2.0%とし、S,Pb,Se,Bi,Te,Caはいずれも
被削性を向上させるのに有効なものであり、機械加工お
よび塑性加工(鍛造等)後の仕上加工の際の加工性を良
好となすが、多すぎると熱間加工性や靭性を低下させる
ため、Sは0.20%以下、Pbは0.40%以下、Seは0.30%以
下、Biは0.50%以下,Teは0.30%以下,Caは0.002〜0.01
%とするのが望ましいためである。 そして、被鍛造材が上記したより好ましい組成をもつ
冷間工具鋼からなる場合には、前記被鍛造材に対する1
パスあたりの減面率を20〜30%の範囲にすると共に前記
被鍛造材の送り速度を7〜10m/分の範囲にして高速鍛伸
を行う。この場合、1パスあたりの減面率が20%よりも
小さいと、鍛造中の温度低下が大きくなって疵が発生し
やすくなったり、中心部に十分な圧縮応力を付加するこ
とができなくなって内部欠陥が増加したりするので好ま
しくなく、減面率が30%よりも大きくなると、加工歪が
大きくなって疵が発生しやすくなったり、加工発熱量が
増大して結晶粒が粗大化することにより内部欠陥が増加
したりするので好ましくない。また、送り速度が7m/分
よりも小さくなると、鍛造中の温度低下が大きくなって
疵が発生しやすくなったり、中心部分に十分な圧縮応力
を付加することができなくなって内部欠陥が増加したり
するので好ましくなく、送り速度が10m/分よりも大きく
なると加工歪が大きくなって疵が発生しやすくなった
り、加工発熱量が増大して結晶粒が粗大化することによ
り内部欠陥が増加したりするので好ましくない。 他方、本発明に係る工具鋼の鍛造方法において、前記
工具鋼が高速度工具鋼である場合には、当該高速度工具
鋼の成分組成が、重量%で、C:0.35〜1.5%、Si:0.1〜
2.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:2.0〜10.0%、Mo:0.5〜12.0
%、W:0.5〜23.0%、V:0.5〜5.0%を含有し、もしくは
これにさらにNb:0.1〜5.0%および/またはREMの1種ま
たは2種以上を合計で0.005〜0.60%を含有し、および
/またはB:0.001〜0.050%,Ti:2.0%以下,Zr:2.0%以
下,Hf:2.0%以下,Y:2.0%以下,N:0.30%以下のうちの1
種または2種以上を含有し、および/またはCo:1.0〜2
0.0%を含有し、残部Feおよび不純物からなるものとす
ることがより望ましい。 すなわち、CはCr,Mo,W,V,Nb,Ti,Zrなどの炭化物形成
元素と結合して硬い複炭化物を生成し、工具として必要
な耐摩耗性の向上に著しく効果があり、また基地中に固
溶して切削工具用として所要の硬さを付与せしめるため
に必要な成分元素であるが、多量に添加すると耐摩耗性
は増大するものの、鍛造性および靭性が低下するため0.
35〜1.50%とし、Siは主に脱酸剤として添加し、炭化物
の析出反応を促進させて炭化物の微細化を図り、焼入性
を向上させると共に固体基地を強化して降伏点を高め、
疲労限を向上させるのに有効な成分元素であるが、多量
に添加すると熱伝導性の低下による工具寿命の劣化をき
たすので0.1〜2.0%とし、MnはSiと同様に脱酸剤として
添加し、焼入性の向上にも寄与する元素であるが、多量
に添加すると靭性や焼もどし軟化抵抗性が低下し、また
加工硬化能が高く被削性を劣化させるので0.1〜1.5%と
し、CrはCと結合して複合炭化物を形成し、耐摩耗性の
向上に大きく寄与する元素であり、また、基地中にも多
量に固溶して、焼入性を向上させるとともに耐酸化性の
向上にも大きく寄与するが、多量に添加すると焼もどし
軟化抵抗性が低下し、脆化するため2.0〜10.0%とし、M
oおよびWは、Cと結合して微細なM2C型、あるいはM6C
型の複合炭化物を生成させかつ基地中にも固溶して基地
を強化するので耐摩耗性や高温硬さを高めると共に、焼
もどし軟化抵抗性の向上や耐ヒートチェック性を改善さ
せるのに大きく寄与する元素であるが、多量に添加する
と炭化物の量および大きさが過大となり、鍛造性および
靭性が大きく劣化するため、Mo量は0.5〜12.0%、W量
は0.5〜23.0%の範囲とし、VはCと結合して非常に硬
く、しかも固溶しにくいMC型炭化物を生成し、耐摩耗性
の向上や焼もどし硬さの増加に大きく寄与し、かつ結晶
粒を微細化させる結果、靭性を向上させるのに効果があ
るが、多量に添加すると、硬さの高いMC型炭化物が多く
なり耐摩耗性は著しく向上するものの、被研削性や靭性
が劣化するので0.5〜5.0%とし、Nbは非常に高融点の微
細な特殊炭化物を形成するために鍛造あるいは圧延,焼
入れの際、加熱温度の上昇にともなう結晶粒の粗大化を
阻止させ、しかも希土類と複合添加することによって高
融点の非常に微細なそして均一に分散したNb−希土類炭
化物が形成され、この炭化物は非常に安定なため、MC,M
6CやM23C6型炭化物の析出反応にも影響し、この炭化物
が核形成の役目をはたす結果、炭化物は微細にしかも均
一に分布するが、多量に含有すると、焼もどし軟化抵抗
性の劣化や靭性の低下をもたらすので0.1〜5.0%とし、
REM(La,Ce,Pr,Nd,Smなど)は、Nbと共に添加すると150
0〜1400℃の高温でNb−希土類炭化物を形成させ、しか
も非常に微細にかつ均一に分散させる効果が多大であ
り、この炭化物は非常に安定であり、固体内で形成され
るMC,M6CおよびM23C6型炭化物の析出反応にも影響を及
ぼし、この炭化物が核形成の役目をはたす結果、炭化物
は微細にしかも均一に分布し、靭性の低下や硬度低下を
防止できるが、多量に添加すると熱間加工性が著しく劣
化するため上記元素の合計量は0.005〜0.60%とし、Co
は基地中に固溶して基地を強化し、炭化物の析出および
凝集をおくらせ、高温における硬さと耐力を著しく向上
させる元素であるが、多量に添加すると固溶による内部
歪が大となり、靭性が低下するため1.0〜20.0%とし、
B,Ti,Zr,Hf,Y,Nはいずれも靭性の向上を目的に含有させ
る元素であり、Bは極微量の添加で焼入冷却過程におい
てオーステナイト結晶粒界への初析炭化物の析出を抑制
することにより焼入性を著しく向上させ、また、靭性の
劣化を防止する効果もあるが、多量に添加するとほう化
物が多量に形成され、鍛造性が著しく劣化するため0.00
1〜0.050%とし、Ti,Zr,Hf,Yは窒素を固定してMC型炭化
物を間接的に微細に析出させると共に結晶粒の調整に有
効に作用し、結晶粒の微細化をはかることができるの
で、靭性向上に著しく寄与するが、これらの元素の添加
量が多過ぎるとMC型の巨大炭化物が晶出すると共に、こ
れらの元素の結晶粒界への優先析出がおこるため脆化現
象が生ずるので、Ti,Zr,Hf,Yは各々2.0%以下とし、N
は多量に添加されるとNb,希土類,Zr,Ti,Hfと窒化物を形
成し、巨大な炭窒化物が鋼中に存在することとなって工
具の性能を劣化させるため0.30%以下とするのが望まし
いためである。 そして、被鍛造材が上記したより好ましい組成をもつ
高速度工具鋼からなる場合には、前記被鍛造材に対する
1パスあたりの減面率を28〜40%の範囲にすると共に前
記被鍛造材の送り速度を5〜8m/分の範囲にして高速鍛
伸を行う。この場合、1パスあたりの減面率が28%より
も小さいと、鍛造中の温度低下が大きくなって疵が発生
しやすくなったり、中心部に十分な圧縮応力を付加する
ことができなくなって内部欠陥が増加したりするので好
ましくなく、減面率が40%よりも大きくなると、加工歪
が大きくなって疵が発生しやすくなったり、加工発熱量
が増大してオーバーヒートすることにより結晶粒が粗大
化して内部欠陥が増加したりするので好ましくない。ま
た、送り速度が5m/分よりも小さくなると、鍛造中の温
度低下が大きくなって疵が発生しやすくなったり、中心
部分に十分な圧縮応力を付加することができなくなって
内部欠陥が増加したりするので好ましくなく、送り速度
が8m/分よりも大きくなると加工歪が大きくなって疵が
発生しやすくなったり、加工発熱量が増大して結晶粒が
粗大化することにより内部欠陥が増加したりするので好
ましくない。 (発明の作用) 本発明に係る工具鋼の鍛造方法では、被鍛造材をその
軸方向に対し直角方向の複数方向から金敷により同時に
圧下して当該被鍛造材をスエージングにより鍛伸するよ
うにしているので、従来の固定した下部金敷と昇降可能
な上部ポンチとを備えた鍛造プレスを用いた鍛造に比べ
て、被鍛造材の鍛伸加工がより容易に且つ迅速に行わ
れ、また鍛伸加工時にはその際のサイズ変化量および/
または送り速度を選定することによって被鍛造材が加工
発熱するので、被鍛造材の1パスあたりのサイズ変化量
(減面率)および/または送り速度を設定することによ
って当該被鍛造材の加工発熱を利用しうるようになり、
従来の鍛造プレスを用いる場合のような鍛造途中におけ
る温度低下を防ぎうることから、鍛造途中での加熱炉に
よる再加熱は低減ないしは不要となり、被鍛造材の1パ
スあたりのサイズ変化量を上記のように低目に設定して
いると共に送り速度を上記のように高目に設定している
ので、当該被鍛造材の中心部分には十分な圧縮応力が加
えられ、すなわち中心部分での引張応力が緩和されるよ
うになるので、とくに高C工具鋼のように中心部の延性
が低い材料であっても内部欠陥を発生させずに迅速な鍛
造が実施される。 (実施例) 実施例1,比較例1,2,3 被鍛造材2として、C:1.65%、Si:1.73%、Mn:0.51
%、Cr:8.41%、Mo:2.23%、V:3.21%、残部Feおよび不
純物よりなる冷間工具鋼を素材としたものを用いた。 この被鍛造材2を加熱炉1内で約1100℃に加熱したの
ち、前部マニピュレータ3に片持ち状態で把持させ、鍛
造装置4において、被鍛造材2の軸方向(第3図の左右
方向)に対し直角方向(第2図の上下および左右方向)
でかつ90゜の間隔で配設した四つの金敷4a〜4dを同時に
求心方向に移動させることにより前記被鍛造材2を圧下
し、次いで金敷4a〜4dを同時に遠心方向に引込ませると
ともに被鍛造材2を第2図の矢印A方向に角度θ(θ=
約13゜)だけ回転させ、次いで再び被鍛造材2の軸方向
に対し直角方向の四方向から金敷4a〜4dを同時に求心方
向に移動させることにより前記被鍛造材2を圧下し、続
いて再び金敷4a〜4dを同時に引込ませるとともに被鍛造
材2を第2図の矢印A方向に角度θ(θ=約13゜)だけ
回転させ、かくして金敷4a〜4dによる1回の圧下毎に被
鍛造材2を角度θ(θ=約13゜)だけ回転させそして被
鍛造材2をその軸方向(第3図矢印B方向)に送りなが
らスエージングによる鍛伸を行った。 そして、この鍛伸の間における鍛造スケジュールは第
1表に示すようなものとして鍛造を行い、鍛造により得
た各軸状鍛造品の表面品質(疵の有無)および内部品質
(内部欠陥)を調べた。 この結果を同じく第1表に示す。 第1表に示した結果より明らかなように、鍛造の際の
減面率が20〜30%で且つ送り速度が7〜10m/分である本
発明実施例1の場合には、疵がなく表面品質の良好なも
のとなっており、欠陥発生率も著しく低く内部品質の良
好なものとなっていた。 これに対して、比較例1のように鍛造の際の減面率が
大きすぎかつまた送り速度が小さすぎる場合には、欠陥
発生率が大きくなってしまい、また、比較例2のように
鍛造の際の減面率が大きすぎる場合にも欠陥発生率が大
きくなってしまい、さらに比較例3のように鍛造の際の
送り速度が小さすぎる場合にも欠陥発生率が大きくなっ
てしまい、いずれも内部品質のよくないものであった。 実施例2,比較例4,5,6 被鍛造材2として、C:1.50%、Si:0.35%、Mn:0.35
%、Cr:4.13%、Mo:5.30%、W:6.17%、V:3.04%、Nb:
3.70%、La:0.09%、Y:0.10%、Hf:0.10%、B:0.020
%、残部Feおよび不純物よりなる高速度工具鋼を素材と
したものを用いた。 この被鍛造材2を加熱炉1内で約1150℃に加熱したの
ち、前部マニピュレータ3に片持ち状態で把持させ、鍛
造装置4において、実施例1と同様にしてスエージング
による鍛伸を行った。 そして、この鍛伸の間における鍛造スケジュールは第
2表に示すようなものとして鍛造を行い、鍛造により得
た各軸状鍛造品の表面品質(疵の有無)および内部品質
(内部欠陥)を調べた。 この結果を同じく第2表に示す。 第2表に示した結果より明らかなように、鍛造の際の
減面率が28〜40%で且つ送り速度が5〜8m/分である本
発明実施例2の場合には、疵がなく表面品質の良好なも
のとなっており、欠陥発生率も著しく低く内部品質の良
好なものとなっていた。 これに対して、比較例4のように鍛造の際の減面率が
大きすぎかつまた送り速度が小さすぎる場合には、加工
歪が大きくなって疵が発生してしまい、また、比較例5
のように鍛造の際の減面率が大きすぎる場合には、オー
バーヒートを生じて欠陥発生率が大きくなってしまい、
さらに比較例6のように鍛造の際の送り速度が小さすぎ
る場合にも欠陥発生率が大きくなってしまい、いずれも
内部品質のよくないものであった。
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に係る工具鋼の鍛造
方法では、被鍛造材をその軸方向に対し直角方向の複数
方向から金敷により同時に圧下して当該被鍛造材をスエ
ージングにより鍛伸するに際し、前記被鍛造材の1パス
あたりの減面率(サイズ変化量)を低目に設定すると共
に送り速度を高目に設定するようにし、工具鋼が冷間工
具鋼である場合には、1パスあたりの減面率が20〜30
%、送り速度が7〜10m/分の範囲となるようにし、工具
鋼が高速度工具鋼である場合には、1パスあたりの減面
率が28〜40%、送り速度が5〜8m/分の範囲となるよう
にして鍛伸を行うようにしたから、難加工性の材料であ
る工具鋼に対する鍛造加工を容易にそして迅速に行うこ
とが可能であり、とくに中心部の延性が低い高C工具鋼
においてその中心部分に内部欠陥を発生させることなく
内部鍛錬を行うことが可能であり、得られた軸状鍛造品
の細粒化、結晶粒のばらつきの低減化をはかることがで
きて内部品質に優れていると共に、表面疵がなく表面品
質にも優れており、従来に比べて著しく短時間のうちに
鍛造を行うことが可能であり、従来のように鍛造の間に
おける温度低下のために鍛造の途中において被鍛造材に
対して何回か別途加熱炉内で再加熱する必要がなく、省
エネルギー化をも実現することが可能であるという著し
く優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る鍛造方法の実施態様を例示する鍛
造ラインの概略説明図、第2図および第3図は第1図の
鍛造装置の原理的構造を例示する各々被鍛造材の軸直角
方向説明図および被鍛造材の軸方向説明図である。 2……被鍛造材、 4……鍛造装置、 4a〜4d……金敷。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−286033(JP,A) 特開 平1−62241(JP,A) 特開 昭63−220939(JP,A) 特開 昭63−220940(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】冷間工具鋼からなる被鍛造材をその軸方向
    に対し直角方向の複数方向から金敷により同時に圧下し
    て当該被鍛造材をスエージングにより鍛伸するに際し、
    前記冷間工具鋼からなる被鍛造材に対する1パスあたり
    の減面率を20〜30%の範囲にすると共に前記被鍛造材の
    送り速度を7〜10m/分の範囲にすることを特徴とする工
    具鋼の鍛造方法。
  2. 【請求項2】高速度工具鋼からなる被鍛造材をその軸方
    向に対し直角方向の複数方向から金敷により同時に圧下
    して当該被鍛造材をスエージングにより鍛伸するに際
    し、前記高速度工具鋼からなる被鍛造材に対する1パス
    あたりの減面率を28〜40%の範囲にすると共に前記被鍛
    造材の送り速度を5〜8m/分の範囲にすることを特徴と
    する工具鋼の鍛造方法。
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